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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第ニ十章
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12話 丘の上の村の散歩

 女性陣に対するセクハラの謝罪の為に、空を飛ぶヨットともんじゃ焼き、そして特別迷惑を掛けたイルマさんとクラレッタさんには翻訳引換券と光の神様の祝福付きのペンダントを贈った。黒歴史にはなるだろうが、これで謝罪は一区切りにする。




「穏やかな村になったねー」


「はい。みんな楽しく暮らしています。ご主人様のおかげです」


「あはは、ありがとう」


 フェリシアの褒め言葉を素直に受け取る。謙遜もできるけど、この村を造る時の僕の貢献はかなり大きいから謙遜するのも嫌味だ。


 ダークエルフの島に滞在するということで、久しぶりに丘の上の村をフェリシアとのんびりと散歩することにした。


 まあ、散歩しようと思ったのは、女性陣がヨットに夢中で僕の相手をしてくれないからなんだけどね。


 僕を無視している訳じゃなくて、一緒にヨットで遊ぼうと誘ってはくれるんだけど……毎日ヨット技術を身に染み込ませるように遊ぶ女性陣には正直ついていけない。


 水着姿はとてもまぶしいが、体育会系と帰宅部の精神性の違いがモロに出ていて同じ人種とは思えないくらいだ。まあ実際に人種が違うメンバーもいるというか、そもそも僕が異世界人なんだけどね。


 なんであの人達、あれだけ夢中になれるんだろう? 本気で甲子園を目指す高校球児なみに頑張っている。


 ……まあいい、水着姿ではしゃぐ美女を見るのが眼福なのは確かだし、それよりも今はダークエルフの村を楽しもう。


 普段から偶に訪れているが、ゆっくり確認しながら見て回ると違いがよく分かる。


 村の外には畑が広がり、開拓当初と比べると景色が一変している。


 そうなると当然村の中も変わる。


 石畳という訳ではないが道はしっかり押し固められ、両サイドに溝も掘られて水はけがよくなっている。


 周囲に立つ家も豪華とは言えないがしっかりとした作りに変わり、花壇なども作られて華やかになっている。


 すべての家がそうなっている訳ではないが、おそらく徐々に造り変えられていき、いつかは全てがそうなるのだろう。


 というか、お店の為に立派な建物を建てていなければ今頃全部がそうなっていた気がしないでもない。


 あの建物、もとは駄菓子屋兼雑貨屋とは思えないほど拡張されて造りなおされたからな。


 下手をしなくても村長の家よりも立派だ。


 それだけダークエルフの要望が大きかったんだろうな。


「それにしても、結構人魚達が歩いているね」


 お小遣い目当てに妖精がメッセンジャーとして飛び回っているのは見ていたが、人魚の数が増えた気がする。以前は村でそれほど見かけなかったはずだ。


「ふふ。アンネマリー王女が村の子供達と仲良くなった影響ですね。それまでも徐々に仲を深めてはいたそうですが、王女と子供達のおかげで一気に関係が進んだそうです」


 あー、なるほど、公園で子供同士が仲良くなったのをきっかけに、親同士も仲良くなるみたいな感じか。


 ダークエルフも人魚も隠れ住んでいたから、接触には慎重だったもんね。


 それにしても、改めて見ると凄くファンタジーだな。


 のどかな田舎の村、これは良いんだけど、そこの住人がダークエルフで、ついでに沢山の妖精が飛び回っていて人魚が遊びに来る。


 濃い。なんというか凄く濃い。水玉模様が有名な乳酸飲料の原液バリに濃い。


 ダークエルフが狙われずに平和に暮らせる島がコンセプトだったはずだが、どうしてこうなった?


「ん? 広場で工事をしているけど、何を作ってるの?」


 村の中心の広場は宴会でも利用されるから綺麗に整えられている。村を造り始めた当初はこの広場でキャンプファイアーもした。懐かしむほど時間は経っていないはずだが、思い出すと酷く懐かしい。


「ああ、あれは広場の端にお店を作っているんです」


「お店?」


「はい。私が都会の広場にはお店があると教えました」


 フェリシアが珍しく自慢気な表情をしている。酷く可愛い。それはそれとしてお店か。


 たしかに広場にお店や屋台が並んでいることは多いな。だったら屋台でも構わないと思うのだが、都会と違って移動する必要がないならお店の方が便利かもしれない。


「でも、何を売るの?」


 ぶっちゃけ、この島にはそれほど売り物がないはずだ。見た感じ三店舗くらい造っているよね。


「雑貨屋と同じく、商売をしたい人が交代で使う予定です。人魚の方達も予定に入っているんですよ。魚介料理を売るんだそうです」


 そういえば雑貨屋でも交代でスペースを使っていたな。人魚が作る魚介料理か……言葉だけで美味しそうだ。


 この島を訪れる理由の大半はフェリシアの為だったけど、温泉以外にも楽しみができそうなのは嬉しい。


「あー、わたるだー」


「なんかちょうだいー」


「おいしいもの、おいしいもの」


 未来の楽しみに顔をほころばせていると、悪ガキ共に見つかってしまった。フェリシアとの穏やかな時間が一瞬で壊れた。


 というか悪ガキ共だけでも煩いのに、妖精も一緒に騒いでいるから騒音レベルで煩い。


 なんで一緒に居るんだよと思うが、答えは簡単だな、悪ガキ同士気が合ったのだろう。どうせなら同族嫌悪で反目すれば良かったものを。


「自分達のお小遣いで買いなさい。なんの為の駄菓子屋だと思っているの?」


 僕は学んだんだ。悪ガキ共と妖精に甘い顔をすると際限がないってことを。


「こづかいなんてもうないにきまってるだろ。すくなすぎるんだ!」


「そうだ、すくなすぎるんだー」


「すくない、すくない」


「子供時代のお小遣いは足りないのが当然なんだよ。そこからどうお小遣いを手に入れるかが大切なんだ。お手伝いしてお小遣いを要求しておいで」


 僕の印象だと子供の九割くらいはお小遣いに不足を覚えていると思う。でも、その方が健全な気がするよね。


 子供の頃からお小遣いが余る裕福な生活とか不健全な気がする。羨ましいけど。とても羨ましいけど。


「てつだいなんてそんなにないんだぞ。てきとうなこというなよな」


「いうなー」


「おかしたべたい。おかしたべたい」


 僕の提案は悪ガキ共に一蹴されてしまった。どうやらお小遣いが貰えるような仕事はそんなにないらしい。


 考えてみると当然かもしれないな。大人達もお小遣いをあげたくない訳ではないだろうが、毎日子供達や妖精達全員に仕事を用意するのは難しいだろう。


 あと、大人もお金が足りていない気がする。お酒と美容グッズ、凄い人気だもんな。


 とりあえず大人には自分で考えてもらって、子供と妖精には僕から何か仕事を用意するべきか。


 でも、子供と妖精に与えられる仕事ってなんだ? 


 …………よし、諦めよう。子供や妖精に与えられる仕事なんて簡単に思いつくわけないよね。なんか内職的なことが必要になったら、その時にやらせてみよう。


 あと、ゲームとかだと妖精の鱗粉はアイテムになるよな。買い取りできるか? この辺りも後で調べることにしよう。


「しょうがない。ほら、一人一つまでだぞ」


 諦めて悪ガキ達を追い払うために鞄の中から飴玉を取り出す。


「えー、あめー。ほかにはないのかよー」


 露骨に不満を表すアルミロ。とても可愛くない。こんなに可愛くない悪ガキでも、将来は美形になるのが確定していると思うと、理不尽すぎて泣きたくなる。


「贅沢を言うな。嫌ならやらん。それに今はこれ以外持っていないから文句を言ってもどうにもならないぞ」


 現在、キャッスル号とヨット四艘で召喚枠はいっぱいなんだ。飴を持っていただけ奇跡なんだぞ。


 ……悪ガキと妖精にたかられて飴玉全部強奪された。それでも全員分には足りなかったので、今は悪ガキ達と妖精達の飴の争奪戦が勃発している。


 そう時間が経たないうちに、悪ガキ共は大人に怒られることになるだろう。大人気ないけど、ちょっといい気味だと思ってしまうな。これが日頃のおこないと言うやつだろう。


 悪ガキ共を放っておいて、フェリシアと散歩を再開する。


 といっても、あとはそれほど見る場所は残っていない。この村の最大の見どころは雑貨屋なんだけど、そこには僕が商品を卸しているから行く必要はないんだよね。


 まあ、のんびりとフェリシアと歩くだけで楽しいからいいか。




 ***




「ねえイルマ、妖精の鱗粉って価値があったりする?」


 あの後、予想通り大人達に怒られていたが、それはそれとして妖精の鱗粉に価値があるかどうかは気になる。


「妖精の鱗粉の価値? ええ、あるわよ。幻覚魔術の触媒になるし、催淫剤の原料の一つでもあるから、かなり高値で取引されるわ。まあ、なかなか妖精を発見できないから流通には乗っていないけど」


 ぱーどぅん?


 なんか凄く素敵なようで禁断なお薬が出てきませんでしたか?


 え? どうしよう、とても興味がある。


「あらワタル、いけないことを考えているわね」


「……なんのことでしょう?」


 バレバレかもしれないが、さすがに堂々と認める訳にはいかない。催淫剤にとても興味があることを……。


「まあいいわ。それで、突然どうしたの?」


 見逃してくれたようなので、お言葉に甘えて妖精の小遣い稼ぎについて相談する。


「なるほど、でも、妖精のお小遣い稼ぎに鱗粉を利用するのは止めておいた方がいいわ。理由は言わなくても分かるわよね?」


「分かります」


 全部が全部悪い利用方法だとは思わないが、幻覚魔術と催淫剤となるとかなりの確率で悪用される気がする。


 それにしても妖精の鱗粉なんてファンタジーなアイテムの利用方法が、現実的というかなんというか……でも、幻覚を操る見た目だけは可愛らしいあの妖精達を思うとピッタリな気がしないでもないから不思議だ。


「ん? あー、ちなみにですが、イルマは妖精の鱗粉を手に入れたりしましたか?」


 僕の記憶が確かなら、迷いの森というか山で妖精の痕跡を発見して、かつてないほどハイテンションでマッドに変身していたのはイルマだ。


 気軽に接触できるのに、手に入れていないとは考え辛い。


「無論、交渉して手に入れたわよ」


「…………では、催淫剤も?」


 聞いたら駄目だと分かってはいるのだけど、聞かずにはいられない。


 イルマさんがとても魅力的な笑顔で僕を見ている。笑顔の裏にマッドな幻覚が見える。


 これはアレだな、聞くなってことだな。


 そして幻覚魔法の触媒としてではなく、催淫剤もしっかり作っているな。


 妖精の鱗粉から作られる催淫剤……どんな効果なんだろう? とても気になる。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 久しぶりのダークエルフ島! [一言] つまりワタルがどっかに取られそうになったら催淫剤を使うイルマさんがでると…無くても問題なさそう
[一言] 学者的にも魔術師的にも作れるかどうかは試すよね 使うためじゃなくて、それがどういうものか知ることで 誰かにその薬を使われての被害を防げるからね 匂いあるのか知らないけど、この花の匂いがする…
[一言] 子供たちが暇してるなら娯楽の提供でもしてみたら? てかこの世界の妖精の生態がわからんw
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