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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十三章
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22話 サポラビ会議

 ルッカで物資の集積とカミーユさんが仕事を済ませるのを待つ間に、ドナテッラさんも合流したので南の大陸の言語学習も開始した。僕が教師役なことにはプレッシャーが掛からなくもないが美女三人の先生というのはなんだか素敵な背徳感があり悪くないとも思っている。




「カミーユ、やはり事前確認は必要だと思います」


「ある程度の事前確認はキャッスル号以外の船で済んでいます。ここは王侯貴族が集まる中でのインパクトを狙う方が有効ではありませんか?」


 僕の目の前で喧々諤々の会議が進行している。


 会議に参加しているのは僕とアレシアさん、カミーユさん、ドナテッラさん、マウロさん、そして三匹のサポラビ達だ。


 そのなかで僕、アレシアさんは空気になっていて、マウロさんは過熱しやすい議論を落ち着かせつつ進行役に徹しているので、激しい議論を交わしているのはカミーユさん、ドナテッラさん、三匹のサポラビだ。


 議題はキャッスル号でのサポラビ達の意識解放のタイミングだ。


 カミーユさんはインパクト重視で定期航路一発目、式典後に今のサポラビに慣れたところでイベントとして意識の解放、ドナテッラさんはプレ導入を繰り返し完成度を上げることに重きを置いている。


 そして議論の結論が出ない要因として、三匹のサポラビ内部でも意見が分かれていることもある。


 しかも一匹はカミーユさん支持、一匹はドナテッラさん支持、一匹は中立と見事にバラバラだ。


 同じサポラビなのにと思わなくもないが、同じサポラビでも所持している魂は別々の角兎の物であり、意識を解放するということは個性を解放するのと同じ意味合いがあり……つまり意見が分かれるのも当然ということになる。


 三匹の中で意見が偏ればもう少し簡単に結論が出るのだが、中立と言うのが質が悪い。マウロさんも同じ立場ではあるが、あちらは進行役を兼ねているので中立でないと話にならない。


 ちなみに、僕とアレシアさんは最初にある程度意見を述べただけで、あとは空気になっている。


 意見が割れだしたあたりから僕とアレシアさんを味方に引き込もうと説得が開始され、なんか途中から、これ、洗脳じゃね? 的な説得が加わったことで早々に白旗を上げ、僕とアレシアさんは立会人と言うポジションに避難した。


 だから今の僕とアレシアさんは空気だ。


 それにしても、このタイミングでサポラビの議論が過熱するとは思わなかったな。


 ルッカでの物資の集積とカミーユさんの仕事が終わり、カリャリに移動した。


 こちらも反乱の影響はそれほど酷くなかったので、順調に荷物を集めて後は南の大陸に出発するだけ。


 悩むとしたら、予想以上に物資がスムーズにかつ大量に集まったし、ダークエルフの島に寄り道する時間もありそうだけどどうしよう? くらいのものだった。


 でも、目の前に利益が転がっていると追求せざるをえないのが商人の性、ある程度状況に慣れたことでサポラビ達の意識解放をどうするか考える余裕が生まれ、今回の会議が開催された。


 ちなみに僕とアレシアさんは会議開催直前まで何も知らずにのほほんとしていたので、いきなり戦地に連れてこられたような理不尽に遠い目をしている。


「このままでは埒が明かないわね。もう少し人数を増やして会議をやり直す?」


「商人としての知識が少ない意見を増やし過ぎても建設的な議論は難しいですよ?」


 カミーユさんとドナテッラさんもこのまま結論を出すのは難しいと感じたのか、会議の仕切り直しを検討し始めたようだ。


 どうでもいいが、早く自分の部屋に帰りたい……と思ったが、これ会議が続くのなら僕も巻き込まれるのでは? 責任者だし。後日再会議パターンだよね。


 ……いかん、帰るのが遅くなったとしても結論は今日ここで出しておきたい。


 おきたいが……結論を出せるほどの閃きを捻り出せるかどうかは別問題だ。くそ、普段はどうでもいいのだけどこういう時は自分の平凡さが憎い。


 んー、とっさに解決策を思いつける才能はないとして、肝心なのは僕が会議に巻き込まれないこと。つまり会議が先延ばしになり、なんかあやふやなうちに結論が出れば問題ないわけだ。


 そもそも僕は利益に拘っている訳じゃないからね。


 そういう自己保身なら得意だ。問題をすり替えてしまえばいい。カミーユさんとドナテッラさんが議題にしているのはサポラビ……よし、決めた。


「あの、今はまだ意識が解放されたサポラビの動きを全部把握できていません。まずはそれを把握するべきではありませんか?」


 空気だった僕が突然発言したことで驚いた視線が僕に集中する。たしかに存在感を消していたけど、そこまで驚かなくても……特にサポラビ、一応僕は君達の雇い主と言うか召喚者だよ? まあ、君達を殺したのも僕だけど。


 ふふ、お金になるし美味しいから虐殺しまくった相手が部下になるとか、人生ってよく分からないね。全部創造神様が原因だけど。


「ワタルさん、何かアイデアが?」


 内心で黄昏ているとカミーユさんが質問してきた。そんなに期待した表情で見ないでほしい。


「えー、別に画期的なアイデアではありませんが、お試しとして今までカミーユさん達に専属として付けていたサポラビ達の意識を解放し、ついでに名づけなんかもして関係性を深めてはどうかな? と考えました。ついでにそこの三匹のサポラビも部下にしたらどうですか?」


 商人気質の三匹のサポラビ、彼らが優秀なのは僕にも分かるが、正直直接僕に色々なアイデアを持ち込んでくるから対応が面倒臭い。僕は生産性が無かろうとも優雅に豪華客船の中で引き籠っていたいんだ。


「え? いいんですか?」


「それは素晴らしい提案です」


「うむ、儂のところの子が意識を持ってくれると嬉しい。そこの三匹のサポラビも優秀だし助かること間違いなしじゃな」


 想像以上に好意的な反応。文字通りカミーユさん達の商業活動をサポートするために専属として付けていたのだが、部下というだけではなくそれなり以上に可愛がってくれていたようだ。


 まあ、動いて手助けしてくれる大きなぬいぐるみだもんね。僕みたいな事情が無ければそれなりに可愛がるのも分からなくもない。


 これでサポラビに気を取られている間に出港できれば、帰ってくるまでの間にカミーユさんとマウロさんが良いようにしてくれるだろう。




「決まりました。ワタルさん、この感じでお願いします」


「私はコレです」


「儂はコレじゃな」


 会議を有耶無耶にするための発言だった。想定通り会議は有耶無耶になったがカミーユさん達が自分達のサポラビに関する設定を考え始めてしまったので、会議がさらに長引いてしまった。


 個人で考えて明日にでも再度集合しましょうと提案したのだけど、もう少しだから、あと少しだからと引き延ばされ一時間以上空虚な時間を過ごすことになった。


 カミーユさん達が何をそんなに悩んだかと言うと、新たに加わるサポラビとの親和性。これまでのサポラビとの付き合いで色々と思うところがあったようで、あれやこれやと設定に拘ったからだ。


 普通に会議を続けた方が良かったのではと後悔している。


「……要望は分かりました。分かりました……が、名前はともかく他が要望通りになるとは限りませんよ? 性格とか好みはサポラビ次第ですから」


 そもそも意識の解放だからね。意志や性格をこちらで設定する訳じゃない。衣装に関しても召喚時にイメージすればある程度なんとかなるが細かいところまでは分からない。


 というか、意識を解放したサポラビ達、勝手に自分好みの衣装に変えている。船の雰囲気をぶち壊すような衣装を着ることがないから放置しているが、どうやって衣装を変えているのかは秘かな疑問だ。


「わかっています。できる限りで構いません、お願いしますワタルさん」


 できる限りで構わないのなら強い目力で圧を掛けないでほしい。


「……とりあえずやってみますね」


 カミーユさん達から提出されて仕様書というかキャラクターシートを読み込み、カミーユさん達の専属にしていたサポラビを送還、再召喚する。


 ついでに三匹のサポラビの内一匹も送還、再召喚するが、こちらの三匹は三匹が指名してカミーユさん達のサポートにつくことになった。


「きゃー、可愛いわジョセフィーヌ。あ、アランはカッコいいというか真面目ね。でも似合っているわ」


 性格を確認する前にカミーユさんが抱きしめてしまったが、とりあえず要望通りに召喚できたようだ。


 名前はジョセフィーヌ。白の女性用セーラー服を身に着けたサポラビだ。そして三匹の内の一匹の名前はアラン、黒縁眼鏡に古い映画の銀行員のような服装で、なんというか真面目! って感じだが、交渉が得意そうなので似合っているかもしれない。


 あの服装で交渉を迫られたら普通に怖い。経理の人に怒られるような錯覚に陥りそうだ。まあ、経費精算なんてしたことないけど。


 問題なさそうなのか確認したかったが今は無理っぽいので続けてドナテッラさんとマウロさんのサポラビも召喚する。


「ふふ、ソフィア、ロレンツォ、良く似合っていますよ。これからもよろしくお願いしますね」


 ドナテッラさんが落ち着いた雰囲気で挨拶をしているが、手が凄くワキワキしているので台無しだ。たぶん人目が無かったらカミーユさんのように抱きしめて撫でくり回していただろう。


 というか我慢できずに撫で始めたな。


 ソフィアとロレンツォの服装は金の飾りが少し派手に思える男女の肋骨服。肋骨服はスマートな方が似合うと思っていたが、ぼてっとしたサポラビの体形でも不思議と似合って見える。これはこれで悪くないが少し堅苦しく見えなくもない。


 続いてマウロさんのサポラビを召喚。


「ぬわ、なんでじゃ!」


 登場したサポラビを見てマウロさんが驚きの声を上げる。


 登場したサポラビが、デフォルトの船員服だったからだろう。なんとなくそうなる気がしていたがやはりサポラビに拒否されたらしい。 


 僕もちょっとだけだけど、こんな落ちになるんじゃないかなって思っていた。


 拒否されたしマウロさんが素直に諦めてくれたら助かるけど……無理っぽいな。僕はまだ自分の部屋に戻れないようだ。リムとペントに癒されたい。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
コミカライズから入ったんですけどコミックの方のキャラデザ凄いですね もう完全にコミックのキャラで読んでます
やっぱサポラビもおじさんは嫌か…
まさかサポラビがここまで重要な立ち位置になるとは… 作者様の想像力に脱帽です
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