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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十三章
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8話 夢が膨らむ

 カミーユさんの言葉に従いウィリアムさんに会いに行くと、視察のはずなのに小規模なゴブリンの集落を潰すことになった。しかも話を聞いたその日のうちに急遽出発することになった。夜の獣人の村は静かで、そこでお祭りの話を聞き色々と考えることになる。




 獣人の村を出て目的の村までレンジャー号で向かう。アッド号やパル号で分乗する方が小回りが利いてよいかと思ったが、誰かが爆走する可能性に思い至り無難なレンジャー号に決定した。


 暗い中で慎重に運転したが、一時間も掛からずに到着した。


 一瞬、魔物の集落が発生する森が村から近い気がしたが、魔物は基本徒歩なので問題ないだろう。慎重に進んだとはいえ、歩く数倍の速度で進んできたんだから十分に離れている。


「ワタル、ここで停めて待機していて」


 マリーナさんが森の少し手前で停車し、待機を指示してきた。森のかなり奥に集落があるはずだから、みんなで奥に進んだ方が安心な気がするんだけど……。


「ここで良いんですか?」 


「ええ、すぐに戻ってくるからちょっと待っていて」


 マリーナさんがそう言って車を降りると、音もたてずに走り去っていった。


 走っているとは信じられないほどの速度で姿が消えていったが、なにより凄いのはほとんど走る音が聞こえなかったことだと思う。


 デコボコしていて草もまばら、そんな悪路であのスピードで走れるのは脅威だ。マリーナさんなら、漫画の世界の忍者にだってなれるかもしれない。


 いや、マリーナさんは女性だからクノイチか。


 ……凄くいいかも。


「ご主人様、しばらく待機のようですし、何か飲み物を用意しましょうか?」 


 クノイチなマリーナさんといういけない妄想に没頭しようとする寸前に、フェリシアが声をかけてくれた。


 本人はそんなつもりはなかっただろうが、ナイスタイミングだ。下手をしたらニヤニヤしながらグヘへとか言いだすところだったよ。


「うん、ありがとう、僕はコーヒーをお願い。リムとペントは……オレンジジュースでいいよね。今、ゴムボートを召喚するね」


 フェリシアの言葉に甘えて用意をお願いする。レンジャー号の欠点は室内にゴムボートを召喚できないことだ。


 まあ、ほとんどの車は車内に完成状態のゴムボートを入れたりしないけどね。


「私は黒いシュワシュワとハンバーガーがいい」


 カーラさんは安定の間食付きか、もはや違和感すらないな。おっと、ハンバーガーが入ったゴムボートも召喚しておかないとな。


「お手伝いしますね」


 クラレッタさんはフェリシアのお手伝いを申し出る。


「うーん、さすがにお酒は駄目よね。じゃあ、私もコーヒーで良いわ。お砂糖は二杯ね」


 最後の要求はイネス。


 奴隷とは思えない言葉なのだが、それをイネスらしいと思っている僕が駄目なのだろう。


 そんなこんなでのんびり待機していると、マリーナさんが戻ってきた。


 フェリシアがリクエストを聞いて飲み物を用意して、一息ついてから偵察の報告を受ける。


「マリーナさん、偵察お疲れ様です。それで、結果の方はどうでした?」


「ゴブリンの方は問題ない。キングも居ないしせいぜいがリーダークラスの規模。私達が囲んで叩けばすぐに終わる」


 良かったと言いたいところだが、ゴブリンの方はというところが簡単に終わらない匂いを感じる。


「ゴブリン以外にも何か問題が?」


「ゴブリンが近くの洞窟、地図には載っていないからおそらく未発見の洞窟で何かをしている痕跡がある。もしかしたら奥に何かがあるかもしれない」


 ゴブリンが未発見の洞窟で何かを?


 ガチでダンジョンとかあったりする? 未発見というのがとてもロマンを感じる。 


 ……なんかドキドキしてきた。このゴブリン退治が、獣人の国の将来に大きく関わってくるかもしれない。


「ゴブリンを退治したあとにその洞窟を探索することは可能ですか?」


「可能。外から探った程度だけど、中に怪しい気配は感じなかった」


 あれ? 怪しい気配がないということはダンジョンじゃないということ?


 うーん、ダンジョンがなければ鉱石とかかな? 獣人の町は沢山人員が居るから、そういう仕事が増えるのも悪くないかも。夢が広がる。


「そういうことでしたら、手早くゴブリンの討伐をしてしまいましょう」


「分かった。案内する」


 クイっとジュースを飲み干し立ち上がるマリーナさん。普段であればもう少し休憩して、なんていうところなのだが、未知の洞窟にワクワクして急がせてしまった。


 終わったら頑張ってもらったマリーナさん達に贅沢にのんびり過ごしてもらうことにしよう。




 森歩きを舐めていました。


 マリーナさんがちょっとコーヒーを飲んでおしゃべりしている間に戻ってきたから軽く考えていたが、森に慣れていない僕が足を引っ張りまくり、二時間近くかかってしまった。


 途中で僕だけでもアッド号に乗り込もうかと思ったが、エンジン音で森を騒がせては駄目なので結局自力で歩いた。


 そうだよね、ゴブリンと戦うくらいならなんて軽く考えていたが、目的地に到着することまで含めて討伐なんだよね。


 ぬるま湯につかってこの世界に来た当初以外はほとんど冒険していなかった欠点が表にでてしまった。


「アレが集落ですか?」


 集落というよりも家の残骸の集まりみたいな感じなんだけど……。


「上位の魔物が居るほど部下にも知能が高い魔物が増え、結果的に建物の質が上がるから建物の質によってもゴブリンの集落の脅威度が計れる。一応、家の形をした住居が立っているから、リーダークラス程度は居ると考えて間違いない」


 なるほど、そんな目安があったのか。そうなると、普通のゴブリンはまともな家が建てられないってことになるな。


 一瞬バカにしそうになったが、自分が真っ当な建物を建てられる自信がなかったのでバカにするのは止めておこう。


 ちゃんとした道具があれば可能だろうけど、ゴブリンの大工道具って石とか拾ったナイフとか剣を使っていそうだよね。


 そう考えるとあの残骸も、結構凄い気がしてくる。


「これからどうしますか?」


「カーラとワタルは集落の正面に待機、私は単独でリーダーから始末していく。途中であぶり出しの為に騒ぎを起こすから、それからイネスとクラレッタとフェリシアが囲むように攻めていけば殲滅できる。ワタルとカーラは正面に逃げてきたゴブリンの始末」


 ゴブリン相手なら特に難しいことではないようで、全員が頷いたので僕も頷いておく。


 今回は安全よりもゴブリンを逃がさないことに重点を置いた作戦な気がする。相手が強敵だったら、もっと慎重にことを進めるんだろうな。


「じゃあ、騒ぎが起きたら突入して」


 そういってマリーナさんが暗闇に消えていく。やっぱりマリーナさんはクノイチだよね。


「じゃあご主人様、行ってくるわ」


「ご主人様、行ってまいります。カーラ、ご主人様をお願いしますね」


「うん、大丈夫」


 イネスとフェリシアもクラレッタさんと共に左右に散っていく。


「ワタル、緊張しないで大丈夫。ゴブリンが来たら全部私がやつける」


「ありがとうございます」


 カーラさんが頼もしい言葉をかけてくれるが、今回はぼくもちょっと戦おうかな、なんて珍しいことを考えているから、余裕がありそうだったらカーラさんにゴブリンを回してもらおう。



 しばらく経つと集落でゴブリンの叫び声が聞こえた。


 そこから一気に騒がしくなり、至る所でゴブリンの悲鳴が聞こえだす。先程の声を合図に皆が突入したのだろう。


 お、数体の小さな影が、ゴブリンがこちらに逃げてきたのだろう。カーラさんが前に出て構える。まだ僕にゴブリンを回してというのは早いかな。


 ふぅ、ゴブリンと戦うのは西方都市近くの森以来だ。緊張してきた。


 ん? 頭上から光が……リム?


 こちらに走ってきたゴブリンが、光の槍に貫かれて悲鳴を上げることすらなく倒れ伏す。


「えーっと、リム?」


『……たおした、りむ、えらい?』


「……偉いよリム。リムは凄いな。ありがとう」


 言いたいことがないわけではないが、リムが可愛いのでオールオッケーだ。ペントまでシューシュー言いだしたので、撫でて宥める。ペントまで戦闘に参加しだしたら収拾がつかなくなる。


 とりあえず、今回の戦闘は諦めよう。僕は商人だしね。


 何度かゴブリンが逃げてくることはあったが、リムかカーラさんがあっさりと倒してしまう。


 少し時間が経ち、なんの盛り上がりもなく戦闘は終了した。


 そこら辺のAランク冒険者よりも圧倒的にレベルが上なメンバーなんだから、そりゃあ盛り上がる場面なんて出てこないよね。


 でも大丈夫、本題は未知の洞窟だから。


 最初はゴブリン討伐が本題だったが、未知の洞窟の話を聞いて僕の中では目的は変わっていた。


 サクッとゴブリンの住居とゴブリンの残骸を火事にならないようにイネスの炎で消滅させる。


 後始末は完了。さあ、行くぞ。


「マリーナ、洞窟まで案内をお願いします」


「ん、こっち」


 マリーナさんの案内でゴブリンの集落を抜けて更に奥に進む。


「……これって地面が割れて新たに空洞が露出した感じですか?」


 洞窟というよりも地面の空洞が崩れて姿を現したって感じだ。最近この亀裂ができたのなら、未発見なのも納得だな。


 地下の探索。さすがに地下帝国なんてことはないと思うが、ちょっと期待してしまうな。


「マリーナ、これは僕達が下りても大丈夫な感じですか?」


「うん。ガサツなゴブリンがかなり出入りしている様子だから、洞窟の脆い部分は既に壊れて安全になっている。でも、注意は必要。あと、魔物は居ない」


 ……ゴブリンのガサツさにそんなメリットがあるとは。ある意味洞窟のカナリヤよりも便利かも。心が痛まないところが特に良いよね。


 注意に関しては迂闊な行動をしないことと、ゴムボートとハイダウェイ号を直ぐに召喚できるように意識しておこう。


「じゃあ、中に入る」


 マリーナさんが先陣を切り、洞窟というか亀裂に入っていく。


 ゴブリン、本当にガサツに行動していたんだな。至る所に崩れた箇所があり、なんかゴブリンの足が飛び出ている場所もある。


 迂闊な行動をしなければ問題なさそうだとは思うが、普通に土から飛び出した足とか見ると怖くなってくる。


 ん? キノコ?


 ビビリながら少し奥に進むと、キノコが群生している場所に出た。キノコか……食べられるのならお宝なのかな? 思っていたのと随分違うけど……。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
そういえばあの謎ダンジョンどうなったんだろう
キノコ…果たしていいものか悪いものか…
相変らず先が読めない というか前回のふりだと村で騒動が起こるかと思ったらスルー するし 普通なら初期で済ますゴブリン討伐イベントを最初スルーして ここで持ってくるし… 良い意味で先が読めない …
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