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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
十八章
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1話 教会

 砂漠の危険地帯に存在するという幻の王都、その王都にたどり着き、砂に埋もれた王都を探検し、水の魔法生物なんてバケモノとも戦った。それに勝利し、王宮でのお宝探索も悪くない結果を得られた。あとは街を探索して大団円という予定だったのだが……。




「じゃあ帰りましょうか」


 自然に、ごく自然に告げて僕は歩き出す。目的地に背を向けて……。


「ワタル、どこに行くんですか?」


 クラレッタさんが僕の袖を引っ張って引き留める。俗に言う、ソデくいですな。普通ならキュンとくるシチュエーションなのだけど……。


「いえ、体調が悪いので今日はもう帰ろうかと……」


 具体的に言うと、王都を脱出して夜通し走ってペントを迎えに行って、そこから船でダークエルフの島くらいまで帰りたい。


 あっ、でも踊り子の服は買いたい。どうしよう?


 優しいクラレッタさんなら、そんな僕の気持ちを分かってくれますよね?


「ワタル」


 ヒェ……名前を呼ばれただけなのに、なんでこんなに怖いのですか?


 というか、先程まで体調が悪い僕を心配して、とても優しく看病してくれていましたよね?


「向かう先は教会。ワタルは神様と深いつながりがあります。分かりますよね? 呼ばれていると感じたのなら行かねばなりません」


「……はい」


 生活指導の先生にガチで怒られた時の記憶がよみがえってきた。


 クラレッタさんとかなり仲良くなったつもりだったけど、神様と比べるとまだまだらしい。


 いつかは神様よりも僕を優先してくれる未来がやってくるのだろうか?


 クラレッタさん、わりと神様ガチ勢だから、結構難しそうだな。


「クラレッタ落ち着きなさい、ワタルの具合が本当に悪いだけの可能性もあるのよ。というか普通は勘違いの可能性の方が高いんだからね」


 アレシアさんがクラレッタさんにタジタジな僕を見てフォローしてくれた。凄くありがたい。


 というか本当に気のせいである可能性も高いんだよね。創造神様も光の神様も下界への干渉は禁止されているって言っていたもん。


 そうだよね、気のせいだ。


 ちょっと教会に行って、金目の物を回収して帰ってくる。たったそれだけのことだよね。


 あれ? なんか凄く罰が当たりそうなことをしようとしている気がする。


「それでクラレッタ。ワタルの体調はどうなの?」


 クラレッタさんが僕の体を調べ、なにやら魔法陣を描いて僕に魔術を掛ける。


「体調に問題はないので、やはり精神的なものである可能性が高いです」


「ワタル。行けそう?」


 クラレッタさんの話を聞いて、アレシアさんが優しく僕に問いかける。


 なんというか、学校に行きたくなくて仮病を使う子供に、優しく、でもあなたを信じているわよとメッセージを込めた母親のような目をしている。


 行きたくない。凄く行きたくないけど、成人している男がこんな目で見られたら、情けなさ過ぎて頑張るしかないじゃないか。


「行け……ます」 


「そう、ワタル、偉いわね」


 ……ヤバい。完璧に子ども扱いされている気がする。


 そしてリム、なんで僕の頬にモチモチボディをスリスリしてくれているのかな?


 とっても嬉しいけれど、なんだか不穏な気配がするよ?


『……わたる……えらい……』


 いやん、リムにまで子ども扱いされている。


 嫌な予感がするとか、面倒だとか言っている場合じゃないな。僕ができる大人だということを証明しないと、男としての尊厳が崩壊する気がする。


「では行きましょう」


 僕は張り切って先頭を進む。


「ワタル。危ないから列の真ん中に戻ってちょうだい」


 すぐにドロテアさんに注意されて集団の真ん中に戻った。ふふ、僕の尊厳、どうやって復活させよう?




「バッチリ形を保っていますね」


 目的地の教会に到着し、建物を観察する。


 ある程度時間による劣化と砂に侵食はされているが、それでも教会らしい神聖さを保持しているように見える。


 他の建物も水の魔法生物に壊されたところ以外はある程度形を保っているが、それらと比べても明らかに程度が良い。


 窓等は割れているが、正面の扉等はしっかりとその機能をはたしている。


 教会ということで力を入れて建設されたか、超常の力が働いているかのどちらかだろう。


 嫌な予感しかしない。


「そうね、これなら面白い物が発見できるかもしれないわね。マリーナ、罠がある可能性は低いと思うけど、念のためにしっかり調べて扉を開けてちょうだい」  


 アレシアさんが楽しそうにマリーナさんに指示を出す。そしてクラレッタさんがとてもソワソワしている。


 数分後、罠はなかったようで無事に扉は開き中に入ることができた。


「ある程度綺麗だけど、やっぱり砂が入り込んでいるわね。布や木製の物の劣化は進んでいるわ。物に触る時は慎重にお願いね」


 中に入るとイルマさんが研究者の目で周囲を見回し注意をする。


「ですが神像は健在です。パレルモ大聖堂の神像と同じく立派な神像ですよ。もしかしたら、神様から賜ったものかもしれません」


 クラレッタさんが教会の奥にそびえる創造神様方の神像を見て、子供みたいにはしゃいでいる。可愛い。


 ……たしかにクラレッタさんの言うとおり、大人バージョンな創造神様の神像は完璧に形が保たれているな。というか、汚れ一つ無いように見える。


 王都が滅んで教会に人が居なくなっても、自分の像だけは汚れることを許さない感じ……なんというか、とっても創造神様っぽくて納得させられる。


「ではまずは祈りましょう。ワタルのこともありますし教会を調べるのですから、神様にお許しを得なければいけません」 


 ……探索してシレっと帰る計画が、クラレッタさんに未然に阻止されてしまった。


 この流れで嫌です、僕は祈りませんなんて言えないよね。


 周囲を荒らさないように奥に進み、神像の前で膝を付く。


「やあ航君、待っていたよ」


 ですよねー。


 声に反応して目を開けると、見慣れた神界の光景と、笑顔の創造神様と光の神様が居た。


 ふむ……光の神様が一緒だから、創造神様の無茶振りは防げそうだ。これは朗報だけど、光の神様のお願いを断われる気がしないから、なにかしらのお仕事は確定だな。


 できれば簡単な内容でお願いします。


「お久しぶりです創造神様、光の神様」


 相変わらず光の神様はお美しい。次の耳かきタイムがとても楽しみだ。


「うん、久しぶり……かな? まあいいや、それで今日は航君にお願いがあって来てもらったんだ」


 断わられるなんて微塵も思っていない表情で話す創造神様。お願い=確定ですね、分かります。


 でも、僕はNOと言えないこともない日本人。無理難題ならできる限り抵抗をするつもりです。


「えーっと……お願いとは何でしょう?」


「航君、なんで光の神に向かって話しているのかな? 創造神様は僕だよ?」


 ……光の神様に話してもらった方が、精神的に平和だからです……なんて言えないよね。


「失礼しました。それで、お願いとは? ご存じかと思いますが冒険の途中なので……」


 忙しいから無理なことは言わないでね。伝われ、この気持ち。  


「あはは、航君も珍しいところに行っちゃったよね。それでちょうどいいと思ったんだ」


 ガッテム! 幻の王都がフラグだったのか。行き先を間違えたか?


「あのね、西の大陸に行く途中で、結界に囲まれた島があったでしょ?」


 ん? 幻の王都は関係ないのか?


「……はい、ありましたね。たしか地の龍が住んでいるとかなんとか……」


 絵本の情報を神様に話すのは、かなり恥ずかしい。


「そうなんだよ。そこで、航君には地の龍を結界から引きずりだしてもらいたいんだ」


 パードゥン? なんだかとても物騒なお願いをされた気がする。


「えーっと……僕の記憶が確かなら、その地の龍は怒り狂って村や町を滅ぼし、大陸東部を沈めた上に、大陸自体をバラバラに引き裂いたと記憶しているのですが、そんな相手を僕にどうにかしろと? 人間に絶望していますよね?」


 無理難題がぶち込まれた。光の神様が一緒だからと安心していたのにどういうことだ?


 慌てて光の神様に助けてくださいと目で訴えるが、光の神様は困った様子で微笑んでいるだけだ。助けてくれないらしい。


 ヤバい。僕がバラバラにされてしまう。いや、船の結界はドラゴンブレスでも防げるんだったっけ? だから僕が適任だと選ばれた? 思わぬ落とし穴だ。


「あはは、心配しなくていいよ。地の龍は穏やかで優しい性格だからね」


「……穏やかで優しい性格の人、いえ、龍は大陸をバラバラにしたりしないと思いますが?」


 何人死んでいるか分かりませんよ?


「優しい人こそ怒らせると怖いって言うでしょ?」


 あぁ、異世界でも同じ教訓があるんだな。シンパシーを感じて少し嬉しい。でも、それとこれとは別問題だ。


「理解はできますが無理です。その怒った龍を引きずりだすなんて命がいくつあっても足りませんよ。光の神様もそう思いますよね?」


「ええ、ですが……」


 危険な流れなので光の神様を巻き込もうと話しかけたが、なぜか途中で口ごもってしまう。


 やはり光の神様的にも龍が結界に閉じこもっているのは問題なのかもしれない。断るのが難しい雰囲気に涙が出そうだ。


「地の龍はもう怒っていないから心配いらないよ航君」


 創造神様が不思議なことを言う。


「へ? じゃあ創造神様が出てくるように言えば……いえ、下界への干渉は制限されているんでしたね。では、メッセージを届ければいいんですか?」


 それなら意外と簡単そうだな。怖いけど。


「あはは、怒ってはいないのだけど、大暴れしたのが恥ずかし過ぎて結界内に閉じこもっちゃったんだ。僕の言葉にも従わないし頑なに結界から出ようとしないから、メッセージを届けるだけでは無理かな?」


 おいおい、ちょっと待って。


 ようするに自分の黒歴史に耐えられず、引きこもりになってしまった龍の説得ミッションってこと?


 優しく穏やかな龍らしいから、キレた自分を恥ずかしく思う気持ちも理解できなくはないけど……正直勘弁してほしい。


「そのままソっとしておいてあげたらどうですか? 時間が経てば出てきますよ」


 時間が解決してくれるはずだ。


「ソっとしておいたら千年単位で引き籠っちゃっているんだよね。結界の中からでもある程度の仕事はしているんだけど、それでも歪が出てきている。それに仮にもこの世界の地を司る龍が引きこもりは不味いと思わないかい?」


 ……光の神様も困っているし、逃げられそうにないな。


 怒り狂う龍を鎮めるよりもマシだけど、引きこもりの龍の説得とか、どうすればいいのか想像もつかない。


 想像もつかないけど、確実に苦労するよね。


「……努力はしてみます。ですが、せめて報酬をください」


 逃げられないならご褒美は欲しい。神様に報酬を要求するなんてと怒られるかもしれないが、僕としてもそこは譲れない。


 とりあえず富は大丈夫だし名声は必要ない。チートはくれないだろうから、女神様関連のご褒美を絶対に勝ち取ろう!


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >世界の地を司る龍が引きこもりは不味いと思わないかい? どうして不味いのでしょうか?今まで引きこもっても不都合が無かったのに。
[良い点]  ドラゴン地雷の処理ですか。 [一言] 報酬は大事。とっても大事だから二度、言います。
[一言] 割りとまともなお願いだっただと…?
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