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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十三章
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21話 授業

 合流したアレシアさん達の休養も終わり、僕は次の仕事の準備に取り掛かったのだが、そこで自分が南の大陸で通訳を務めなくてはいけない可能性に気が付く。戦乱がようやく終息したばかりという荒れていることが確定している状況での通訳に怯え、南の大陸の言葉を話せる人数を増やそうと決意した。




 ドナテッラ視点



「お疲れ様でしたー」


 上機嫌なワタルさんが笑顔で部屋を出て行った。私達がワタルさんに教えを受けているので、師匠と弟子という立ち位置になるはず。


 それなのにワタルさんは授業中も終始私達に気を遣い、部屋を出る時も私達に一礼して出ていく。


 なぜ弟子の立場の私達が師匠のような扱いを受けているのか疑問でしょうがない。そもそも、師匠と弟子以前に雇い主と部下という関係があり、圧倒的にワタルさんの方が立場が上なのだけど……。


「カミーユ、イルマ、ワタルさんはアレで良いのですか?」


 多少情けなく感じなくもないが、師匠としても上司としてもワタルさんは及第点、いえ、自由に働かせてくれる点をメリットと考えるなら満点に近い方でしょう。


 唯一無二の力と巨万の富、そして武力を持ちながらも増長せず部下に優しく、十分すぎるお給料に加え、ボーナスと言う特殊な賞与や有休という不思議な休暇制度まで制定して部下を労わってくれている。


 環境が良すぎて逆に怖くなってくるくらいだ。


 最初は私の体が目的かと疑いもした。これまでの仕事場でワタルさんの百分の一の待遇も用意できない雇い主が体を要求してきたこともある。


 そのすべてを断わって反抗してきた結果干されてしまったのだけど、ワタルさんはまったく要求してこないし、そもそもマウロも同じ待遇で働いている。


 愛人契約を予定した好待遇というわけではなく、普通の労働契約としての好待遇と考えてもいいのだろう。


 ただ、私、というか女性に興味がないという訳ではないらしい。私は女を売り物にせず実力でのし上がりたいと努力してきた。


 だから女性だからという面で評価されない、もしくは過剰に評価されるということがない今の環境にはとても感謝している。


 してはいるが、女性としての魅力がないと思われるのは話が別だ。まあ、それも今では誤解だと理解している。


 現にワタルさん達と合流し、南の大陸の言語を学習することになってからの二回目の授業、その二回の間にワタルさんは私の仕草に敏感に反応している。


 分かりやすい、隠す気がないのではと思えるくらいに。


 それは女として誇らしくもありますが、少し屈んで胸が寄ったくらいで授業を中断するくらい凝視するのはどうなのでしょう?


 ワタルさんには美人奴隷のイネスやフェリシアが居ますし、美女ぞろいのジラソーレと行動を共にし、カミーユも一緒に行動したりしています。


 見た感じジラソーレとカミーユとは男女の関係ではないようですが、イネスとフェリシアとは間違いなく男女の関係になっています。


 それなのに女性に興味を覚え始めた男の子のような、あの慣れていない態度はどうなのでしょう?


 イルマなど、普段から露出気味ですが授業の時は確実に、ワタルさんでは理解できない程度ですが服を緩めワタルさんを翻弄しています。


 あれは完全に楽しんでいますが、同時に獲物としても認識していますね。肉食獣の目をしています。


「ドナテッラ、アレがワタルさんなんです。考えるだけ無駄ですよ」


 カミーユがしょうがない子なのよと言った表情でワタルさんの説明をしてくれる。といってもアレがワタルさんでは説明になっていませんが。


 カミーユも若干怪しいですね。


 商売に熱心で自分を磨くことに貪欲なカミーユですから、南の大陸に行かないとしても学習の機会を逃さずに授業に参加することに違和感はありませんでした。


 ですが、それに加えてワタルさんとの関係を深めるという目的があるようにも思えます。


 ……まあ、構いませんか。


 ワタルさんは絶対的な私達のオーナーですが、カミーユも上司です。二人の関係が深まるのは悪くないでしょう。


 普通なら男女の関係は破綻した場合が怖いので不安が増すのですが、ワタルさんの様子を見るに酷いことにはなりそうにないですし、なによりカミーユほどの人間が分かりやすすぎるワタルさんの操縦を誤るとは思えません。


 良くなることはあっても悪くなることはないでしょう。


「うふふ、あまり関わっていないドナテッラには分からないかもしれないけど、ワタルはアレでも必死に自分の欲望を隠しているつもりなのよ」


「アレでですか?」


 イルマが面白そうに教えてくれるが、微妙に納得できない。


「アレででもよ」


「本気で言っていますか?」


「本気で言っているわね」


 納得できずに何度も確認するが、イルマは自信満々にすべてを肯定する。


「それってワタルさんはただの年頃の男性、いえ、年頃の男性の中でも幼い部類の男性と言うことになります。あれだけの能力と力を持ちながらそんなことがあり得るんですか?」


 普通は自分の能力を磨き上げ、それに伴い成長していく。偶にユニークスキルなどの使い方を理解し急に大きな力を手に入れる人もいますが、そういう人は手に入れた力の制御に苦労して人格が磨かれたり、逆にその能力に溺れ傲慢になったり怯えたりと普通からは逸脱してしまう。


 本当にそんなことあり得るのかしら?


「ドナテッラの気持ちもよく分かるけど、残念なことにあり得るのよ。その証拠がワタルさんということね。そもそもドナテッラはワタルさんの特殊性を理解しているはずでしょ?」


「…………あ…………」


 そうでした。あまりにも当たり前のことでカミーユに言われるまで忘れていましたが、ワタルさんは異世界人でした。


 直接そう聞いたわけではありませんが、キャッスル号で働きその能力を知れば聞くまでもありません。


 異世界人と言う存在、その存在をおとぎ話としては知っていました。ワタルさんの船で働くまではおとぎ話であることを疑いもしませんでしたから、その事実を知った時は本当に驚きました。


 なるほど、その存在を知り調べた本に書かれていました。異世界人は世界を渡る時に強力な力を得る。その力により異世界人は勇者にも魔王にもなりうる。


 そんなおとぎ話……ワタルさんは勇者になることも魔王になることも選ばなかった、ある意味では稀有な異世界人なのですね。


 なんだかとても納得できました。


 私が納得したのが伝わったのか、カミーユとイルマが苦笑いしながら頷きます。


 おそらく二人も似たようなことを考えたことがあるのでしょう。


 勇者にも魔王にもならなかった異世界人が私の上司ですか……それはそれでなんだか面白そうですね。しっかり働いて盛り立てることにしましょう。




 ***



 ふいー、授業終わり。


 やっぱり人に教えるというのは難しいし緊張する。


 僕の場合、教える分野、南の大陸の言葉だけど、生まれた国の言葉でも勉強して身につけた言葉でもなく、言語理解と言うスキルに頼った指導だから不安も大きい。


 まあ西の大陸で言葉を教えた経験があるから多少スムーズに教えられている気もするが、やっぱり大変だ。


 ……でも、先生って悪くない。


 イルマさんは凄くセクシーだし、特殊なシチュエーションだからか色っぽさが何割か増しているように感じて興奮する。


 そしてカミーユさんとドナテッラさん、この二人は素晴らしい美貌とスタイルを兼ね備えながら、性格は委員長タイプというミスマッチが僕にはとても魅力的に思える組み合わせの体現者だ。


 真剣に授業を聞きながら、魅惑のボディから無自覚に発揮されるエロスの破壊力は抜群だ。


 ドナテッラさんが合流してまだ二回しか授業をしていない。緊張して疲れるのも本心だけど、同時に楽しみにもなっているのも事実だ。


 残念なのは南の大陸にはカミーユさんが同行しないので、魅力的な生徒が一人減るということだな。


 まあ出発までまだ時間はあるし、それまで全力で三人の授業を楽しむことにし……いかんいかん、こんな心構えではダメだ。


 僕が目指すのは表面上だけでも紳士な男。


 欲望を素直に表に出しては駄目、体裁だけでも整えてモテる男になると心に誓ったじゃないか。


 であるのなら、女生徒に人気がある爽やかな男性教諭を目指すべき。授業に余計な欲望を持ち込まず真摯に向き合う必要がある。


 ……でも、斜め上から見る美女達の胸のふくらみは魅力的すぎるんだよなー。特にイルマさん、谷間が丸見えだもん。目線を逸らすことすら難しい。


 ……どうしたものか。


「あら、ご主人様、授業は終わったの?」


「あ、うん、イネス無事に終わったよ」


 思わぬ難問に頭を悩ませていると、イネスとばったり出くわした。うーん、イネスはサバサバした性格だけど、さすがにこの難問を相談する訳にはいかないな。


 誰か相談できる人でもいれば良いのだけど……ぶっちゃけこの世界に来てから女性に重きを置きまくっているから男友達が一人もいない。


 別に後悔している訳ではないが、こういう下世話な悩みを相談できる相手が居ないのが辛いな。


 かろうじて南東の島のグイドさん達なら相談できそうな関係だけど、さすがにこの状況でそんな相談の為に南東の島に行くわけにはいかないよね。


「ご主人様、ボーっとしているようだけどどうしたの? 授業で失敗した?」


「え? いや、これからの予定を考えていただけ。出港すれば船任せだけど、それまでは忙しくなると思ってね」


 さすがに下世話な相談ができる友達が居ないのを悲しんでいたとは言い辛くとっさに嘘をつく。


「ああ、それもそうね。もうすぐルッカに集まった荷物を積み込んで、次にカリャリでも荷物の受け取りだっけ?」


「そう、なんかカミーユさんがかなり頑張ってくれたみたいでかなりの量が集まったみたいなんだよね」


 カミーユさん、王様の接待の打ち合わせと同時に、その打ち合わせに来た国のお偉いさんに話を通して物資の確保量を倍増させてくれたんだよね。


 全部積み込めるのか不安になるレベルだが、事前に船を検証されたしそこら辺の塩梅をカミーユさんが失敗するとは思えないので確実に大丈夫だろう。


 そういえば合流した時にドナテッラさんも意識が解放されたサポラビに大興奮して、キャッスル号で試してみたいって要望が出ていたな。


 そこら辺を考えるとルッカでの仕事が終わっても、カリャリを出港するまで本気で忙しくなりそうだ。


 出港まであと何回授業ができるだろうか?


読んでいただきありがとうございます。

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オタクな男子ってこんなもんじゃない?社会人ならまだしも、大学生で遊んでなければ、男なんてこんなもんよ。 美人に鼻の下伸ばして、丸投げできるところは丸投げしてちょっと美人にお願いされたらコロッと方針変え…
目を丸く見開いて凝視してるのが容易に想像出来る 紳士な仮面以来声出して笑った回でした ここまで漫画きたら分割視点(上半分下半分で航とその他)で読みたいな 航視点だとキリッとした顔してんのに他視点だと…
そろそろイルマの心配事の続きが読みたい。メンバーの心情とか
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