表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第ニ十章
477/576

17話 意外と有能?

 キャッスル号に関して受けた数々の嫌がらせを、カミーユさんが暴露してから一ヶ月。その影響は国中に広がり大きな混乱をもたらした。王太子は粛清に乗り出し、暴露された貴族や豪商はその粛清から逃れようと様々な行動を起こす。そんな中、一人の貴族がキャッスル号襲撃という大胆な策を打つ。




「で、結局どうしましょう。自分に都合の良いことばかり喚き散らしていますけど……」


 最初はキャッスル号の接収の話だったはずなんだけど、気が大きくなったのか魔導師様を奴隷にしてやるとか、魔導師様の財産を全部献上するのだとか言っている。


 トントラード伯爵、あまりのピンチに精神に異常をきたしてしまったのかもしれない。


「そうですね、お客様のこともありますし、すぐに対処したくはあるのですが……」


 カミーユさんが悩まし気に会話を途切れさせた。


「何か問題でも?」


「はい。好き勝手言われていますが、それだけでは伯爵家の船に攻撃する根拠にはなりません」


 まあ文句を言われたからって、伯爵をボコボコにするのは問題だよね。


「でも貴族とか豪商とか、この船にも沢山集まっていますよね? そこに手を出すと伯爵でも許されないんじゃ?」


「無論許されません。許されませんが、だからといって相手が貴族の場合はこちらが好きにしていいということにもならないのです」


 身分制度の弊害ってやつか。世知辛い。お客様に貴族は居るけど、相手が文句を言っている僕達が平民ってところがネックなんだろうな。


 それで、身分制度に守られている方が追い詰められて一か八かの賭けに出たと。それでもなんとかなると思われるキャッスル号の高評価って凄いな。僕としても誇らしくなるよ、嬉しくはないけど。


「でも、船のお客さんの送り迎えはしなくてはならない」


 僕達にお客さんの送り迎えのお願いかな?


「はい。ですが、この状況でも船に来られた方達ですから、滞在の方はおそらく問題はないと考えています。むしろ滞在期間が増えて喜ぶ方も多いかと」


 まあ、混乱が始まってから一ヶ月、こちらで選別している真っ当な人達でも、周囲が荒れればのんきにお泊りなんてしていられない。現に、かなりのキャンセルも出ていると聞いている。


 この状況で泊まりに来られるんだから、ある程度身軽な人達に限定されるよね。


「そうなると、問題はお迎えですか」


「はい。トントラード伯爵はかなりの興奮状態のようですから、こちらが行動を起こせば確実に手を出してくるでしょう、そこでワタルさんにご相談があります」


 やっぱり送迎のお願いか。


「御予約のお客様には申し訳ないのですが、こういう状況ですので、予約はキャンセルということにしたいです」


 あれ? 思っていたのとちょっと違う相談のようだ。


「まあ、無難な対応ですね」


 僕が送迎すれば無理矢理営業は可能だけど、よく考えたら僕達が悪い訳じゃないから無理に営業する必要はないな。


「その上で、トントラード伯爵家の非を知らしめ、国に訴えを起こします」


 訴訟問題に発展してしまった。あ、でも営業妨害だし、普通に訴訟案件だな。


「カミーユさんの考えは理解しました。それで、僕に相談とは?」


「予約キャンセルの許可とその発表、訴えの訴状を商業ギルドに届けるのにお力をお貸しいただけたら助かります」


「アレシア達にお願いすれば、いえ、今アレシアはルッカでしたね。ではドロテアに相談、そういえばジラソーレの皆さんが来ませんね」


 普通ならすぐにこっちに来ると思うんだけど。


「ワタルさん、すみません言い忘れていました。彼女達には船の警戒と船内の治安維持のお願いをしました。すぐにワタルさんの許可を取るつもりだったのですが、申し訳ありません」


 あー、トントラード伯爵の強烈な演説が始まって、頭から抜けちゃったんだな。優秀なカミーユさんらしからぬミスだが、あの演説は力が抜けるから仕方がないだろう。


「それは構いません、後で僕の方からもドロテア達にお礼を言っておきます」


「ありがとうございます。では、諸々の書類を準備してきます」


「了解しました」


 カミーユさん達が部屋を出ていくのを見送り、リムをモチモチしながら状況を整理する。


「……トントラード伯爵、完全無視なんだけど、いいのかな?」


 当初から事態が落ち着くまでは外には関わらない予定だったけど、囲まれて脅されているのにそれも完全に無視するとは思わなかった。


 少しくらい反撃を……いや、ああいうタイプは相手をしない方が嫌がらせになるかも。反論したら喜びそうだもんな。


「ご主人様、攻撃が始まったわ」


「え? もう?」


 割としっかり話し合いはしていたけど、降伏勧告をしたならせめて半日くらいは待つべきだろう。


 待つべきだよね? 交渉のルールなんて知らないけど、心情的にはそう思う。


 慌ててバルコニーに出ると、弓はもちろん魔術やスキルによる攻撃がキャッスル号に振りかかっていた。


 でも、神様の攻撃で無傷なんだから、いくら魔術やスキルであろうともキャッスル号にダメージを与えられるはずもない。


 当然のように攻撃は結界に阻まれ、矢は海に落ち魔法やスキルはその場で消えていった。


 こうなると相手の攻撃は意味を無くし、エンターテインメントの様相を帯びてくる。


 伯爵で船を所持しているだけあって、なかなか優秀な部下を揃えているのか、派手な攻撃も飛んできてかなり見ごたえがある。



「ふはははは」 


 飛んできたのがどんな魔術か、どんなスキルかをイネスとフェリシアと考察していると、戦場? に笑い声が響いた。トントラード伯爵だ。


「聞いてはいたが、なかなかやるではないか。だが、それもこれまでだ。最後にもう一度だけ慈悲をくれてやろう。降伏すれば命だけは助けてやるぞ?」


 もう一度慈悲をくれるらしい。いらないけど。


 でも、トントラード伯爵もこの結果を予想していたみたいだな。ただの馬鹿かと思っていたが、もしかしたらちょっとだけ馬鹿なくらいかもしれない。


 ちなみに馬鹿が拭えないのは、キャッスル号に超強力な結界が常備されていることは誰でも知っていることだからだ。


 この船に泊まるのはVIPばかりなのだから、安全性はしかと認識されている。


 帝国海軍のユニークスキルを含む様々な攻撃を無傷で跳ね返した船と、同等の結界が張られていることはしっかり宣伝している。


 だからこんな事態になってもお客さんはある程度の平静を保っているんだ。


「どうやら我が慈悲が分からぬ愚か者のようだな。できれば無傷で手に入れたかったが仕方がない。だが、私は慈悲深いからな。諦めたらすぐに降伏するのだぞ」


 何回も慈悲深いと言われると、慈悲ってなんだろうって気分になるな。できるだけ傷つけずに船を手に入れたい気持ちはビンビンに伝わってくるけど。


「これを見よ!」


 トントラード伯爵の言葉と共に魔導船が一隻進み出てくる。言われた通り注目していると、船首部分の覆いが取り払われ、なにやら大砲っぽい物が姿を現した。


 船首に大砲って珍しい気がするな。映画や漫画とかでは基本的に大砲は横に付いていた気がする。


 でもアレだな、前にアレシアさん達から船の結界がユニークスキルのレーザービームを弾き飛ばしたって聞いたけど、それと同じ匂いがするな。


「あれは、なんて物を持ち出してきてるのよ!」


 イネスの驚いた声に僕が驚く。同時に船内からも多数の驚きと悲鳴が聞こえてきた。


「え? なに、あれって凄いの?」


「ええ、アレは魔導砲よ。古代の遺跡、それも砦や城に備え付けられているのが極稀に発掘されるんだけど、稼働品は更に少ない超希少品よ」


 魔導砲……ちょっと心くすぐられるアイテムだな。豪華客船に積めないだろうか?


「みんなが驚いているってことは、威力も凄いの?」


「ええ、種類のよって威力も様々らしいけど、山を消し飛ばしたなんて話も伝わっているわ」


 それってガチで凄いよね。まあ、それが神様達の攻撃よりも強いとは思えないけど。


「あれは、山一つ消し飛ばせる感じ?」


「それは無理ね。その魔導砲は船に乗せられるような大きさじゃないらしいから。それでも、あの魔導砲はそれなりに威力があるはずよ。魔導砲の時点で強力なの。なにせ最低でも下級ドラゴンクラスの魔石が必要なくらいだもの」


 下級ドラゴンクラスの魔物か。


 地竜とかシーサーペントとか売りまくった覚えがあるな。


「イネス、妙に魔導砲について詳しくない? そういうの好きだっけ?」


 イネスは気性がサッパリしているが、男のロマン的な物にはそれほど興味は魅かれていなかったように思う。


「別に好きな訳じゃないわ。一度だけ依頼中に魔導砲を発見したことがあるのよ。その時に色々と調べたわ。結局動かなかったけどね」


 お宝として発見していたのか。僕がイネスを買った時にはBランクの冒険者だったんだから、それなりに色々な経験をしているんだろうな。今度色々と聞かせてもらうのも楽しそうだ。


「あれは動くんだよね?」


「動かない物をあんなに堂々と公開したりしないと思うわ」


「たしかに」


 馬鹿からちょっと馬鹿に評価が上がっていたけど、とんでもない物を用意していたんだな。そんな破壊兵器を確保しているのなら、あの自信も分からなくない。


 意外と有能まで評価を上方修正だな。運は悪そうだけど。


 キャッスル号を狙うよりも、国と戦った方が勝ち目があった気がする。


「ご主人様、魔導砲を狙撃しますか?」


 フェリシアが弓を持って僕に確認してくる。たしかにこの状況で狙撃したらとても面白い気がするが、魔導砲、ちょっと欲しいんだよね。


 船召喚の船って基本的に武装は付いていない。別に戦争とかしたい訳じゃないからそれは構わないのだけど、ロマン武器が自分の船に備え付けられているのは燃える。


 魔導砲発射! とかやってみたい。


「あの魔導砲、欲しいから壊さないでね。あ、ドロテア達が攻撃しちゃうかもしれないから、フェリシア、イネス、悪いけど攻撃しないように伝えてきて」


 イネスとフェリシアが部屋を出ていくのを見送り、魔導砲に視線を戻す。


 ……魔導砲が欲しいから攻撃しないでって、ちょっと傲慢だったかな?


 僕的には最上級の魔導砲でもキャッスル号が無事だと判断しているからなんだけど、馬鹿じゃないのとか思われそうだ。


 実際に子供がお菓子を欲しがるような気分で魔導砲が欲しいと言ってしまったし、僕はちょっと増長しているのかもしれない。


 チートに溺れるのは良くないよね。今後はもう少し身の丈を意識して、あ、なんか魔導砲が周囲にバチバチとエネルギーらしきものを放ちだした。


 テスラコイルの放電実験みたいで凄まじくカッコいい。ここまで音は聞こえないが、たぶんバチバチと音がしているのだろう。


 ん? 魔導砲の発射口前になにやら輝きが集まりだした。あれ? なにかが集まって塊になってる?


 え? 砲弾? なんか巨大な椎の実のような形をした物体が。もしかして物理なの?


 砲と付いているから間違ってはいないけど、魔導は? もしかして魔導で砲弾を作るから?


 ちょっと想像と違って拍子抜けしたけど、ここからでも分かるほど巨大な砲弾に本当に結界が持つのか心配になってくる。


 なにあれ、物理的に有り得ないよね。だって砲弾なはずなのに、魔導砲本体よりも大きくなってるじゃん。遠目からの比較だけど、船の半分くらいの大きさになってるよ。しかもそれが浮いている。意味が分からん。


 さすがに創造神様お墨付きの結界が破れることはないと思うけど、ファンタジーなのも程々にしてほしい。いや、ファンタジーは大好きなんだけどね。


 「ふはははは、愚かな、これを見ても降伏を選ばぬか。ならば慈悲の一撃をくれてやろう。魔導砲発射ーーー!」


 トントラード伯爵の絶好調な合図と共に視界の先が真っ白に塗りつぶされ巨大な砲弾が…………うん、創造神様お墨付きの船召喚はやっぱりチートだな。


謹賀新年

明けましておめでとうございます

今年も更新を続けますのでどうぞよろしくお願い申し上げます


読んでくださってありがとうございます


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] どこの国にも戸籍がない(所属してない)魔導師様が攻撃しても、問題が問題にならないのでは?
[一言] まぁ創造神すら封じ込めることができる防御力だから、いくらビビリでも安心して眺めていられるよね 乗客はともかく
[良い点] なんで割れると思ったのか… [一言] あけましておめでとうございます! 今年も楽しみにしております!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ