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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十三章
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3話 働き方改革

謹賀新年


 サポラビに報酬兼賄賂を渡すために外海に出て、クリス号とシャトー号のサポラビ達に休暇と飲食の許可を与えた。許可を与えると、サポラビ達の目に光が灯り行動に感情が感じられるようになる。そうなると兎型のマスコットなサポラビの魅力度がアップ。可愛らしい仕草にフェリシアやイネスが……。あと、意識を持ったサポラビが自分達を売り込みに来た。




「うーん、カミーユさんは今忙しいし、獣人の村の目途がついて帰る時に紹介すればいい?」


 元々キャッスル号のサポラビについても、その時に相談するつもりだったからちょうどいいだろう。


「プー」


 コクリと頷くサポラビ。ご満足いただけたようだ。


 ……続きまして、といった感じで左側に座っていたサポラビが書類を並べだした。まだ終わらないらしい。


「プー」


 読めということですね。



「……うーん、これ、必要なのかな?」


 二羽目のサポラビが提案してきた内容は一羽目の提案と被ることも多い。


 店舗それぞれに専属を作って、ローテーションを組むとかその辺りはカミーユさんに相談すべき内容だ。


 仕事中の意識の解放についても同様だな。キャッスル号ではただでさえサポラビが大人気らしいのに、意識が解放されて更に生物っぽくなったらサポラビ愛好家が狂ってしまうかもしれない。


「プー」


 必要だと何度も力強く頷くサポラビ。


 しかも僕が躊躇っている部分をポフポフ叩きながら……やはりそこが本命なのか。


 一つは名前を付けて僕達の専属サポラビを配置するという話。これはもう却下するのは確定だ。


 今の状況でさえイネスも心を動かされ、フェリシアは完全に陥落している。


 アレシアさん達も似たような反応になるだろう。そんなところに専属サポラビなんて投入したら、僕が相手をしてもらえる時間が減る。


 心が狭いと言われようが、自分に自信が無さ過ぎだと言われようが構わない。僕はサポラビの愛らしさよりも女性の魅力の方が好きだ。あと、名前を付けるのがとても面倒臭い。


 船の名前を付けるだけで四苦八苦しているのに、一人二人ならともかく、サポラビの数は多すぎるくらいに多い。


 主要メンバーだけに名前を付ければとも思うが、僕の性格上、一人に付けたら他のサポラビにもつけないと申し訳ないという気持ちになってしまう。


 あと、名前の第一候補がピーターしか浮かばない。これは色々と問題が発生しそうなので絶対に却下だ。


 これはオーナー権限で絶対に却下する。


 そして、もう一つの提案、これが悩ましい。


 サポラビ達は飲食の許可や休暇、お給金を求めている訳ではない。ただ、色々な店舗で意識を解放した状態で働きたいという望み。


 キャッスル号はカミーユさんに相談するのが確定しているから、僕が使用している豪華客船での話になる。


 サポラビの資料によると、意識が解放されることでこれまでできなかった各店舗のサービスが充実し、船内が賑やかになることが書かれている。


 もう慣れたとはいえ少人数での豪華客船の生活は静かで、寂しさを感じないこともない。


 華やかな豪華客船のポテンシャルを発揮できるならば、アリではある。


 ……悩むまでもないな。


 苦手意識があることは確かだが、僕の性格上、意志を持っていると分かっているのにそれを制限して働かせるなんて、それこそ罪悪感で楽しい日常を送れなくなる。


「……分かった。休暇が終わってからお試しでやってみよう」


「プー!」


 サポラビ達のテンションが上がったのが分かった。全部の提案は受け入れられなかったが、大事なところは通したぜ! って感じかな?


 可愛らしいのは認めるから、フェリシアはその怪しい手の動きを止めて。


 サポラビに関わると、フェリシアの印象がちょっと崩れるな。


「さて、最後は君だね。どんな提案なのかな?」


 三羽の中でまだ資料を提出していないサポラビに目を向ける。紙束を持っているから、何か提案があるんだろう。


 首を左右に振るサポラビ。


 なぜか二羽目のサポラビが提出した資料をポフポフし、コクリと頷く。


「……もしかしてこの提案が通ったから出す必要がないってこと?」


 コクリと頷くサポラビ。


 まさかの第二案を用意していたサポラビ。意識を解放すると有能なサラリーマンみたいな動きをするな。


「えーっと、とりあえず興味があるから見せてくれる?」


 必要ないらしいがサポラビの第二案が気になったので資料を見せてもらう。ちょっと見せるのを嫌そうに感じたからだ。


 ……凄くしっかり考えられている。


 第一案は豪華客船の店舗全体の話だったけど、第二案は店舗を限定し様子を見て徐々に意志を持ったサポラビが管理する店舗を増やしていく方法。


 なるほど、見せるのを嫌がる訳だ。


 僕としては第一案と第二案を両方同時に提示されていたら、安全を考えて第二案を支持しただろう。


 というか、今からでも第二案に変更したいと思ってすらいる。


 いるのだが、三羽のサポラビがウルウルした目で僕を見つめているので意見を翻し辛い。


 要求が満額通ったのに、理不尽に減額されたら悲しいのは理解できる。


 優秀な経営者なら非情な決断ができるのだろうが、僕は優秀じゃないから決断できないので安心してほしい。 


「大丈夫、意見を変えるつもりはないから安心していいよ」


 サポラビ達がホッとした仕草をする。本当に感情表現が豊かになったな。




 ***




 サポラビ達の休暇はなんの問題もなく終わった。


 本当に手を出す必要がなく、楽しく休暇を過ごすサポラビ達にフェリシアやリムやペントが構ってもらっていたくらいだった。


 そして休暇が終わり、本来は閉じられるはずだったサポラビ達の意識はそのままに、シャトー号でサポラビプレオープンが始まる。


「じゃあ九時の時計と同時に開店をお願いします」


 基本僕の豪華客船は二十四時間営業なのだが、今回は区切りをしっかりしようということで九時開店、五時閉店ということにした。


 僕の合図でサポラビ達が一斉に持ち場に散っていく。やる気満々だ。



「うわ、サポラビ達もハリキッテいるね」


 九時と同時に花火が上がり爆竹が鳴る。


 船の設備は大抵把握しているはずなのに、花火と爆竹があることを知らなかった。どこからそんな物をと思っていると、サポラビが魔法か魔術で花火や爆竹を演出していた。 


 魔法なのか魔術なのか分からないけど、サポラビってそんなこともできたんだね。ビックリだよ。 


 盛大な花火と爆竹の音が鳴りやみ、いよいよプレオープンが開始する。


「雰囲気が全然違うわね」


 船内を歩いていると、イネスがポツリと感想を漏らす。


「うん」


 イネスの言うとおり、雰囲気が全然違う。


 サポラビの意識を解放したとはいえ、豪華客船のスタッフなのでバカみたいに騒ぐこともなく優雅に佇んでいるだけだ。


 それは今までと変わらないはずなのに、サポラビの意識が解放されただけで船全体に生命の息吹が生まれたような感じだ。


「えーっと、まず朝食にしようか」


 せっかくならと朝食を遅らせているので、結構お腹が空いている。リムもペントも朝食と聞いてソワソワし始めたので、さっそく移動しよう。


 シャトー号に泊まる時の朝は定番はビュッフェ、いつもとの違いを確認するために普段と変わらない行動をするつもりだ。


「ご主人様、サポラビちゃん達、通り過ぎる時に小さく一礼してくれたり手を振ってくれたりしますね。可愛らしいです」


 フェリシアはサポラビ好きを隠さなくなってから、かなり楽しそうにサポラビと戯れるようになった。そして、好きだからサポラビの小さな変化も見逃さない。


 それにしても、海外には頭を下げる習慣がないって聞いていたが、サポラビは一礼するのか。


 もしかして僕が日本人だからそれに合わせて行動を変えているのかもしれない。


 ビュッフェに入り、普段通り料理を選ぶ。


 僕はビュッフェの時に意識して野菜を取るようにしている。


 昼と夜は部屋で簡単に済ませるか、逆にシャトー号のお店で贅沢な食事をとることが多いから、この時間は大切にしている。


 ふむ、普通のサラダだな。いつも通り普通に美味しい。


「ご主人様、パンの味が変わったわ」


「え? ……ちょっとちょうだい」


 イネスにパンを一欠けら貰い味わう。味覚に自信がある訳ではないが、かなり違いが分かる。


 パンがしっとりとして、甘味が増している。日本人が好きな味だ。


 豪華客船の食料はどこからか突然現れる。以前不安になって美食神様に質問したことがあるが、ちゃんとした食料であることを保証してもらい安心していたのだが……。


「もしかしてサポラビがパンを焼いているの?」 


「ご主人様、ちょっと厨房を覗きに行きませんか?」


「そうだね、ちょっと行ってみようか」


 フェリシアに誘われ厨房に行くと、コック服を着たサポラビ達が忙しそうに動き回っている。


 マジか。意識を持たせてちゃんと仕事を任せると、自ら料理を始めちゃうのか。


 そういえば最初に見せられた資料に、料理のことも書いてあったな。軽くスルーしていたが、こういうことだったのか。


「……なんか夢の世界に来てしまった気がします」


 フェリシアがホッコリしているが、確かにメルヘンではある。僕はどうしてこうなったって気持ちの方が強いけどね。


 あ、サラダもサポラビ達が作っていたのか。


 でも、パンと違ってサラダは違いが分からなかったな。さすがにすべての味が向上するという訳ではないのか。まあ、サラダは手を加える部分が少なそうだよね。


 豪華客船なんだから元々の質も高いし、僕の好みに合わせるようなことをしないと、急激な味の向上は難しいだろう。


 ……これは困ったな。朝食の時点でサポラビの優秀さを見せつけられてしまった。


 僕達の生活環境が良くなるのだから文句は言えないが、このことをカミーユさんが知ったら荒ぶる気がする。


 そして、キャッスル号の仕様変更に夢中になって、働きまくることになる。


 僕が丸投げした結果なのだけど……カミーユさんの体が心配になる。


 あ、リムから思念が届いた。お代わりが欲しいらしい。とりあえず食べてから考えるか。


明けましておめでとうございます。

旧年中は、沢山のアドバイス、感想、評価を頂き、大変励みになりました。

今年も引き続き更新を頑張りますので、よろしくお願いいたします。


読んでいただいてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
やべえ。高度知能アリっすか。 モンスター化が如何に罪深いか解りますわ。そら地の龍も保護しようとするわけだ。 てかこれもうテーマパークじゃんと思ったら夢の国とか言い出してるし。くそわろ。 カミーユが発…
逆にカミーユさん達の仕事量が減りそうな気がする 見様によっては"創造神の加護を持つ神獣"とも言えそうな存在なサポラビ 文字通りサポートについたらあっという間に仕事終わらせそうな雰囲気を感じるw 雰囲気…
あけましておめでとうございます〜! そしてワタルよ…せっかくならサポラビを専属にして『ワタルのおかげでこうなれました!』ってアピールさせるほうが女性陣の評価上がるのでは…?
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