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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十三章
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11話 あ、報酬……

 洞窟の温泉から獣人の村に戻り、ウィリアムさんとカミーユさんに顛末を報告すると、色々と話が進み始めた。普通のといっていいか分からないが、海水が混ざっていない温泉はアクアマリン王国では貴重だったらしい。そんなこんなで慈善事業から足をはみ出しそうなので事前に商売の神様に確認を取ることにした。





「それで、慈善事業の範囲なのですが、それがどこまでやると慈善事業の範囲から逸脱することになるのか悩んでいるのが現状です」


「ふむ、獣人の為に町を造る、あとはその周辺に溜池、水路、畑、村を造ろうとしていることは知っている。つまり、それ以上の何かに手を付けようと考え、それが慈善事業の範囲内に収まるかが知りたいのだな?」


 そこまで把握されているのか。それなら温泉についても直ぐに知られることになっただろう。事前に相談に来てよかったかも。


「はい。ゴブリンの集落を潰しに出かけたところ、未知の洞窟を発見しました。そこには沢山のキノコと温泉があり、それを僕達が開発している一帯の名物にできないかと考えています」


「なるほど、その事業が慈善事業から逸脱すると航は考えているのだな?」


「微妙なところだと考えています。獣人の町をこれからも維持していくための行いですからまるっきり趣旨から外れている訳でもありませんが、観光業としてそれなりの収益も期待できる事業ですので、慈善事業と言えるのかも疑問と考えて相談に参りました」


 観光地を作るって慈善事業とは考え辛いよね。


「なるほど、確かに悩ましいところだな。普通の状況であればただの商業活動だが、獣人の今後の生活の為となると慈善事業と言えなくもない」


 商売の神様でも微妙なところなのか。


 それなら相談に来たのは大正解だったな。相談せずに勝手に温泉街を造っていたら、判断の天秤が否に傾く可能性が大きかったはずだ。


 誰しも自分の判断が関わっていない案件は、見る目が冷静で基準が厳しくなるものだものね。


 まあ、神様であれば判断は厳格な基準で行われると信じたくもあるが……創造神様があんなだし、そんな創造神様に生み出された神様ということで、最後の最後まで信じ抜くことは難しい。


 三女神の皆様を筆頭に女神様方になら、騙されることもいとわず信じ抜くけどね。


「はい、ただ、今も獣人の村に避難してくる獣人の数は増え続けています。その者達の生活が守れないのであれば、今までの行いが慈善事業などではなく、獣人を苦しめるための方策になってしまいます」


 お金をかけて派手に獣人を集め、その獣人達が酷い目に遭う。そんなことになったら、後の世で僕は獣人の天敵とか獣人差別の第一人者とか認識されかねない。地球でも隔離政策みたいなことがあったし、その実行者だと思われるのは流石に辛い。 


「つまり、その温泉周りでの開発を経済活動ではなく慈善事業であるとの保証が欲しいのだな?」


「はい、どの程度までやっていいのか不安でしょうがないのです」


 いつの間にか梯子を外されるのは勘弁してほしい。高く昇って降りられないのは子猫だけで十分だ。いや、降りられない子猫が可哀想なんだけども、あの救出劇、見ていたらすごくホッコリするんだよね。


 優しい人が助けに来たのに、怯えて警戒する子猫との息が詰まりそうな攻防戦。手に汗握る。


「ふむ……確かにかなり規模が大きくなっておるが……よかろう、温泉の開発は慈善事業と認める。だが、あくまでも基盤が整うまでだ。いずれは獣人達が自立し、自らの手で商業活動を行えるようにせよ」


 お、無茶振りもなく比較的穏当な判断をしてくれた。相談相手が創造神様だったら絶対に無理難題を押し付けられたけど、商売の神様はやはりそれなりに真っ当な神様のようだ。


 親が無茶苦茶だからって子供まで無茶苦茶だとは限らないってことだね。


「商売の神様、ありがとうございます。獣人達が自立して生活できることを目指し力を尽くします」


 というか、いつまでも責任ある立場でいるのはごめんなので、できる限り早く独立させたいと思っている。


 これで憂いもなくアクアマリン王国を去ることができるな。


「うむ、それでなのだが、一つ航に頼みがある」


「へ? あ、いえ、お聞かせください」


 話が終わったと思ったら、商売の神様からの頼み事? 嫌な予感しかしないんですけど?


「航が胡椒を手に入れた南の大陸なのだが、戦火が大陸全土に広がり、なかなか酷いことになった」


 そういえば僕が胡椒貿易をしていた時、王家の後継者争いがなんたらかんたらって不穏な空気が流れていたな。


 しばらく南の大陸に近寄らないようにしようって考えていたけど、後継者争いが発展して、国どころか大陸をも巻き込む騒動になっちゃったのか。


 まさか……。


「あの、商売の神様、さすがに慈善事業といっても戦争をどうにかするなんて無理ですよ? あと、神様は下界に関わってはいけないのでは?」


 ただでさえ獣人の町の件で慈善事業費の追加がほぼ決まっているんだ。そこに大陸の争いなんて抱えられるはずもない。


 畜生、なんかすんなり温泉のことが認められたと思ったら、こういうことだったのか。戦争に関わるなんてこりごりだ。たとえ温泉が駄目になったとして絶対にお断りだ。


「心配するな。戦争の方はすでに決着がついた。それに私が関わる訳ではない。あくまでも頼みであって、どうするのかは航次第だ」


 あ、戦争は終わったんだ。大陸中を巻き込んだ争いとか言うから、何年も、下手をしたら日本の戦国時代のように何十年、何百年単位の争いを想像しちゃったよ。


 あと、どうするのかは僕次第って言うけど、神様の頼みなんて命令と同じだと思う。


 どうせこれも抜け穴を突いた方法なんでしょ? 創造神様が選挙カー並みのボリュームで僕を呼び出したみたいに。


 商売の神様は真っ当だと感心したけど、勘違いだったな。蛙の子は蛙、創造神様から生み出された商売の神様も所詮は創造神様の系譜でしかなかった訳だ。


 神様の中で真っ当なのは女神様方だけだな。みんな優しいし、美女の無理難題はご褒美みたいなものだ。それに、頑張ったらちゃんとお礼もしてくれるし……。


「戦争が終わったということは、僕に復興を手伝えということですか?」


 戦争に参加するよりかはマシだけど、それでもここに来る前に遠目にだがトントラード伯爵に襲われた港をいくつも見てきた。


 それだけでも嫌な気分になったのに、ガチの戦争の復興とか無理難題としか思えない。


「まさか、人が起こした戦争なのだ、後始末をするのも人の役目であろう。まあ、復興と無関係とは言えぬがな」


 およ? 依頼は復興そのものではない?


「では何を?」


「南の大陸は荒れ、物資もかなり不足している。それは自業自得でしかないのだが、一度商売網が滅ぶと復活には莫大な時間と手間がかかる」


 ……なるほど、少し読めてきた。


 全部人間の自業自得なんだけど、自分が司る商売までズタズタになったから、そのフォローをお願いということだろう。


 もしかしたら商売網とやらが滅んだら、商売の神様のお仕事が増えるのかもしれないな。


「つまり物資不足を補う。簡単に言えば貿易をすれば良いと?」


「うむ。商売の種があれば商人は潰れん」


 どうやら僕の予想は正解だったようだ。


 正直面倒だと思わなくもないが、貿易するだけで神様のお願いを叶えられるなら安いものだよな。


 物資を集めるのはカミーユさんに……さすがにカミーユさんに仕事を押し付けすぎか。


 でも、物資を集めるのもその物資を捌くのも商人の協力は欲しい。


 カミーユさんにはキャッスル号に集中してもらって、ドナテッラさんかマウロさんあたりに協力をお願いしてみるか。


 お爺さんよりも美女が一緒の方が嬉しいし、まずはドナテッラさんを誘おう。


「そういうことでしたら、お受けしようかと思います。ただ、こちらでやらなければならないことがありますので、南の大陸に到着するのは数ヶ月後ということになりますが、間に合いますか?」


 カミーユさんをキャッスル号に送らないといけないし、その間にも南方都市やカリャリで打ち合わせの必要があるだろう。


 南の大陸に行くのであれば、その前にダークエルフの島にも顔を出したい。


「構わん。今は勝者が決まり復興に動き出した段階だ。商人が落ち着いて商売ができるまで時間がかかるだろう」


 商売の神様だから当たり前だけど、本当に商売のことが第一優先なんだな。


 まあ、神様からすれば戦争を起こしたのは自分達なんだから、そこまで面倒をみる義理はないということだろう。シビアだけど、同意する部分はある。


 あるのだが……苦しんでいる人が居て、それを緩和できる手段を持っているとなると、自己犠牲をするつもりはないがそれなりに頑張ってみようかと思いもする。


 ……はぁ、カミーユさんに相談するか。フェリシアには悪いけど、ダークエルフの島も後回しにすることにしよう。


「……分かりました。物資を南の大陸に運ぶことにします」


「助かる」


 商売の神様のそんなシンプルな言葉と共に、商売の神様との繋がりが切れる。


 あれ? まだお手伝いをする報酬なんかの交渉をしていないのだけど?


 もしかしてそれが嫌だったから、サックリ話を終わらせた?


 …………まあ、商売の神様への願い事なんて簡単には思いつかないし、航海の間にじっくり考えて、報告の時に何かしら要求をすることにしよう。


 教会を出ると一羽のサポラビが僕を見ていた。


「プー」


 サポラビがこっちに来いと手招きをする。ふむ、とりあえず行ってみるか。僕がサポラビに近づくと、それを見たサポラビが僕を先導するように歩きはじめる。


「……もしかしてイネスかフェリシア達のところまで案内してくれるの?」


「プー」


 コクリと頷くサポラビ。


 意識を解放するとこんな自発的なサービスまでしてくれるようになるのか。これはこれで便利だな。


「ありがとう」


 フェリシア達のところに到着し、案内してくれたサポラビにお礼を言って別れる。


 フェリシアはキッズルームでリムとペントと遊んでくれていたようだ。まあ、メンバーの中にサポラビも混じっていて、フェリシアもニコニコなのでどちらが遊んであげているのか分からないけど……さて、イネスの調子はどうかな?


読んでいただきありがとうございます。

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