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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十二章
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18話 満喫するミニ創造神様と方向性の違い

 創造神様の企みにより、ミニ創造神様の面倒をみることになった。最初は大変かと思ったが、面倒を見てみると意外と手が掛からなかった。だが、他の神様方はそうはいかないようで、美食神様と森の女神様も手に負えずに光の神様に助けを求めていた。



「そういえば航さんが面倒を見ている創造神様の化身はどこに居るんですか?」


 ミニ創造神様三人組を見て、若干恐怖を覚えていると、光の神様が話しかけてきた。


「今は映画を観ていますね。割と穏やかに船を満喫してくれています」


「満喫ですか?」


 光の神様が驚いた顔で僕を見る。


「はい、結構楽しそうにされていますよ?」


「すみません、どのように相手をしているのか教えていただけますか?」


 光の神様に指南を求められてしまった。別に隠すことでもないので、一連の流れを説明する。


「エステに映画ですか?」


「はい、お勧めしたら興味を持たれて、結構楽しそうに体験されていますよ」


「それは盲点でした」


 聞いたところによると、光の神様はミニ創造神様が怒ったり不満を持ったりするタイミングで、食べ物や飲み物を渡して宥める感じで面倒をみていたらしい。


 それはそれで凄い気がするが、常に注目していないといけないから結構大変だよね。


「航さん、私達も試してみて良いですか?」


「はい、同じように楽しんでいただけるかは分かりませんが、自由に試してみてください。あ、他の神様方にも情報を伝えてあげてください」


 創造神様の被害者……被害神は少ない方が良いもんね。


「ありがとうございます、それは助かります。ではさっそく試してみますね」


「皆様、航さんとご一緒している創造神様の化身さんは、エステや映画がとても楽しかったそうですよ。どうされます?」


「「「たー!」」」


 なんかミニ創造神様達が凄い勢いで立ち上がり、それぞれの神様の元に突撃していく。


 そして『たー! たー!』と訴えかけている。


 なるほど、創造神様の性格上、自分以外の自分が楽しいことをしていたら自分も体験せずにはいられないだろう。


 さすが光の神様、上手な話の持って行き方だ。


「航、ありがとう。またね」


「航さん、ありがとうございます」


 ミニ創造神様達に殺意を覚えた。


 光の神様に続いて美食神様と森の女神様も僕にお礼を言ってくれたのだけど、その時のミニ創造神様の位置が問題だ。


 美食神様のミニ創造神様は美食神様の豊かな母性の象徴に挟まれ得意気で、森の女神様のミニ創造神様は、森の女神様の豊かな母性の象徴の上で寝そべり頬ずりまでしている始末。


 本気で捕まえて地面に叩きつけたくなる。


 三女神様をお見送りし、僕は怒りを抑え小腹を満たす。本当は三女神の皆様についていきたかったが、さすがにミニ創造神様を放置はできない。


 軽食を終えて映画館に戻る。ミニ創造神様の様子を確認すると、サポラビの頭の上で夢中で映画を見ているようだ。


 かなり楽しい映画のようだな。あとで絶対に皆で観にこよう。


 まだエンディングまで時間があるので、今のうちに次にミニ創造神様を連れて行く場所を考えておくか。


 ……ん? 創造神様が閉じこもってしまったのであれば、別に遊びに行ける船を増やしても……あ、駄目だ、余計なことをして創造神様が出てきてしまったら大乱闘が始まってしまう。


 天岩戸は神様に出てきてもらうために宴をしたが、創造神様の場合はある意味今の状態の方が平和だ。


 ならどうするか。


 F1シミュレーターもボーリングもミニ創造神様のサイズでは無理だ。なんたってミニだからね。スポーツも厳しい……いや、この船の売りであるウオータースライダーならどうだ?


 アレならそれほどサイズの問題はない。重量不足でスピードが出ないかもしれないが、そこは僕かサポラビが乗り物になっても良い。問題は水着か。さすがにミニ創造神様サイズの水着はない。


 まあ、もとが何か知らないが、ミニ創造神様に変身した物だから服くらいなら変えられるかもしれない。聞いてみて水着に変化できるのであれば、プールにして、駄目だったらどうするかだな。


 出来る人間は二の手三の手を用意しておくものだ。


 思いつくことができればだけど……。


 うーん、思いつかない。最悪カジノかな?


 でも、カジノで使うお金は僕のお金ってことになる。それは限度内であれば別に構わないが、ミニ創造神が勝っても何も持ち帰れないからギャンブルの楽しさが薄れる気がする。


 時間稼ぎにはなりそうだけど、やはり弱いな。プールの後の〆に取っておきたいところだ。


 三つ目……三つ目は……思いつかない。豪華客船なのだから楽しいことは沢山あるのだけど、ミニ創造神様が喜んでくれるとなると地味に選択肢が少ない。


 あとは食べ物とお酒でゴリ押しくらいか。おっと、映画が終わったな。


「ミニ創造神様、映画はいかがでしたか?」


「たー! ……たー」


 ミニ創造神様がバンザイをして笑顔を見せた後、威厳を考えたのか、なかったことにして重々しく頷いた。


 不覚にも可愛いと思ってしまった自分が許せそうにない。


「なかなかだったと?」


 結構気に入っていたように見えたが、それを伝えると機嫌を損ねるのでお望みであろうリアクションを返す。あ、そうだ!


「では、別の映画もご覧になりますか?」


 連続で映画を見てくれたら、更に二時間程度時間が稼げる。


「たー」


 ミニ創造神様が首を左右に振る。駄目だったか。


「では、何かやりたいことがございますか」


「たー」


 再び首を左右に振り、最後に僕の目を見ながら重々しく頷く創造神様。つまり、お前に任せる。楽しいところに連れていけということだろう。面倒臭い。


「ミニ創造神様、身に着けている衣装を水着に変えることはできますか?」


 当たり前だろといった様子で頷くミニ創造神様。


「では、水着に着替えてプールに行きませんか?」


「たー?」


 え? お前、そんな提案しかできないのって顔だ。このまま掴んで遠くまで放り投げたい。


「この船のセールスポイントの巨大ウオータースライダーもありますし、僕が乗り物になりますので、案外スピードが出て楽しいですよ?」


「たー」


 ミニ創造神様、絶対に僕が乗り物になるってところに反応したな。まあ、それで納得して遊んでくれるなら構わないか。


「では、行きましょうか。どうぞお乗りください」


「たー」


 両手の掌を差し出すと、ミニ創造神様はそれをスルーして僕の頭の上に乗った。先程の僕の乗り物発言が影響しているのだろう。


 別に構わないのだが、髪は持たないでほしい 


「たー!」


 駄目なんですね。ミニ創造神様が髪を乗馬の綱のように引っ張り僕を操縦しようとする。乗り物で構わないとか言ったけど、このスタイルは少し嫌だ。


 いつも僕の頭上でプルプルと癒してくれるリムとは、天と地ほど違う乗られ心地だ。


「ミニ創造神様、少々お待ちください」


 操縦に従って出発しようとしたが、足を止めサポラビに向き合う。


「サポラビ、あとからここに神様方がくると思うから、映画の上映とかお手伝いしてあげて。それと、このメモも見せてあげて」


 言葉をかけると同時にメモを渡す。


 メモには今回ミニ創造神様に見てもらった映画のタイトルと、他のコメディ映画のタイトルをいくつか書いておいた。これでミニ創造神様に見せる映画に困ることはないだろう。


 本当はもう少し細かくサポラビに指示を出したかったのだけど、僕の毛根がピンチなので急いで移動する。ミニ創造神様、もう少し優しく髪を引っ張ってほしい。



 プールに到着し、僕もミニ創造神様も水着に着替える。ミニ創造神様は一瞬で服を水着に変化させただけだけどね。


 さて、さっそく滑るか。


「たー!」


 パイプに勢いよく飛び込み、ウオータースライダーを勢いよく滑り落ちる。


 普通なら楽しいのだが、ミニ創造神様がテンションアゲアゲで僕の髪を引っ張るからそちらに気を取られてしまう。


 レベルアップで毛根も強化されていることを信じたい。


 ざぶんと下のプールに飛び込み、泳いでプールサイドに登る。


「ミニ創造神様、いかがでしたか?」


「たー!」


 ご機嫌に僕を髪で操縦するミニ創造神様。向かう方向はウオータースライダーの滑り口。


 なるほど、とても気に入ってくれたのは分かったが、何かしら対策をしないと僕の毛根が本気でピンチだ。




 ***




 精も根も尽き果てたぜ。


 毛根を守るためにうつ伏せで背中に乗ってもらったり仰向けでお腹に乗ってもらったり、色々と滑るスタイルを模索したらミニ創造神様がそれを気に入ってしまいエンドレスになってしまった。


 もう、何回滑ったか分からないくらいだ。


 ようやく満足した創造神様に操作されつつ、船内を歩く。どうやら今は船内を見て回りたい気分らしく、あちこちフラフラしまくっている。


 その間に、見てはいけないものを見てしまうことも沢山あった。


 ミニ創造神様を前に引き攣った笑顔でご機嫌を取る戦神様とか、ミニ創造神様にガチ目の説教をかましてギャン泣きさせている魔神様とか……。


「ん? ミニ創造神様、あちらに向かっても構いませんか?」


 なんのもめ事か分からないが、通路の奥から『たー、たー』とミニ創造神様の騒ぐ声と、聴き間違いでなければ光の神様方の声も聞こえた。


 ミニ創造神様はともかく、光の神様方が困っているのであれば駆けつけなければならないだろう。


「たー」


 許可を得たのが良かったのか、鷹揚に頷いてくれるミニ創造神様。


「ありがとうございますミニ創造神様」


 お礼を言って声の方向に小走りで急ぐと、予想通り光の神様、美食神様、森の女神様が喧嘩をするミニ創造神様を囲んでオロオロしていた。


「どうしたんですか?」


「あ、航さん、実はエステが終わって映画に行ったのですが、映画の解釈の違いでミニ創造神様達が喧嘩をしてしまって……」


 なんだそれ。


「同じ結晶から変化したミニ創造神様なのに、解釈に違いが生まれるのですか?」


「創造神様ですから」


 困った表情で答えてくれる光の神様。凄い説得力だ。


 放っておけばと思わなくもないが、解釈の違いとはいえ喧嘩は喧嘩。光の神様方のお賃金が減ってしまう。


 と言っても解釈の違いをどうにかするのは難しいよ。言ってみればバンドでの方向性の違いみたいなものだ。ましてやメンバーがミニ創造神様三人ともなれば解散一歩手前だろう。


 力業での強引な解決がベストとみた。あと数時間で一日が終わるんだ、最後のひと踏ん張りを頑張ろう。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
>映画の解釈の違い まあパー〇ンのコピーロボットも好きな子違ったし(完全コピーだから信念や嗜好も同じ設定)多少はね
ミニ創造神様 日本には、こう言う格言が有ります 『みんな違って みんな良い』 自身の考え・志向が有るのは当然 それを踏まえて、同好の士へのリスペクトを忘れてはいけません ええ、そうです 特に有明…
本人同士で価値観の相違ってヤバいな 食い物とかなら気分はかなりあるかも知れんが (運動したからビール飲みたいとか、鑑賞で優雅な気分だからワインとか)
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