20話 素晴らしいご褒美
今回の話の後半部分は性的な下ネタが多くなっております。苦手な方はご注意ください。
ミニ創造神様の面倒をみるという罰ゲームイベントが開催された。そんな中で三女神様担当のミニ創造神様がもめている場面に遭遇。苦肉の策でとある映画の鑑賞をお勧めしたが、それがピンポイントでミニ創造神様の弱点を打ち抜く結果になり、それが創造神様本体にまで波及し、期せずして創造神様を倒すという大金星を挙げてしまう。本当に人生って何があるか分からないよね。
「それで、光の神様、このミニ創造神様はどうすれば? あと、報酬の神様方の休暇はどうなるのでしょう?」
光の神様の質問はスルーして、自分の質問をぶつける。
周囲の神様方はワールドカップで母国が優勝したくらいのテンションで騒いでいるが、僕はミニ創造神様が気になって一緒に騒げない。
だって、ミニ創造神様が僕の船に住みついたら、ダークエルフの島で暮らしている妖精よりも厄介な存在になることは目に見えている。
それだけはなんとしても避けたい。
「そうでしたね。ちょっと行ってきますので、ミニ創造神様を貸してください」
まだ処理落ち中のミニ創造神様を持ち上げ、光の神様が神界に戻っていく。
僕が面倒をみたミニ創造神様はほとんど小さくなっていないから、報酬は確実だと思うんだけど……創造神様を倒してしまったところが少し心配だ。スネていないといいけど。
「美食神様、森の女神様、どうなると思いますか?」
「ふふ、心配しなくても大丈夫よ。契約できつく縛られた上にダメージを受けている創造神様に、今の光の神は負けないわ。神界に戻る時の光の神の顔を見たでしょ?」
そういえば自信満々だった気がする。
美食神様には確信があるようだし、森の女神様も頷いているので安心していいようだ。
そう思ってホッとしたところで、教会に天から光が差す。神様降臨の現象だけど、いくら何でも早すぎないか? もしかして光の神様とは別の神様が降りてきた?
「お待たせしました」
降りてきたのは光の神様だった。いや、全然待っていないけどね。というか、光の神様の輝きがまた強まっている。
「航さん、休暇の延長許可が下りましたので、明日の夜までお世話になっても構いませんか?」
「無論です」
明日と言わず、ずっと滞在してもらっても構わない。いや、そうなるとイネス達やアレシアさん達との連携が難しくなるか。
女神様方だけ週一くらいの定期滞在が僕的にはちょうどいい気がする。まあ、無理だろうけど。
でも、明日まで滞在してくれるのであれば、耳かきと美食神様への包丁自慢の時間はとれそうだな。楽しくなってきた。
「ちょっと失礼しますね」
光の神様が僕から離れて大騒ぎしている神様方の前に移動する。
「みな、聞きなさい。航さんのお陰で休暇が一日延長となりました。明日の日が切り替わるまで楽しみましょう」
光の神様の凛々しい宣言に周囲の神様方が盛り上がる。
「そして、創造神様との交渉の結果、全てとは言えませんが創造神様の取り分から減った我々の報酬の補填を約束させました!」
再びの大歓声。あの短時間でそんな交渉までするなんて、僕と光の神様の時間の進み方が違ったりする?
周囲の神様方からの歓声を浴びながら戻ってくる光の神様を見て、思わず拍手で出迎えてしまった。文字通り輝いているけど、光の神様には大スターの貫禄があると思う。
「お帰りなさい光の神様。それにしても早いお戻りでしたね。創造神様はゴネなかったのですか?」
創造神様には相手が百パーセント正しくても、絶対にそれを認めない諦めの悪さがあるはず。
「それがですね、航さんのミニ創造神様を見たら創造神様が酷く取り乱しまして、なぜか素直に要求を呑んでくださいました」
マジか。トラウマになっちゃってるじゃん。
たしかに多少お下品ではあるが、役者さん全員が本気で演技をしていて、内容も面白かったはず。
多少下ネタが苦手でもトラウマになることは……ありえるな。おそらく、複数というのがポイントなのだろう。
一回映画を見たくらいではトラウマにならずとも、初見であの強烈なビジュアルを何十人分も同時に頭に流し込まれたら、日本の娯楽になれた僕でもトラウマにならないとは断言できない。
……創造神様の精神が癒えることを祈っておこう。創造神様を癒せる存在が存在するかどうか知らないけどね。
「航さん、私達は今日、とても疲れました」
そうですね。僕もそれなりに疲れました。神様方と比べると結構楽だった自覚はあるけど、それなりに神経を使った自覚がある。
「それで、こういうものを用意してきました」
「そ、それは……マイクロビキニ……」
「はい、航さんには申し訳ないのですが、温泉を用意していただきたいのです。むろん、ワガママを言うのは私達ですから、ご一緒していただいて構いません。いかがですか?」
いかがですかも何も……これは光の神様達のワガママと言う名のご褒美だ。前回の一緒にお風呂イベントで狂喜乱舞していたのを覚えていてくれたのだろう。
「ただちに準備させていただきます! えーっと、創造神様の部屋の斜め向かいの部屋に十分後でお願いします!」
今の僕は最高にハイになっている。
光の速さで脳細胞が活性化し、今誰も使っていない部屋で、なおかつバルコニーにジェットバスが設置されている部屋をピックアップする。
この部屋は予備で、創造神様がロイヤルスイートを気に入らなかった時の為に確保していた部屋だから、誰も使っていない。
昨日の僕、ナイス判断だ。
それにしても、まさかこんな形であの至福の時間が再び訪れることになるとは予想外だった。
苦労って報われないことも沢山あるけど、偶に報われちゃうからたまらないよね。
お風呂に温泉を……いや、温泉を出すのはお湯が冷めるから入る寸前……ジェットバスならお湯の温度の維持ができるな。
さっさと注いでしまおう。
よし、温泉はOK、次は……水着に着替えることと、光の神様達が好きなアルコールとおつまみを用意することだな。
えーっと、金色の缶のビールと、ジェットバスに似合うシャンパン、おつまみはオーソドックスなチーズとナッツ類、あとお洒落に野菜スティックと生ハムもいいな。
うん、お洒落。
庶民が想像するハイクラスな生活! みたいになっているけど、まあ、庶民なのでそこら辺は気にしないことにする。そんなことよりもマイクロビキニだ。
この豪華な部屋のバルコニーで思う存分青春を満喫するぞ、二十歳を超えているけど……あ、マイクロビキニは青春というよりも大人な時間だな。
なら今の僕がふさわしい。
思いっきり大人の時間を楽しもう。
あ、ノックだ。
「お待ちしていま最高です!」
いかん、なんか変な言葉が出てしまった。でもしょうがない。
だって、既に光の神様も美食神様も森の女神様も既にマイクロビキニだったのだもの。
この部屋に来てから着替えると思っていたから、この光景は衝撃だ。
「うーむ」
それにしてもアレだな、廊下にマイクロビキニの美女達、このミスマッチがたまらない。
「あの、航さん、さすがに凝視されると恥ずかしいのですが?」
「あ、申し訳ありません。どうぞ中へ」
しょうがないじゃん。凝視しちゃうよ。だって、凄いんだもの。横にズレて三女神を迎え入れる。
ぶほっ、三女神様方の後ろ姿、最高です。桃が……大きくて綺麗で新鮮そのものな桃が三つ並んで……カメラ、カメラは?
畜生用意するのを忘れていた。
今からゴムボートを召喚してカメラを取り出し、撮影するのは流石に許されないだろう。
痛恨のミスだ。
写真を撮りまくった上にもう一つデジカメを用意して、録画で映像を残したかった。
「航さん、急に膝をついてどうしたんですか?」
いつの間にか膝をついてしまっていたようだ。それだけショックが大きかったのだと自分では理解できるが、三女神様方からすれば奇妙な行動にしか見えないよね。
「もしかして体調が悪いのですか?」
いかん! そんな誤解をされたら夢の時間が本当に夢になってしまう。
「いえ、全然大丈夫です。準備はできていますので、まずは乾杯でもしましょうか!」
急激に立ち上がったので立ち眩みに襲われるが、気合で耐える。ここでふらついたら、本気で心配されてしまう。
お風呂に入る前に乾杯というのは少し違う気もするが、ぶっちゃけると水にぬれる前のマイクロビキニが貴重なので、少しでも時間を稼ぎたくなった。
ぬれた姿も色っぽいのだけど、貴重な時間は少しでも長い方が良い。
「ビールですか? シャンパンですか? あ、酎ハイとか色々と取り揃えていますので、呑みたいお酒があったらリクエストしてください」
「私はいつものビールでお願いします」
「私はシャンパンをお願い」
「そうですね、私は甘いものが呑みたいので、あの白いの、名前は忘れてしまいましたが、白くて甘くてシュワシュワなのをお願いします」
乳酸飲料系の酎ハイだね。それにしても森の女神様の白いのが呑みたいという発言に少しドキッとしてしまった僕は、思春期がぶり返しているのかもしれない。さすがに妄想がたくまし過ぎるだろう。
「乾杯!」
リクエストされた飲み物を用意し、みんなで乾杯。その時に揺れる母性がとても素晴らしい。
「ふー。相変わらず、このビールは美味しいですね」
「あら、このシャンパンも美味しいわよ。創造神様からも頂いたけど、なぜか今の方が美味しいのよね」
そりゃあ、シャンパンタワーの前でふんぞり返った創造神様から偉そうに手渡されたお酒より、面倒事から解放されて休暇が始まった瞬間のお酒の方が美味しいに決まっている。
まあ、それは美食神様も理解しての発言だろうが。
「ふふ、美食神、あまり意地悪を言ってはいけませんよ。ところで光の神、創造神様の容態はどうなのですか? しばらくは平穏な時を送れると嬉しいのですが」
美食神様をたしなめた森の女神様だが、その内容は地味に辛らつだ。まだ少ししかお酒が入っていないのに、解放感からか口が滑らかになっているな。
気持ちはとてもよく分かるので止めるつもりはない。上司の愚痴を言ってリフレッシュする時間は人間にも神様にも必要だよね。
「うふふ、航さんのミニ創造神様はこちらで預かっていますので、創造神様が苦手を克服するまでは更に平穏な時間が送れるはずですよ」
光の神様はあのミニ創造神様を確保したのか。お守りみたいな扱いになりそうだけど、光の神様と一緒に居られてミニ創造神様も少しは幸せだろう。
「そういえば航、創造神様を撃退した映画って、結局どんな内容なの?」
マイクロビキニ姿の三女神様に夢中な僕に、美食神様からキラーパスが飛んできた。
逃げられないし逃げたくないこの状況で、難しい質問は止めてほしい。
「そ、そろそろ温泉に入りましょうか。気持ちいいですよ」
とりあえず誤魔化そう。
「ふふ、よっぽど話し辛い内容みたいね」
美食神様、分かっているのであれば聞かないでください。
読んでいただきありがとうございます。