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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十四章
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17話 トヨウミ商会南の大陸支店本格稼働

 メアさんのパワーレベリングを無事に? というには疑問があるが終了した。南の大陸に鞭を振り回して高笑いをする美女を生み出してしまったことには、少し申し訳なさを感じている。まあ、そこが突き刺さる男性も存在するはずだから、OKということにしておこう。ちなみに僕は刺さらないタイプです。痛いのは怖いので……。




「こんなに広い土地が本当に必要なんですかね?」


 メアさんのパワーレベリングを終えて一週間。僕は今ヨーテボリで取得した土地の視察に来ている。


 最初は郊外の土地、次に一等地の順番で視察する予定だが、最初の郊外の土地でいきなり疑問が浮かび上がった。だって広すぎるもん。


 おそらく日本でこの広さを表現する時に使用される単位は、東京の某有名ドーム何個分となるだろう。


 そんな広大な土地が、大量の人員を導入して綺麗に均され始めている。開始から十日も経っていないのでまだ完璧とは言い難いが、それなりに平地に見えるくらいには整地が進んでいる。


 獣人の町を視察した時も思ったけど、数の力って本当にすごいな。まあ、その分お金もかかるのだけど。


「はい、必要です。今回の戦乱でほとんどの倉庫が略奪の憂き目にあい、まともに使用できる倉庫は数える程です。商売に在庫の管理は必須ですし、特に港町では倉庫の重要性が格段に上がりますので、まず広い土地に倉庫の建設を考えています」


 まあ、僕みたいに船の送還を利用するなんて荒業を利用しないかぎり、商品を保管するスペースは必須だろう。


「そうなると、トヨウミ商会南の大陸支店の最初の仕事は倉庫業ということになるんですか?」


 視察に出て現場でのこの質問。


 そのくらい視察に出る前に把握しておけよ、ということだが、運搬の仕事で忙しかったし、全部お任せで安心していたから把握していなかった。


「そうですね、しばらくは倉庫に納める積み荷も集まらないでしょうが、倉庫を建てることが仕事にもなりますし、いくつかの倉庫は家を失った人の避難場所としても考えています。屋根があるだけでだいぶ違いますから」


 ああ、そういえば家を失った人の為に何かするって聞いたな。ここの倉庫が一時避難場所になるのか。


 ここで生活してこの建築現場で働く。プライベートも少ないしキツイ肉体労働になるが生きていくことはできるし、お金を貯めれば自立できるようになるだろう。


 利益よりも復興を優先するようにドナテッラさんとメアさんにお願いしておいたが、ちゃんと僕の要望に沿って考えてくれているようだ。


「それなら良かったです。何か問題はありませんか?」


「問題とまでは言いませんが、老齢の方や女性と子供の仕事が不足しています。お手伝いをしていただいて賃金を払っていますが、どうしても安くなってしまうので苦労されているようです」


 ああ、それは難しい問題だ。キツイ肉体労働をしている人とお手伝いをしている人の賃金を同じにしたら確実にややこしいことになるし、だからと言って肉体労働の人に賃金を大盤振る舞いするのも違う。


 僕達は施しに来たわけではないからね。


 子供くらいは無条件で助けても良い気がするのだが、そこまで僕が踏み込むべきか悩ましいところだ。


 獣人の町では老人や女性は炊き出しなどの炊事、子供はメッセンジャーのようなことを生業にしていた。


 工事現場に食堂を……いや、工事現場で得た賃金を持って外に食事に行くことでヨーテボリの経済は回っている。


 今一番経済活動に貢献している部分から僕が利益を得るのは、独占というかマッチポンプにすら思える。別に悪いことをしている訳じゃないんだけどね。


 仕事は別で探すべきだろう。


「倉庫が完成したらそこを孤児院にして、老齢の方や女性を世話係として雇うことは可能ですか?」


 焼け石に水な気もするが、それなりに経済活動の一助になるだろう。ついでに慈善事業費の消費にも役に立つはずだ。そこまで踏み込むのはどうかとも考えたが、子供の救済は多少の苦労をしてでも行うべき行動だよね。


 まあ、あとで必ず商売の神様に慈善事業費として計上できるか確認するとしよう。普通なら確定で慈善事業費扱いなんだけど、現在商売の神様の依頼で活動中だから、その中での救済にどういう判断が下されるのか少し微妙だ。


 本当ならすぐに確認したいのだが、創造神様関連で忙しそうだし、僕の御褒美の為に光の神様方の仕事の調整もあるから、商売の神様に余計な問題を持ち込みたくない。


「可能ですが、持ち出しばかりで利益には繋がりませんよ?」


 メアさんが首を傾げる。一応、商売ということで最低限とはいえ利益を確保できるようにお願いしていたから、違和感を覚えているのだろう。


「まあ、儲けさせていただいているので、少しくらいは利益を還元しようかと。それと世話係の人の中に教師役ができる人が居たら子供達に読み書きと計算くらいは教えてあげてください。無論、教師としての賃金も支払って構いません。そうすれば将来トヨウミ商会で働いてくれるかもしれませんし、働かなくても好意を持ってもらえますからね」


「まあ、そうなればトヨウミ商会南の大陸支店は盤石になりますね」


 盤石である必要があるのか疑問だが、潰れたら多くの人に迷惑が掛かるので、やはり盤石であった方が安心できるだろう。


 メアさんが納得したところで、視察を続ける。


 といっても、まだ整地の段階なのでそれほど見るべきところはなく、次の目的地である一等地に確保した土地に向かう。



 一等地に到着した。まあ、戦争でボロボロの一等地だから、再びこの場所が一等地になるかどうかは確定していないが、一等地の条件に立地の良さも関わってくるし、ここがそれなりの土地になる可能性は高いだろう。


 狭い、嫌、狭くないか。


 事前に郊外の広大な土地を見ていたから狭く感じたが、大商会が店舗を構えていた土地だから、それなり以上に広いはずだ。


 体育館くらいならギリギリ立てられそうだし、やはり広いのは間違いないな。


 こちらでも多くの作業員が汗水たらしながら土地を整地している。


 ここにトヨウミ商会南の大陸支店の店舗が建設されるのか。


 道幅は広く、更には各ギルドも近くにあって、高級店が並んでいそうな雰囲気の通りだな。ボロボロだけど。


「ん? もう建物を建て始めているんですか?」


 整地作業が行われている土地の一角に大工らしき人達が集まって基礎工事をしている。あ、作業員の為の飯場を用意しているのかな?


「はい、あそこにはトヨウミ商会南の大陸支店の仮店舗を建設中です。ワタル様が運んでくださった物資をあの仮店舗で商おうかと思っています」


 ああ、仮店舗か。


 それなら早めに商売に取り掛かれるようになるな。ドナテッラさんは優秀だし、メアさんもそんなドナテッラさんに認められた人材だからやることが早い。


 そういえば魔物の運搬の間に資材も運んだな。ここで利用されるのか。


「なるほど、倉庫業務よりもこちらの方が早く営業開始になりそうですね」


「そうですね、仮店舗ですから、それほど完成に時間がかかりませんし、ワタル様のおっしゃるとおりになるでしょう」


「お客さんは来そうですか?」


「はい、商人達には先に販売予定のリストを渡していますから、仮店舗の営業開始を今か今かと待ち構えていますよ」


 そっか、魔物の運搬が優先だったから、本格的な商売はまだ手を付けていないもんな。


 でも、魔物の運搬を休むと餓死者が出そうだったから、それは仕方がない。でも、ある程度食料に余裕が出てきたから、販売を開始しても問題ないのか。


 最初は高価な物は売れないだろうし、生活の役に立つ日用品の販売が中心になるだろう。


 それを商人が仕入れて各地で売ると、まあ、トヨウミ商会が卸売業者の役割で、商人が小売業者兼行商人って感じかな?


 トヨウミ商会南の大陸支店が僕が運んできた商品を売りつくす頃には、商売の神様の要望をある程度叶えたことになるのだろうか?


「それでワタル様、相談したいことがあるのですが、構いませんか?」


 メアさんが少し申し訳なさそうに話しかけてくる。面倒な相談内容なのだろうか?


「構いませんよ、どうかしましたか?」


 面倒は嫌だが、お世話になっているメアさんの要望にはできるだけ応えたい。


「ありがとうございます。実は隣のあの土地なのですが、購入を打診されているのです」


 隣のあのボロボロの建物の購入か。あそこの土地の所有者もそれで資金を捻出して商売の再開を考えているのかな?


「購入は可能ですが、いくつか問題があります。一等地の土地を買い増すことへの反感と、買った土地の活用方法です」


 今は喜ばれるかもしれないが、後々一等地を多めに確保していると反感が生まれそうな気がする。


 そして隣の土地もそれなりに広い。僕達が買った土地の方が大きいが、それでも半分程度の広さはある。


 この二つ合わせた広さの土地をトヨウミ商会で活用しきれるのかというと疑問だ。


「巨大化するのではなく二店舗を建設し、ワタル様が所持している海の魔物の素材を活用した高級路線なら可能だと考えています」


 店舗を分けるのか。元々ここに立てる店舗は日用品を中心に考えていたから高級路線とは客層が違う。客層が違うなら店を分けた方が混乱は少ないだろう。ただ……。


「現状で高級路線の商売が成り立つんですか? それに僕達は偶にしか南の大陸に滞在できません。高級素材が途切れた時に困ることになりませんか?」


 ボロボロで元はお金持ちであろうこの土地の所有者が、土地を手放す決断をするくらい追い込まれているんだよ?


「ヨーテボリは敗者側に属していましたが、敗者が居ることは勝者も存在します。勝者も余裕があるとは言い辛いかもしれませんが、それでも海の希少な魔物素材には興味を持つはずです。そして素材の供給についてですが、今回私が同行させていただいたレベリングの時の素材で、数十年は商売が可能です」


 ああ、戦争に勝利した国も財政は厳しい様子だけど、それでも勝者なのだからそれなりに財産を保持している人も多いのか。


 そんな人達の資産を海のレア素材で呼び込もうという訳だな。


 で、素材の供給に関しては……なるほど、海のランクが高い魔物って巨体なことが多い。


 Aランクのシーサーペントなんて、かなりの巨体なのに外海ではポコポコ登場するから邪魔なくらいに余っている。


 そんな高級素材を長持ちさせるように加工して、値段が下がらないように時間を掛けて売っていくのであれば、素材が足りないなんてことにはならないか。


 うん、有効活用できて景気が良くなって、僕も荷物整理ができるのであればいいことづくめだな。


 土地を確保し過ぎての嫉妬を向けられる可能性以外は……でも、分割して二店舗形態なら、欲からの買い占めではなく必要だったと認識してくれるかもしれない。


 まあ、嫉妬の感情なんて儲けていたら絶対に向けられるから、今回は購入依頼を受ける方向でお願いすることにしよう。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
そういえばダークエルフ族の貴金属を南大陸で卸すのもありましたな
数十年も商売できる素材持ってるなら、泥棒に盗まれそうな予感がする。護衛でAランク以上の冒険者何人か雇うフラグかな。
周り美女を侍らせてるから嫉妬なんて今更だろwww
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