9話 ダークエルフの村の解体と新たなダークエルフの島
島を出て2日、いつも通りに訓練、お風呂に入ってイチャイチャしてリムと遊んで寝る。偶に魔物を撃退しながらダークエルフの村近くの海岸に着いた。
「あれ? あそこに木材が置いてあるね。もう解体した家屋を運んで来てるの? 仕事が早いね」
「うふふ、ほんとね」
「みんな移住に希望を持ってるんだと思います、本当にありがとうございます」
「何度も言うけど、フェリシアとの契約条件の範囲内だから気にしなくてもいいんだよ。それより出発しようか」
村に着くと皆忙しそうに働いている。挨拶をして村長の家に行く。
「村長さんこんにちは、だいぶ忙しそうですね、順調ですか?」
「ああ、ワタルさん、こんにちは、あの後会議で決まった通りに準備が済み、先に移住する17人の準備も済んでいます。今は解体して運ぶ家屋を村人総出で海岸に運んでいます」
「そうですか、次はいつ頃出発出来そうですか?」
「はい、人数が必要な作業は明日いっぱいで終わらせて、後は残る者で作業しますので、明後日には出発出来ます」
「早いですね、わかりました明後日に出発できるように準備しておきます」
「はい、よろしくおねがいします」
話し合いが終わり村長は作業に戻り、フェリシアはお母さんの手伝いに行かせて、イネスと雑談しながらリムと遊ぶ。
「うーん、だいぶ時間が空くし、明後日まで何をしようか? 何かお手伝いした方がいいかな?」
「私達はよそ者だし、ある意味この村の恩人なんだから、お手伝いしても気を遣わせるだけじゃないかしら?」
「あーそうかもね、申し訳ないけど出発までのんびりしてようか」
「ええ、そうしましょう」
言葉通り、リムと遊びイネスと雑談しながら、のんびり出発の日を迎えた。
「17名全員揃っていますね、では村長さん出発しても大丈夫ですか?」
「はい、この者達にはワタルさんに従うようによく言い聞かせておきましたので、なにとぞよろしくお願いします」
「分かりました、では、皆さん出発します」
森の中を歩いて船に向かう、こちらの人数が多いからかゴブリンも近寄って来ない。何事も無く船までたどり着く。
序に運ばれて来ている木材の大きな物を船で曳いて行く為にロープで結びつける。最初に柵を作りたいらしく柵の材料を重点的に選んだ。
「皆さん出発しますよ、これから2日間狭いですけど我慢してくださいね」
「「「「「「「「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」」」」」」」」
さすがに僕達を合わせると20人、船の何処を見ても人がいる。特に3人の子供達が大興奮だ。ダークエルフの村には子供が6人いるそうで半分に分けたそうだ。何もない所に連れて行っても大丈夫なんだろうか?
走り回る子供達を大人がたしなめるが効果が無い。食事も大騒ぎで、魔物が襲ってくると大人も子供もパニックになった。
いくら大丈夫だと言い聞かせても無駄で、魔物を撃退するまでは阿鼻叫喚の船内だった。今までで一番辛い航海をやっとの事でこなし、島に到着した。
島を見たダークエルフ達は大歓声を上げた。皆の思ってた以上に良さそうな島で嬉しさが込み上げて来たらしい。その歓声に気が付いたのかバルナバさんとブルーノさんが走り寄って来た、無事だったみたいだ、良かったね。
「皆さんお疲れ様です、無事島に到着しました。荷物を持って下船してください。忘れ物が無いようにお願いしますね」
騒ぎながらも嬉しそうに降りていくダークエルフの人達を見る。頑張った甲斐があった。あと1回、同じ事をしないといけないのが辛いけど。
「ワタルさんお疲れ様です」
「バルナバさん、ブルーノさんも無事でしたか、何か問題は起こりませんでしたか?」
「ええ、何の問題も起こりませんでしたよ」
「それは良かった、この方たちに指示をお願いします。あと船の後方に結び付けている木材も皆で運んでください」
「「はい」」
「おーいみんなー、あの丘の上にテントが張ってあるからな、そこまで移動するぞ。力の有る者は木材も運ぶから手伝ってくれ」
「「「「「おう」」」」」
女性と子供が荷物を持って丘に向かって歩いて行く。男達は船で曳いて来た大量の木材を海岸に引き上げ、少しずつ運ぶようだ。さすがに手伝わないとね。
「2人ともお疲れ様。もう一息だから木材を運んでしまおうか」
「「はい」」
ふー、欲張りすぎたかな? 出来るだけ多くの木材を運ぼうと思って大量に曳いて来たから。何往復しないと駄目なんだろう?
海水に濡れた重い木材を休憩を挟みながら、なんとか日が暮れる前に運び終えた。丘の上にはいくつものテントが張られ夕食の準備が始まっている。
「ふーあと1回集落の人達を運んで、運びきれなかった物を運搬すれば何とかなるかな?」
「うふふ、1から村を作るとしても材料と食料が十分にあるんですもの、何とかなると思うわ」
「ええ、皆も希望をもって楽しそうに働いていました、大丈夫だと思います」
「そうだよね。ふー、今日は疲れたし、夕食を頂いたら船でお風呂に入ろうか」
「うふふ、お風呂は久しぶりね、楽しみだわ」
「そうですね、5日ぶりです。楽しみです」
夕食を終え、船に戻って明日の朝にはそのまま出航する事を伝える。皆は明日から柵を建てるらしい。別れて船に戻りお風呂の準備をする。
「明かりを点けてお風呂に入ると丘の上から見えるかもしれないし、今日は明かりを点けないでお風呂に入ろう」
「うふふ、真っ暗なお風呂ね、楽しいかしら?」
「分かりました、危ないので怪我しない様に注意してくださいね」
ふー肉体労働の後のお風呂は格別だね、溶けてしまいそうだ。暗いので密着した感覚がよく分かる。でもやっぱり見える方が楽しいな、プルルン、おっこれは……リムか……
「リム、暗いから注意するんだよ」
『……ん……』
「ふー、おっ凄い星空。そういえば暗くなったら直ぐ部屋に戻ってたし、こんなに綺麗な星空は初めてだなー」
「本当ですね、夜は出歩かないのでこんな景色はじめてです」
「うふふ、私は冒険者の時に野営で見たことが有ったけど、お風呂に入りながら見る星空はもっと綺麗に見えるわね」
のんびりお風呂に浸かるのもいいなー、いつもは欲望の象徴が目の前にあるから、ゆったりとお風呂を楽しむの久しぶりかもしれない。
いつもより長湯をしてから部屋に戻る、結局ベットではイチャイチャして眠る。
……………
いつものように訓練とリムとの遊び、イチャイチャ、魔物の撃退で2日間の航海を過ごしダークエルフの村近くの海岸に着く。朝の日課を済ませて外に出ると、凄い量の木材が積んである。
「あんなに木材が……、村は更地になってるんじゃ? 村を出て5日間しか経ってないよね?」
「本当ですね、あっ、あそこに父がいます」
「なにかあったのかな?」
船を岸に寄せて村長に話しかける。
「村長さん何かありましたか?」
「ワタルさん、おはようございます。いえ何もありませんよ、村を解体し終わったのでどうせならここで待っていた方が手間がかからないと思いましてね」
「そうなんですか、たしかにこの方がはやく済みますね。まずは木材をロープで船に繋ぎましょうか」
「はい、皆聞いたか? 木材を海に浮かべて船からのロープに縛り付けろ」
「「「「「「「はい」」」」」」」
「しかしこんなに早く済むとは驚きですね」
「大物の解体はワタルさんの出航前に済んでましたから。後は小物と運搬だけで、みんな頑張ってくれました」
「そうでしたか、島の皆さんも張り切って柵を作ると言ってました。皆で頑張れば村の完成も早そうですね」
「ええ、そうなるように頑張りますよ」
木材は半分ほどしか船に繋げなかった、残り半分は次だね。
「では皆さん荷物をもって船に乗り込んでください」
皆が船に乗り込んでいくのを見ながら、乗船許可を出していく……おかしな物を見つけた。
あれは……ロープでグルグル巻きにされた人か? あれ? あの人はじめてダークエルフの村に来た時に睨みつけて来た人だな、どうしたんだろう?
あっ目が合った、ロープの人が激しく暴れだしたな。あっ殴られた、何か僕に敵愾心を持ってる感じなのか?
「村長さんあの人は?」
「……お気になさらないでください、後日再教育するものです」
「はあ、わかりました」
なんか恥ずかしそうだったな、そういえば、1人反対してる人がいるっていってたな。無理やり連れてっていいものなのか? うん、気付かなかった事にしよう。
「では、皆さん出航しますね。途中で魔物に襲われる事も有りますが心配いりません、今までも全て撃退してきました。魔物が襲ってきてもパニックにならずに、落ち着いて行動してください」
「「「「「「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」」」」」」
騒がしい船内、魔物が襲ってきた時はパニックになったものの、出航前の注意が効いたのか、それとも村長さんの信頼感か、1度目のように阿鼻叫喚にまではならなかった。
あの縛られていた男の人は2日間後方デッキに縛られたまま転がされてた……大丈夫なんだろうか?
島に到着すると1度目と同じように大歓声が起こった。その歓声に気が付いた先発隊も丘から降りて来て。荷物を持って降りた村人達とお互いの無事を喜び合っている。
子供達も合流して丘に駆け出して行ってしまった、子供だけで大丈夫なのか? おお、ちゃんと大人の人も追いかけて行った、なんか怒ってたから子供たちはお説教だろうな。
「お疲れ様です、後はあの木材を運ぶだけですね」
「ええ、そうですね。みんな喜ぶのは後だ、さっさとあの木材を運ぶぞ」
おお、人数があるとはやいな、サクサク木材が運ばれていく。残ってたメンバーの方が力持ちが多かったみたいだな。丘の上に着くと柵が半分ほど出来ている。本当に短期間で村が出来上がりそうだ。
木材がドンドン積み上げられていく、手伝いは必要なさそうだな。ここに居ても迷惑になるだろうし、この後どうしようか?
「うーん、どうしようか、まだ昼にもなってないし。残りの木材を取りに戻るか」
「ご主人様、お休みを取らないで大丈夫ですか? 無理なさらないでくださいね」
「フェリシアは大きな考え違いをしてるね」
「なにか間違えましたか?」
「うん、ぶっちゃけると、ここに居るより、ルト号に戻った方が休憩になるんだ」
「ああ、そういえばそうですね。2日間は船に乗っているだけですし」
「うん、今回のように大勢の人を乗せていれば別だけど、3人だけならルト号に乗っている間はほぼ休暇状態だし」
『……りむ…も……』
「ああそうだね、リムもいるよね、忘れてないよ」
『……わすれる…だめ……』
「本当に忘れてないよ、でもごめんね、お詫びに今日は沢山遊ぼうね」
『……ほんと……?』
「本当だよ、お風呂にも入るし、とっても楽しいよ」
『……りむ…おふろ…すき……』
「そうだね、ゆっくりお風呂に入って沢山遊ぼうね。では、船に戻ります。イネスもいい?」
「そうね、戻りましょうか」
村長さんに残りの木材を取って来ると告げてルト号に戻る。村長さんにも心配されたが、さすがに此処より船の方が居心地がいいとは言えなかった。大丈夫とだけ伝えて船に戻り出航する。
「今回で全部木材は運べると思うけど、終わったらどうしようか? まだ何か手伝う事あるかな?」
「そうね、どうしても必要な物が出来たら届けるぐらいかしら?」
「父の話では、十分に物資は足りているそうです。今回の木材を運んで頂ければ、当分大丈夫だと思います」
「そうなんだ、それなら胡椒貿易に行こうか、まだまだ豪華客船は買えないから稼がないと」
「そうね、豪華客船が早く欲しいわ。まあ胡椒の卸す量も限られるし、白金貨も少しずつ下ろしておかないといけないから、まだまだ時間は掛かるわね」
「そうですね、時間をおいて胡椒を卸さないと駄目ですから、どうしても時間が掛かりますね」
「うん、なんか別のお金儲けを探すべきなのか?」
「でもご主人様、胡椒貿易よりも儲かる事なんてなかなか無いですよ」
「うーん、やっぱりそうだよね。まあそんなに簡単に美味しいお仕事が転がってる訳ないし、地道に胡椒貿易だね」
「うふふ、胡椒貿易も本来なら多くの命が失われている、危険なお仕事なのよ」
「そういえば、この船の御蔭で安全に感じてるけど、本来なら30艘に1艘しか成功しない危険な貿易だったね」
なんか船召喚の力に慣れて、調子に乗ってるのかも。僕みたいなタイプは調子に乗ると失敗するからな……気を引き締めて頑張ろう。
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。




