22話 ささやかな復讐
あと一歩のところまで追いつめた創造神様封印計画。そのあと一歩を詰めるために、戦闘部隊の神々に加えて他の神々の手も借りて、ついでに僕もアッド号を召喚しての総攻撃。船召喚の防御チートを利用してなんとか創造神様の封印に成功した。
「ふぅ。まさかここまで追い込まれるとは思わなかったよ。航君、僕を敵に回したこと、後悔することになるけど、構わないんだね」
スワンボートで唯一の出入口を封鎖し、勝利確定の雄叫びの後に、創造神様の真顔の脅し。
チビりそうになるくらいに怖い。というか少しチビった。
「いえ、僕は創造神様を敵に回そうとは微塵も思っていません。創造神様の命令に全力で従っただけです」
創造神様に恨み骨髄で反旗を翻したけど、言い訳くらいは用意してある。僕は自分が大切なんだ。
「この状況で敵に回るつもりがないと言われても納得できないのだけど、どういうことかな? おっと」
創造神様と話していると、いきなり魔神様が創造神様に魔法をぶちかました。沈着冷静な人、いや、神様だと思っていたのだが、見た目だけなのかな?
「ふん。話しながら小細工をしようとしても無駄だ。貴様の悪あがきを許すつもりはない」
魔神様がシリアスな顔で告げる。つまり創造神様は僕と話しながら何かをしようとしていたってことだな。
「やはり余裕を与えては碌なことにならんな。おい、喜ぶのは後回しだ。ローテーションで攻撃態勢を築く。班と順番を決めろ。それまでは儂と魔神が繋ぐ」
戦神様が喜んでいる神々に指示を出すと、凄まじい歓声が上がり立候補と攻撃の順番を争い始めた。
漏れ聞こえる話を聞くに、有利な状況で創造神様に攻撃ができることが嬉しくてたまらないらしい。気持ちはとてもよく分かる。
だが、話ができないのは困る。だって、言い訳ができないもの。
「戦神様、魔神様。僕も創造神様と話がしたいのですが?」
もちろん創造神様に余計なことをされるのは困るが、今の二神は私怨で全力攻撃をしているようにしか見えない。
「ふむ、そうであったな。戦神、攻撃を抑えるぞ。航、創造神が悪巧みをしたら全力で攻撃する故、心構えだけはしておけ」
「は、はい」
いきなりドッカンされてもビビるなよということだろう。いつドッカンするか分からない話し合いとか嫌だけど、ドッカンしないとたぶん僕が困ることになるから受け入れるしかない。
「えーっと、創造神様。お話を再開しても構いませんか?」
攻撃が穏やかになったので創造神様に話しかける。
「この状況で? 航君、話し合いの意味を知ってる?」
創造神様はどうしてこう息を吐くように煽るのか。
「それは諦めてくださいとしか言えません。それで、僕が創造神様と敵対していない証明ですが、僕は創造神様からの命令、地の龍をどうにかするために行動しているだけです。創造神様が世界と契約してくれないと使命を果たせません」
話を進めるために一方的に言い訳をする。逃げた創造神様が悪いということだ。
「じゃあその命令は破棄。航君、僕を解放してこの場に居る神々と戦うように」
もうなんなのこの創造神。どの面下げてそんな理不尽な命令ができるの?
大企業の社長とか、下手をすれば総理大臣だって炎上しかねないレベルのパワハラだぞ。
まあ、相手は創造神様だから炎上なんのそのだろうし、パワハラを訴えようが気にも留めないのは分かっている。
そしてこういう理不尽があることも事前に予想していたのだ。光の神様が。
「すみません創造神様。僕は創造神様に従うべきと理解しているのですが、光の神様方から僕の仲間に加護を頂く件で、光の神様方と契約を交わしてしまいました。創造神様に世界と契約していただくまで、新たな命令を受けられない状況です。創造神様の命令を果たす契約ですので問題ないと考えていたのですが、このようなことになり申し訳ありません」
表面上は反省しているように謝る。内心では高笑いしているけど。創造神様、ざまぁ! 光の神様万歳!
「じゃあ、光の神達との契約を破棄しておいでよ」
「あら、航さんに契約を破棄する権限はありませんよ。今回の契約は、神々側にしか契約を破棄する権限はありません」
光の神様が物凄い笑顔で登場した。
しかも、最高に輝いている。物理的に。前にも同じようなことがあったけど、今回はその数倍は輝いているように見える。かなり眩しい。
よっぽど今の状況が楽しくて、とてつもなくストレスが発散できているんだろうな。
「光の神。航君との契約を破棄しなよ」
「するわけありませんし、する必要も感じられません」
「僕の敵に回るつもり? 僕は創造神だよ?」
「私が創造神様の敵に回る訳がないじゃないですか。しかし、創造神様に仕える神々の一柱として、涙を呑んで諫言する覚悟です」
「あっははは、さすが僕の生み出した神だ。素晴らしい忠誠心だね。でも、僭越だと思わないかな?」
「どのように思われようとも、創造神様とこの世界の為であれば、私は身を切る覚悟です」
白々しい会話が創造神様と光の神様の間で繰り広げられる。茶番でしかないのだけれど、創造神様が嬉しそうで何よりだ。
これが豪華客船の通路に閉じ込められ、戦神様と魔神様の攻撃に晒されながらでなければ少しは形になるんだけどな。
「創造神様。こちらが我々神々の諫言をまとめた物です。ご確認ください」
光の神様が数枚の書類を、宙に浮かせて創造神様の前に運ぶ。手渡ししないのは、創造神様に手を掴まれるのを警戒したからだろう。素晴らしい信頼関係だ。
「な、なんだいこのふざけた内容は。こんなの受け入れる訳がないだろう。地の龍と全然関係ないじゃないか!」
その内容に目を通した創造神様が憤慨する。
うん、そうだよね。怒るよね。
神々と作戦会議をしている時に、光の神様からお願いされたから目を通したんだけど、創造神様を真人間、いや、真神プロジェクトといっても過言ではない内容だった。
簡単に言うと、夏休みの生活円グラフだ。
何時起床、何時から何時まで仕事と事細かに決められていて、ついでに禁止事項や罰則も事細かに決められている。
これは光の神様のストレス発散方法の一つだったらしいが、この機会に世界との契約を結ばせたいそうだ。
僕も創造神様が真神になるのは大賛成のなので、報酬と引き換えに話を受け入れた。
報酬は、一緒にお風呂&お互いに体の洗いっこだ。
水着の着用とデリケートな部分に触れないことを約束させられたが、僕も水着をマイクロビキニに決定することに成功し、お互いに悪くない取引ができたと思う。
他にも地の龍の契約とか、僕の船召喚を取り上げない契約とか、僕の呪いと変わらない祝福を解くとか、色々大切な契約も混ざっているのだが、正直おまけ扱いになっていると思う。
さて、僕が議論に混ざっても碌なことにならないし、僕は僕でできることをしよう。
まずは、お世話になった神々への歓待だな。
「神々の皆様、大変お世話になりました。メインレストランに他の船の料理やお酒、デザート類を放出しますので、存分にお楽しみください!」
大声で宣言すると、神々から怒号のような歓声が上がった。
喜んでくれるのは嬉しいし楽しんでもらいたいとも思うが、下手したら創造神様が逃げ出す切っ掛けになりかねないな。そこだけは注意するように頼んでおこう。
「あっ、美食神様と森の女神様!」
メインレストランで他の船の料理を並べていると、美食神様と森の女神様がやって来た。
「航、お疲れ様」
「航さん、お疲れさまでした」
女神様の労わりの言葉が心に染みる。
「呪いが解けたら耳かきは忘れないでくださいね!」
あれ? 労わりの言葉に対するお礼を言うつもりだったのに、欲望が漏れてしまった。
「ふふ。無論約束は守るわ」
「ええ、交互に片方ずつ耳かきをするんですよね。膝枕付きで」
ちょっと恥ずかしかったが、その言葉に救われる。光の女神様との混浴も控えているし、幸せで大忙しだな。
「でも、本当に呪いが解けるの? 創造神様は意地になると面倒よ?」
美食神様が困った表情で心配してくれる。
「大丈夫です。光の神様が畑神様も呼んで、徹底的にお小言と退屈で追い詰めるそうです」
創造神様が一番嫌いな退屈と、創造神様がとても苦手としている畑神様の真っ当なお小言のコンボ。
これを終わりなく続け、そこから見える場所で楽し気に宴会をしていれば、創造神様はどんな内容の契約書だろうと、いずれは耐えきれずにサインすると自信満々だった。
あの光の神様が自信満々なのだから、ほぼ間違いなく実現するだろう。美食神様と森の女神様もそれなら安心だと同意してくれたから更に心強い。
なんだかかなり昔の警察の取り調べっぽい臭いがしなくもないが、その辺りは気にしないことにする。
簡単な会話の後、フェリーの料理に興味津々の美食神様と、それに付き合う森の女神様を見送り料理の配膳に戻る。
***
創造神様の封印に成功してから十八日経った。
あれから僕は地の龍の島に戻り、女性陣とコボルト達と戯れながら三日に一度シャトー号を訪問する生活を送っている。
なかなか創造神様が契約書にサインをしないからだ。
いやだ、もういやだ、暇だ、お小言はもう沢山と泣き言を漏らすのだが、契約書の内容が本当に嫌らしく苦しみながらも拒絶を繰り返している。
反面、他の神々はきちんとローテーションを組み、創造神様の見張りと煽りに余念がない。とてもイキイキとしている。
何人かの神様に、ありがとう神生でも最高に幸せな日々だとお礼を言われるくらいだ。
まあ、喜んでもらえるのは嬉しい。でも、船の召喚枠が二枠使用されていることと、女性に触れられないのはとても辛い。
関りがないのなら耐えられるが、目の前に本来なら触れられる美女が存在していると、苦しみも増えてしまう。
そして、もっとも殺意を覚えたのは、女性に触れられない祝福という名の呪い、コボルトにまで範囲が及んでいたこと。
龍の島に戻り、アレシアさん達のある程度の報告を終え、さあ癒されようとリムを可愛がりながら救世主に手を伸ばして弾かれた。
救世主が雌だったことにも驚いたが、モフモフすら奪われる悪意には憎悪を覚えた。
だから僕はシャトー号に行くたびに、創造神様の視界の隅でご馳走をむさぼるようにしている。
ささやかな復讐だが意外と効果がてきめんで、創造神様から献上を求められるが聞こえないふりをしている。
これはこれで楽しくはあるが、できればそろそろ折れてほしい。今回の訪問でなんとかなると良いな。
読んでくださってありがとうございます。




