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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第ニ十章
483/576

23話 一刀両断

 華麗でスタイリッシュな泥棒を目指していたが、最終的にギリギリスタイリッシュ……かも? というレベルで僕の魔導砲奪取作戦は成功した。その結果、トントラード伯爵船団と軍が海戦になったり、伯爵側が督戦を行ったりと色々あったが、無事にキャッスル号に帰還できたので結果オーライということにしておこう。




「ご主人様、ご主人様、起きてくださいご主人様」


「ん? んー、フェリシア、どうかした?」


 体を揺さぶられて眠りから覚める。どうやらフェリシアが僕を起こしていたようだ。徹夜の後だから睡眠途中で起こされるのは辛い。


「はい。どうやら海軍の方がご主人様に面会を求めているようで、カミーユさんがどうするか確認にいらしています」


 軍……海軍? あー海軍か。昨日僕達がドロボーを働いたのは海軍も確認しているよね。だから話を聞きに来たのだろう。


「んー、わかった。身支度を整えてから会うとカミーユさんに伝えて」


「分かりました」


 フェリシアが直ぐに部屋から出ていく。イネスは……まだ隣で熟睡中だな。


 さて、海軍か。用件はいくつか考えられるけど、キャッスル号に直接訪ねてきているということは危ない案件ではないのだろう。


 キャッスル号の安全性は海軍も知っているだろうし、僕に何かしたいのなら船から離れたタイミングを狙うはずだ。


 まあなんやかんや考えなくても、キャッスル号の中なら安全ということだ。それなら身の危険よりも相手の目的を推測したほうが役に立つだろう。


「……分からん」


 歯を磨きつつ考えるが、よく分からない。トントラード伯爵軍のことなら、カミーユさんだけで事足りる。


 ああ、伯爵の身柄か。海軍としても首謀者の身柄は確保しておきたいよね。面倒だったから放流したけど、海軍にとっては困ったことかもしれない。


 とりあえず放流した場所は伝えることにしよう。


「カミーユさん、お待たせしました」


「いえ、ゆっくりできる時間が持ててありがたかったです」


 ……忙しさの元凶である僕にたいする嫌味だろうか? でも、きっかけは僕だけど、騒ぎを大きくしたのも定期航路に大賛成で仕事を作り出しているのもカミーユさん達だよね?


 だから、嫌味ではなく、純粋に休憩が取れたお礼と受け取っておこう。


「それなら良かったです。それで海軍の方がなんの用なのか分かりますか?」


「いえ、ただワタルさんにお会いしたいとしか……でも、いらした方は酷く困った様子でしたよ?」


 困った様子ってことはやっぱりトントラード伯爵の行方か。それならカミーユさんに聞いても良かったと思うのだけど、首謀者を捕らえられていないというのは隠すべき内容なのかな?


 その辺りの機微が僕には理解できないから困る。


「とりあえず会いに行ってみましょうか」


 考えて分からないのなら話を聞いた方が早い。


「そうですね。では、御案内します」


 あれ? カミーユさんも同席するつもりのようだ。隠す隠さないとか関係ないのかもしれない。


 カミーユさんに連れられて軍人の元に向かう。なにやら人目をはばかるということで、一部屋提供してあるらしい。


 カミーユさんのノックの後に目的の部屋に入る。


「カミーユさん、無理を言って申し訳ない。あなたがワタル殿ですね。私、カリャリ軍港の副司令を拝命しております、テルビッツ・ハロルターと申します。急な訪問、申し訳ありません」


「えっと、はい、よろしくお願いします」


 カミーユさんは顔見知りのようで、簡単なあいさつで終わった。それにしてもカリャリ軍港副司令ってどういう地位なんだろう?


 低い地位という訳ではなさそうだが、軍港で二番目に偉いって感じか? 軍全体でどうなのかが想像できない。


 あと、雰囲気も軍人ポクないんだよね。ちょっとポチャッとしているし、なんというか中年のおじさん感が凄い。


 しかも一人で行動している。普通偉い軍人の公務なら部下が同行するはずだ。やっぱり内密な話の可能性が高い。で、そういう時は面倒な話が多いんだよなー。


「さっそくですが、ワタル殿にお願いがあります」


「トントラード伯爵の居場所ですか? それならカリャリの港の西側、そうですね徒歩二時間くらいの場所で海に落としましたよ。もしかしたらこっちに戻っているかもしれませんね」


 嫌な予感がするから話を逸らしてみる。急いで軍に戻って捜索に励んでほしい。


「いえ、トントラード伯爵はずぶ濡れで歩いているところを捕縛しました。ご安心ください、なぜか非常に素直に犯行を自白しております」


 寝て起きたら、もう捕まってた!


 酷い状況だったのは理解できるけど、できればもう少し頑張ってほしかった。素直に犯行を自白って……ああ、心が折れているのか。なんかごめん。


「そうでしたか。安心しました。あはははは……」


「それで、まず一つ目ですが、魔導砲を証拠品として軍に提出していただけませんか?」


 いきなり洒落にならないことをお願いされた。僕は魔導砲が欲しくて頑張ったんだよ。でなければ放置か沈めていた。最終的には沈めちゃったけど。


 断固として拒否したいが、これって拒否していいことなのか?


 うーん、トントラード伯爵が捕まっているなら、僕が魔導砲をゲットしたのを誤魔化すのは難しいよね。


「カミーユさん、僕としては断りたいのですが、拒否したら不味いですか?」


 まだロマンのロの字も味わっていないから、できれば手放したくない。それでも僕の身が不利になり周囲に迷惑がかかるなら考えなくもない。嫌だけど。


「そうですね。ワタルさんが戦って勝ち取ったものですし、この国に所属している訳ではないので提出する義務はありません。軍はキャッスル号を見捨てていますしね」


 おお、義務はないらしい。そうだよね、状況は理解できるけど、だからといって僕達を見捨てたことには変わりないよね。


 カミーユさんの指摘が図星なのか、副司令が汗を噴出している。ざまあみろ。


 あ、内密の話ってことだったけど、立場的に海軍の方が不利だと分かっていたから人目を避けるようにしたのかもしれない。


「ただ、国との関係を考えるならば提出するべきでしょう。魔導砲は強力な兵器ですから、所有していることでかなり警戒され国との関係が悪くなってしまいます」


 上げてから落とすのは止めてほしい。国との関係が悪くなると商売にも影響するよね。やっぱり手放すべきなのか?


「ですがすでにこの国との関係は悪く、移動を考えるくらいの状況です。今更警戒されても状況は変わらないので、ワタルさんの自由にしていいと思いますよ」


 カミーユさん、したたか。一応定期航路の方向で考えているのに、移動を盾に脅しを入れている。


「そういうことなら魔導砲の提出は拒否します」


 苦労が無駄にならなくて良かった。ふふ、どの船に魔導砲を設置しようかな? ルト号だとバランスが悪いかな? でも豪華客船だと船が大きすぎて魔導砲が目立たないかも。


 うーむ、楽しいけど悩ましい。


「いえ、ですから、そこでワタル殿に魔導砲を提出していただくことで、我が国とワタル殿の関係が良くなり、素晴らしい関係が築けると思うのです」


「立場を間違えてはいけません。ワタルさんと仲良くしたいのはブレシア王国です。関係を深めたいのであればそちらが贈り物を用意するべきでしょう。なんでしたら私どもを含めブレシア王国と関係を断っても構いませんよ?」


 副司令のたわごとを一刀両断にするカミーユさん。本気で言っている訳ではないのだろうが、脅しとしては強烈だ。


「お待ちを! そうですね、たしかに私が立場を間違えていました。今までの言葉はお忘れください。まことに申し訳ありません」


 土下座しそうな勢いで謝る副司令。そうだよね、国が荒れる決断をしてまで繋ぎとめようとしているキャッスル号が、副司令のたわごとで旅立ちそうなのだから焦らないはずもない。


 それにしても、国相手に立場を間違えているって言えるの、改めて考えると凄いことだな。


「そうですね、その謝罪を受け入れる必要もないのですが……ワタルさん、どうします?」


「あー、えーっと、まあ一つ貸しということにしておきましょうか」


 よく分からんが、僕が知っているカミーユさんと比べると今日のカミーユさんは容赦がない気がする。なら事なかれ主義でなあなあに済ませるよりも、貸しを作っておいた方が良いはず……たぶん。


 それに、今更賠償金を貰っても仕方がないもんね。


「そうですね、とても大きな貸しを一つということにしておきましょう」


 更に追い打ちをかけるカミーユさん。副司令の顔が引きつっているのだけど、もしかしてカミーユさん、副司令に何か恨みでもある?


「えーっと、これで話はお終いですかね?」


 カミーユさんがちょっと怖いし、まだ眠いからお部屋に戻りたい。


「いえ、厚かましいのですが、もう一つお願いがあります」


 この状況でお願いを続行できるのは確かに厚かましい。僕だったら出直しを選択する流れだ。


「……なんでしょうか?」


「実はトントラード伯爵を尋問して分かったのですが、彼らは王太子殿下の政策に反発し今回の件を決意したそうで、カリャリに来るまでに王太子殿下の派閥に属する海沿いの町をかなり襲ったそうです」


「え? ルッカは大丈夫ですか?」


 アレシアさん達が襲われていたら洒落に、ああ、マリーナさんを迎えに行った時に無事だったのだから大丈夫だな。


「ルッカは規模が大きく、そこを襲うとカリャリにも情報が伝わるので断念したそうです」


「そうですか。不幸中の幸いでしたね」  


 トントラード伯爵ってそういう計算はちゃんとできるんだよな。


 ぶっちゃけ船召喚がチートなだけで、魔導砲を考えると国相手でもいい勝負できたかもしれない。バカっぽいけど、意外と侮れない戦力を確保していた。


「はい。すでに強奪した物資の隠し場所も把握しているのですが、問題は襲われた村や町なのです。本来であれば我々が対処しなければならないのですが、現在国内では騒ぎが頻発しており、我々も迂闊に動けない状況なのです」


「……その復興を手伝えということですか?」


 望まれているのはカリャリの再現か。フェリーの運搬能力は群を抜いているもんな。


 僕達が切っ掛けとは言え国側の自業自得だから、知ったことではないとも思えるが……政治に無関係な人達に迷惑を掛けていると思うと、少し心苦しくもある。


 定期航路の実施まで時間がかかるし、物資の搬送くらいなら手伝ってもいいかな? 魔導師様ロールが面倒ではあるが、今回はフェリーに引っ込んでいればいい。


 まあ、無報酬でやる義理もないし、カミーユさんに交渉してもらって結論を出すか。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 交渉するにしても副司令ごときではなく王族が出てこないと 願いを聞いてやっても貸しにもならんレベルでしょ 未だに国自体が魔導士様の事舐めてるし早く移動すべきだわ
[一言] 証拠として提出したら返ってこないだろうし 返すのも船の定住とか勝手な条件出してくるだろう それってつまり、被害者に対して宝を無償で差し出せと言ってるわけだ その挙げ句に襲われた街を助けろだ…
[一言] よく上から言えたもんだなゴマすりの方まだましじゃね 頼み事でフェリーにすがるとか提案した馬鹿はどいつだw
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