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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十三章
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15話 キャンプ雑誌……凄い

 南方都市に到着し、カミーユさんが働いている間に僕達は南東の島に行くことにした。そこで僕は、サポラビ達にもっていかれている女性陣の意識を少しでも奪還するために、キャンプ雑誌を頼りに豪快なキャンプ飯で女性陣の歓心を買う作戦を遂行することにする。料理は順調、あとは気に入ってもらえるかが問題だ。いかん、少し緊張してきた。




 お風呂筏から出てきたイネス、フェリシア、マリーナさん達を和船で迎えに行く。


 今回はお風呂から上がったら宴会ということで、女性陣には全員一緒に入ってもらった。


 ホカホカの湯上り美女が五人。何度見ても最高だけど、ここにルッカに居残りのアレシアさん達と南方都市に居残りのカミーユさんが居たら、もっと眼福だったのだけどね。少し残念だ。


 和船が借りているテント筏に到着する。


「凄い! 美味しそう!」


 テント筏に到着し、一番に目に入るのはスウェーデントーチや散りばめられた蝋燭なはずなのだが、カーラさんの視線はお肉に釘付けだ。


 まあ、それも無理はないか。


 僕達が料理をしている間、特にお肉を料理し始めてからは周囲の休憩中の冒険者の注目を集めたくらいだからな。


 グイドさんもテント筏に訪ねてきて、羨ましそうに見つめるものだから余ったら提供することを約束してしまったくらいだ。


 あくまでも余ったらということだけど、まあ、今回はかなりの量を用意したから、さすがに余るはず。


 ……たぶん。


「ワタル、ワタル、早く!」


 子供みたいにはしゃぐカーラさんが可愛い。


 カーラさんのリアクションには負けるが、マリーナさんとふうちゃん、クラレッタさんも喜んでいる様子なので、僕としても満足だ。


「分かりました。まず、一品目を出しますから、席に座ってください。飲み物はビールで良いですよね?」


 全員が頷いたので、今日はキンキンに冷やした瓶ビールをキンキンに冷やした銅製のジョッキで提供する。


 冷えすぎのビールには賛否があるが、お風呂上がりのこのタイミングでは正義だと思う。


 まあ、僕はまだお風呂に入っていないのだけどね。


「乾杯!」


 銅製のジョッキを豪快に音を立てて合わせ乾杯をし、一気にビールを流し込む。


 今日は一日色々と頑張ったから、この一杯のビールは最高だ!


 女性陣もビールを飲み干し、満足気に息を吐く。お代わりのビールはフェリシアに任せて僕は一品目の料理を配膳する。


「うー、凄く美味しそう。ワタル、どうやって食べるの?」


 カーラさんがとてもワクワクしていらっしゃる。


「そうですね、切り分けても構いませんが、今日のテーマは豪快にお肉ですから、緑の部分を手に持って、一気に端から噛り付くのが美味しいと思います。少し下品ですが、ここは野外ですから構わないでしょう」


「いただきます」


 カーラさんが緑の部分を手で持ち、豪快にかぶりつく。


「お、美味しい! お肉が香ばしくて中の長ネギがトロトロ」


「ん、これは面白い」


「そうですね。それほど手間が掛かっていないように見えるのに、手の込んだ料理に負けない魅力を兼ね備えています」


「ビールに最高に合うわね」


「ご主人様、美味しいです」


 一品目の豪快メニューは長ネギの一本丸まま豚肉巻きだ。


 お肉を巻く前に長ネギに切れ込みを入れて、その後、豚バラ肉を長ネギに隙間なく巻き付ける。


 それを炭火でじっくり焼くことで、豚の脂身とお肉の旨味、そして豚肉に包まれていることで蒸し焼き状態になった長ネギがトロトロになり、そのすべてが合わさるとたとえようもなく美味しい……と、キャンプ雑誌に書いてあった。


 女性陣のリアクションを見るに、キャンプ雑誌の情報は正しかったようだ。


 僕も負けずに長ネギを手でつかみ、端から口の中に押し込む。むふ、トロトロ。これは良い。豪快に咀嚼し、続けてビールで流し込む。最高。


 欲を言えば、豚バラにニンニクペーストを塗り込んでおきたかったかな。そうすれば野性味が更に増してビールの味も一段階上がった気がする。


 ふむ、次の機会にはニンニクバージョンに挑戦してみよう。


 女性陣も豪快に長ネギの豚肉巻きを齧り、それをビールで流し込む無限ループに突入したようだ。


 リム、ペント、ふうちゃんも気に入ってくれたようで、長ネギの端から、ジャガでリコなお菓子を食べるように消化していっている。


 それぞれに二本ずつ用意したのだが、あっという間になくなりそうだな。


 そろそろ二品目にするか。


「では、こちらにご注目ください」


 声をかけて女性陣の注目を集め、焼き台の上にかぶせていた鍋を持ち上げる。中から現れたのは……。


「丸焼き!」


 そう、カーラさんの言葉通り丸焼きではあるが……少し違う。


「あれは……ビールの缶? なんで?」


 マリーナさんが気が付いたように、下味をつけた丸鶏のお尻に半分ほどに減らした缶ビールをぶっさして、そのまま丁寧に焼いた一品。


 この缶ビールをぶっさして丸鶏を安定して焼き台に立たせるためにガラの悪い鍛冶師に作ってもらったのがチキンスタンド。


 おかげで綺麗に焼きあがった丸鶏は香ばしい匂いをまき散らしながら、姿勢正しくこんがりキツネ色だ。


 キャンプ雑誌でこの料理を見た瞬間、これだと思うと同時に、何でこんなことするの? とも思ったが、インパクトは抜群だよね。


 しかも、キャンプ雑誌によると、沸騰したビールが鶏肉に染み込み、中は風味豊かでジューシーで、皮はパリパリに仕上がるのだそうだ。


 今回はこれを三羽用意した。


 本来ならアルミホイルで包んで十分ほど放置して肉汁を落ち着ける方が良いそうなのだが、カーラさんだけではなく他の女性陣に加えリム、ペント、ふうちゃんも待ちきれなさそうなので一羽目の丸鶏はすぐに食べてしまおう。


 残りの二羽はキャンプ雑誌に従い、少し寝かせて味の違いを試せば面白いよね。


 まあ、それぞれに味付けを変えたから、寝かせた時の味の違いが分かるかどうかは知らないが……。


 一羽目はオーソドックスな塩コショウとニンニク、間違いのない美味しさだと思う。二羽目は各種ハーブを多用したハーブチキン、三羽目はカレー粉を利用したカレーチキン。こちらも間違いのない美味しさだ。


 鶏の丸焼きを解体なんてしたことないが、僕にはオリハルコンの包丁がある。関節で上手に分解できなくても、骨ごと切ってしまえば関係ないよね。


「これはビア缶チキンという料理です」


 メンバーに切り分けたチキンを配膳し、ついでにキャンプ雑誌に書いてあったマメ知識を語る。


 仲間達の尊敬の目が……いや、あれは早く食べたいって目だな。


「では、ご賞味ください」


「むぐむぐむぐ、ワタル美味しい!」


 いや、カーラさん、美味しいの言葉は嬉しいのですが、もう少し細かい評価を頂きたい、あ、続きを食べるのですね。


「なるほど、この皮の食感と柔らかなお肉、ビールの効果か穀物の香り、それに塩コショウとニンニクが混ざり合い暴力的な美味しさを感じさせます。私も作ってみたいです」


 クラレッタさんが目を輝かせて品評してくれる。


「では、次の機会に一緒に作りましょう」


「はい!」 


 クラレッタさんの反応は予想通りだが、普通に嬉しい。続けて寝かせていたハーブ味、カレー味も味わっていく。


 味付けも上手くいき、こちらも大好評。


 僕には分からなかったが、寝かせる効果はちゃんとあるようで、しっとり具合? が増すようだ。


「最後のメインディッシュの前にスープです」


 テーブルの中心にダッチオーブンを運び、ふたを開ける。


「全部野菜が丸ごと入っているのね、ちょっと面白いけど火は通るの?」


 マリーナさんが丸ごと野菜に食いついた。意外とお野菜が好きなんだよねマリーナさん。


「じっくりコトコト煮込んでありますから大丈夫ですよ」


 丸ごとキャベツを等分に切り分け、他の野菜は丸のままお皿に盛りつける。そして大きな豚バラの塊も等分に切り分け、スープと共にお皿に盛りつける。


 本場のポトフは具とスープを別々に楽しむみたいだが、僕のポトフはなんちゃってなので具もスープも一緒に楽しむスタイルだ。


「ふふ、このスープはホッとする味ですね。味付けは違いますが、私は南東の島に通っていた頃からワタルが作るスープの味が優しくて好きですよ」


「うん、ワタルのスープ、好き」


『……りむもすき……』


 味についてだけど、好きを頂いてしまった。僕が作るスープの味は優しいらしい。あと、たぶんリムがマリーナさんに対抗心を燃やして好きって言ってくれた気がする。鼻血が出そうだ。


「では、最後のメインを用意しますね」


 スープで一息つき、最後のメインディッシュを用意する。


「切るの?」


 僕がお肉に包丁を入れると、カーラさんから驚きの言葉が飛んでくる。


 え? 


 ……今回のメインはドネルケバブなのだけど……もしかしてカーラさん、このお肉の塊にかぶりつくことを想像していた?


 いや、気持ちは分からないではないが、いくらカーラさんでも無理だと思うよ。だって、何枚の分厚いお肉を重ねたのか分からないくらい重ねまくったお肉の塊だもん。


 それに回転させながら炭火でじっくり焼いたとはいえ、中の方はまだ生だと思うからカーラさんの期待に応えることはできない。


「はい、この焼けた面が香ばしくて美味しくなるんですよ。だから削ぐように切って、切った断面をまた焼いて香ばしさを味わう。そんな料理なんです」


 適当だけど、たぶん間違っていないと思う。たぶん。


「なるほど」


 納得したと真剣な顔で頷くカーラさん。美味しいのなら問題がないと言いたげだ。


「今回は牛肉とラム肉で用意しました。これを野菜と一緒にピタパンに挟み、ソースをかけて頂きます。ソースはヨーグルトソース、オーロラソース、チリソースに加え、和風、他にも調味料が用意してあるので、色々な味を試してみてください」


 ピタパンが千切れるくらいに肉を詰め込み豪快にかぶりつくのが僕のお勧めだ。ピタパンも沢山用意しているので、お腹がはちきれるくらいに食べてほしい。


 それにしても、目的の女性陣に加えてリムとペントとふうちゃんの従魔組にも大好評な様子だな。キャンプ雑誌……凄い。

宣伝になりますが、明日、3/27日にコミックス版『めざせ豪華客船!!』の第六巻が発売されます。

強気なワタル?と第二王子の攻防? お楽しみいただけましたら幸いです。

よろしくお願いいたします。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
カーラさんの気持ち良く分かる (多分)33年前に上野での初見時クルクル回ってるトコに歯を置いて自動飲食したいて思ったわ …………今でも見たら思うけどなwww
ケバブはピタパンよりラップサンドで食うのが最高にうまい
読んでるだけでめっちゃ腹減るなぁ…
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