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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十三章
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16話 商人魂

 女性陣の好感度を稼ぐために南東の島での滞在にキャンプ雑誌をフル活用して頑張った。おかげでお肉効果が抜群なカーラさんだけではなく、マリーナさん、クラレッタさんにも好評で、リムやペントやふうちゃん、そしてイネスとフェリシアも喜んでくれた。キャンプ雑誌、凄い。




 キャンプは大成功だった。まあ、キャンプだと思っているのは僕とリム達くらいで、女性陣は仕事として認識していたはずだけどね。


 それにしても、やはりグルメ関係は女性陣に好評だな。


 今後もグルメでどうにか好感度を稼いでいきたいところだが……南東の島に立ち寄る機会はそれほど多くないのが問題だ。


 今回だってカミーユさんの仕事の待ち時間を利用しているだけで、次はいつになるかすら分からない。


 もうすぐ南方都市に到着するから、それからカミーユさんの仕事の状況を確認して、一回か二回チャンスがあれば良い方だろう。


 だが今回のことで光明が見えた。


 女性陣はお肉が好き。


 僕のテンプレートな感覚でいけば、女性はヘルシーな食事と甘味が好きという結論になるのだが、ここは異世界で彼女達は冒険者。言ってみれば命の危険を顧みないタイプのアスリートに近いものがある。


 アスリートはその強靭な肉体を維持するためにもお肉、タンパク質が重要だと、スポーツ番組か何かで言っていた気がする。たぶん。


 豪華でお洒落な料理や甘味は豪華客船等の船に任せて、僕が進むべき方向はそれらとは違う方向。


 だが、キャンプ料理は雑誌があるとはいえレパートリーと機会は少ない。


 悩ましい問題だと思ったが、凄く簡単な解決方法を直ぐに思いついた。


 豪華客船やフェリーではメニューに載らず、それでいて女性陣が喜ぶメニュー、それって男飯だよねと。


 男飯なら僕でもなんとかなるし、レシピもフェリーでそんな感じの雑誌があったはず。


 それを参考に女性陣が好みそうな料理をチョイスすればいい。


 彼女達の場合はカロリーをそれほど気にしなくていいのが助かる。


 男飯ならなんとなく食べたくなったから作ったで済ませることができるから、女性陣にご馳走する機会に困ることはないし、クラレッタさんを料理に誘うこともできる。まさしくパーフェクトなアイデアだ。


 さっそく取り置きしてある雑誌を確認したいところだが、今は和船で女性陣の目があるから後でだな。


 フェリーや豪華客船の商品も映画のように偶に入れ替わるから、料理関係の雑誌は確保し損なわないように今後は確認する回数を増やすことにしよう。



 何を作ろうかな? 僕の中で男飯の定番はカレーに唐揚げや角煮なんだけど、それは船でも食べられるから、もっとシンプルで美味しく夢がある料理がいいな。


「ご主人様、南方都市が見えてきたわよ」


 脳内でレシピを検索していると、イネスが声をかけてくれる。自動操縦はとても便利だけど、うっかりしていると和船がひとりでに港に突入なんてことになりかねないから声掛けは助かる。


 普通ならそれほど警戒しなくても問題ないのだけど、和船は操船席が丸見えだし、今回も和船の先頭には大きめの獲物が積んであるから注意は必要だ。


 無論失敗を偶にしか繰り返さない僕は、獲物にカバーをかけて見えないようにしているが、これまでの実績と女性陣の華やかさによってどうしても注目されてしまう。


 そうすると舵を取っていないのに勝手に船が移動するという不思議に人が気が付く可能性が上がるということになる。


 都市伝説は見たり聞いたりするのが面白いのであって、その出演者になるのはゴメンこうむる。


「ありがとうイネス」


 お礼を言って立ち上がり、真面目に操船しているふりをする。いや、ふりではなくちゃんと操船してはいるんだけどね。


「到着です。みなさんお疲れ様でした」


 ルト号の隣に停泊しみんなに声をかけると、女性陣が次々と僕にお礼を言いながら船から降りていく。 


 普通のことだけど、ちゃんと労わりの声をかけてくれるのは嬉しいよね。まあ基本自動操縦で、最後だけ操船しただけなんだけど……。


 マリーナさん達は獲物を陸に揚げ、商業ギルドに報告に向かうそうなので僕達はルト号で一休みすることにしよう。カミーユさんは居るかな?


 ルト号に入るとカミーユさんは居なかった。カミーユさんとマリーナさん達が戻るまでのんびりリム達と遊ぶことにしよう。




「ワタルさん、お帰りなさい」


 リム達と遊んでいるとそれほど時間がかからずにマリーナさん達とカミーユさんが帰ってきた。どうやら商業ギルドに居たらしく、マリーナさん達と一緒に戻ってきたようだ。


 それは構わないのだが、カミーユさんの表情が少し曇っている。


「カミーユさん、何か問題が起こりましたか?」


 商人らしく不利な表情を表に出すことが少ないカミーユさんの憂い顔。それはそれで美しくレアではあるのだが、問題が起こるのは勘弁してほしい。


 また定期航路についていちゃもんをつけて利益を引っ張り出そうとする輩が現れたのだろうか?


「問題というか想定外の事態が起こってしまったことは確かですが、顔に出ていましたか? いけませんね、商人として反省しなければなりません」


 あれ? 反省しなければとか言いながら、それほど失敗したと思っていなさそうですが?


 というよりも獲物が罠にかかったと舌なめずりするような感覚が……あ、キツネって一応肉食だっけ? いや雑食だった気が……いや、キツネの食性はこの際関係ない。


 これはあれだ、憂い顔も最後の獲物を捕らえた顔も晒したのはわざとだな。


 カミーユさんは偶にこういうことをする。おそらく僕が商人として未熟だから鍛える目的があるのだろう。


 僕の船召喚はチートだが、僕自体はチートではないのでカミーユさんとしては雇い主にしっかりしてほしいとこういうことをするのだろう。


 ありがたい気がしないでもないが、平和ボケした日本の大学生にはハードルが高い場面も多いので、あまり多くを求めないでほしい。


 僕の自衛手段は安全な船の中に引きこもることです。


「それで想定外の事態とは? 定期航路がらみですよね?」


 ソファーに座り飲み物を出して改めで場を仕切り直す。カミーユさんに余裕がありそうだから、それほど深刻な想定外ではないのだろう。


 南の大陸のこともあるから、面倒事は少ない方が助かる。


「南方伯様とお会いした時のことなのですが……」


 カミーユさんが困った表情で一度言葉を切る。あれ? 本当に困っているように見えるんだけど……これは演技? 混乱してきた。


「国王様がキャッスル号に乗船したいとのことらしいです」


「…………へ?」


「国王様がキャッスル号に乗船したいとのことらしいです。そして各国の首脳と会談しつつ船旅も楽しみたいと考えているらしいです」


 僕が理解できていないと思ったのか、カミーユさんが同じ言葉を繰り返した後に情報を補足してくれる。


 でも違う。そういうことではない。


「いやいや、一国の王様が一商人の船で船旅とかありえないですよね?」


 だよね? カミーユさん以外の女性陣も驚いているし、僕の認識が間違っている訳じゃないよね?


 だってこの世界よりかはまだ平和な地球でさえ国のトップの移動はニュースになるくらいだし、あ、でも一応外遊とかで国外に出ることを聞いたことがなくもない……でも、それは安全な地球での話だ。


 バチバチに戦争が繰り広げられていて、そこに魔物という特大のエッセンスが加わるこの世界ではもっと条件が厳しいはずだ。


「ワタルさんの反応は当然のことです。当然なことなのですが、色々な状況が噛み合い、前向きに検討という段階まで話が進んでしまっています」


 前向きに検討って、日本的な検討だけして終わりな感じではなく、ガチな前向きな検討ってこと?


「王が国を出ることを許容する状況って何があるのよ」


 僕が言葉を失っていると、イネスが素晴らしいツッコミを入れてくれた。そうだよね、そんな状況、ありえないよね。


「……まず王妃様を筆頭に女性王族が豪華客船に強い興味を示していることです」


 ……あー、あれですね、美容関連のあれこれですね。分かります。


「そして、豪華客船の安全性です。無論再度確認を要求されることは間違いありませんが、それに商売の神様との契約を加えれば安全が担保できるのではと考えているようです」


 あー、なるほど、豪華客船は出入りの制限がかなり厳しい。そして、そのことは豪華客船に興味を持っている他国の偉い人達が一番よく知っている。


 あの手この手で情報を集めようと頑張っているらしいし、それを完璧に防いでいるのだから、安全面を実感しているのだろう。


 僕も船召喚の安全を確信しているが、それを知らない人でも、人数を限定してチケットと商売の神様との契約を併用すれば大丈夫と考えるのを理解できなくもない。


 それを歓迎するかどうかは別の話だけど……。


「断ることはできないのですか?」


 そういう面倒な話とのお付き合いはNGです。お姫様とかに興味がないわけではないが、なんか俗世の偉い女性は怖そうなので関わり合いになりたくないです。


 高貴な存在で言えば、女神様方が居るし、そちらの方がよっぽど高貴だもんね。特に身分に興味はないけど



「断ることは可能です。船に関する立場はワタルさんの方が圧倒的に上ですから」


「あ、可能なんですね。ではそれで―――」


「―――可能ですが、最初の定期航路で各国の王族を歓待したという実績は、とてつもない強みになります」


 お断りをして話を終わらせようとしたのだが、カミーユさんの強い視線と言葉に遮られた。


「……もしかして、歓待したい感じだったりしますか?」


 おそるおそる質問をする。


「はい。ワタルさんの船は素晴らしいです。この件を断わったとしてもたいした問題もなく話は進むでしょう」


 まあ豪華客船のアドバンテージはチートだもんね。


「ですが、それを分かりやすく世に示すのは、なかなか難しくもあります。それを考えれば、絶好の機会でもあります」


 僕的にそれを世に示す必要があるのかどうかは疑問なのだが、なんとなく僕が面倒に感じているだけでキャッスル号の公開を望んだ神様方の思惑を考えるに悪い提案ではない。


 各国の王様に優雅な船旅を提供。インパクトは抜群だろう。


「…………色々と考えることはありますが、つまりカミーユさんはやってみたいんですね?」


 インパクトうんぬん、神様うんぬんとごちゃごちゃ考えてはいるが、ぶっちゃけあれだ、カミーユさんからめちゃくちゃやる気が伝わってくる。


 商売魂が燃え上がっちゃっているよ。これ、断わるの僕の心情的に難しいかも。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
クーデターの心配が無くても2〜3か月不在でも大丈夫なんだろか? 専制君主・立憲君主でも王族まるっとだと行政システムが問題だよな、決定権が無いんだから。
もう何回も最悪(創造神)を更新中なのに今更国王如き何するものぞ! と思えないのが航が航たる所以だよなぁ しかも創造神に天誅(笑)したんだからもう少し自信持てよ と思ってみても実際したのはHKだし神と人…
神様の次は王族が船に乗るのかぁ まあ全世界の富裕層がこぞって豪華客船に乗りたがっている以上ワタルの圧倒的な立場の強さは揺るがないので今後どこかの王族が無茶を言ってきてもお断りするだけで解決するから問題…
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