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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十三章
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2話 休暇を過ごすサポラビ

 獣人の町に戻りマリーナさん達やカミーユさんと合流したのだが、サポラビのことが気になってしまい再び外海に出る。サポラビに飲食の許可を含めた休暇を与えると、サポラビの動きを含めた感情表現が豊かになり、苦手意識を持っている僕ですら心が動かされる。休暇が始まったサポラビ、その行動で僕に与える影響が少し怖い。




「結構自由に動くんだね」


「……そうね、あと、サポラビ達、無料コーナーを中心に攻めているわよ。お小遣いが残ったらどうするの?」


 イネスが言うとおり、サポラビ達はお金がかかるお店に一切近づかず和気あいあいと騒いでいる。まだ休暇が始まったばかりだから、ウォームアップ状態なのかな?


「とりあえずお小遣いはあげた物だから、そのままサポラビ達の物だよ」


 回収して反乱されるのが怖い。なんか独裁者みたいな思考回路になっている気がする。


「ふーん」


「……ねえ、イネス、サポラビからお金を借りようなんて考えていないよね?」 


 何を考えこんでいるの?


「そ、そんなこと少ししか考えていないわよ。さすがに情けなさ過ぎるわ」


 少しは考えたんだな。でもまあ、思いとどまったんだからセーフということにしておこう。


「それにしても、フェリシアが子供みたいにはしゃいでいるわね」


 露骨に話題を逸らしてきたが、セーフ認定したので付き合ってあげることにする。


「うん、兎が好きって言っていたけど、大好きだったんだね」


 今までよく僕達に気づかせなかったものだ。


 真面目なフェリシアのことだから、自分の感情で僕に負担をかけるのは駄目だと考えていたのだろう。


 そんなフェリシアが自分の気持ちを正直に話してくれて、楽しそうにサポラビ達と戯れている。


 それだけ僕達に気を許してくれたのだと思うと、ちょっと感動する。


 真面目なフェリシアは誠心誠意仕えてくれていたけど、そこに楽しみが生まれてよりよい環境で仕えてくれた方がお互いに良いはずだ。


 そして、リムとペント。


 今までは反応が薄いサポラビにあまり興味を示さなかったのだが、今のサポラビはしっかり反応が返ってくるので楽しく遊んでもらっている。


 とても寂しい。


 フェリシアもサポラビ達に夢中だし、イネスも興味がないわけではない。精神的に僕が孤立してしまいそうだ。


 まあ、偶の休日限定だし、少しくらいは僕も我慢するか。


 それにしてもサポラビ達の行動に迷いがない。


 おそらくサポートの為に船のある程度の情報がインストールされているのだろう。


 その情報を基に、自分が興味がある分野に向かっている。


 食事に夢中なサポラビ、甘味に夢中なサポラビ、お酒に酔うサポラビ、プールで遊ぶサポラビ。


 魂が違うからか、それぞれに好みがあるようで、バラバラに行動している。


 それにしても兎が飲食している姿って結構面白い。


 メルヘンなのは当然だがデフォルメされてもそれほど大きくない口で、カリカリとお肉やお野菜を口に運び、コクコクと飲み物を飲んでいる。


 本人達は気にしていなさそうだが、傍目に見ると結構大変そうだ。


 あと、サポラビになった影響で魔物の性が薄れたのか、お肉よりも野菜を好む個体が多いように感じる。


 お肉を食べないわけではないが、サラダバーが大人気だ。


 こういう姿を見ていると、サポラビをそれほど警戒する必要がないように思えてきた。 


 元々、危険性があるとは言われておらず、自分が罪悪感から警戒していただけなので、感情がある姿を見て少し安心できた感じだ。


 普段のサポラビは兎らしく、基本的に無だったから感情が読めなくて余計に怖かった。


 それもこれも全部創造神様のせいだな。


 僕が好きな存在をサポートにしたって言っていたんだし、サポラビではなくバニーガールにしてくれていたらよかったのに。


 それだったら……ねえ?


「ご主人様、あの子達、見て!」


「ん? 特に不思議なことはなさそうだけど?」


 イネスに言われた場所を見たが、プールでサポラビ達が遊んでいるだけだ。楽しそうではある。本来のウサギって水が平気なのかな?


「ちょっと遅かったわね。あ、動き出したわ。あの子達から目を離さないようにして」


 なんだか分からないが、イネスに言われたとおりにサポラビ達を見守る。


 そっちはウォータースライダー……。


「なるほど、ちょっと面白いね」


「でしょ、いきなりアレが目に飛び込んできたからビックリしたけど、なかなか可愛いわよね」 


 イネスが気に入ったのはサポラビ達がウォータースライダーを滑る姿。普通に滑って来たわけではなく、十羽程度のサポラビが列車のように連なってスベリ落ちてくる。


 個々が変なポーズをとっている訳でもなく、ただピッタリくっついて列になって滑っているだけなのだが、それをやっているのがモフモフなサポラビだから不思議な魅力がある。


 あと、サポラビの毛皮がとても不思議だ。プールにドボンと入っているのに、毛が水に濡れてもモフモフなままだ。


 もしかしてサポラビの毛皮は防水加工済みなのか?


 そして……サポラビの数え方は羽でいいのかな? 兎は羽だけど、サポラビはちょっと違う気も……まあ、羽でいいか。


「で、ご主人様、これからどうするの? あの子達、まったく手がかかりそうにないわよ?」


 そうなんだよね。普段から豪華客船で活動しているからか、無意味に騒ぐこともなく、何かに戸惑うこともなく、普通にお行儀よく休暇を楽しんでいる。


 ミニ創造神様と比べると百倍くらい手が掛からない。


「……うん、僕達は僕達でのんびりしようか」


 サポラビ達は放っておいても大丈夫だろう。想像していたのとは少し違うが、楽な分には文句はない。




 ***




「ん? ノック?」


 ドアが叩かれている音がするのだからノックに間違いがないのだが、今の状況でのノックは違和感しかない。


 部屋には僕、イネス、フェリシア、リム、ペント、全員がそろっている。そして現在この船には僕達以外にはサポラビしかいない。


 これまでだったらホラーな展開を疑うところだが、おそらくサポラビが訪ねてきたのだろう。休暇を与えるとこういうこともあるんだな。


「ご主人様、サポラビちゃんが訪ねてきているのですが、部屋に入れて良いですか?」


 僕が変なところに感心していると、フェリシアがドアを開けて来客を確認してくれた。


 内心でちょっとビビっていたから助かる。


「うん、入ってもらって」


 許可を出すと三羽のサポラビが入ってきた。意外と数が多い。


「えーっと、いらっしゃい。どうしたの? あ、座って」


 サポラビにソファーを勧める。


「プー」


 サポラビが軽く頭を下げて、ピョコンとソファーに飛び乗って座る。なるほど、二頭身から三頭身くらいのサポラビは、足が短すぎるからあんな風に座るのか。初めて知った。


「それで、どうしたの?」


「プー」


 俺が改めて問い直すと、真ん中に座ったサポラビが、僕の前に紙を並べ始めた。


 ……これ、コピー用紙だよね。しかも、文字もしっかり印刷されている。もしかして事務室のパソコン使った? しかもそれをプリンターで出力までしている?


 どういうことだ? 地球の文明の利器をサポラビが使いこなしている?


 あれ? しかもこれ、こっちの世界の文字だよね。


 僕も偶にパソコンを使うけど、言語は地球のしかなかった気が……もしかして、こっちの言語をインストールした?


 ……ん? そもそも、パソコンは使えるが、インターネットには繋がらないはず……どこから情報を引っ張ってきたんだ? こんなところでホラーを演出することは止めてほしい。


 あと、僕も言語理解のお陰でこの世界の文字も読めるけど、わざわざこの世界の文字にしなくても日本語で大丈夫だよ?


 これだけパソコンを使いこなしているなら、日本語も理解しているよね?


 あと……どうやってかは分からないがこれだけは分かる、サポラビは確実に僕よりもパソコンを使いこなしている。


 だって、文章の横にグラフとか、枠の中になんか色々と数字が書かれた表みたいのなのとかが添えられているんだもん。


 これってアレだよね、表計算ソフトみたいなのを使いこなさないと出来ない感じだよね。


 僕も日本でパソコンを持ってはいたけど、そんなことできないししようとは思わなかったよ? 大学の専攻もそういうのとは違ったし……。


 僕は今、凄く動揺している。


 サポラビに負けた? 自分で言うのもなんだが僕はプライドが割と低い人間だ。


 面白ければ、楽であれば、面倒に巻き込まれないのであれば、多少の恥は呑み込めるタイプだと思っている。


 でも、今回のこれはどう呑み込んでいいのかが分からない。


 パソコンの使い方で異世界の兎のマスコットに負ける?


 それは、プライドうんぬん以前の問題なのでは?


「プー」


「あ、はい、眺めているだけじゃなく読めってことですね。分かりました」


 いかん、僕が主なはずなのに、勝手に口が下からになってしまう。これが知能の差だとでもいうのか。


 こんなんだったらサポラビに反乱された方がまだマシだった気がする。


「プー」   


「あ、はい、すぐに読みます」


 働いたことはないけど、年下の上司ってこんな感覚なのかもって思ってしまう。


 えーっと、何々、サポートラビットの上手な活用方法?


 もしかして今までの無機質なサポラビの活用方法に不満を覚えていて、自分達を売り込みに来た?


 僕、アグレッシブでグイグイ来る人って苦手なんだよね。人じゃないけど。


 若干否定的な気分になりながら資料に目を通す。


 サポラビのできること、できないこと一覧か。


 え? サポラビってこんなことまでサポートしてくれるの? ああ、こういうことはできないんだ。なるほど、体形的に無理なことは無理ってことだな。


 ふむふむ……ふむふむ……細かく沢山書かれていて、全部を理解したとは言えないが一つだけ確実に分かったことがある。


 僕はサポラビの能力を十分の一も発揮させていないということだ。


 ただ、僕達が活用している豪華客船にはそれほど必要がない能力が多い。数人のメンバーで気分で楽しく航海をしているだけだし……。


「そうか、だからこの世界の言葉で書類を作ったんだね」


 サポラビ達の目的が理解できた。僕に売り込みたいのではなく、カミーユさんに売り込みたいのだ。


 それの許可を貰いにきたと考えるのが妥当。


 たぶん、意識がハッキリしていない時でも退屈を感じていたんだろうな。そういうことなら僕も色々と考えるか。


 僕に必要がない能力も多いけど、必要な能力もいくつかある。サポラビ達にご褒美兼賄賂を与えるだけのつもりだったけど、思っても見ない方向に話が進み始めたな。


別作品の宣伝になりますが、『精霊達の楽園と理想の異世界生活』のコミックス版第十巻が昨日発売されました。お手に取って頂けましたら幸いです。


読んでいただきありがとうございます。

メリークリスマス!

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― 新着の感想 ―
カミーユとサポラビの信頼度、割と高そうすね。 ワタルとの信頼度はこれからですかね。
考えてみりゃ生きて動く等身大シルバニ○ファミリーみたいなもんか……
でもバニーだったら女性陣の気はひけてないんだよなぁ
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