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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第ニ十章
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13話 カミーユさん達への相談

 ダークエルフの島に戻り、セクハラに対する謝罪も終わってスッキリした気分でフェリシアと村を散策することができた。まあその間に島のチビッ子達と妖精のお小遣い不足を知ったり、妖精の鱗粉というファンタジーアイテムがちょっとアレだったりすることを知ってしまったが、そこには触れないことにしようと思う。催淫剤……。




「……えーっと、そろそろ出発しようと考えています。できれば明日くらいに」


 僕の言葉にアレシアさん達が押し黙る。緊張の一瞬だ。


「……そうね、さすがに遊び過ぎている気がするし、そろそろ行動しないといけないわね」


 良かった。ちょっと残念そうではあるが、素直に受け入れてくれた。


 アレシアさん達だけじゃなくイネスとフェリシアもヨットを気に入り、めちゃくちゃ遊び倒した。


 ダークエルフの島一周レースも二度ほど開催され、その晩には屋形船でもんじゃパーティも開催した。


 温泉の村にも足を運び、雑貨の卸ついでに温泉も堪能しまくった。


 リムと小さくなったペントともアッド号で島を爆走し、遊び回った。その途中に地図作りの旅に出ているロマーノとも出会い、情報を交換したりもした。


 そんなこんなでダークエルフの島を満喫しまくっていると、僕達が作った海中の休憩所兼避難所を利用して人魚の国の人魚達がダークエルフの島に顔を出すようになった。


 アンネマリー王女が大喜びで報告してくれて僕もホッコリした。


 で、僕は思った。


 人魚の国から人魚が訪問するくらい時間が経ったのかと。


 ヨットレース、面白かった、温泉も最高だった、だが遊びすぎだ。


 なんとか回避しようと思っているが、アクアマリン王国との定期航路の相談もしなければならない。拒否するにしても、その結果を知らせねばならないからだ。


 特に獣人の村は凄い勢いで開発されているから、行動は早め早めが吉なんだけど、すっかり遊び倒してしまっている。


 セクハラの謝罪に思考が持っていかれてはいたが、そろそろ動き出さないと不味いだろう。


 でも、楽しかった。基本的に豪華客船でまったりのんびりと贅沢をさせてもらっているのだけれど、今回はなんだか凄くバカンスって感じがした。


 ぶっちゃけ一生このままでいいんじゃ? って気分なんだけど、色々と背負うものもあるので難しい。というか、そんなことをしていたら創造神様に呪い殺されそうな気がする。


 そういう訳で、僕達は働かなければならない。


 ……みんな夏休みが終わってしまった的な顔をしている。まあ、それだけみんなに楽しみを提供できたと考えれば悪くない反応だ。


 さて、あとは出発の挨拶をして、航海中に面倒事を回避する方策を考えることにしよう。




 ***




「何も思いつかなかった……」


 航海の間中、なんとか面倒事を回避する方策を考えていたがサッパリ思いつかなかった。すでにルト号に乗り換え、眼前にキャッスル号が迫っているというのにだ。


 そもそも、ダークエルフの島のチビッ子や妖精達のお小遣い稼ぎ問題すら解決できなかったのに、難民問題を含めたその他諸々な難題をどうにかするとか不可能だよね。


 ……当初の予定通りカミーユさん達に泣きついてなんとかしてもらうしかないのだろう。


 情けないけど、力が及ばないのなら頼りになる人に縋らないとね。下手なことをすればまた書類地獄だ。


 いや、下手なことをしなくても書類地獄は待ち構えていそうだが、その地獄のレベルが上がるのは避けたいよね。


 もうストレス発散からの黒歴史は沢山だ。


 決意を胸にキャッスル号に乗り込む。


 いつもはキャッスル号の様子を確認しながら適当に歩くのだが、気持ちに余裕がないのでそのまま船長室に直行する。


 サポラビに頼んでカミーユさん達を船長室に呼び出すのもお願いしておく。


「ワタルさん、お久しぶりです。お呼びとのことですが急用ですか?」


 船長室でコーヒーを飲みながら一息ついていると、カミーユさんがマウロさんとドナテッラさんを連れて部屋にやってきた。


「みなさん、お久しぶりです。えーっと、急用という訳ではないのですが、面倒事がありまして相談に来ました。とりあえず座ってください」


 丸投げするのは決定なのだけど、丸投げに来ましたとは言えないので相談ということにした。フェリシアにお願いして三人にお茶を出してもらう。


「ん? カミーユさん、どうしました?」


 なぜか座ったカミーユさんが僕を凝視している。


「ワタルさん、リムちゃんとペントちゃん以外にも従魔を増やされたんですか?」


 ああ、僕を見ていたんじゃなくて僕に巻き付いていたペントを見ていたのか。


「この子はペントですよ。色々あって体の大きさを変えられるようになったんです」


「…………さすがワタルさん、なんでもありですね」


 微妙に褒め言葉な気がしないでもないが、遠い目をされながら言われると褒められていないことは理解できる。


 望んだのはペントで叶えたのは海神様、僕は手伝っただけだからその評価は理不尽だと思う。理不尽なスキルを貰った自覚はあるけどね。


 まあ、頑張って否定しても無意味だし、とりあえずさっさと相談してしまおう。




「……なるほど、面白いことになっていますね」


 アクアマリン王国での現状とミランダさんから持ち掛けられた定期航路について相談すると、カミーユさん達が商人の顔になった。


「いえ、別に面白くもなんともないです。僕としては穏便にことを進めて、獣人の皆さんにつつましくも穏やかな生活を提供できればと思っています。あと、書類仕事とかその辺りの面倒事が僕に降りかからない方法を考えてほしいです」


 特に最後の部分はとても重要だ。配点も高いから是非とも正解を導き出してほしい。


「ふむ、アクアマリン王国との定期航路となると間にも拠点が欲しいな。距離的にも伝手的にも南方都市が無難じゃろう」


「そうですね、南方都市には港もあります。キャッスル号が直接入港できる規模ではありませんが、それはどうにでもできるでしょう。安全な物資の移動だけでも食いついてくるはずです」


 いや、僕の話を聞いてた?


 穏便な着地点をという相談をしたはずなのに、マウロさんとドナテッラさんが交易ありきで意見を出し始めている。それ、絶対に大騒ぎになるやつだよ。


「できれば定期航路を開通しない方向で考えてほしいのですが?」


「ワタルさんが心配していることも分かります。ですが、遠く離れたこの場所から他国の難題を解決しようというのも無茶な話なんですよ? それに、私達が定期航路を開通しないアドバイスをしても、それを実行するのはワタルさんなのですから、どうやってもワタルさんに負担は集中します」


「カミーユの言うとおりですね。それなら私達がお手伝いできる定期航路を開通したほうが、ワタルさんの負担は軽くなると思います」


 流れるように反論された。でも、負担が軽くなるのならいいのかな?


「書類仕事、減ります?」


「そうですね、聞いた話ではワタルさんの財力を担保に難民の保証をしている形のようですから、キャッスル号であればその保証を肩代わりできるでしょう。書類もこちらで通せると思います」


 確定はしていないようだがカミーユさんは自信ありげな様子だ。僕の負担が減るなら、別に騒ぎになるくらい構わないのかな?


 なんか凄く自分勝手な考えだけど……今更の話だな。この世界に落ちてきて、僕は基本的に欲望優先だ。


 でも、ちょっと気になることがある。


「あの、みなさん、定期航路に乗り気すぎではありませんか?」


 もうアレだよね、僕が話をしている間から、定期航路以外の選択肢を切り捨てていたよね?


「そりゃああそうじゃろう。これだけの船を所持して、そのまま停泊させておるだけでは宝の持ち腐れじゃ」


「マウロの言うとおりですね。商人として、目の前に大きな可能性が広がっているのに手を出せないのは残念に思っていました」


「ふふ、私達、この船を動かすことになったら何をするか、何度も話し合っていたんですよ」


 マウロさん、カミーユさん、ドナテッラさんが順番に理由を教えてくれる。


 なるほど、僕の相談は猫に鰹節を与えるようなものだったのか。そういえばカミーユさんにキャッスル号を任せた当初、そんな考えを聞かされた気がする。


 楽しそうだし僕への影響は……ないとは言えなさそうだけど、カミーユさん達が受け持ってくれそうだし、そういうことならお任せしてもいいかな? 元々丸投げの予定だったもんね。


 ……あれ?


「あー、ブレシア王国は怒りませんか?」


 キャッスル号の利益を一番得ていたのはこの国だ。定期航路が開通すると交易で利は得るだろうが他の利益は減る。


 交易は儲けになるけど、キャッスル号の商品は特殊なのでここでしか買えないというのは大きなアドバンテージだと思う。それがなくなるのは不愉快だろう。


「怒らせてなにか問題が?」


「えっと、孤児院とかもありますし……」


 カミーユさんの真顔が怖い。なに? どういうこと?


「あはは、カミーユはちょっとストレスが溜まっているだけです。心配しなくても大丈夫ですよ」


「そうじゃな、最悪孤児全員を引き連れて別の場所に移動すればいい」


 ドナテッラさんのフォローをマウロさんが台無しにする。これ、どうすればいいの?


 助けを求めて女性陣に目を向けると、困惑気に目を逸らされた。フェリシアはともかく、イネスはこの船が家族の職場だし、アレシアさん達にいたってはこの国が故郷だよね?


 逃げるのは無責任だと思う。


「……その、ストレスの原因はなんですか?」


 僕がそう聞いた瞬間、カミーユさんの表情が、よくぞ聞いてくれましたと輝いた。


 どうやら僕は地雷を踏み抜いてしまったらしい。


 そういえば最近選別された問題ない貴族しか会っていなかったから忘れていたけど、この国の貴族や王族にも面倒な人が居たな。第二王子とか……その選別をカミーユさんがしていたのなら、そのストレスも相当なものだろう。


 面倒事を回避したかったのだけど、別の面倒ごとに巻き込まれる気がする。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ貴族達の自業自得だな
[一言] 逆にフェリーじゃいけない理由は何だろう?
[一言] 船が出ている間は多少なりとも仕事は楽になるしカミーユさんたちにメリットしかないよね、海の魔物とかどうするか知らんけど
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