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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十三章
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12話 カミーユさんとサポラビ達

 温泉を発見し、その地の観光地化を目論んだのだが、それが慈善事業の範囲に含まれるのか疑問だったので商売の神様に確認しに行った。少し悩んだ商売の神様だったが、無事にOKを頂き一安心……だったのだが、上げて落とすの基本通りに少し面倒な事もお願いされてしまう。まあ、無理難題というほどのことでもないので頑張ろうと思う。




 カミーユさんの話し合いは想定通り三日の期限当日に使者が現れ、こちらの要求を呑む形で落ち着いた。完全勝利だ。


 まあ、こちらの弱い部分を想定して交渉していたら、面倒だしとりあえず他で先に実施しますと卓袱台をひっくり返されたのだからしょうがないだろう。


 交渉相手からすると反則だと言いたくなるだろうが……僕は交渉の専門家ではないので駆け引きなどは無理なのです。


 元々、アクアマリン王国が交渉を受け入れる想定で動いていたので、それに対する準備も終わらせており、残り二日で国との交渉だけではなく温泉の調査依頼まで済ませてしまった。


 仕事ができる人は本当に行動が早い。


 これで次にアクアマリン王国に来る頃にはウィリアムさんが温泉地の観光地化計画を立ててくれているだろう。


 そういう訳で、僕達はアクアマリン王国から出港し帰路につくことになった。


「ワタルさん、どういうことですか! あきらかにサポラビちゃん達の様子が違います!」


 ルト号からシャトー号に乗り換え、少し歩いただけで予想通りカミーユさんがサポラビの変化に気が付いた。


 まあ、帰ってきた僕達にサポラビが一礼したり、お帰りと右手を上げて挨拶してきたりしていたから、よっぽど鈍い人以外は気が付くよね。


 そして当然マリーナさん達もサポラビの変化に気が付き、その変化に注目している。


「くっ、ふうちゃんがこの世で一番可愛いことに間違いはないけど、サポラビ達の可愛らしさも侮れない」


 マリーナさんは間違えている。この世で一番可愛らしいのはリムだ。次がペント。


「うん、可愛い」


 カーラさんは単純な褒め言葉だが、サポラビが美味しい料理を作ると知ったらもっと好感度が上昇するだろうな。


「そうですね、これまでのサポラビちゃんも可愛らしかったですが、今のサポラビちゃん達はイキイキしていて魅力が増しています」


 そしてクラレッタさんはサポラビと一緒に料理をしたがるはずだ。あれ? サポラビマジで女性陣の注目集めまくるのでは?


 内心で危機感を覚えていると、今のサポラビ初対面組の視線が僕に集中する。説明しろってことですね。


「実はサポラビの機能が進化しまして、こちらで許可を出せば意識が解放され、飲食なども可能になりました。サポラビごとに性格も違いますし結構面白いですよね」


 いきなり部屋にプレゼンに来るサポラビや、先程の挨拶でもしっかり頭を下げるサポラビ、軽く手を上げて挨拶をするサポラビのように個性が出てきている。


 魂というのはそれなりに性格に影響が出るようだ。


「性格の違いに飲食まで! これは凄いことになりますよ。サポラビちゃんと食事がしたいというリクエストはかなりの数なんです」


 サポラビ、大人気だな。まあ、僕みたいに特殊な事情がないのであれば、ファンシーでモフモフで二足歩行のウサギに魅かれる人も多いだろう。


「ん?」


 サポラビの人気に納得していると、三羽のサポラビがこちらにポテポテと歩いてきた。手に持つのは書類の束。僕のところにプレゼンに来たサポラビ達だな。さっそくカミーユさんに接触を試みるつもりらしい。


「サポラビ、カミーユさんに交渉を申し込みたいのだと思うけど、僕も話があるから後でお願いできないかな?」


「プー」


 僕の言葉に中央のサポラビが頷き、一枚の書類を手渡してきた。


 ア、アポイントメントの書類だと……。


 手に持つ書類束はすぐにプレゼンが始められた時の準備で、すぐにプレゼンが始まらない場合も想定してアポイントメントを取るための書類を準備してきたというのか、サポラビ、恐ろしい子。


「ワタルさん?」


 自分の名前が出たからか、どうかしたのかとカミーユさんが話しかけてくる。


「このサポラビ達は交渉や計画を立てるのが得意なようで、自分達の活用方法を売り込んでくるのですよ。僕の方は納得したのですが、キャッスル号に関してはカミーユさんにお任せしているので、交渉は自分達でするようにと伝えていたんです。その為にカミーユさんに面会予約を取りにきたようですね」


「興味深いですね。是非お話を聞かせていただきたいです」


「あ、ちょっと待ってください。僕の方も少し話があるんです」


「ああ、先程そのようなことをおっしゃっていましたね。失礼しました。ワタルさんの要件はどの程度時間がかかりそうですか?」


「僕の要件は話すだけなのでそれほど時間は掛からないと思います」


 その要件を満たすための手配には時間がかかりそうだけど、それは南方都市やカリャリでの作業だから、事前に話をしてカミーユさんが手順を考えてくれれば十分だ。


 アクアマリン王国でも物資を集めるべきかと考えたのだが、今のアクアマリン王国って地味に物資不足だから止めておくことにしたんだよね。


 まあ、獣人が数えきれないほど集まってきているから、島国であるアクアマリン王国の物資が枯渇するのも無理はない。


 資金が潤沢だからと大量の商人が商売に集まっていなければ、詰んでいたレベルだった。


 一国の物資に影響を与えるとか、僕も大それたことをしているよね。


 ……ん? あれ? それなら別にサポラビの前に話す必要はなかった気が……いや、たぶん後回しにすると、カミーユさんがプレゼンサポラビと意気投合して、僕の話がし辛くなる気がする。


「そうですか、ではワタルさんのお話はそこのカフェで構いませんか? それが終わってからサポラビちゃん達のお話を聞かせていただきますね。一応、これも書いておきましょうか」


 カミーユさんが胸ポケットからボールペンを取り出し、面会予約表に記入してサポラビ達に渡す。


「プー」


 それをサポラビが受取、満足気に頷く。いや、目の前にいるんだから直接言えばいいじゃんっていうのは無粋なんだろうな。


 ひとしきり様式美を熟し、サポラビ達と別れてカフェに向かう。


 ちなみにマリーナさん達は意識を解放したサポラビ達に興味津々で、僕達にはついてこずに船内の探索に出かけて行った。


 少し寂しいが、とりあえず僕の要件を説明してしまおう。



「……なるほど、南の大陸で大規模な戦乱が起こり、その戦乱は落ち着いたものの物資不足が深刻で、ワタルさんはそのフォローをしたいということですね? そして、どこでそんな情報をというのは聞かない方が良いのですよね?」


 その察しの良さがありがたい。間違いなく神様関連だと気が付いているのだろうな。


「はい、その方がありがたいです」


「分かりました。それで、どの程度の品目と量の物資を運ぶつもりなのですか?」


 どの程度の品目と量か。


 往復するだけで時間がかかるし、集められるだけ集めたいところだな。


 全部が全部僕が解決するのではなく、あくまでも手助けなのだが……大陸全体が荒れているとなると中途半端な量では焼け石に水ということになるだろう。


「量はできる限り多く、船召喚であれば大量に長期保存できますから問題ありません。品目は……戦争で荒れた国に必要な物って分かりますか?」


 大量に物資が集まり過ぎたら、船を買い足しても構わないから量は問題ない。


「そうですね、衣食住の住ですが家は流石に用意できませんので、住居を失った方が多いのなら休める場所、テントや寝具などは用意した方が良いでしょう。衣と食は当然準備していくべきですね。それに加えて医薬品も用意しておいた方が良いでしょう。あとは……精神を癒すために娯楽になる物、例えばお菓子やお酒なども喜ばれるかもしれません。他にも……」


 カミーユさんの言葉が止まらない。でも、なんとなく必要そうなものを列挙しているのは分かる。


「……費用は僕が出しますので、カミーユさんが必要と思うものをできる限り集めてください。それに加えて、商売になる商品もお願いします。大量購入ということで少しでも安くできたらありがたいです」


 今回は慈善事業ではあるが、商人の救済が商売の神様のお望みだ。慈善事業として無償提供する物と、商人の復興の手助けとなる商品も持っていきたい。


 利益の追求はする予定がないので、商売に使う品に関してできるだけ原価に近い金額で提供できるようにしたい。


「あと、豪華客船やフェリーの飲食物を提供するのは流石に不味いですよね?」


「そうですね、難民が王侯貴族よりも上質な食生活に慣れたら問題にしかなりません」


 だよね、それは僕にも理解できる。難民の方が美味い食事や美味いお酒にありつけるなら、確実に働く気力が薄れる。


 獣人の町への差し入れやお祭りの為に、この世界のお酒や食事を確保しておこうと思っていたのだが、そちらは後回しになりそうだ。


「そうなると南方都市やカリャリだけでは集めきれません。他国の商業ギルドにもお願いして大規模に物資を集めるということで構いませんか?」


「それでお願いします」


 一国で物資を集めすぎて、その国に迷惑を掛けるようなことになったら本末転倒だからね。


「分かりました。商業ギルドに要請できるように書類を準備しておきます」


「よろしくお願いします」


 カミーユさんに頭を下げて、席を立つ。入れ替わりにサポラビ達がカミーユさんのところに向かったので、これからプレゼンが始まるのだろう。


 ……見学しようかとも思ったが、止めておこう。なんか難しい話になる気がする。


 とりあえず部屋に戻って一息つこうと歩いていると、ヒョコヒョコとあるく一羽のサポラビとすれ違う。


「ご、ご主人様、今のサポラビの顔見た? あいつ、絶対に私をバカにしたわよね?」


 いきなりイネスが不満の声を上げる。


「いや、感情が解放されたとはいえ、すれ違っただけで表情までは分からないよ。というか、サポラビは無意味に人を馬鹿にしないはずだよ」


 たとえ感情が解放されたとして、そこまで自由ではないはずだ。


 ……あ、あの服、カジノのディーラー服だな。


 この前のイネスとの賭けは僕の圧勝だったから、イネスはサポラビに被害妄想のような感情を抱いているのかもしれない。


 イネス、もう賭けから手を引いた方がいいと思うよ? 割とマジで。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
カミーユさんが神様系の秘密に気づいてると思い込んだのは他の娘たちが気づいたから賢いカミーユさんならすぐ気づくと判断したのかな? なんぼなんでも神様と日常的に連絡を取ったり商売や交渉依頼を受けてるとは…
>性格の違いに飲食まで! これは凄いことになりますよ。 凄いことになったエピソードが早く読みたい…
>サポラビ、大人気だな。まあ、僕みたいに特殊な事情がないのであれば まぁ中の人(兎)ワタルがぬっころした角ウサギだしなぁ いくら恨んでいないといわれても気まずいよね そういえばカミーユさんに側付きのサ…
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