5話 南方都市と移住のお買い物
朝か……「んちゅ、おはようございますご主人様」
「イネス、おはよう」
身支度を整え、朝食をご馳走になって出発する。
門まで歩いていると、1人のダークエルフの青年? に物凄く睨まれてる。なんかしたかな?
「お見送りありがとうございます。7日後にまた来ますので、よろしくお願いします」
「はい、ありがとうございます、どうぞよろしくお願いします」
村長さん達と別れて海岸に向かう。
「フェリシア、ご両親と沢山話せた?」
「ええ、心配していたみたいで、ご主人様の御蔭で少し安心してもらえました」
「そうなんだ、それは良かったね」
雑談をしながら、偶に出て来るゴブリンを倒して、海岸に到着して船に乗る。森に居る間はリムを撫でてるだけだったな、護衛が頼もしいのは良い事だよね。
「ふーこの距離だと、明日の朝には南方都市に着きそうだね、明日は早起きして胡椒を外に積んでおかないと」
「はい、ご主人様。そういえば南方都市では宿屋に泊まるんですか?」
「ん? 考えてなかった、でも海猫の宿屋にもお世話になってるし、料理も食べたいから、宿屋に泊まろうか」
「はい」
「それならお風呂に暫く入れなくなるから、今日はお風呂に入りましょうよ、ご主人様」
「いいね、お風呂に入ろうか」
前方デッキにお風呂を用意して、裸になる。2人に体を洗ってもらい、お風呂に浸かる。2人の洗いっこに参加したいが、毎回イネスにちょっとHな事以上だって諦めさせられる。
でも美人2人の戯れあう姿はそれだけで素晴らしいと思う。プカリと浮かんでいるリムを撫でながらこの光景を目に焼き付ける。思う存分お風呂で戯れて、夕食を食べる。ベットでもイチャイチャしてから眠りにつく。
目が覚めて毎朝の日課の後、朝食を食べて、身支度を整える。
「胡椒を出すから、空いているスペースにドンドン運んでね。沢山持ってきたのを見せるために、前方デッキと、後方デッキには沢山積んで布を掛けてね」
「ご主人様、胡椒を置く場所が無くなったのですが」
「これは予想外です……どうしよう? まだ胡椒をゴムボート20艘分、半分しか出してないんだけど船が満杯……全部換金すると怪しまれるよね?」
「さすがに、怪しまれると思うわ。何か特殊なスキルを持ってると思われるでしょうね、空間系とか」
「小舟の魔導船でも騒ぎになったし、この魔導船も微妙に目立つし。これ以上の注目は避けるべきだよね、半分でやめて次に回そう」
「「はい」」
南方都市の係留所について、船を止める場所と、商業ギルドのカミーユさんに連絡を頼む。カミーユさん居るといいな。
暫く待っていると、沢山の荷車を従えてカミーユさんが来てくれた。荷車も引き連れて来るとは、カミーユさん、これが出来る女と言うやつなのですね。
「おはようございます、カミーユさん、朝早くからすいません」
「おはようございます、ワタルさん、ご無事で何よりです、リムちゃんも元気そうですね」
リムは頭の上で飛び跳ねながら『……元気……』といっている、可愛い。
「ええ、リムも元気といっています。胡椒を運び出しますね」
「はい、すべて商業ギルドに卸してもらえますか?」
「ええ、そのつもりです」
「ありがとうございます」
船から港に胡椒を降ろして、商業ギルドの方達に荷車に運んでもらう。荷車が足りなくなって来たな、まだ3分の1位は残っているんだが。
「かなり沢山積めるんですね、ワタルさん、残りはどの位ありますか?」
「あと3分の1位ありますね」
危なかったな、この量でも疑問を持たれてる。全部放出してたらどうなった事か。
「分かりました、一度積んだ荷車をギルドに運んで。新しく荷車を持ってきてもらいますね」
やっとこさ荷物を全部積み終わり、商業ギルドへ向かう。まだ朝も早いのでそんなに目立ってないのが嬉しいな。
「では確認してまいりますので、こちらでお待ちください」
別室に通されてお茶を出してもらう。のんびり雑談しながら待っているとカミーユさんが戻って来た。
「大変状態の良い胡椒でした。全部で72白金貨になりますが、宜しいでしょうか?」
「あっはい、金貨50枚分を残してギルドの口座にお願いします。それで金貨1枚分は銀貨に両替してもらえれば助かります」
「かしこまりました、そのように手配いたします。改めまして胡椒貿易成功おめでとうございます」
「ありがとうございます、あっカミーユさんにお土産があるんですよ。香辛料の詰め合わせと、南の大陸の珍しい布です」
「まあ、ありがたいのですが、このような高価な物を頂くわけにはまいりません」
「あははは、大丈夫なんですよ。胡椒を沢山買いましたし、お土産として沢山買ったら、かなり値引きをしてくれたんです。気にしないで受け取ってください」
「こちらの大陸では貴重品なんですよ」
「うーん、でもお土産に買ったものをお金に変えるのも悲しいので、受け取ってもらえたら嬉しいです」
「わかりました、大切に使わせて頂きますね、ありがとうございます」
その笑顔だけで十分です、ありがとうございます。
「あっ、このお酒なんですが、ギルドマスターへのお土産なんです。お忙しい人ですので、カミーユさんからお渡し願えますか?」
「かしこまりました」
「ワタルさん、南の大陸はどんな様子でしたか?」
「ああ、それがですね、カターニア王国にしか行ってないのですが。えーと、帰りの航海を合わせると、だいたい3ヶ月ほど前に国王様が急死したそうで、武力衝突はまだですが後継者争いで治安が悪くなってましたね」
「そうですか、交渉がない国ですが、更に胡椒貿易が難しくなってしまいましたね」
「ええ、観光も出来ませんでした、あと何度か胡椒貿易に行こうかと思っているんですが、治安の悪化が不安ですね」
「まあ、まだ胡椒貿易をされるおつもりなのですか?」
「ええ、そのつもりです。あんまり胡椒を持ってきても売れなくなりますか?」
「いえ、今回位の量でしたら、まだまだ余裕がありますが。せっかく大金を稼がれたのですから、安全な商売をなされた方が良いと思いますが」
「ああ、色々な場所に行くつもりですから、胡椒貿易はそのついでなんです。次はカターニア王国の隣の国を目指してみようかと思っています」
「そうなんですか、でも危険な航海という事は十分に認識して死なないでくださいね」
あきれた目で見られてる、ゾクゾクするな、あれ? 前にもこんな事があった気が……
「はい、十分に気を付けます、ありがとうございました」
「あとあの船を停泊させる係留所を借りたいんですが、空いてますか?」
「少々お待ちください、はい、ございますね。小型の魔導船の係留所は1ヶ月3銀貨でお貸しできますが宜しいですか?」
「はい、よろしくお願いします、3銀貨は胡椒の代金から引いておいてください」
「かしこまりました、では55番の係留所をお使いください」
「あっ、それと6日後にちょっと遠出するんですが、そのまま南の大陸に出発するかもしれないんで5日後に30白金貨引き出したいのですが可能ですか? それとスパイダーシルクを10白金貨分お願いしたいのですが」
「白金貨は5日間の時間を頂けるのであればご用意できますが、スパイダーシルクは5白金貨分ぐらいしか集まらないと思います、どうなさいますか?」
「では、スパイダーシルクは5白金貨分お願いします。無理に集める必要はないです。集まった分だけでも結構ですので、よろしくお願いします」
「お気遣いありがとうございます、精一杯集めさせていただきます」
「ありがとうございます、お手数ですがよろしくお願いします」
しかし、豪華客船を買う時は最低でも500白金貨必要なんだよな。いくら何でも一気に500白金貨下ろしたら大騒ぎになりそうだな、コツコツ白金貨を下ろして送還しておくか。
報酬を貰って商業ギルドを出る。途中でディーノさんとエンリコさんを見つけたのでお土産を渡す。別の大陸のお酒で美味しいか分かりませんと言って渡したら、楽しみだと言って笑っていた。
ドニーノさんにもお酒を渡し、後は……グイドさん達か渡せる機会があるかな? なかったら申し訳ないけどカミーユさんに頼もう、ジラソーレの皆には意地でも直接渡す。
海猫の宿屋に着いて部屋を取るついでに、お土産を渡す。布より香辛料が喜んでもらえた、色々楽しむそうだ。
「ふー、あとお土産は、グイドさん達とジラソーレの皆さんに渡して、移住の為の道具と食料を買いそろえるぐらいだよね。2人は何かやりたい事ある?」
「うふふふ、美味しい物が食べたいわ」
「私は特に思いつきません」
「美味しい物?お金も入りましたし何か食べに行くのもいいね。イネスはどこかいいとこ知ってる?」
「港の側にある食堂が美味しかったわ、新鮮な魚が沢山食べられるわね」
「もうすぐお昼だし、そのお店に行こうか、帰りにグイドさんの家とジラソーレの皆さんの定宿に寄って買い物をして帰ろう。リムもそれでいいかな?」
『……りむ…おさかな…たべる……』
頭の上でプルプルしながら答える……可愛い。
イネスお勧めの食堂は美味しかった。色んな種類の魚や貝を網で焼いて出すだけのシンプルな物だったが、新鮮な魚介はそれだけで十分に美味しかった。
そういえばずっと海に居るのに新鮮なお魚を食べてなかったな。釣りでもするか? やった事ないけど。
近くの市場で魚介類を衝動買いしてしまった。悪くなるのでこっそりゴムボートにしまったが、人が通りかかって見られそうになった、あんまり路上で船召喚は使わない方がいいね。
グイドさんの家に寄るとタイミングよく帰宅していた。無事戻った事を喜んでくれたが、お酒を渡すとそれ以上に喜んでいた……なんか釈然としないな。
カルロさんとダニエルさんは島に居るそうなので、グイドさんに預けて2人に渡してもらえるように頼んだ……酒を見る目が怪しいグイドさんがちょっと心配だな。無事に届くことを祈ろう。
商店街の近くに来たので買い物をしておく。
「保存の為には挽いてない小麦の方が良いんだよね? フェリシアの村には小麦を粉にする道具はある?」
「はい、あります。村でも小麦をそのまま保存していましたから」
「そうなんだ、なら小麦を買い足して、何度かに分けて沢山仕入れよう。どの位仕入れたらいいのかな?フェリシアの村は何人ぐらい居るの?」
「父が言うには現在35人が村に住んでいるそうです。襲撃で本当に人が少なくなってしまいました」
おうふ、暗い話題を振ってしまった。もう少し気が利く人間になりたいです。
小麦を40人が半年ほど暮らせる量が欲しいと、お店の人に聞くと相当な量になるらしい。何度かに分けて船の前まで運んでもらう契約をする。
肉類は草原に角兎もいたし、狩をするダークエルフなら問題無く捕まえられるだろうけど、一応干し肉を買っておくか。
野菜は悪くなるので少量買うとして、野菜の種も売っていたので、全種類買っておく。
以前、筏のテントを買った店で、10人用の大きなテント2個、5人用のテントを5個、2人用のテントを10個、注文して船の前に運んでもらえるように依頼する。大量注文にホクホクしていたな。
あとは大工道具と農具も必要だな、雑貨店で思いつく限り買い物した。クワ10本、シャベル10本、大工道具セット5セット大量の釘、桶10個だ、これも船の前に運んでもらう。
フェリシアがそんなに必要が無いと言ってきたので、いつも自分たちが島に居るわけではない事、予備は大切な事を説明して、細々とした必要な物を見つけては買い物を続けた。
気が付いたら10金貨も使っていた、イネスとフェリシアがあきれた目で僕を見ている。ゾクゾクするな……あれ? 前にもこんな気持ちになった事があったような……
何もない場所で1から開拓する大変さを必死で説明して分かってもらう。決して大金が入ってお大尽のような買い物がしてみたかったとかじゃないんだ。
疑惑の目を向けられている気がするが気のせいだよね?
「ある程度の物は揃ったと思うけど、他に何か必要な物はあるかな?」
「うーん、どうなのかしら、もうこれ以上は実際に生活してみて、必要な物を買う方がいいと思うわ。あの島に偶には様子を見に行くんでしょ?」
「ええ、そのつもりです。特に最初の頃は野菜なんかも運ばないといけないですしね」
「十分です、こんなにお金を使わせてしまって申し訳ありません、ご主人様」
「フェリシアが気に病む事じゃないよ。移住のお手伝いは最初から契約に入っているし。契約を守っているだけで、フェリシアの当然の権利です」
「うふふ、早く移住を終えて楽しい事がしたいんですものね」
「駄目だよ、イネス、今僕がちょっとカッコよかった所なのに」
「あら? したくないの?」
「いえ、したいです」
「正直なのはいい事よ、ご主人様」
「フェリシアも気に病むんじゃなくて、沢山頑張ってもらえたのなら、頑張って沢山楽しい事をすればいいのよ。ご主人様はそれで満足してくれるはずよ、そうよね、ご主人様?」
「あはははは、恥ずかしいけど、大満足するよ」
「はい、ありがとうございます」
「さて、次はジラソーレの皆さんにお土産を配りに行きましょうか」
39金貨 98銀貨 70銅貨 ギルド口座 71白金貨 49金貨 97銀貨
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。




