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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十七章
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14話 幻の王都、発見

 アレシアさん達と合流後、数えきれないほどの魔物の残骸の処理をすることになった。準備していたバーベキューを翌日に回すほどに疲れ果てたが、翌日を全休にして思う存分楽しむことができたから結果オーライということにしよう。二度としたくはないけど……。




 昨日は楽しかったなー。


 たっぷりのお肉と野菜、海鮮を使ったバーベキュー。


 サンサンと降り注ぐ日差しの中、キンキンに冷えたビールにチューハイ、周囲にはボンキュッボンな水着の美女達。


 それだけでも幸せなのに、一緒にジェットバスに入っちゃったりなんかしちゃって、あれが俗に言うウハウハというやつなのだろう。


 リム達との戯れも楽しかった。ドロテアさんとマリーナさんと一緒にリム達に料理をあげると、みんなぷにぷにモチモチと大喜びしてたなー。


 カーラさんも喜んでくれて、キラキラした笑顔でバーベキューを楽しんでくれて、イルマさんもお酒に酔ったのか、いつもよりお色気マシマシでちょっとサービスしてくれた。


 クラレッタさんとは一緒に料理をして、ビキニなクラレッタさんとうっかり触れ合ったりなんかしちゃって。


 それにアレシアさん。みんなからカーラさんのピンチを聞いたようで、すっごく僕に感謝してくれて、感謝のあまり抱きしめられた時は昇天しそうだった。


 だって水着のアレシアさんに抱きしめられたんだもん。昇天も仕方がないよね。


「ちょっと、ご主人様! スピードが落ちてる、追いつかれるわよ! って、なんで遠い目をしながら半笑いなの? お願いだから、正気に戻って!」


 助手席からのイネスの言葉で楽しかった昨日の幻想が崩れる。


 そうだった、今は魔物の大群から逃げているんだったな。現実逃避をしている場合じゃなかった。


 パル号のアクセルを踏み込み、前方を爆走しているパル二号に追いつく。


 はぁ、なんでこんなことになってしまったのか。


 まあ言うまでもなく、危険地帯でエンジン音を響かせながら爆走しているからなんだけどね。


 普段静かな砂漠の危険地帯で異音をまき散らしているのだから、魔物の興味を引くのも当然だろう。


 ファンタジーな世界を冒険しているはずなのに、もはやレースゲーム(ラリー)をしているような気分になる。


 障害物は魔物、躱しても追いかけてくる。ふふ、難易度がおかしい。


 楽しい楽しいバーベキューの翌日、まだ日も昇りきっていない早朝に僕達は冒険を再開した。目指すは危険地帯奥地の幻の王都。


 パル号、パル二号を召喚し走り出す僕達。


 奥に進むにつれて走行音に釣られて、ドンドン追いかけてくる魔物が増えていった。


 僕達をパル号ごと丸呑みしたグレートワーム。僕は主とかボスクラスの魔物だと思っていたのだが、勘違いだったようで奥に進むと同じような大きさのグレートワームが次々と追いかけてくる。


 空の王様と言われるルーラー。


 王様なはずなのに、群れで飛んでいる。


 他にも明らかに上位種と思われるアーマースコーピオンやデザートリザードの色違い&巨大化バージョン。


 見知らぬ魔物も盛りだくさんだ。


 なんだこれ、危険地帯にも程があるだろう。


 ……あっ、そういうことか。空の王様と呼ばれるルーラーが群れていると知られていないのは、危険地帯の奥の情報が知られていないってことじゃないかな?


 ということは幻の王都は嘘? いや、ルーラーの群れに遭遇したら普通に死ぬ。


 昔の無謀な冒険者が運良く王都の存在を確認していたり、幻の王都周辺が危険地帯になる前の口伝か記録が残っている可能性もある。


 というかそうであってもらわなければ困る。


 これだけ苦労して無駄足だったら、僕の僅かな冒険心すら消滅してしまうぞ。


「ご主人様、お願いだから集中して。ルーラーの群れよ!」


「りょ、了解」


 正直、ルーラーの群れが相手でも僕達ならそれほど危険はない。


 パル号の結界を破る力はないし、カーラさんが投げ出されたことを教訓に僕はシートベルト、戦うメンバーは丈夫な紐で体をパル号と結び付けているから、横転しても結界から投げ出されることはない。


 それでも僕達が必死に逃げているのは、戦った後の後始末が嫌だからだ。


 一度停車して戦いになると、ルーラーだけじゃなく後方で追いかけてきている魔物達の相手もしなければいけなくなる。


 勝つのはさほど難しくないし、残った残骸も無視して捨てていけば問題ない。実際、出発前に僕はそう主張した。


 好感度が下がるのも覚悟して、お金があるのだから倒した魔物の残骸は全部無視しましょうって。


 みんなも僕の意見で思い出したのだろう。


 灼熱の太陽、むせかえる血と臓物の臭い、繰り返す終わりの見えない単純労働、この世の地獄を体現するかのような作業。


 全員、僕の意見に心情的には賛同したかったのだと思う。でもアレシアさん達は悲しそうに首を横に振り言った。


 気持ちはとてもよく分かるけど、さすがに人生を何度も遊んで暮らせるような大金を捨てていくのは冒険者として無理……だから逃げましょう。回収作業をしないために、全力で逃げましょうと。


 だから僕達は逃げる。地獄を繰り返さないために。


「ご主人様、右! カーラ、盾で弾き飛ばして! フェリシアとマリーナは羽を集中的に狙って!」


 イネスの指示に従ってハンドルを右に切る。そこに飛んできたルーラーをカーラさんが盾で弾き、マリーナさんとフェリシアが追撃する。


 パル二号からも遠距離攻撃が飛び、ルーラーの群れが離れた瞬間を逃さずに急加速。


 ダメージを与えたから警戒したのか、ルーラーは距離を縮めてこずに背後の魔物の群れの上空に落ち着いたようだ。


 それでも諦めるつもりはないのか、追うのを止める様子はない。また魔物の群れの規模が大きくなった。


 どう考えても僕達は人間9人でしかないのだから、魔物全部で分けたとしても肉片一切れくらいにしかならないはずなのに、なんで大群で追いかけてくるんだ?


 お腹が空いているのなら、できれば共食いして満足してほしい。


 この追いかけっこ、いつまで続くんだろう?




 ***




「ワタル、あそこ!」


 砂漠が夕日に赤く染まるまで追いかけっこを続け、いい加減嫌になってきた頃、突然マリーナさんが後部座席から身を乗り出して進行方向左を指さした。


 なにごとかと指の先を追うと、遠くに巨大な建物が見える。


 いくつも塔のようなものが立ち並び、その天辺はドームのように丸く、そしてその頂上は少し尖っている。


 なんといえばいいんだろう、アラビアンナイトの世界で見るような建物……あれがお城か? とういうことはあそこが王都?


 幻の王都だから何日も旅が続くと覚悟していたが、意外と早く姿が見えたな。いや、魔物に追われて休みもなくパル号で爆走したから、それなりに距離は稼いでいるのか。


 徒歩だったら何日も掛かる旅路だったんだろうな。とりあえず、幻の王都が嘘や幻でなかったのは感謝だ。


「ワタル、パル二号と並走して」


「分かりました」  


 マリーナさんの指示に従い、パル二号の横に並ぶ。


「どうする、あの城に向かう?」


 アレシアさん達も王都の存在に気がついたのか、進路をどうするか聞いてくる。


 普通なら一目散に城を目指すはずだが、後ろに魔物の大群を引き連れているので判断が難しい。


 早朝から夕方まで爆走しているのに、まだ魔物の群れは追いかけてきている。いや、おそらく追いかけてきていた魔物はかなりの数が脱落しているはずだ。


 ただ、危険地帯の奥地は魔物の密度が濃く、脱落した傍から新しい魔物が補充されるから数が変わらないように見えるだけだろう。


 追いかけてきている魔物がドンドン強そうな見た目になっているから、おそらくこの推測は間違ってはいない。


「ご主人様?」


 イネスがどうするの? といった様子で声をかけてくるが、どうすればいいのか僕にも分からない。


 魔物の大群を引き連れたまま王都に突入……王都がめちゃくちゃになりそうだからさすがに駄目だろう。


 後ろの大群を殲滅する。日が暮れているから暑さはだいぶマシだが、それでも苦痛を伴う単純労働であることは変わりがない。魔物の密度も増えているから、回収中の危険度も増す気がする。


 となると、なんとか後ろの魔物達を振り切る。延々と追いかけられているが、もうすぐ完全に日が暮れて真っ暗になる。


 暗闇なら魔物の大群を引き離せるかもしれない。それでコッソリ王都の近くまで行けば探索がしやすそうだ。


「暗くなるまで逃げ回ります。それで駄目だったら殲滅しましょう」


「了解!」


 アレシアさんの返事に合わせて、パル号の速度を上げる。これだけ走り回るとさすがに運転も慣れてきたな。


 まあレベルアップで強化された身体能力がなければ、とっくの昔に事故っていたと思うけどね。


 砂の上で滑るタイヤを、絶妙なステアリング操作でコントロールする僕、結構凄いと思う。




 暗闇での逃走を決意して一時間。


 完全に日が暮れる前に、まずは空を飛んでいたルーラーが脱落した。おそらく鳥目だから夜になる前に巣に帰ったのだろう。


 続いて完全に日が暮れると、リザード系統やスコーピオン系統、他の魔物達が追いかけるのを止めた。


 トカゲとサソリだから夜目は利きそうだし、たぶん温度変化が原因だと思われる。灼熱の砂漠で長時間追いかけっこができるのだから、暑さにはかなり強い魔物なのだろう。


 だからたぶん夜の砂漠の冷え込みが弱点なのだと思う。灼熱と極寒、どちらも余裕とか、チートだもんね。


 そしていまだに追いかけてくるのは、グレートワームの集団。


 あいつら砂の中を移動するから暗闇とか関係ないし、地中の温度変化は緩やかだから砂漠の急激な気温の変化の影響は薄いのだろう。クソチートだ。


 理不尽なことを思いながらもパル二号に並走し、アレシアさんに声をかける。


「アレシア、グレートワームを振り切るのは難しそうです。王都の近くまで移動して、そこでハイダウェイ号を召喚して倒してしまいましょう」


 まあ倒すのは僕じゃなくてアレシアさん達だけどね。


 僕もレベルアップの為に攻撃をと思わなくもないが、まだ前回のレベルアップで得た力を制御できていないから今回は見送ろう。 


「分かったわ。じゃあワタルが先行でお願い」


「了解です」 


 さて、結局魔物を倒すことになっちゃったけど、グレートワームだけだから回収作業はある程度楽になるだろう。


 さっさと倒して、明日からは幻の王都を探索だ。少しワクワクしてきた。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] もし全部連れて街に突入してたら別の大陸でデスマーチとか呼ばれてそう
[気になる点] つっかえるにしろ飲み込めなくもないサイズの船に逃げ込むのはどうかと思う 砂漠なんだし広いんだから豪華客船でもフェリーでも召喚して中に閉じこもって静養すれば ダークエルフの森の狂乱みたく…
[一言] こんなレースしてたら普通に目立ちそう
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