表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十三章
535/568

9話 程よい結果

 なんやかんやあってゴブリンの小規模集落を潰しに出発する。過剰戦力ゆえにゴブリンの討伐はなんの盛り上がりもなくあっさり終わった。だが、ゴブリンの集落の近くに未知の洞窟というか亀裂を発見しており、僕達は本命のその洞窟の探索にのりだした。




「キノコか……これって獣人の町の発展に役立ちますかね?」


 キノコは美味しくヘルシーだが、肉体労働が中心の獣人達には物足りない気がする。


「キノコは美味しいですよ? みたところ食用のキノコもいくつかありますから、役に立たないということはないと思います。イルマが居れば、他にも役に立ちそうなキノコを発見できたかもしれませんが、それは専門家に任せましょう」


 クラレッタさんがキョトンとした顔で教えてくれる。


 美味しいか……なるほど、それは大切だ。


 考えてみれば出汁として利用できるし、人魚の国との貿易にも使えるかも。乾燥キノコで陸地の味を! みたいなコンセプトなら商売になりそうな気がする。


 カミーユさん、増々忙しくなっちゃうな。


 とりあえず、この洞窟の発見が無駄にならないのが確定したのはありがたい。


「とりあえずキノコは置いておいて先に進む」


 なんか色々なキノコがあるなーと眺めていると、マリーナさんに先を促された。そうだね、専門家でもないのにここでキノコを眺めていても仕方がない。


 大人しく指示に従おう。


 マリーナさんの指示に従い先に進むが随分と深い。


 湿度がかなり高いし、先に地底湖くらいありそうだが、これだけ深いと日常に利用するのは難しそうだ。


 水不足解消の夢がついえた。


 まあ、洒落にならない水不足で飲み物にすら事欠くような状態になったら役に立つかもね。地底湖があればだけど。




「これ、どう思います?」


「……微妙」


「多すぎて微妙」


「微妙ですね」


「ご主人様、微妙よ」


「そうですね、役に立たないことはないと思いますが、微妙です」


 僕の質問に全員が微妙と答える。


 そう、微妙だ。


 マリーナさんの先導で奥に奥にと進み、ぽかりと広い空間に出た。


 だいたい普通の体育館程度の大きさのそこには、巨大な地底湖が存在していた訳でもなく、ダンジョンがあった訳でもなく、古代の遺跡が眠っていた訳でもない。


 鉱石が露出しているなんてことも無論なく……あったのは……キノコ、キノコ、キノコ、キノコ、キノコ……。


 洞窟に入り最初からキノコに出迎えられ、そこから更に先に進み、途中にもいくつものキノコが群生していた。


 キノコが育ちやすい環境なのかもと納得していたが、まさかの追いキノコ。


 見ただけでそんなにキノコばかり食べられないよという気持ちにさせられるほどの大量のキノコ。僕達にどうしろと?


 キノコが育ちやすい環境のようだから、この近くにも村を作ってキノコ栽培くらいは考えるけど、冒険のお宝としては微妙過ぎるだろう。


 いや、キノコは美味しいんだけどね?


「ん? ワタル、奥にまだ何かある」


 微妙な気持ちでキノコを眺めていると、マリーナさんから希望が繋がる言葉が。


 そうだよね、ファンタジーな世界で、未知の洞窟を発見してキノコで終わりなんてありえないよね。


「どこですか?」


「ここを見て、ゴブリンがキノコを踏み荒らして道ができている。その先にまだ空間が広がっているようよ」


 この先までゴブリンが来ていたのか。ゴブリンに先を越されたと思うと微妙な感じだが、ゴブリンが危険度チェックをしてくれているようなものなので感謝しておくことにしよう。


「ではマリーナ、先導をお願いします」


 キノコに興味がないわけではないが、種類と数が多すぎるのでテンションが上がらない。


 ゴブリンが踏み荒らした道をたどり奥に進むと、奥に続く洞窟というか亀裂を発見した。


 今度こそお宝か古代遺跡か……ドキドキしてきた。



「あー……これはどう思います?」


 先程も同じような質問をした気がする。デジャブか?


 キノコの広場を抜け奥に進むと、それほど歩くことなく突き当りに到着した。到着したのだが……出迎えてくれた物は僕の予想にまったく掠ることがない物だった。


「私は好きだから嬉しい。毒じゃなければ……」


「……キノコの方が美味しい?」


「私もこっちの方が嬉しいですね。毒じゃなければ……あと、見た目はとても綺麗です」


「私もこちらの方が好きね。価値としてはどうなのか分からないけど、ご主人様もこっちの方が好きでしょ? 毒じゃなければ……」


「私も好きなのですが色が……これは大丈夫なのでしょうか? 毒ですか?」


 キノコの時よりかは反応が良いが、カーラさん以外全員が毒を疑っている。


 確かに僕もこちらの方が嬉しいが、冒険の果てに出会いたかったかというと微妙なんだよね。でも、確かにこれはこれで嬉しい。


「確認が必要だとは思いますが、おそらく毒は大丈夫だと思います。ゴブリンも入っていたみたいですしね」


 洞窟の奥に会ったのは、なんと温泉。


 光球に照らされて光るその温泉の色は、なんとも美しいコバルトブルー。


 日本の温泉には透明、白、黒、青、赤、茶、様々な色があった。青は確か九州の方の温泉に偶にある色だったはず。


 そういえばダークエルフの島のゴブリンも僕が作った温泉に入っていたことがあったな。


 もしかしてゴブリンは温泉好きなのかも。


 ただ、ゴブリンの温泉マナーは最悪だ。生でキノコを食い散らかしていたのか、お湯にキノコの欠片が浮いていたり、お湯以外の場所にも食べかけのキノコが放置されたりしている。


「……とりあえず、入る前に掃除をしますか」


 せっかくなら綺麗なお湯に入りたい。


 幸い、岩場に温泉が湧きだしていたので、洗っても泥が巻き上がることもないだろうし、温度も適温より少し熱め程度なので調整も簡単そうだ。


「え? 入るの?」


 イネスが信じられないといった顔で僕を見ている。


「最初は足湯で試す程度だけどね。僕が住んでいた世界には青色の温泉も存在していたんだ。たしか美肌効果があるって言われていたかな?」


 美肌という言葉に女性陣が色めきだった。


 ちょっと意外だったのは、食べ物最優先のカーラさんも興味津々なこと。美容にも少しは興味があったらしい。


 女性陣が一気に掃除を始める。


 最初は足湯からって言ったのだけど、理解してくれているのかが不安だ。まあ、クラレッタさんが居るし、最悪の場合でも治療してくれるだろう。


 それに、先にゴブリンが体を張って実験してくれているので洒落にならない危険はないはずだ。


 女性陣がゴミを拾い、僕は温泉が流れ込んでいる場所にゴムボートを設置してお湯の確保をしながら温泉の掃除を始める。


 まずはお湯を汲み出して湯船を空にして、そこから掃除だな。船の掃除用具で岩を磨こう。


 ……その前に水着に着替えるか。


 このままだと絶対に濡れる。




 ***




 光球以外に光がない暗い洞窟の中、不思議な光景が僕の目に映っている。


 湯船以外の掃除が終わり、女性陣も湯船の掃除に加わる。


 そこで濡れるから当然水着に着替えることになり、洞窟で水着姿の美女達がデッキブラシで岩を擦るという不思議な光景が生まれることになる。


 なんか凄い背徳感でドキドキする。


 あと、リムとペントもお手伝いをすると言っていたのだが、二人はお湯に直接浸かることになりそうだから遠慮してもらっている。


 女性陣はお湯に触れた部分を浄化したり、わざと浄化しない部分を残して患部を観察したりと準備に余念がないので大丈夫だと思われる。あと、水着姿がとても素敵だ。


 念入りに天然の岩風呂を磨いた後、丁寧に浄化をしてから改めてお湯を溜める。


 ゴブリンが利用していた温泉だからか、女性陣が神経質なくらい浄化をしていた。気持ちはとてもよく分かる。


「それでクラレッタ、お湯はどうなの? 危険はない?」


 マリーナさんがクラレッタさんに質問をすると、クラレッタさんが手首の部分を丹念に確認する。


「赤くもなっていませんし、痒みなどの刺激もありません。それにわずかに肌がしっとりとして潤いが増した気がします」


 おお、良い感じの泉質なようだ。


「じゃあさっそく入る?」


 マリーナさんが珍しく待ちきれないのか、既に腰を浮かしている。頭の上のふうちゃんを落とさないようにしてほしい。


「さすがに全身で浸かるのはもう少し調べてからにしましょう。まずはワタルが言ったように足湯を試してみましょう」


 クラレッタさんは慎重だな。


 いや、多少パッチテスト的なことをしたとはいえ、いきなり足を突っ込もうというのだからある意味無謀でもあるな。


「ではとりあえず僕が足を入れてみます」


 少しは男らしいところを見せるために、実験体に名乗り出る。


「いや、ワタルは護衛対象なのだから先陣を切ったら駄目でしょう」


 凄く冷静に切り返された。


 とりあえずマリーナさんが先陣を切ることに決まり、しばらく様子を見ることになる。




 ***




「あー。これは最高ですね。ダークエルフの島の温泉も良いのですが、こちらは少しお湯にとろみがあって肌にまとわりつくような気持ちです」


 マリーナさんの足も問題なかったということで、結局我慢しきれずに全員でお湯に入ることに。


 天然の岩風呂で、湯船のサイズもそれなりなのだが、六人で入ると少し狭いくらいだ。ただ、肌が密着するほど狭い訳でもなく、どうせならもう少し広いか狭いかにしてほしかった。


 なんて思っていたが、この温泉、かなり良い。


 少し熱めの温泉が体をしっかり包み込んでくれる感覚で、長く浸かるとのぼせそうだが体の芯まで温まりそうだ。まあ、ここは寒い地域ではなく、むしろ熱帯地域なんだけどね。


 雪深い地域だったら、この温泉はものすごい価値を生んだだろうに……。


「ご主人様、それって気持ちよさそうに聞こえないわよ?」


「そう? じゃあ、イネスが上手に表現してあげて」


 日本には温泉ソムリエなんて人もいるらしいが、僕にその能力はないようだ。でも、気持ち良ければ問題ないよね。


「そんなの気持ちいいで十分じゃない。それよりご主人様、さすがにここでお酒は無理だけど、キンキンに冷えた飲み物が欲しいわ」


 ああ、お湯がかなり熱いから、冷たい飲み物は最高だろうね。僕はもう少し我慢して、最後にフェリーのコーヒー牛乳を喉に流し込むことにしよう。  


 古代遺跡とかダンジョンとか鉱石だとか、色々と想像したが結果は尻すぼみのキノコと温泉。


 少し残念だけど、ここに村を作ればキノコと温泉が名物な観光地になるかもしれない。


 観光地が何もない場所に観光地の種を発見したのだから、派手さはないが割といい感じのお宝を発見できたのかもしれない。


 あんまり派手なお宝だと、国とか介入してきそうだしね。


 ん? そういえば美容に拘りを持つ商業ギルドのマスターが居たような……。



読んでいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
水着美女はラッキー 商業ギルドマスター…あっ(察し)
キノコ風呂にしたら出汁が出るだけなきが
湿気がすごそうだなー換気できるんかね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ