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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
二十一章
499/572

16話 かなり順調

 苦労を掛けてしまっているカミーユさんの慰安の為に、仕事と偽りクリス号に招待した。疲れた体と心を癒してもらうためにエステフルコースにご案内。癒されて気力が充実したカミーユさんを見て計画通りだとご満悦だった……のだが、なぜか幸せそうな笑顔を浮かべていたカミーユさんが戦士の顔に変わり買い物に邁進し始める。女性の気持ちは難しい。




 カミーユ視点




「コホン……少しだけハリキリすぎたかもしれません」


 正気に……いえ、冷静になると、時間が飛んでいました。お昼前だったはずなのですが、気がつくと十五時を回っていました、両手は購入した商品で塞がっています。


 誰かのスキルで操られていた疑いが浮かびますが、ここに私を騙して商品を買わせたくらいで得になる人はいないので違うのでしょう。


 ワタルさんが、少し? と首を傾げていますが、少しで間違いありません。女にとって豪華客船の美容グッズは神器とすら言えます。


 その新商品が手に入るのですから、これくらいの暴走は許容範囲内でしょう。


 キャッスル号を訪れる貴婦人の中には朝から晩までどころか、滞在中のすべての時間をエステと美容グッズの購入に費やす方すらいらっしゃいます。私の暴走など可愛いものですよ。


 まあ、今回の私は購入制限がなく、キャッスル号のお客様は皆購入制限に四苦八苦しているので同じにはできないのだけど。


「僕とカーラは先に昼食を頂きました。カミーユさん達もお腹が空いたでしょうから昼食に行きますか? まあ、もうおやつの時間ですけど……」


「……そうですね。今の時間にしっかり食べると夜に困るので、軽い物をお願いできますか?」


 形だけとはいえ視察を依頼されているのに、一食を軽めに済ませることになるのは申し訳ないのですが、その分、美容グッズについては知識が深まったので良しにしておきましょう。


「ではカフェに行きましょうか。パリ風のカフェでベーグルやペストリー、生ハムやチーズが美味しいんですよ」


 パリ風というのがよく分かりませんが、その辺りは深く考えたら負けよね。ワタルさんが美味しいというのなら美味しいのでしょう。


 もっとも、ワタルさんの船で美味しくない物を食べたことがないのだけど。


「では、そこでお願いします」


 ワタルさんに案内されてカフェに向かう。ふふ、これでもそれなりに優秀な人間であり、落ち着いた大人であると自負しているのだけど、ワクワクして浮かれてしまいそうだわ。


 ワタルさんは理解していないのでしょうね。


 美食にどれほどの価値があり、ワタルさんの船で出される料理が凄まじく異常であるということを。


 自分の船で出している料理が凄く美味しいことは理解しているようだけど、そこで止まってしまうのが残念なのよね。


 私のところには王宮の料理人が弟子入りを志願してくるくらいなのに。

 

 白を基調としたお洒落なカフェ。もはや見慣れてしまったが、外の美しい海とのコントラストが素晴らしい。


 席に着くとメニューを手渡される。


 さて……どれも魅力的で全部食べてみたいところですが……夕食が食べられなくなってしまえば軽めの食事をお願いした意味がなくなるわね。悩ましいわ。


 ワタルさんが、隣のテーブルのカーラに、え? さっきあんなに食べたのにまだ食べるんですか? え? リムも? あ、うん、まあ……しょうがないか、などと全てを諦めたような声を出していますが、私からすると羨ましいことね。


 私もできるならこの船のすべての料理を食べてみたいわ。


 ……不可能なことは置いておいて、今はメニューに集中しましょう。せっかくの機会を無駄にするのは商人のすることではないわ。


 へー。このペストリーというのはパイ生地なのね。パイは何度か食べたことがあるから、今回はベーグルね。焼く前に煮るというのがとても気になるわ。


 キャッスル号にもあるのかしら? あちらはあちらで沢山のメニューがあるし、お客様が居るから全部のメニューを把握できていないのよね。


「私はスモークサーモンのベーグルサンドとコーヒーにします」


 注文をするとすぐにサポラビちゃんが料理を運んできてくれる。このカフェの制服なのかエプロンと帽子が似合っていて可愛らしい。


 サポラビちゃんは最高だと思う。ワタルさんが付けてくれた私専属のサポラビちゃんが一番可愛いけれど、それでも他の子達の可愛らしさは否定できない。


 私やドナテッラはサポラビちゃん達にとても癒されているし、マウロさんも陰で孫に対するように甘やかしていることも知っている。他の船員達やお客様方にも大人気。


 でも、なぜかワタルさんはサポラビちゃん達に一歩引いたような対応なのよね。女性人気が高いところが嫌なのかしら?


「ありがとう」


 配膳してくれたサポラビちゃんにお礼を言って軽く頭を撫でる。帽子は可愛いのだけど、頭を撫でる時はもったいなく思うわね。サポラビちゃん達、モフモフで手触りも最高だもの。


 マリーナ達の注文もそろい、遅めの昼食を始める。


 スモークサーモンのベーグルサンド。


 真っ白なお皿に映える華やかな見た目ね。ワタルさんの船、特に豪華客船の料理は見た目にまで気を配った料理が多い。


 丸く見ただけで香ばしいと分かるベーグル。鮮やかな緑の葉物、オレンジ色のスモークサーモン、その上に生のオニオンと……クリームチーズかしら? 見ただけで美味しそうよね。


 特にスモークサーモン。これは初めて食べた時は衝撃だったわ。生にしか見えないので最初は戸惑ったけど、サーモンの濃厚な旨みと燻製の香りに直ぐに夢中になった。


 お酒が進むのが難点だけど、夜の穏やかな時間にスモークサーモンとチーズ、そしてスパークリングの白ワインが秘かな楽しみだ。


「ん? 重厚感があるのね」


 ベーグルの表面は固く重さも感じる。ワタルさんの船のパンは柔らかい物も多いのだけど、それらとはタイプが違うようだ。


 試しにベーグルだけ口にしてみる。やはり食感は固く、目が詰まっているのか噛み応えがある。なるほど、だから重みがあるのね。


 味はシンプルに塩かしら? じっくり噛みしめると小麦の風味を強く感じる。シンプルだけどそのまま食べても美味しいわね。


 次は具と一緒に……ああ、これは良いわ。しゃきっとした葉物とオニオンの辛味、それが強い旨みのスモークサーモンと濃厚なクリームチーズと混ざり合う。


 なるほど、その強く複雑な香りと旨みにどっしりとしたベーグルが負けていない。これは良いわね。サンドイッチも好きだけど、ベーグルの方が好みかも。キャッスル号でも探してみましょう。


 続いてミルクと少しの砂糖を入れた温かいコーヒーを飲む。紅茶も好きだけどコーヒーも良いわね。でも、ビールかワインが欲しくなる。昼間だから我慢するけど、次に飲む時に試してみましょう。 


「どうですか?」


「とても美味しいわ」


 ベーグルに夢中でワタルさんの質問に、とても単純な答えを返してしまった。でも、ワタルさん、満足気に頷いているのよね。


 商人であればもう少し詳しい感想を欲しがるものだけど……そういえば今回の定期航路の交渉についても満足の行く契約ができたと伝えたら、それだけで納得してしまった。


 信頼してくれているのだと嬉しく思う反面、どのように交渉し、どのような落としどころで契約を結んだのか、そう言ったところを聞いてもらえないのは少し寂しいわ。


 国や上位貴族、ギルド相手の交渉なんて商人にとって見せ場のようなものだもの。


 ……まあ、武勇伝は戻ってからドナテッラ達に語りましょう。


 さて、次はどうするのかしら?




 ***




 カミーユさんが美味しそうにスモークサーモンのベーグルサンドを食べている。美人の美味しそうに食べる姿って良いよね。


 さて、次はどうしよう?


 カミーユさんの休息が目的だけど、体を動かすこともストレス発散になる。フィットネス系はやりすぎにしても、テニスやパットゴルフなんかは選択肢に含めても構わないだろう。


 カジノは……負けたら発狂する可能性が若干あるから止めておこう。商人のお金に対する情熱を舐めたら駄目だ。


 あとは本命としてショーや映画がある。


 悩む。こういう時は直接聞くか。楽しいことだとしても本人が望まないことは癒しにはならないからな。


「カミーユさん、次ですが体を動かすのと観劇、どちらがいいですか?」


「……そうですね、食事を終えたばかりですから観劇の方が嬉しいですね」


 そうだった。ご飯を食べたばかりで運動は辛いよね。


 カミーユさんとキャッハウフフとスポーツは次の機会だな。そういえば体の心配を考えるとレベルアップも選択肢に入るんだよね。


 レベルが上がれば体力も上がるし疲労にも強くなる。船の視察とは関係ないが、カミーユさんのレベルアップの機会も準備しておこう。


「映画とショーはどちらが良いですか? まあ、ショーの方はサポラビが演者になりますけど……」


「では、ショーの方をお願いします」


 素早い返事だったな。カミーユさんもサポラビが好きなようだ。サポラビが僕が殺した角兎のなれの果てだと知ったらどうなるのだろう?


「分かりました。では少し休んだら行きましょうか」


 カーラさんとリムとふうちゃんがまだ食べているし……。


「お願いします」



 ゆっくりコーヒーを飲み、ショーのフロアへ。


「あら、映画ではないのに真っ暗にするんですか?」


 部屋が暗くなったことをカミーユさんが不思議がる。


「はい、今回のショーは暗闇が必要なんです」


 ショーにも色々とあるが、今回はイルミネイトショーを選んだ。なぜかと言うと、暗闇で形づくられる光の輪郭がサポラビの形になって面白いからだ。


「まあ、可愛らしい!」


 暗闇の中何匹ものサポラビの形がカラフルに浮かび上がると、カミーユさんの歓声が聞こえた。面白いよりも可愛いが先に来るのか。


 まあ、喜んでくれるならそれが一番だ。


 テクニカルに動くサポラビのイルミネイトショー。これはこれで綺麗で面白い。


 他のショーはサポラビだとアレなんだよね。女性役もサポラビになるから、ちょっとというかかなり白ける。


 衣装は劇の物だから、深いスリットが入ったであろう衣装や、セクシーな美女が着ていたであろう衣装をサポラビが身に着けていると残念以外の何ものでもない。


 イルミネイトショーはそういう部分が見えないのが素晴らしいよね。


 カミーユさん癒し計画、今のところかなり順調だ。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] サポラビしらなければ可愛いうさぎですもんね…
[気になる点] 今更なんですけど キャッハウフフって使われるのを見る度に キャッキャッウフフじゃないのかなーと思うのですが 何か狙いがあるのでしょうか 間違ってたらごめんなさい
[一言] ペストリー、馴染のない言葉なので謎でした。 パイ系のパンのことなのね。
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