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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第ニ十章
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1話 なるほど、帰りたい

 アーデルハイト女王陛下からなんとかお仕事を頂き、あとはのんびり観光しようと気楽なことを考えているとアンネマリー王女のお願いで女王陛下達をシャトー号に招待することになり、海神様のサプライズ等を経た後、なんやかんやありつつ女王陛下に魔法少女アニメの布教が成功してしまった。悪いことではないはずなのだが、少しだけ人魚の国が心配になる。




「ここはこんなもので良いですか?」


「はい。ここはアクアマリン王国とそれほど離れていないので、逃げ込むスペースだけあれば十分です」


「そうですか……」


 そっか、もうアクアマリン王国に到着しちゃうのか。


 人魚の国を出発したあと、女王陛下から頂いたお仕事を完遂するため、アンネマリー王女や人魚達の意見を聞きながら、海神の神器で海中や海底に結界を作ってきた。


 激しい海流の繭のような結界で、僕から見ても出入口が判別できない仕様なのだが、人魚であればその海流の繭の弱い部分が簡単に見極められるらしく、かなり安全なシェルターとして活用できるそうだ。


 出入口は大柄な人魚が荷物を持ってギリギリ入れるくらいの大きさなので、偶然結界を乗り越え侵入できたとしても、対処できる程度の魔物しか入れないと地味に考えられている。


 結界の位置も人魚が移動しやすいルートに配置しているので、事前に結界があることを広めておけば、人魚が勝手に発見して利用できるそうだ。


 さすが人魚、海の中だとビックリするくらい高性能だ。


「ご主人様、船に戻らないの?」


 考え事をしていると、イネスに声をかけられた。人魚姿のイネスも、相変わらず魅力的だ。


「……うん、戻るよ」


 ここでボーっとしていても仕方がないから戻るしかないのだけれど、気持ち的には戻りたくない。


 アンネマリー王女の言葉を考えるに、人魚の国-アクアマリン王国間での結界の配置は最後になるだろう。


 つまり、出港すれば問答無用でアクアマリン王国に到着してしまう。


 立場もあるし責任もあるから行くしかないのは分かっている。それでも慎重に結界を配置するべきだと時間稼ぎをしてきたが、それももうお終い。逃げられない。


 分かってはいる。分かってはいるんだ。


 さっさと出発して、嫌なことはさっさと済ませてしまった方が精神的に楽だということは。夏休みの宿題は最初に全部終わらせてしまった方が、夏休みを満喫できるのと同じだ。


 でも、大量の仕事が待ち構えていると分かっているのに、効率で行動できるほど人間ができていない。


 でも、逃げ出すほど厚顔無恥にもなれない。チートを貰っても僕はどこまでも一般人なのだろう。それも下寄りの……。


「ご主人様。みんな待っていますよ?」


 今度はフェリシアに注意されてしまった。さすがに悪あがきもここまでか。シャトー号に戻ろう。


 ……できるだけゆっくりと。




 ***




「港の建設予定地が見えてきましたね」


 僕はちゃんと学習できる人間だ。何も考えずに王都に直接向かえば酷い目に遭うことは前回でしっかり学習した。


 だから今回は王都に寄らずに、建設現場に直接乗り込むことにした。


「ええ、それにしても、もう港の方も手を付けているのね」


「はい、予定とは違います。僕達が離れている間に何かあったのかもしれませんね」


 アレシアさんの言うとおり、港の建設予定地にも人影が見える。それも沢山。ついでに簡易的な港も造られていて、いくつか木造の船が停泊している。


 前回アクアマリン王国を脱出、いや、出発した時は、獣人の街の建設をするための村を造るために、その手前の村に資材や人材を集めている段階だった。


 それでも小さな村だったはずのその場所が、賑やかな町に変貌していて驚いた覚えがあるのだが、なんで港の建築まで手を出しているんだ?


 いずれはあの場所に港を造ると建築家のウィリアムさんと相談はしていたが、まずは大元の獣人の街に全力を尽くす予定で、港も資材の搬入が可能な程度にしか造らないはずだった。


 ウィリアムさんは怖いだけあって優秀な人なので、無駄に手を広げる愚を犯すとは思えないから、予想外のことがあったのだろう。


 ……引き返してダークエルフの島に引きこもりたくなってきた。


 まあ、ここまできて逃げ出すわけにはいかないので、大人しくルト号を操船し簡易港に乗り入れる。


「おっ、見慣れない船だな。資材の搬入か、人の輸送、どっちだ?」


 港の小屋に近づくと魚人のおじさんが話しかけてきた。さすがに入港料を取るようなことはしていないようだ。


「そのどちらでもありません。ウィリアムさんかユールさんに用事があって来たんですが、こっちに居ますか?」


 馬鹿正直に村や港を造りにお金を出しているのは僕ですなんて説明しない。前回はそれで感謝してくれる人達が集まってきてしまい大事になったもんな。僕は学習できるんだ、女性関係以外は……。


「うん? それって建築家のお偉い先生のことか?」


「はい」


「うーん、売り込みがしたいのかもしれねえが、会いたいって押し掛けてくる奴が多くてな、今は紹介がなければ会えねえぞ。無理矢理会おうとしても周りから排除される」


 なんかウィリアムさんの方も大変なようだ。まあ、物価が安いこの世界で二千五百億のプロジェクトの責任者だからな、顔を繋ぎたい人も沢山いるだろう。


「その辺は顔見知りなので心配いりません」


「そうなのか? まあそうだとしても、俺にはそれが本当かどうか分からねえから居場所を教えるのは無理だ。会いたいなら、獣人の村にギルドの出張所ができている。そこで確認するといい」


「獣人の村って資材を運び込んでいた一番手前の村のことではないですよね」


 あそこは獣人の村ではなく普通の村だったはずだ。獣人が増えて乗っ取られた?


「ああ、あんちゃんが言っている村は違うな。その先に道を作ってできた村が獣人の村だ」


 本格的に獣人の街を造るための足場になる村のことだな。順調に進んでいるようで安心だけど、もう獣人の村にギルドができるほど完成しているのか?


 長く離れていたとはいえ、一年は経っていないはずだぞ?


「あー、分かった、行ってみるよありがとう。船はここに泊めておいていいの?」


「いや、ここは運搬専用だから停泊は駄目だ。素直に王都に行って、そこから陸路の方が確実だと思うぜ」


 王都には近づきたくないので却下です。まあ、ここに停泊すると送還が面倒だし、別の場所から上陸したほうが良さそうだな。


「分かった、ありがとう」


 魚人のおじさんにお礼を言って船をUターンさせる。さて、人目につかずに上陸しやすい場所は……。




「ご主人様。なんか凄いことになってない?」


「うん、予想外のことになっている気がする」


 ルト号を人目につかない場所で送還し、レンジャー号で出発しようとしたがすぐに諦めた。イネスの言うとおり、なんか凄いことになっていたからだ。


 だって普通に港から道が伸びていて人通りも多いんだもん。こんな場所で目立つレンジャー号に乗っていたら、目立ってしょうがない。


 まあ、普通に歩いていても美女の集団だから目立ちまくりなんだけど、今のところバレてはいないようだし、レンジャー号よりかは目立たないということで納得するべきだろう。


 一緒に来たがっていたアンネマリー王女達とペントにお留守番をお願いしておいて本当に良かった。


 環境が整っていない陸地で苦労させたくなかったからなのだけど、今の状況だと別の意味で大変だっただろう。


 でも、ペントはこういう時に別れるのが寂しくて海神様にお願いしたんだと思うと、ちょっと申し訳なくなる。




 できるだけ自然な感じで道を歩いていたのだが、情報がいっこうに集まらない。なぜなら話題が僕達のことに変更されるからだ。


 この道を通っている大半が肉体労働をしているであろう獣人達。で、そんなむくつけき男達の前に、様々なタイプの美女が姿を現せば話題は一色に染まる。


 特に獣人であるイルマさん、カーラさん、クラレッタさんは大人気なようだ。そういう訳で、マリーナさんに単独での情報収集をお願いした。


 のんびり歩いていれば、マリーナさんが沢山情報を集めて戻ってきてくれるだろう。




「うえ、そんなことになっていたんですか」


「うん、確定ではないけど、総合するとほぼ間違いないと思う」


「へー、さすがワタルと言ったところかしら?」


「いや、アレシア、僕は何もしていませんから、僕がやらかしたみたいに言うのは止めてください」


 ジトっとした目で僕を見るアレシアさんに抗議する。なんでもかんでも僕のせいにされてはたまらない。


「お金を出したのはワタルよね?」


 ドロテアさんの鋭いツッコミが痛い。たしかに大元の原因は僕だ。でも、こんなことになるなんて思わなかったんだから仕方がないと思う。僕は無実だ。


 とりあえずマリーナさんが集めてくれた情報を歩きながら整理しよう。みんなの視線は無視だ。


 えーっと……港まで建設を開始している原因だったな。


 どうやら獣人が集まり過ぎてしまったのが原因なようだ。途中までは商人達が獣人を勧誘したり、奴隷として購入したりして集めていたらしい。


 これは予定通りだったから問題ないのだけど、その結果、アクアマリン王国では商売の神様との契約の元、大金を投じて獣人の為の街を建設しているという噂が大陸を覆ったようだ。


 普通なら酷い目に遭っている獣人達がそんな噂を簡単に信じるはずはないのだけれど、その噂を保証する組織が現れた。


 冒険者ギルドと商業ギルドだ。


 アクアマリン王国だけでは集まらない物資や人材を、近隣諸国で金にあかせて集めまくる。


 仕事内容や物資の利用目的も明確で、獣人の街の建設をギルドが保証する形になったらしい。


 自立できている獣人は別として、現状に恵まれていない獣人達は考えた。獣王国は無理でも、アクアマリンになら商人に頼めば乗せていってもらえる。そこでならまともな暮らしができるかもしれないと。


 そんな流れができあがったことで、自発的に獣人達が集まり仕事が足りなくなる。


 普通なら破綻するところだが、お金が沢山あるんだし、港の建設も開始して雇用を増やせばいいじゃん。


 というのが、大量の獣人と港の建設が開始されている真相なようだ。


 ……これってアレだよね、予定を前倒ししたツケが僕に襲い掛かってくるパターンだよね?


 冗談でもなく、願望でもなく、他人の迷惑も顧みず、割と本気で逃げ出したい。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
“特に獣人であるイルマさん、カーラさん、クラレッタさんは大人気なようだ。” イネスも入れてあげて。
[良い点] ホントこの主人公はさぁ… と思うものの妙に共感する部分もあって読んじゃうところ [気になる点] 砂漠の国でヒジャブっぽい布で顔を覆えば注目も減って楽ね! って学んだのにフードも被らず集団で…
[一言] 仕事丸投げできる人材いねーのか?
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