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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十三章
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13話 サポラビの脅威

 全ての用事を済ませ、アクアマリン王国を出発した。外海に出てからシャトー号に乗り換えたら、案の定カミーユさんもマリーナさん達も意識が解放されたサポラビに興味を示し、僕の人気に陰りが……そのことを予想してカミーユさんとは先に話を済ませていたが、少し寂しい。




 シャトー号に乗り換え、自動航行で目的地を南方都市に設定し一夜が明けた。


「あ、おはようワタル、見て!」


 今日の朝食はカフェで優雅に済ませるかとお気に入りのカフェに向かうと、僕達を見つけたカーラさんが満面の笑みで朝食を見せつけてくる。


 それは欲張りサンドイッチとしか言えない代物。


 たっぷりのハムやサラミをパンに納まりきらないくらい挟んだ物や。たっぷりの卵がパンからこぼれるくらいに挟まれた物。


 分厚いチキンステーキが二枚にたっぷりのチーズを挟んだ物と、レアなステーキと極厚ステーキの二枚にトマトとレタスが挟まれた物。


 あれだな、名付けるとしたらカロリーの暴力だな。


「お、美味しそうですね? どうしたんですか?」


 体に悪そうだけど美味しそうなのは確かだ。でも、朝一でそれはキツイだろう。


「ふふ、コック姿のサポラビちゃんがリクエストを聞いてくれたんですよ。それでカーラが豪華でたっぷりで美味しいのが食べたいとリクエストしたら、サポラビちゃんが作ってくれたんです」


 クラレッタさんが微笑みながら説明してくれる。なるほど、サポラビが自分の能力を売り込んだのか。


「サポラビ、なかなかやる!」


 大満足な様子のカーラさん。サポラビのヤツ、ガッチリカーラさんの心をつかんだようだ。


「ワタル、私の朝食も見てください。いろんな味のサンドイッチが食べたいとお願いしたら、こんなに楽しいサンドイッチを作ってくれたんですよ」


 クラレッタさんのお皿には、普通のサンドイッチではなく一口サイズの正方形に切り分けたパンに様々な具材を挟んだ沢山のサンドイッチが並んでいた。


 なるほど、クラレッタさんの食事量と好みを考えてこういう形式のサンドイッチを用意したのか。サポラビは本当に僕達の好みを把握しているんだな。


「それにこのサンドイッチ、とっても素敵だと思いませんか?」


 特にお気に入りなのだとクラレッタさんが見せてくれたサンドイッチは、たっぷりな生クリームとフルーツの断面を活かした美しいサンドイッチ。


 くっ、確かにこのフルーツサンドは女子受けする。僕もこのサンドイッチのことは把握していたのに、すっかりその存在を忘れていた。


 好感度を稼ぐチャンスをサポラビにもっていかれた。普通に悔しい。


「ああ、フルーツサンドですね。これは小型ですが、普通のサンドイッチサイズで果物を綺麗に並べるともっと華やかになるんですよ」


 悔しいので、情報を追加して僕も負けてないアピールをする。


「ワタルはこのサンドイッチを知っていたのですね。作り方を聞いたら、あとでサポラビちゃんが教えてくれることになったんです。一緒に作りませんか?」


 クラレッタさんも既にサポラビに取り込まれつつあるのか。予想はしていたが、取り込まれるペースが予想よりも早い。


「そうですね、楽しそうなのでご一緒させていただきます」 


 とりあえず、作業に交ざって一緒に楽しむことで僕の好感度も上げておこう。


「そういえばマリーナとカミーユさんは?」


 マリーナさんって単独行動が多いけど、朝は割と一緒に居ることが多い。カミーユさんもこの船に乗ってからは女性同士が気楽なのか、マリーナさん達と行動を共にしているはずだ。


「マリーナはふうちゃんがお寿司を食べたいとのことでお寿司屋さんに、カミーユは朝からハリキッテサポラビちゃんのところに出かけて行きましたね。朝食はそちらで取るのだと思います」


 朝からお寿司なのか。贅沢というかなんというか……カミーユさんも予想通りあの三羽のサポラビと意気投合したようだな。


 サポラビ達の人気、僕が想像していた以上に危険かもしれない。


 ただ、既に市民権を得てしまっているようなので、意識を閉ざすのは無理そうなのが困りどころだ。なんとか対策を考えねば。




 ***




 もうすぐ南方都市に到着する。


 航海は平穏に進んだがサポラビ対策は順調とはいかず、最終的に妥協した選択を選ばざるを得なかった。


 そう、サポラビの上に立つのではなく、サポラビに迎合し女性陣との関係を深める作戦に対策を変更した。


 元々低いプライドが更にヘコまされたが……効果が抜群なのでなんとも言えない気持ちになった。


 でも、本当に効果が抜群だったんだよね。


 サポラビの可愛らしさが女性陣を油断させるのか、一緒に作業をするとこれまで以上に会話も弾むし距離が縮まり接触が増えるなどもうウハウハだった。


 正直、サポラビ達の気が利き過ぎて、僕の警戒心まで溶かされていっている。


 元々豪華客船で設備も一流だった。


 そこに活気が生まれ、一流といっていいのかは分からないが、これまで以上のサービスが提供されるようになった。


 つまり、とっても快適だということだ。


 ……もう、サポラビ達が居ない環境に耐えられない体にされた気がする。


「あ、ありがとう」


 もうすぐルト号に乗り換えだなー、なんて考えていると、サポラビが自発的にコーヒーを持ってきてくれる。


 出発前に一息入れたいと思っていたから、その気配を察してくれたのだろう。


「あ、私達にもですか? ありがとうございますサポラビちゃん」


「ふん、貰ってあげるわよ」


 フェリシアが飲み物を受け取り、ありがとうと頭を撫でている。幸せそうだ。


 そしてイネスはちょっと態度が悪い。カジノで全財産を搾り取られてからイネスにとってサポラビはライバルというか倒すべき敵だと認識しているようで、素直にお礼を言えなくなっている。


 僕も大人気ないと思うのだが、サポラビも結構イネスにマウントを取るからしょうがない面もある。


 まあ、サポラビのマウントは、イネスを挑発してお金が手に入ったらカジノに突撃させるための作戦なんだけどね。イネスはサポラビの肉球手の平の上でコロコロ転がされている。


 コーヒーを飲んでゆっくりしていると、サポラビ達がマリーナさん達とカミーユさんを連れてきてくれる。


 そろそろ出発だから連れてきてくれたのだろう。


 本当にサポラビって気が利く。海外の豪華客船なのに、サービスが本当に日本的だ。たぶん僕の知識が影響しているのだろう。


 全員集まったところでルト号に乗り込み、シャトー号を送還する。後は自動操縦で南方都市の港まで一直線だ。


「カミーユさん、色々とお願いしてしまいましたが、南方都市でのお仕事は大丈夫ですか?」


 航海の間、カミーユさんは忙しく動き回っていた。邪魔しないようにしていたが、なんか三羽のサポラビを筆頭に、更に何羽かのサポラビを付き従え文官軍団の様相を呈していた。


 もはや僕のサポートシステムというよりもカミーユさんの部下といった感じで、なんかそのメンバーにお願いすることができなかったくらいだ。


「バッチリです。南方都市で提出する定期航路の書類、プレゼン資料だけではなく、カリャリで提出する各種書類と、キャッスル号でのサポラビちゃん達の活用方法まですべて終わらせています。物資をかき集めるリストも、値段交渉に関する資料も万全ですので安心してください」


 カミーユさんがとてもイキイキとしている。優秀なサポートに支えられ、仕事が充実している人間の表情だ。


 というか仕事を終わらせるペースが速い。船内ではどうしようもない面会系の仕事以外は全部終わらせているようだ。


「では、南方都市での滞在期間はどの程度になりますか?」


「そうですね、ギルド関連はすぐに終わると思うのですが、今回は南方伯様にも報告しなければならないので、その面会がいつになるか次第ですね」


 ああ、お貴族様に会うには時間が必要だよね。


「ですが、国の利益になる話ですから、それほど時間は掛からないと思います」


 儲け話には敏感ということですね。


「じゃあ南東の島の依頼は受けない方が良いですよね?」


 あの島でのキャンプは楽しかったのだが、さすがにキャンプを優先してカミーユさんを待たせる訳にはいかない。


「南方都市は私の地元ですので、用事が終わってワタルさんが居なくてもやることはありますので、別に構いませんよ?」


 あ、構わないんだ。


 それならお言葉に甘えてキャンプをしながらのんびりするか。少しくらいサポラビと離れて生活しないと完全に堕落しそうで怖いもんな。


 今の豪華客船は毎日が上げ善据え膳で、信じられないほどぬるま湯に浸かった生活をしている。


「では、一度依頼を受けてみますね、カミーユさんも時間が空いたらのんびりしていてください」


 地元の友達と会う時間くらいは取れるだろう。たぶん、僕達が待機していたらカミーユさんは僕達を優先するだろうし、しっかり出かけた方がお互いの為だと思う。


 ああ、ガラの悪い鍛冶師にはお土産にお酒くらい持って行ってやるか。魔貝の包丁とか買っちゃったし、少し罪悪感があるからな。


「そうですね、時間があったら友人のところにでも顔を出してみます」


 ニコリと微笑むカミーユさん。


 今回の航海でカミーユさんとはだいぶ親しくなれた気がするな。これまでも敬意をもって接してくれていたのだけど、最近は敬意の中に親しみを感じることが増えた気がする。


 まあ、僕よりもサポラビの方がもっと仲良くなっちゃったんだけどね。 


 ふむ、サポラビの頑張りで少し人気をもっていかれているけど、今回の機会はチャンスかもしれない。


 前回のキャンプでのホットサンドとウッドプランクグリルは大好評だったし、今回のキャンプでもいい感じのキャンプ飯を用意できれば僕の好感度が上がり、やっぱりサポラビよりもワタルだよね! なんてことになる可能性も僅かながらにあるはずだ。


 OK、目標は決まった。今回のキャンプで、がっちり女性陣のハートをキャッチして見せよう。キャンプ雑誌、読んでいない奴が確かまだゴムボートに収納してあったよね?


 隙を見て熟読しておこう。

読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
予想想像通りの展開からサポラビに迎合する航という斜め上のお話 渡りに船と長いものに巻かれまくる航に好感度微増w
素直にサポラビの協力のもと攻略していくのが一番丸い気がする…サポラビいればワタルいらなくない?とはスキルの関係上ならないだろうし
有能なサポラビたちによる上げ膳据え膳ですかー良いですねぇ そしてここでキャンプか 南方都市だし槍のパリスさんとかが絡んできたりして まさかね
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