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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十二章
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15話 愚かな神々よ……

 僕の全力のおもてなしに創造神様はご満悦で、数々の料理を楽しみ、大いに酒を呑み、シャンパンタワーイベントを上から目線で熟し、良い感じの雰囲気で遂行できた。最後に美食神様にも会えて良い気分で眠りについたはずなのに……最悪な目覚めを迎えてしまった。




 何が起きた?


 なんか凄い声で叩き起こされた……んだよね? 


 駄目だ。急激に起こされて頭が回らない。えーっと、今何時……五時? 朝の五時?


 重い体を無理矢理動かし、洗面所で顔を洗う。


 状況を把握したいがどこに行けば……創造神様のところだな。朝の騒音はなんとなく創造神様の声だった気がする。


 あ、でもその前にトイレ。あと、念のために歯を磨いておくか。女神様方にも会うかもしれないから、口臭のケアはしっかりしておかないとね。その上で生活魔法を重ね合わせれば完璧だ。


 どうせならお風呂に入っちゃうか? いや、さすがにそれは時間を無駄にしすぎか。



 部屋を出て創造神様や光の神様達の部屋に向かったが、誰も居なかった。


 寝ている可能性を考えて、結構強めにノックをしたから留守はほぼ確定だろう。


 つまり、創造神様は早起きしちゃったわけだな。


 昨日の晩に創造神様が早く休んだけど、それが裏目に出たのかも。


「航さん!」


 とりあえず船内を見て回ろうと歩いていると、光の神様が小走りで近寄ってきた。


「光の神様、おはようございます」


 目覚めに会う光の神様は輝いていて、少し目に優しくないな。朝日のようにまぶしい。


「あ、おはようございます。ではありません、創造神様が教会を占拠しました。警戒はしていたのですが、見事にすり抜けられてしまいました」


「へ?」


 創造神様が教会を占拠? ちょっと意味が分からない。


「なぜそんなことを?」


「最近の不満を私達にぶつけて嫌がらせをするためです」


 凄く分かりやすい理由だ。


「世界との契約がありますよね?」


「沢山の縛りを設けましたが、それでも全ての行動を縛れるわけではありません」


 ああ、創造神様って抜け道を発見するのが得意そうだもんね、性格的に。


「なるほど、創造神様の要求はなんですか? 契約の破棄とかですかね?」


 占拠した犯人は何かしら要求するのが基本だ。創造神様の現状を考えると、契約の破棄を目的としている可能性が高い。


「いえ、その要求は世界との縛りに抵触するのでありません。純粋に嫌がらせです」


 そんな純粋さは要らない。


「がんばって準備をして精いっぱいのおもてなしをしたつもりだったのですが、何かが創造神様の気に障ったんですかね?」


 結構色々と考えてイネスとフェリシアにも協力してもらったから、この結果はかなり悲しい。


「いえ、むしろ航さんの頑張りに救われました。教会を占拠することは私達を神界に戻さないためです。ですがそれだけでは時間が経てば縛りで創造神様は神界に戻らなければなりません。それでは無意味なので、事前に準備を重ねていた可能性が高いです」


 要するに忙しい中でも、全力で嫌がらせの準備をしていたってことですね。 


「そういう場合、創造神様はたとえ一瞬でも私達に楽しい時間を与えるものかと行動します。その行動が翌朝まで引き延ばされたということは、それだけ創造神様が満足されていた証に他なりません」


 なるほど、創造神様は契約に縛られているから、今日が終われば帰らないといけない。僕の頑張りが創造神様の行動時間をそれだけ削ったのだと思えば少しは救われる。


 ……まあ、頑張ったのだから、最後まで時間を削られてくれよと思わなくもないが、相手は理不尽な創造神様、健闘したということなのだろう。


 シャンパンタワーを作った甲斐があったというものだ。


「それなら苦労が報われます。それで、創造神様は嫌がらせとして何をするつもりなのでしょう? 危険はありませんか?」


 嫌がらせと言っても神様の嫌がらせなので、うっかりで僕が消し飛んでしまう可能性がある。


「縛りがある上に場所が下界なので、神域を内包する航さんの船といえども、それほど無茶なことはできません。狙いは精神的なダメージの可能性が高いです」


 ……もうなんというか、なんでこんな世界に落ちてきちゃったのかな?


 いや、落ちてこなければ死んでいた可能性が高いし、今は十分に幸せだから贅沢なことを言っているけど、できれば創造神様がまともな存在であってほしかった。


「こんなことを言うのはアレなのですが、防げなかったのですか?」


「申し訳ありません」


 光の神様が頭を下げる。


「いえ、謝罪を求めている訳ではなく単純な疑問です」 


 僕でさえ最大限の警戒をしていたのだ。付き合いの長い光の神様達が創造神様の犯行を予想できていなかったとは思えない。


「そうですね、実は休暇に入る前から最大限の警戒態勢は敷いていました。こちらに来てからも、魔神、戦神、海神など、戦える者は隠れて見張っていました」


 マジか……そういえばいつもお酒を呑んで陽気に騒いでいるメンバーの姿を見かけなかったな。


 ちゃんと手を打ってはいたのか。


「その警戒をすり抜けたんですね」


「はい、どうやったのか分かりませんが、すり抜けてしまいました。部屋のドアも窓も一度も開いていないはずなんですが……」


 ホント、どうやったのかな? 不壊だから船を壊すこともできないはずだし……そりゃあ、光の神様も困った顔しかできないよね。


「とりあえず教会に向かいますか?」


「そうですね、直接的な危険はないはずですので、航さんにも見ていただいた方が良いですね」


 ここで話をしていてもどうしようもないので、現場の確認に向かう。



「あの、自己主張しまくっている半透明な壁は結界だったりしますか?」


 教会を囲むように、なんか凄くキラキラした半透明の壁が立ちふさがっている。


「はい、この世界、いえ、神の中でも最高の結界です。本来であれば創造神様とはいえ、下界で使用できるようなものではないので、結界用の神器を用意したのでしょう。前回、思わぬ方法で航さんに追い詰められたので、かなり警戒していますね」


 神様が神器を使うのはズルいと思ったが、神器だから神様が使うのも当然な気もする。


「凄い結界なのは理解しましたが、創造神様のことですから閉じこもって終わりということはありませんよね?」


 もしそうなら放置して平和に終わるのだけど……。


「ありえませんね。今大人しいのは何か準備をしているからでしょう」


 だろうね。僕も創造神様が大人しくしているなんてまったく思わない。


「あの、乗船許可を取り消せば、創造神様を外に放り出せるかもしれませんが?」


 一応、船召喚はチートなので創造神様が相手でも、ワンチャンある気がしないでもない。


「……………………止めておきましょう。あの結界は本当に凄い物ですから、反発しあった場合どうなるか分かりません。それに成功したとしても創造神様をこの船から外に出すのも問題です」


 あ、そうか、教会にある神像によって、船が神様でも降臨できる特殊な空間になっているんだったな。


 成功しても失敗しても駄目なら、デメリットしかないね。光の神様が長めに悩んだのが気になるが、何を想定していたのだろう?


 ちょっとだけ怖いことを考えていた気がしないでもない。だって、なんか光の神様の輝きが増していたもん。


「あ、創造神様……」


 噂をすると影が差すと言えばいいのか、教会のドアから創造神様が出てきた。


 準備が整ったのかもしれない。


「創造神様、これはいったいどういうことでしょうか?」


「やあ航君、おはよう。どういうことか……まあ、簡単に言うと、創造神様に無礼を働いた者どもに対する神罰だね。僕に与えた屈辱、その何百万分の一程度は味わってもらわないと僕の気が収まらないからね」


 何百万分の一って……どれだけ屈辱だったんだよ……。


 あと、笑顔がとても怖い。楽しんでいるのは分かるのですが、狂人一歩手前というか邪神一歩手前ですよ。


「航君は反省しているようだから許してあげようかとも思ったんだけどね、まあ、歓待してくれた分くらいは手加減してあげるよ」


「あ、ありがとうございます? その、いったい何をするおつもりなのですか?」


「それは見てからのお楽しみだよ」


 僕も昨晩美食神様に似たようなことを言ったな。自分で言うのもなんだが、僕の言葉は誠実で、創造神様の言葉は邪悪だと思う。


「さあ、ショータイムだ! 愚かな神々よ、自らの罪深さを知ると良い」


 創造神様が両手を広げ得意満面でショータイムを宣言した。


 自らの罪深さか……なんか地球の偉人が似たようなことを言っていた気がするが、言う人というか神様によって、受ける印象が全然違うんだな。


 あと、その愚かな神々を生み出したのは創造神様な気がします。 


 ん? 何が起こるのかと警戒していると、創造神様の頭上に何やら綺麗な水晶のような巨大な球体が現れた。


 不思議な魅力がある物体だな。水晶に似ているから綺麗なのは当然なのだが、その球体に吸い込まれそうな感覚を覚える。


 その球体に見入っていると、周囲の神々から怒号が上がった。


 え? なにごと?


「ひ、光の神様、何が起こっているんですか?」


 横を見ると光の神様が頭を抱えていた。光の神様の輝きが一瞬で色あせている。


 これはただごとではない。


「……アレは、純粋な思いや祈りの結晶です。この世界に存在する生物の純粋な思いや祈りが集まり形になった物ですね」


 よく分からないけど、なんか凄そう。


 光の神様と周囲の神様方のリアクションを見るに、この世界や神々にとってとても大切な物なのだろう。


 それを見せびらかすように取り出したということは、人質というか物質に利用するということだろう。


「光の神様、あの結晶を失うとどうなるんですか? 世界や神様方にどのような影響が?」


 いくら創造神様でも世界が滅ぶようなことはしないと思うが、周囲の怒号が収まらないので不安が掻き立てられる。


「そうですね、あれは神々にとってなんと言えばいいのでしょう……ああ、人にとっての賃金のような物です」


 ……ぱーどぅん?


 光の神様が何を言っているのかが上手に呑み込めない。神様ってお給料制なの?


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
お給料強奪ってそれまた嵌められるんじゃ…やはり成長しない創造神…!
大人しいと思ったけどそうこなくっちゃ創造神じゃないぜ
色んな神様に捧げられた祈りとかを 横領したってこと!?
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