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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第三章 胡椒貿易とダークエルフの島
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7話 ぶっ飛んだ従業員とミックスフライ

 従業員の態度にお怒りのクラレッタさんの後に付いて行く。あれ楽しい食事会の気分が一瞬で霧散したよ? どうなるの?


 案内されてジラソーレのお部屋に入る。アレシアさんが声を掛けようとして固まった。クラレッタさんの怒りのオーラに触れたのだろう、この後どうなるのかな?


 おっ、ドロテアさんが近づいて来て小声で話しかけて来た。


(ワタルさん、どうなってるんです? あんなに怒ってるクラレッタは初めてですよ?)


(この宿の従業員の態度がチョット、いえ物凄く悪かったのですが、クラレッタさんがあそこまで怒るのは予想外でした。僕はどうしたら良いのか分かりません)


(なるほど、クラレッタは意外と礼儀に厳しいんだ。私達に無礼を働く者は今までいなかったけど、私達の客である君に相当失礼な態度を取ったんだね)


(はい、まあ、結構露骨に煙たがられましたね)


(で、それを見てクラレッタが怒ったと、うん、分かったよ、とりあえずクラレッタの怒りが収まるのを待とう、私には何も出来ない)


 あっさり諦めましたね、まあ無理もないです。今クラレッタさんは自分の怒りを鎮めて冷静になろうとしてるみたいだけど、それでも部屋の中にいる皆は怒りのオーラに触れて固まってるもん。


「アレシア」


「は、はい」


 アレシアさん落ち着いてください、クラレッタさんはアレシアさんに怒っているわけじゃ無いんですよ。


「先ほどワタルさんを迎えに下に降りると、ワタルさんにとても失礼な態度で接客する、オーナーの息子さんがいました。あの方は前にも私達のお客様を、勝手に追い返すような事をなさりましたよね?」


 前科があったんだね、それでもあの態度が出来るってある意味凄いよね。でもオーナーの息子があの態度は駄目だよね。


 いや、普通の従業員なら首だから。オーナーの息子という特権を持つ彼位しかあんな態度は取れないな、ある意味レアキャラだね。


「恩のある方でした。冒険者ギルドでお会いする事ができて何とかなりましたが、その時に私達のお客様を勝手に判断して追い返したりしないと約束しましたよね?」


「え、ええ、そうね、そんな事もあったわね」


「その時の約束を守っての事なのでしょうか? 私達に来客を伝える意思はあったようなのですが、不機嫌な顔で接客をして、ワタルさんに聞こえるように舌打ちをして、ワタルさんの前をこれ見よがしに面倒そうにゆっくりゆっくり歩いてました。


 どう思いますか? 約束を守って伝えようとしたのなら、不機嫌な顔で無礼な態度を私達のお客様に取る事は問題ではないと思いますか?」


「いえ、問題だと思うわ。そういえば前に来た冒険者の友人も、不愉快そうにこの宿の従業員は態度が悪いって言ってたわね。


 宿の人達は親切だし、丁寧に接客してくれるから、何か誤解があったのだと思っていたんだけど。クラレッタの話を聞くと誤解ではないようね」


「私も言われた事がある」「私も」「私もあります」


 何人も言われてたんだね、あの従業員さん完全に欲望で仕事してたな。


 あれ? アレシアさん達まで深刻な雰囲気に、そんなに大きな問題なの? 少しお説教して終わりなんじゃないの?


「ええ、私もこの目で見るまで信じられませんでしたが、最低な応対でした。今まで宿を訪ねてくださった方に、あのような態度を取られていたのであれば、どれ程の方に不愉快な思いをさせていたのか、考えるだけで目眩がします」


 美味しいご飯を皆で作って食べる。楽しいお食事会のはずが、なんでこんな事になってるのかな? まあ、あの従業員のせいなんだけど、ここまでの面倒事になるとは予想がつかなかった。


「ふー、そうですね、結構な人達に不快な思いをさせてしまっているのでしょうね。しかしなんでそんな事をしたのかしら? 私達が何かしてしまったのかしら?」


 えっ? 何言ってるの? アレシアさん本気で言ってるんですか? 驚いてジラソーレの人達を見るとイルマさん以外が考え込んでいる。


 こっそり、イルマさんの隣に移動して小声でたずねる。


(あのー他の方達は本気で考えこんでるのですか? 冗談ではなくて?)


(ええ、本気で考えこんでるのよ。何度か注意はしているんだけど自覚が薄くて困っているの)


(イルマさんはしっかり自覚されてますよね)


(ええ、ワタルさんが熱い視線で自覚させてくれたわね)


 両腕を前で組んで胸を持ち上げながらそんな事言われたら……ごちそうさまです。


(ごちそうさまで、違う、イルマさんは出会った時からバッチリ自覚してたじゃないですか)


(うふふ、そうだったかしら?)


(そうでしたよ、それでドロテアさんとマリーナさんもですか? あの2人は周囲をしっかり観察するタイプだと思うのですが)


(ええ、探索中は冷静で周囲をよく見ているわね。でも、普段は天然なのよ)


(えーっと、お疲れ様です、頑張ってください)


 まさか妖艶で色っぽいイルマさんがこのパーティー唯一の常識人だったとは……世の中って不思議が一杯だね。


 励ましの言葉をかけて離れようとすると腕を組まれた。あっ、お胸様が「うふふ、そうなのよ、とっても大変なの、だから手伝ってね」ああ、耳元でそんな色っぽい声でしゃべられたら、あっ、吐息が……


「ワタルさんにも意見を聞いてみましょうよ」


 えっ? イルマさん、手伝ってってこの事ですか? 自覚を促せって事? 美人にあなた達が美人だからこんな事になったのですって言うの?


「そうですね、ワタルさん何か気が付いた事はありませんか?」


「はあ、あのですね、従業員さんがこんな事をしたのは、おそらく独占欲みたいなものかと思います」


「独占欲ですか?」


「ええ、皆さんはとっても美人です。そしてとっても美人な皆さんに会いに来た男が許せなかったので、あんな態度を取ったのだと思います」


「美人だなんて、照れますね。でもワタルさんは大げさすぎますよ。そんな事ぐらいで失礼な態度取ったりしません」


「あはははは、そうですか? そうかもしれませんね」


「あきらめたら駄目よ」


「そんな事言われましても、僕の説明難しかったですか? これ以上無いほどの分かりやすさだったと思いますよ?」


「それでも頑張って、お・ね・が・い」


 ずるいよ、そんなお願いされたら断れないよ。しかしイルマさんは自分の色気を自覚して使いこなしてるのに、なんで他の人達は分からないのかな?


「あのですね、この宿の従業員の態度が悪いと言っていた人達の中に、女性はいましたか?」


 皆首を横に振っているな。


「女性は普通に通されていますが、男性は不快な思いをしています。それは従業員さんがジラソーレの皆さんに男性を会わせるのが嫌だったんだと思います。好意を持っている美人のお姉さんに近づく男すべてに嫉妬していたのだと思いますよ」


「ワタルさん、自分で言うのもなんですが、私達は顔が良い方だとは思います。美人と言われることも有ります、ですがそれだけでそんな事をするのでしょうか?」


「します、あの従業員さんは恋や憧れをコジらせてしまったんだと思います」


「はあ、完全に理解出来たとは言えませんが、そんな事もあるというのは理解出来ました。いい宿でしたが移った方がよさそうですね」


 これでいいのかな? イルマさんを見ると、頷いているので良かったんだろう。


 コンコン……「申し訳ありません、愚息がご迷惑をお掛けしたそうで、お詫びさせて頂きたく参りました、入ってもよろしいですか?」


「どうぞ」


「この度はご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありません」


 宿の主人と愚息さんが頭を下げている、あれ? 顔を上げる時ガッツリ睨んできた。


 うわっクラレッタさんから怒りの波動が、なんでだよ、ここはお互いの為にも気持ちを押し殺そうよ。ここで睨まなくても他にやりようはあるでしょ、何で火に油を注ぐの!


「お詫びをお受け取りしたいのですが、ご子息が納得されておられないようなのが気になります」


 えっ? という顔をして愚息さんを見る宿の主人、不貞腐れる愚息さんを発見、思わず殴りつける。なんなんだこの状況は、何を如何したらこうなるのか理解が出来ない。


「何を考えてるのだお前は、ご迷惑をお掛けしたお詫びに来たのにその態度は何だ」


 素晴らしい正論です、もっと言ってやってください。


「何で殴るんだよ、あんな冴えない男がジラソーレに会いに来るなんておかしいだろうが、後ろにいい女奴隷も連れてやがるし、金の力でジラソーレに近づくつもりなのは見たら分かるだろうが」


 いや、まあ、お近づきになりたいのは事実なんですが……


「前回言われたから伝言はしたけどな、あんな奴を部屋に通したら駄目に決まってるだろ。俺に任せてたら良かったんだよ。怪しい奴をジラソーレに近づけたりしなかったのに」


 グサッとくる事を言うなこの愚息さん。確かに前回はお土産で媚びを売りに来たんだが、そこまで全力で疑わなくても良いと思う。


「何を訳のわからん事を、宿の従業員に面会を断る権限などあるか」


「今は従業員だが俺は跡取りだぞ、ジラソーレに会わせる価値の無い奴の判断位俺にも出来る。ジラソーレの事は俺に任せておけばいいんだ。ですよねアレシアさん、俺がジラソーレを一番よく分かってますよね」


 おうふ、ここまで見事にコジらせているとは、もう完全にストーカーだな。クラレッタさんも怒りの波動を引っ込めて完全に引いている。うわぁ、カーラさんは涙目になってる、可愛い。


「ご主人、ご子息は混乱されているようですね。長くお世話になって本当に残念ですが宿を移ろうと思います。手続きをお願いします」


「はい、かしこまりました、誠に申し訳ありません」


「そんな、アレシアさん達が出ていくことなんか無いんだよ。俺が宿を継いで皆を守ってやるから、親父引退しろよ、今日から俺が宿の主人だ、ジラソーレに誰も近づグペッ」


「お前はもう何もしゃべるな」


 宿の主人、全力で愚息を殴ったな、生きてるか?


「誠に申し訳ありませんでした、手続き致しますのでこちらにお越しください」


 皆素早く荷物をまとめ始めた、さすがにあの男のヤバさに気が付いたらしい。宿の主人に深々と頭を下げられながら宿をでる。


「思った以上にぶっ飛んだ従業員さんでしたね」


「ええ、私達にはとても愛想のいい青年だったんですが、予想外です」


「予定が狂いましたね、ジラソーレの皆さんも今日は色々やらないといけない事が出来たでしょうし、食事はまた今度にしましょうか?」


 あっ、カーラさんがガーンって表情で固まってる、でもさすがに宿を探したり色々有るだろうから無理だろう。


「いえ、宿を取って冒険者ギルドに伝えるだけなので、時間は大丈夫なんですが、問題は料理をする場所ですね」


 あの修羅場を体験した後に直ぐ料理の話に移れるんですか、たくましいですね。


「時間が大丈夫なら、僕の宿の裏庭を借りて料理しますか? 道具は有るので少し不便ですが作れない事もありませんし」


「そうですね、カーラも楽しみにしていますし、それでお願いしてもいいですか?」


「分かりました、では、行きましょうか」


 女将さんに断って裏庭を借りる。


「では、作りますか」


 手伝ってくれるのはイネスとフェリシア、クラレッタさんだけらしい。カーラさんは見学で、残りのメンバーは海猫の宿屋に部屋を取ったあと、冒険者ギルドに報告を済ませ、部屋でリムと遊ぶそうだ。


 同じ宿屋に泊まれるのは嬉しいのだがAランクの冒険者が泊まるグレードでもないのに大丈夫なのか?


「では、まずは鶏肉の下拵えをクラレッタさんにお願いしてもいいですか? 終わったら魚をこのように骨と皮を剥がして捌いてください。イネスは野菜スープをお願いします。終わったらエビの殻むきと背ワタを取ってください。フェリシアは牡蠣の殻をむいて終わったらイネスを手伝ってください」


「「「はい」」」


「カーラさんもお手伝いしてもらっていいですか?」


「私、料理できないの」


 そんな悲しそうな顔をしないでください、でも可愛い。


「簡単ですから大丈夫ですよ。この乾いたパンを粉々に砕いて欲しいのですが出来ますか?」


「それぐらいなら出来る」


「それでは、お願いしますね」


 出来る事があって嬉しいのか、張り切ってパンを砕いている。


「あの、クラレッタさん、神官の魔法で食中毒に効く魔法はありませんか?」


「はい? 食中毒ですか? ありますよ、浄化の魔法でなおります」


「クラレッタさんは浄化の魔法が使えますか?」


「ええ、使えますよ」


 おお、マヨネーズが作れる。タルタルソースが出来れば、魚のフライも牡蠣フライもより美味しくなるな。


「では、お手数ですがこの割った卵に浄化の魔法をお願いできますか?」


「はい、構いませんが、浄化の魔法を卵に掛けて意味があるんですか?」


「ええ、今から作る物には欠かせない工程なんです。もしクラレッタさんも作るのならば必ず浄化の魔法を掛けてくださいね」


「分かりました」


 浄化を掛けてもらった卵黄に塩、胡椒、レモン汁を入れてよくかき混ぜる。一体化した液体に油を少し入れて混ぜ合わせるのを何度も繰り返す。


 たとえ周りの皆が全員僕より腕力と体力に優れていても、ここは僕が頑張る所だ、無意味な意地を張りながらひたすら混ぜ合わせて、完成だ。


 なんか皆に何してるんだろうって目で見られたけど、後で味わって驚くがいい。固ゆでしたゆで卵にマヨネーズを加えながら潰す、ある程度潰したら刻んだ玉ねぎを加えて混ぜ合わせる、なんちゃってタルタルソースの完成です。ピクルスが無いのが残念だけどまあ十分だよね。


 興味津々のカーラさんにタルタルソースを小さじで、あーんしてみる。少し迷った末にパクッと食いついた、うん可愛い。


「美味しい、ワタルさん、これ美味しい、好き」


 おおう、予想以上のはしゃぎっぷりですな、声を聴いた調理中のメンバーも集まって来たので、一口ずつお裾分けする。みんな気に入ったみたいだ、さすがマヨネーズ、異世界って言ったらマヨネーズだよね。


 下拵えの済んだ材料を溶いた卵に小麦粉を混ぜた液体に浸して、パン粉を付ける。あとは揚げるだけだね、先に周りを片付けて、部屋も食事が出来るように整えてもらう、後はドンドン揚げていくだけだ。


 大きな鍋に油をたっぷりと入れて、熱した油でドンドン揚げていく、網の上に揚がったフライをのせて油を切る。大量の揚げ物が完成した。


 火の始末をして揚げ物を持って部屋に向かう。


「出来ましたよ、魚、牡蠣、エビのフライと鶏の唐揚げ、フライドポテトに野菜スープですね。フライにはこのタルタルソースをつけると美味しいですよ、では頂きましょう」


「いただきます」


 みんな一斉にフライを取る。まず牡蠣フライを食べてみるか、うんカリッと揚がってる。衣の中から牡蠣のエキスが口の中に広がる、最高に美味しい。


「リム、おいしい? 次はこのタルタルソースをかけて食べてみようね」


『……おいしい…すき……』


「そっか良かったね、沢山あるからいっぱい食べようね」


『……うん……』


 皆黙々と食べている、フライがドンドン減っていくので気に入ってるのは分かるんだけど、感想が欲しいな。おっと食べないと無くなりそうだ、プリッとしたエビフライ、魚のフライも全部満足のいく味だった、料理の腕と言うより新鮮な魚介の力だね。


「ごちそうさまでした」


「ワタルさん、とても美味しかったです、私はエビフライが一番好きですね」


「アレシアは間違ってるわ、エビフライも美味しいけど、一番美味しいのは牡蠣フライよ」


「ドロテアが間違ってるのよ、エビフライが一番よ、ねえマリーナ」


「私は牡蠣フライが好き」


「マリーナまで、ねえイルマはエビフライよね?」


「うふふ、私は魚ね」


「カ、カーラは?」


「全部好き」


「ワタルさん、後でこのタルタルソースの作り方を詳しく教えて貰えますか?」


「ええ、構いませんよ」


「ありがとうございます」


 キャーキャーどれが一番美味しいのか言い争ってるな、楽しそうだからいいのか? 後片付けをしてリムを頭に乗せて部屋に戻る。


「ふー大変だったね、2人ともお疲れ様でした」


「大変だったけど面白かったわ。ご主人様の料理もとっても美味しかったし」


「私も楽しかったです、タルタルソースは特に絶品でした」


「ありがとう、気に入ってくれて良かったよ。でもまだ昼過ぎだし、この後どうしようか?」


「そうですね、大変でしたが時間的にはそんなに経ってないんですね」


「でも頑張ったわ、急ぎの用事も無いんだし今日はゆっくりイチャイチャする?」


「イチャイチャします」


 そんな事言われたら、イチャイチャする以外の選択肢は無いよね。

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 食中毒を浄化の魔法で治すことができるのであれば、フグとか毒まみれの魚も食べれる事ができるのかな。
[良い点] おもしろい。 吃驚する~飛んでるギャグだなぁ。 [気になる点] >この宿の従業員の態度が悪いと言っていた人達の中に、女性はいましたか?」  じわっと笑って読みました。 [一言] 面白い小…
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