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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十二章
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4話 新タッグ結成

 カミーユさんを人魚の国に誘うと、酷く呆れられた。話を聞くと人魚の国は今の時代ではおとぎ話レベルの場所だったらしい。竜宮城にガチで誘われたら僕も呆れるからこれは流石にしょうがない。今回の旅行では、できるだけカミーユさんの心労を減らす方向で頑張りたいと思う。




「カミーユさん、そろそろ人魚の国に到着するので、サブ操縦席で見てきますか?」


「そうですね。せっかくですからそうさせていただきます」


 もうすぐ人魚の国に到着しそうなところで、カミーユさんをサブ操縦席に向かわせる。あそこが一番景色が良く見えるからね。


「ふふ、カミーユ、喜んでいたわね」


 マリーナさんの言葉にカミーユさんの後ろ姿を見たが、確かにウキウキしているように見える。


 人魚の国に近づいて進路を海底に向けた。そこからは景色が単調になっていくから、自動操縦にしてみんなでリビングに集まったのだけど、その時からカミーユさんニコニコだったもんね。


 滅多にない体験だからか、興奮した様子で感想を話してくれた。


 それを僕達は優しく見守っていた。


 僕達は何度もホワイトドルフィン号で遊んでいるから、こういう景色も慣れたものだからね。凄く優しい時間が流れていたと思う。


 でも、カーラさんとクラレッタさんの優しい目は見慣れていたが、クールタイプのマリーナさんの優しい目は地味にレアだった。


 今も優しい目をしているので、はしゃぐカミーユさんがマリーナさんのツボなのかもしれない。


 ホッコリしながら操縦席に戻る。


 席についてもライトの光しか見えなかったが、少し経つと遠くに小さな光が見えてくる。


 それがだんだんと大きくなり、人魚の国の全貌が見えてくる。


 初めて人魚の国に来た時には真っ黒な下草の影響もあって黒一色で、建物の視認すら難しかったのだけど今では離れた場所からでも活気が感じられる。


 今回は人魚が居なくて先ぶれを出せていないから、城門の前で話をしないといけない。


 できればアンネマリー王女が一緒の時に人魚の国に来られたら楽だったのだが、さすがに今回の日程では無理だった。


 他国の兵士が居たり南方都市やアクアマリンに長期間滞在したりする日程に、人魚のお姫様を付き合わせる訳にはいかないだろう。


 まあ、人魚の国に僕以外に潜水艇で訪れる人なんていないだろうから、それほど時間を掛けずに迎え入れてくれるはずだ。


 城門前にホワイトドルフィン号を停止させると、予想通り人魚の兵士が向かってく……あれ? なんか凄くゴージャスな人魚が……見間違いでなければ女王陛下と第一王女様なような……わざわざ出迎えに来てくれたらしい。


 手間が省けてありがたいけど、申し訳なくなる。




 ***




 ワタルさんに勧められてサブ操縦席に戻った。


 夢のような海中の旅に興奮していましたが、これからまた素晴らしい光景が見られるようなのでとてもワクワクします。


 しかも人魚の国ですからね。


 話を聞いた時には胃がとても痛かったのですが、冷静に考えると凄いことです。ましてや商売の話ができる可能性もあるのですからワタルさんには感謝しなければなりません。


 ワタルさんの行動に寿命が何年か削られている気がしないでもないですが、ワタルさんのお陰で信じられないくらいレベルアップできていますからね。


 少し寿命が削られるくらいならお釣りがきます。胃がとても痛いですけど。


「あ、灯りが見えてきました。フェリシア、あそこが人魚の国なのですか?」


 真っ暗な海の中にポツンと浮かび上がる光。あそこで人魚達の営みが行われているのかと思うと少し感動します。


「そうです。あそこが人魚の国ですよ。もう少しすればハッキリと見えてきます」


「ふふ、楽しみですね」


「え、ええ、楽しみです」


 フェリシアがとても優しい顔をしています。まるで幼い子供を見守るような……あぁ、フェリシアは何度も人魚の国にいったことがあるんでしたね。少しはしゃぎ過ぎてしまいました。


 そういえばリビングでワタルさん達も優しい目をしていたような……忘れましょう。深く考えると精神にダメージを負う気がします。


 落ち着きましょう。


「あ、見えてきました。うわー、綺麗な……コホン、素晴らしい光景ですね」


 落ち着こうと思っていたのですが、失敗してしまいました。


 自分のことながら想像以上に興奮しているようです。冷静にならなければなりません。自分はこれから手強い相手との商談に臨むのだと思い込みましょう。


 気持ちを整えている間に、人魚の国の城門らしき場所に到着しました。


 海中なのに門があるのは不思議ですが、城壁の上は妙に歪んで見えるので、何か結界のようなものが張られているのでしょう。


 門から人魚が……無理です。落ち着けません。


 なんですか? 兵士の方達は良いのです。ですが、その方達を引き連れてこちらに向かってくる方々が問題でしかありません。


 見るからに気品あふれる姿。


 それだけでただ者ではないと確信できるのですが、頭のティアラが輝いています。人魚の国は女王陛下が治める国だとワタルさんに聞きました。


 高位の貴族の可能性もなくはないですが……いえ、あの気品とティアラの質を考えると女王陛下としか考えられません。


 つまりワタルさんは突然の訪問にもかかわらず、女王陛下自らが城門まで出迎える立場なのですね。


 意味が分かりません。何がどうなったらそんなことになるのでしょう?


 人魚の国に関して追及した時、ところどころワタルさんの口が重くなっていました。


 国関連のことですから話せないこともあるでしょうと深く追求しませんでしたが、もう少し真剣に問い詰めておくべきでした。 


 ワタルさんのことですから、女王陛下と挨拶する可能性は考えていました。


 ですがこの状況を考えると、交渉相手が女王陛下もしくは王族の可能性が否定できません。


 強敵との交渉を考え自分を落ち着かせていましたが、相手が強敵すぎるでしょう。


 ワタルさん、言えないことがあるのは理解しますが、大事なことはちゃんと伝えておいてください。報連相が大切だって前に言っていましたよね?


「カミーユ、そろそろリビングに向かいましょう。おそらく女王陛下と第一王女様に挨拶することになると思いますが、気さくな方ですので普通にしていればカミーユなら大丈夫です」


 そうですか、女王陛下確定で、第一王女様まで付いてきましたか。普通にしていれば大丈夫と言いますが、こんな状況で普通にすることが難しいんですよ?




 ***




「ワタル様、お久しぶりです」


「ワタル様、お久しぶりです」


 ホワイトドルフィン号のハッチを開けると、女王陛下とアダリーシア王女の顔が。普通なら有り得ない光景だろう。


「女王陛下、アダリーシア王女、お久しぶりです。申し訳ないのですが、今日はアンネマリー王女が同行していないのです」


「そうですか。少し残念ですが、ワタル様達が来ていただけで嬉しいです」


 女王陛下だけあって表情にはまったく出ていないが、やっぱりアンネマリー王女が居ないのは残念なんだろうな。


 まあ、魔法少女物のアニメを観た時は、ガンガンに表情が変化していたけど。


「ありがとうございます。実は今日は新しい仲間が一緒でして、入場許可と神器の指輪をお貸し願えますか?」


「そうでしたか。もちろん問題ありません。予備の指輪をお貸ししましょう」


 女王陛下が兵士に指示を出して、豪華な箱から指輪を取り出し渡してくれる


 僕が来たからか、最初から自分達の指輪に加えて予備も持ってきてくれたようだ。


 あれ? この状況は一度女王陛下達を船内に迎え入れるべきパターン?


 それは全然構わないのだけど、ぶっちゃけ、女王様を船に迎え入れることが正しいことなのかが分からない。


 普通なら事前に相手側の内部確認が必要な気がするが、僕達の場合は女王陛下も第一王女様も泊まりでアニメ観賞とかしているんだよね。


 まあ、分からないことは聞けばわかるか。


「ワタル様、では船ごと城内にお入りください」


 あ、このまま中に入れてくれるのか。でも、一緒に乗って行きましょうって誘うべきだよね? サッパリ分からん。


「えーっと、一緒に乗って行きますか?」


「まあ、ありがとうございます。ご一緒させていただきますわ」


 たぶん喜んでくれたのだと思う。


 分からないのでそういうことにしておいて、みんなに乗船許可を出して船内に迎え入れる。


「女王陛下、アダリーシア王女、こちらが僕がお世話になっているカミーユさんです」


「カミーユと申します。お目にかかることができて光栄です」 


 カミーユさんが優雅に一礼する。


 僕だったら偉い人との初対面はビビりまくるのだけど、できる人はやっぱり違うな。身分は違えど矜持では対等、それでいながら相手への敬意を感じさせる佇まいだ。


 カッコいい。


「うむ。初めてお目にかかる。ワタル様には大変お世話になっておってな。そなたとも良い関係が築けると嬉しく思う」


 カミーユさんにコッソリと鋭い目で見られた。たぶん女王陛下から様付けされたからだよね。それはもうどうしようもないんです。


 海神様との繋がりを作った影響で、僕が引くくらい好意的に接してもらえているんです。


「私がお役に立てるとすれば商売に関係することでしょうか? 何か御用命がありましたらいつでも仰せつけください」


「ほう、商売か。ならば我が娘、アダリーシアと話を願いたい。今、財務については任せているのだ」


 え? アダリーシア王女、まだまだ若いのにそんな重責を担っているの? いや、アンネマリー王女なんてもっと若いのに、ダークエルフの島まで来て新しい人魚の村の責任者をしているな。王族怖い。


 そういえばダークエルフの島の存在をカミーユさんに伝えるべきか? 


 デリケートな話だから伝えるにしてもダークエルフの島の皆に許可をとってからの方が良いんだが……まあ、こんな時に焦って考えるほど軽い内容じゃないな。とりあえず今回は口留めしておいて、後でゆっくり考えよう。


「カミーユ様、未熟者ですがよろしくお願いいたします」


「こちらこそよろしくお願いいたします」


 おお、なんか分からない間にカミーユさんとアダリーシア王女の新タッグが結成された。


 人魚側は僕が関係しているから無茶は言わないだろうし、カミーユさんは真っ当な商売人なのでウインウインな関係を構築できるかもしれないな。


 あ、見入っていたけど、入城許可が出ていたんだった。


 ボーっとしていないでサクッと中に入ろう。城に入ったらイネス、フェリシア、マリーナさん達に加えて、カミーユさんの人魚姿が見られるんだよね。凄く楽しみだ。 


 もちろんリムの人魚姿も楽しみだよ? そういえばペントは人魚に……さすがに意味がないな。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 人魚化の装身具なんだし人っぽい上半身が生えるのでは? ああ、でもリムは尻尾が生えたのか
[気になる点]  何も考えてなさ過ぎ。 [一言]  カミーユさん、ワタルに『商人のいろは』とか『報連相』とか期待しちゃいけないよ。カミーユさんたち側からガンガン聞かないと。(自称)良識・常識担当のイル…
[一言] 逆にペントどうなるか気になるやん
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