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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十七章
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13話 忙しさの違い

 グレートワームの体内から脱出し、ワラワラと集まってくる危険地帯の魔物達から気合で逃げ回り、大量の魔物に囲まれているアレシアさん達とハイダウェイ号の中でようやく合流した。正直、暑いし魔物は多いしで砂漠が辛い。




「うーん、まずはジェットバスにお湯を張ろう」


 魔物討伐で疲れているみんなを癒すには、泡のお風呂が一番だよね。


「続いて……お酒かな?」


 ビール等のお酒類は専用ゴムボートでキンキンに冷やしたまま保存してあるが、ゴムボートを入れ替えたりするから、ハイダウェイ号の冷蔵庫にたっぷりと補充しておいた方がいいだろう。


 あっ、でも前にたっぷり補充した覚えが……うん、空だね。こっちの大陸に来てから、ハイダウェイ号の利用頻度が高かったから全部飲んでしまったようだ。


 隙間なく補充しておこう。ついでに冷凍庫にアイスをたっぷり投入だな。お風呂上がりのビール&コーヒー牛乳&アイスは正義だ。異論は認める。


「ふいー」


 一仕事終えて外を見ると、とっても元気にはっちゃけている女性陣の姿が見える。


 おそらく離ればなれになっていた間の不安が合流したことで安心に変わり、魔物の殲滅と相まってテンションが急上昇したのだろう。


 みんなイキイキと必殺技らしき攻撃を魔物に叩き込んでいる。


 危険地帯といえども防御チートの中から好き放題に攻撃できると、もはやストレス発散の場でしかないのだろう。みんなとても楽しそうだ。


 ん? あれ? リム?


 さっきまで僕の頭の上でプルプルしていたはずのリムが、いつの間にかハイダウェイ号の縁でプルプルしていた。


 ふうちゃんとべにちゃんと横並びの三色団子状態でとってもプリティだが、三色で魔法乱舞していて地味に物騒だ。


 ……まあ、リム達も楽しそうだからいいか。僕は宴会の準備を続けよう。


 今回はバーベキュースタイルだし、まずは肉だな。いや、贅沢に肉と海鮮のゴージャスなバーべキューにしよう。


 海鮮類はそのまま焼くとして、メインのお肉の仕込みだな。贅沢バーベキューなんだし、大振りに切った肉を串に刺していこう。


 全肉の肉串と、女子多数だから野菜串もちゃんと用意しておかないとね。気が利かないとか、これだから男はとか思われたくない。僕は女性に媚びることを恥とは思わない男だ。




 さて、バーベキューの準備は一通り終了した。すべての具材をゴムボートにひとまとめに収納したから、あとはバーベキュー用のゴムボートを召喚すればすぐに始められる。


 問題は炭をどうするかだな。


 戦闘の方は派手な殲滅戦の影響で次から次へと魔物が追加されていたようだが、それもさすがに落ち着いてきたようで終わりが見えてきている。


 このまま討伐終了、お風呂からのバーベキューということなら炭を熾しておいてもいいのだが、悲しいことにそう上手くいかない予感がする。


 たぶん……おそらく……間違いなく……ハイダウェイ号の外にある大量の魔物の残骸を処理することになるだろう。


 素材はともかく、魔石くらいは確保しようってことになる予感がプンプンする。


 拒否すればアレシアさん達も納得してくれるだろうが、たぶん私達だけで回収するからワタルは休んでいてとか言われるんだろうな。


 戦闘ならともかく、お手伝いできる作業で自分だけのんびり休んでいるのは僕には無理だ。世間体というか女性陣の好感度が気になるから結局手伝ってしまう。


 ……ふぅ、魔石だけを回収するとしても、大型の魔物から魔石を取りだすのってかなり大変なんだよね。


 いま炭を熾したら、魔石の回収が終わる頃には灰になっているだろう。


 祈りを込めて炭を熾すのも有りかもしれないが、ほぼ確実に無駄になるので諦めてアレシアさん達の後方に移動する。


 とりあえず喉が渇いているだろうから、冷たい飲み物を準備しておこう。



「ふー。ようやく終わったわ。危険地帯と言うだけあって、大物の数が凄かったわね。魔力が尽きるかと思ったわ。みんな、お疲れ様」


 アレシアさんが笑顔で戦闘の終了を告げた。


 言葉ではギリギリのようなことを言っているが、思う存分暴れられたからか輝くような笑顔で汗を拭いている。


「アレシア、お疲れさまでした。飲み物をどうぞ」


「ありがとうワタル」


 僕が並べたペットボトルの中からスポーツドリンクを選び、ゴクゴクと一気飲みするアレシアさん。


 続いてドロテアさん達、イネス、フェリシア、リム達にも飲み物を配る。まあリム達にはお皿に移してだけど、こんな些細なことでもみんなが喜んでお礼を言ってくれるのが嬉しい。


「さて、一休みしたら外の残骸を処理するわよ。量が多いから貴重なルーラーとグレートワームの素材の一部と、魔石くらいしか確保できないけど、また魔物が集まってきたら面倒だから手早く済ませてしまいましょう」


 一息ついたアレシアさんが、当然のように絶望を告げる。灼熱の中での解体作業決定!




 ***




「……お疲れ様」


 アレシアさんが死にそうな顔で処理の終わりを告げる。魔物を殲滅していた時の笑顔と比べると落差が激し過ぎて同じ人物とは思えないありさまだ。


 でもまあ、予想していたよりも数倍辛かったから、アレシアさんの死にそうな表情も仕方がないのかもしれない。


 危険地帯の魔物ってそれだけで体が大きいのに、数まで揃っているとかズルいと思う。まあ、大半は自分達が激しく騒いで呼び寄せたんだけど……。


 それにしたって砂漠一面が魔物の絨毯ってどうなの?


 アレシアさん達も最初はステータスを確認して、バカみたいにレベルが上がったと喜んでいたが、回収作業が続くうちに表情が死に、どうして魔物を逃がさずに倒してしまったのかと後悔をつぶやくようになった。


 そして空には満天の星。


 凍えるような寒さの中で、ようやく回収作業が終わった。


 ハイダウェイ号のデッキには山のように積み重なった、質と量を兼ね備えた巨大な魔石の数々。


 換金したら国家予算くらいの資金を得られそうな気がするが、無論この大陸では換金できない。


 クソみたいな現実が押し寄せてきて辛くなる。


 途中から全員がなんでこんなことをしているのだろう? そう思っていた。各自一度はその言葉を漏らしながら悲鳴をあげたので間違いない。


 商人として、冒険者として、回収不可能でないなら魔石くらいは……という意地だけの虚しい作業、もはや拷問と変わらなかった。


 今回は開始してしまったから最後まで終わらせたが、次からは意地も好感度も捨てて断固反対するつもりだ。


 魔石も素材も回収が辛いのなら全部ゴミ、だって僕、お金持ちだもん。そういうスタイルで生きていきたいと思う。


「……お疲れさまでした。これからどうします?」


 覇気のない声でアレシアさんに尋ねる。もはやバーベキューという気分ではない。お風呂すら面倒なので、シャワーを浴びて素早く眠りにつきたい。 


「そうね……解散……でいいかしら?」


「了解です。ではまた明日、お休みなさい」


「ええ、お休み」


 全員がゾンビのような足取りで部屋に向かう。元気なのは魔物を食べたり、ポヨンポヨンと遊びまわっていたリム達だけだ。


 早く寝よう。




 ***




「では僭越ながら音頭をとらせていただきます。昨日は本当にお疲れさまでした、今日は思う存分楽しみましょう。乾杯!」


「「「乾杯!」」」


 僕の乾杯の音頭と共に、ジョッキに注いだビールを一気に煽る。


「ゲフッ」


 いやー、お昼に砂漠で飲むビール、たまりませんなー。 


 昨日はシャワーを浴びた後に即座に就寝。一度も目覚めずに昼近くまで睡眠をむさぼった。


 しっかり眠って疲れを癒したら、次に気になってくるのはせっかく準備したバーベキューのあれこれ。


 昨日は頑張ったんだし、今日は一日遊んでもいいよね? という気分になった僕はイネスとフェリシアを連れて食堂に向かい、缶コーヒーを片手にのんびりしていたアレシアさん達に直談判した。


 今日は休みにしてバーベキューをしながら飲みまくりましょう、準備は完了しています! と。


 アレシアさん達も年頃のお嬢さん。昨日の苦行でストレスもマックスなので、ハイテンションで僕の提案は可決された。


 だからこそのパラダイス。


 ジェットバスの準備も万端なので、目前には無数の水着美女。


 アレシアさん達やイネス達の水着姿は何度も見ているが、何度見ても良い物は良い。今日は一日力いっぱい楽しむぞ。


 さて、まずはバーベキューだな。肉を焼こう。そして口いっぱいに頬張って、アレシアさん達を見ながらビールで流し込むんだ。


 今日一日は自由。外の魔物の残骸をむさぼりにきて争っている魔物達も知らない。楽しいことだけに集中するんだ。


「ワタル。手伝います」


 グリルの上にお肉を並べていると、クラレッタさんが小走りで手伝いに来てくれた。


「あっ、えーっと、じゃあお願いします」


 ふいー、焦った。今日のクラレッタさん、いつもよりも開放的なのか白のビキニ、しかも小走り。破壊力があり過ぎて、ありがとうございますと叫んでしまうところだった。


「ワタル、お肉ばかりではダメですよ。野菜も焼いてください。あっ、リムちゃん、熱いですからそこに登ってはいけませんよ。カーラ、見ていても早くお肉は焼けません。手伝ってください」


 お手伝いと言いながらテキパキと指示を飛ばし、グリルの前を乗っ取ってしまうクラレッタさん。


 一瞬で僕の方がお手伝いに降格してしまった気もするが、これはこれで悪くない。美人の奥さんの尻に敷かれた旦那ってこんな感じなのかな?


 クラレッタさんのお尻に敷かれるとか、絶対に幸せ間違いなしだよね。


「ご主人様、追加のビールを配り終えました。次はどうしますか?」


「ん? あぁフェリシア、ありがとう。あとはフェリシアも自由に楽しんでいいよ。今日はお休みだからね」


「ですが……」


 困った表情のフェリシア。真面目だから手伝うべきだと考えているんだろう。休暇ということですでに全力で楽しんでいるイネスとは凄い違いだが、人生が楽しそうなのはイネスだよね。


「大丈夫。僕がお肉を焼いているのも仕事じゃなくて楽しんでやっているんだから、フェリシアも好きに楽しめばいいんだよ。ほら、飲んで」


 まあ、そのお肉を焼く主導権はクラレッタさんに奪われちゃっているんだけどね。戸惑っているフェリシアに缶ビールを押し付けて、僕は野菜の準備をする。


 今日は食べて飲んで騒いで、忙しい一日を過ごさなければいけないから、時間を無駄に出来ない。


 あと、女性密度が高いジェットバスにお邪魔したいから、チャンスを見逃さないようにしなければいけない。


 ふふ、忙しいけど、こういう忙しさなら大歓迎だな。 


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ワタルが砂上労働中に砂中から飛び出た魔物に下半身パックンされたら全て終わるのになぜ作業させるんだろう?
[一言] ワームの中ながかったので久しぶりのワタルニッコニコ回
[気になる点] ワタルはグレートワームの魔石だけを抜き取ったけど、回収方法がなかったのかちょっと考えてみた。 通常のグレートワームは自家用車サイズのパル号を「呑み込めそうな大きさ」との記載があるので、…
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