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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
十八章
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11話 中間管理職の悲哀

 コボルト達が立てこもる砦にご馳走を投げ入れ、直接的な飯テロを決行した結果、見事に子供コボルト達を罠にかけることに成功した。この子供達を切っ掛けに大人コボルト達も芋づる式に罠に賭けようと企むが、それを見越したのかついに地の龍が姿を現した。




 ……さて……これからどうしよう?


 巨大な龍が僕達目指して飛んできている。これはまあ構わない。元々、こちらに飛んできている地の龍を説得することが目的だ。会わなければ話にならない。


 まあ、その地の龍に会うためにこれほど苦労するとは思わなかったけど……。


 で、ようやく地の龍に会えそうなんだけど、創造神様からもらった事前情報は、穏やかで優しい性格、怒らせると怖い、暴れたのが恥ずかしくて島に引きこもっている。


 これだけだ。


 今思うと、事前にもっと情報収集をしておくべきだった。


 創造神様からは逃げられないと諦めて、報酬の交渉に全力を傾けたのは失敗だったな。


 この島に来る途中に気がつけば良かったのだけど、踊り子の衣装を着た美女達に夢中でそれどころではなかったし、この島に到着してからはコボルト達に翻弄されて地の龍どころではなかった。


 あきらかに準備不足だ。


 ……創造神様が言った、穏やかで優しい性格という言葉に賭けるしかないのだが……コボルト達の創造神様に対する罵声は、おそらく地の龍の本音だよね?


 すでに創造神様からもらった情報と食い違いが出ている気がする。あっ、もう、目前まで……。


 心の準備が終わる前に、ズシンと音をたてて地の龍が到着してしまった。


 船召喚の結界が強力なのは理解しているが、顔だけでハイダウェイ号よりも大きい地の龍を見ると、心もとなくなってくる。


 グレートワームの時のように船ごと呑み込まれるのは遠慮したいなー。


「ワタル、声をかけないの? 私が話す?」


 ちょっと現実逃避をしながらボーっとしていると、アレシアさんが話しかけてきた。


 多少は緊張しているようだが、それでも普段の様子とほとんど違いは見受けられない。他のメンバーも同様だ。


 コボルト達の前では取り乱しまくっていたのに、巨大な地の龍の前では平常心って、なにかが間違っているよね。


「いえ、僕が話します」


 一瞬、全部アレシアさん達に任せてしまおうかとも思ったが、僕が創造神様から受けたミッションなんだし、僕が頑張らなければいけない。


 いや、今回はアレシアさん達にも報酬がある共同ミッションなのだし、みんなで頑張れば……でも、とりあえずは僕が頑張ろう。男として良いところを見せたいよね。


「そう? 頑張ってね」


「はい!」


 アレシアさんの応援で元気百倍です!


「あなた達は創造神の使いですね」


 気合を入れて話しかけようとしたら、地の龍から話しかけてきた。


 ハイダウェイ号のデッキからでも見上げるような巨大さなのに、声は穏やかで優しさすら感じられる。


 とりあえず、いきなり戦闘ということはなさそうだ。


「はい、ワタルと言います。創造神様からのメッセージを届けに参りました」


「……そうですか」


 メッセージを届けに来たと告げただけなのに、地の龍のテンションが明らかに下がった。共感はできるが、使者の立場の僕からするととても気まずい。


「あ、あのー」


「失礼、私にこの島を出て大地の管理をしろという命令を届けに来た、という認識で間違いありませんね?」


「は、はい。間違いありません」


 おそるおそる話しかけようとしたら言葉を被せられて、ついでにメッセージの内容まで端的に説明されてしまった。僕がこの島に来た意味は?


「やはりですか。ワタルと言いましたね。私は創造神に大地の管理の引退を願い出ています。それについての返答はありませんか?」


 初耳です。引き籠っているのではなく引退? それだとだいぶ話が変わってくるのだけど?


 創造神様が引退の件を隠していた?


 ……それはないな。創造神様は自分に絶対の自信がある面倒な権力者だ。


 わざわざ自分に都合の悪いことを隠したりせずに、それも含めてなんとかしろと堂々と無茶振りを押し付けてくるタイプ。質が悪い。


 それに光の神様が一緒だったから、創造神様が万が一隠していたとしても、フォローしてくれるはず。となると……。


「えーっと……引退の件については、まったく聞いておりません。あの、創造神様にまでそのお願いが届いていないのではないですか?」  


 書類が上に登っている途中で行方不明になるのは、ビジネス漫画ではよくある展開だ。


「いえ、直接申請したのでそれはありません。それなのに創造神の使者はいつもいつも働け働けと……こちらの言うことを聞きもしない」


 おおう、地の龍が不満を吐き出し始めた。かなりストレスが溜まっている様子だ。


 それにしても使者か。創造神様も何回か説得に向かわせたと言っていたし、その人? 達のことだろう。


 そうなると地の龍の引退願いが届いていないとか考え辛い。


 ……もしかして引退願いについて気にも留めていないか、引退自体が有り得ないから考慮すらされていないパターン?


 龍は竜とは違って、属性毎に一匹しかいないスペシャルな存在。引退なんて笑わせるな、問答無用で働け、そういうことな気がしてきた。


 代案が用意できないなら、光の神様も口をつぐむしかなかったのだろう。


 いや、それでも光の神様なら地の龍のことを詳しく教えてくれても……あっ、いきなり僕が報酬の交渉を始めたし、交渉が終わったら時間が無くなってすぐに強制送還されたからそんな暇はなかったな。


 あとで教会にお祈りに行っておけば、その時に詳しい説明をしてくれていた気がしないでもない。


 畜生、結界を通り抜ける方法を聞きに行った時に、もっとちゃんと話を聞いておくべきだった。


 あの時も、祈る祈らないでもめちゃったんだよなー。


 しょうがない。間違いなく引退は却下されているだろうし、なんとか地の龍に働いてもらう方向で頑張るしかないな。


「あのー、僕は創造神様からあなたが大暴れしたのを恥ずかしがって島に閉じこもっていると聞いていたのですが、それで引退がしたいのですか?」


 まずは引退したい原因の究明だ。


「いえ、たしかにそれも恥ずかしく閉じこもりはしましたが、すでに遠い過去のこと、気持ちの整理はついています」


 恥ずかしさは克服してしまっていたらしい。それが原因だったら、説得でなんとかできそうだったのに。


「では、どうして引退したいのですか?」


「どうして? 決まっています。創造神の相手をすることに疲れたからです。他にも龍は存在するのにいつもいつも私にばかり面倒な事を押し付けて、それにくだらない命令で―――――」


 あっ、ヤバい。


 僕は何か押してはいけないスイッチを押してしまったようだ。




 凄かった。そして凄く長かった。


 地の龍から吐き出されるエゲツナイ不満の数々。


 僕も創造神様からは面倒を押し付けられているから共感できると思っていたが、地の龍と比べると月とスッポン。


 数えきれない年月を創造神様の部下として過ごしてきた地の龍は、創造神様の数えきれないほどの理不尽と悪ふざけに耐えていた。


 地の龍は創造神様の言うとおり、優しく穏やかな性格だったのだろう。だからこそ創造神様は地の龍が使いやすかった。


 愚痴の中には他の龍のことも含まれており、他の龍達も上手に創造神様の無理難題を避けて仕事を地の龍に押し付けている様子が窺われた。


 真面目な地の龍だからこそ起こった悲劇。正直者がバカを見るという理不尽の典型。


 聞いているだけで涙がでそうになった。


 そしてジラソーレのメンバーやイネス、フェリシアの驚愕。


 まあ、神様の中で一番偉い創造神様の悪辣さを聞いてしまったのだから無理もない。


 創造神様の理不尽を多少知っている僕でも引いた。


 しかも創造神様は昔はやんちゃしていたを地で行く神様だったらしい。


 今の創造神様って、丸くなっていたんだなー。あはは、笑えない。


 クラレッタさんがショックのあまり気絶して倒れてしまったが、今は寝かせておいた方が良いだろう。


 カーラさんがソファーに横たえてくれたし、良い夢を見てもらいたい。


 それにしても困った。


 多少の理不尽なら頑張って苦労してくださいと、無理矢理にでも説得するつもりだったが、地の龍の場合はあまりにも可哀想だ。


 これが日本の会社の出来事なら、行政の注意どころか社会問題に発展してバッシングで会社が潰れるレベルだ。


 でも、相手が創造神様なんだよね。


 会社どころか国を超えて世界が相手だ。真っ当な方法では地の龍は救われない。


 あれ? 地の龍を説得するために来たのに、ラスボスが創造神様だった、みたいな展開になってない?


 嫌だよ。僕は長い物には巻かれるタイプだ。創造神様を敵に回すなんて冗談じゃない。


 でも、地の龍を見捨てるのも嫌だ。


 苦労の度合いは違うが、将来の僕の姿を体現しているような気がする地の龍。これを見捨てると自分を見捨てるような気がしてしまう。


 なんとか地の龍を救いたい。


 でも龍という存在なのがネックだ。


 愚痴の中に含まれていたのだが、龍は天使と似たような役割を担っている。


 人からすれば強大な力を持つ信仰に値する存在だが、神様側からすると言葉は悪いが使いっぱしり。


 でも、今はその使いっぱしりが重要になっている。神様達が下界への干渉を制限したからだ。


 そんな中で下界である程度自由に動けて創造神様とコンタクトが取れる龍の存在は貴重であり、その中でも真面目で優しい地の龍は使いっぱしりとしてベストな人材。


 そりゃあ、創造神様も手放さないよね。


 世の中のすべてが地の龍にとって悪い方向に進んでいる気すらする。


 創造神様と敵対するのは有り得ない。地の龍を見捨てるのは心情的に無理。ならばどうすればいいのか。


 アレシアさん達やイネスやフェリシアにも相談したいのだが、みんな精神を遠くに飛ばしていて相談できそうにない。


 リムは平気なようだが、さすがにリムと神様のことを相談するのは違う気がする。癒し効果は抜群だけど、まだまだ小さいもんね。


 普通ならパワハラで裁判沙汰だけど無理。地の龍のスト行為は若干効果があったようだけど、創造神様の更生には至らず。


 創造神様から逃げられないなら、せめて上司を変えるか?


 創造神様と直接繋がっているから無理難題を吹っ掛けられるんだ。それなら間にワンクッション挟めば……いける……かも?


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 地の龍が思ったのと違って滅茶苦茶まともすぎたw というか苦労人気質すぎる…あとクラレッタさんが(心労で)死んでしまう! [一言] いでよ!苦労人の光の女神〜
[一言] 光の女神さまや!
[一言] ワタルからは言えなかった(後で絶対いじられるから)創造神の実態がついに語られた… そして彼女たちは思い出すのだろう 創造神を称えるたびになんとも言えない表情をしていたワタルの事を(おそらく隠…
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