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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十七章
403/602

10話 殺すのよ!

更新が少し遅れました。申し訳ありません。

 グレートワームの体内で無事にカーラさんと合流できた。まあ無事といってもパル号に守られていた僕達とは違いかなり苦労したようで、血まみれで裸だったけど……その姿はしっかり脳裏に焼き付けているが、おかしな趣味に目覚めそうで少し怖い。




「うーん、ワタルの言うとおり豪華客船の召喚は不確定要素が怖い」


「そうですね、ご主人様のスキルですから大丈夫な気もしますが、死が目前に迫っている訳ではないのに未知の危険を冒す必要はないと思います」


「そう? 私は一か八かの勝負は嫌いじゃないし、大丈夫だと思うわよ」


 カーラさんと合流し、落ち着いたので脱出に向けての作戦を練ることにした。


 その中で僕が思いついた方法と懸念事項を伝えると、マリーナさんとフェリシアは難色を示し、イネスは楽しそうにギャンブルを推奨した。


「……とりあえず豪華客船での脱出は最終手段にして、他の方法を探しましょうか」


 僕としては豪華客船での強硬脱出も九割がた大丈夫だと思っていたのだが、イネスの賛同で安全路線に意志が固まった。


 ギャンブルが原因で奴隷に落ちたイネスの言葉は、逆の意味で説得力が違う。あと、あの創造神様から授かったユニークスキルだから、無条件で信頼すると手痛いしっぺ返しを食らいそうな気もする。 


「そうね、でもいつ状況が変わるか分からないからのんびりもしていられないわ。ワタルの提案を軸にして考えましょう」


 マリーナさんが言うとおり、現場がグレートワームの体内だもんね。身の安全は確保されたとしてものんびりはしていられない。


 それにパル二号の位置を探ると、地上でグルグルと走り回っているみたいだから、かなり心配を掛けているみたいだ。早く合流して安心させたい。


「ハイダウェイ号を召喚する」


 僕達が喧々諤々な議論を繰り広げていると、満面の笑みでおやつを頬張っていたカーラさんがポツンと口を挟んだ。


「ハイダウェイ号ですか? 巨大なグレートワームの体内でもさすがにハイダウェイ号は入りきらないですよ?」


 レンジャー号で移動できるくらいの幅はあるが、さすがに一軒家+広々としたテラスを内包した、小さな島のようなハイダウェイ号は入らない。


 どうせ突き破ってしまうのであれば、ハイダウェイ号よりも豪華客船を召喚したほうが良いと思う。


「大丈夫、体が伸びるからハイダウェイ号なら収まる」


 ……伸びる?


 あぁ、そういえば蛇なんかは自分の体よりも太い獲物や卵を丸呑みできるよね。それで体の一部分が不自然に膨らむ姿を、画像や動画で見たことはある。


 なるほどグレートワームは名前のとおり蛇というよりかはミミズだけど、それなりに耐えられそうな気がしないでもない。


 ……悪くない提案かも。


 体が膨らむくらいの大きさなら船体をガッチリ固定できるから、フェリシアに無理をさせなくても済むし広い足場も確保できる。


 体の一部分が勝手に大きく膨らめばグレートワームも驚いて動き出すだろうし、攻撃しなくても良いから、召喚にさえ耐えてくれればグレートワームを地中で死なせてしまう危険性は薄い。


 まあグレートワームが裂けちゃったら失敗だけど、見た感じかなり伸びそうな体内だし、成功率は高めかな?


 ハイダウェイ号の重量でグレートワームが行動不能になるのが少し怖いが、まあ洒落にならない巨体だし、動けなくなるだけならハイダウェイ号を送還するだけだから大丈夫だ。


 他のメンバーも悪くないと思ったようで、深く考え込んでいる。細かい部分を煮詰める必要はあるが、この方法で決定かな?


 少なくともお尻から脱出して砂を結界でかき分けながら進む方法よりかはマシだ。




 ***




「ではハイダウェイ号を召喚します。万が一グレートワームの体が裂けた場合、すぐに豪華客船を召喚しますから慌てずに移動してください。それ以外は作戦通りでお願いします」


「了解、ちょっと楽しくなってきたわ」


「分かりました」


「私も大丈夫」


「うん」


「では召喚します。船召喚!」


 女性陣の準備が終わったのを確認し、ハイダウェイ号を召喚する。


 召喚と同時に出現する魔法陣、ここからが第一関門だ。


 グレートワームの体内に収まりきらない大きさの魔法陣。召喚失敗で消えるのならそれまでだが、今のところ召喚は続いているようにみえる。


 この時点で魔法陣が消えてしまうかグレートワームの体内を押し広げる可能性も考えていたが、どうやら内壁を浸透して魔法陣が展開されているようだ。


 これなら豪華客船でも召喚だけは問題なさそうだ。


 まあ結果論だし豪華客船本体が出現した後が怖いから、どちらにしてもハイダウェイ号で挑戦しただろうけどね。


 魔法陣の時点で移動が可能なのだが、何が起こるか分からないからハイダウェイ号の全体が召喚されるまでパル号で待機する。


 ハイダウェイ号の結界がグイグイとグレートワームの内壁を押し広げながら本体が出現する。どうやらグレートワームは裂けることをまぬがれたようだ。


 でも……グレートワームの内壁が結界にピッチリ密着しているのがここからでも見える。端的に言って気持ち悪い。


「うわっ!」


 ハイダウェイ号の出現と同時にグレートワームの体が揺れ始めた。さすがに自分の体内の異変に気がついたらしい。


「ご主人様、行くわよ!」


「へ?」


 パル号のハンドルにしがみついて揺れに耐えていた僕の体がいきなり宙を舞った。どうやら僕はイネスに抱きかかえられて運ばれているようだ。


 無事にハイダウェイ号に乗り込むことはできたが、なんだか釈然としない。自力で移動できたよ?


「ほら、ご主人様、ロープで体を固定して。リムちゃんが落ちないようにしっかり抱きしめておくのよ」


「う、うん」 


 ちょっと不満を覚えていると、イネスからの注意が続く。モタモタしていた僕が悪いのだけど、なんだか母親に叱られているようで落ち着かない。


 言われたとおりにロープで体を固定し、リムをしっかりと抱きしめる。


 暴れるグレートワームがこのまま地上に出てくれたら簡単なのだけど……どうやらそう簡単にはいかないようだ。


 今のところ移動というよりもその場で暴れているだけのようで、パル二号との距離は変わらない。


 ハイダウェイ号自体はグレートワームの体内にしっかり固定されているが、船内の固定されていない物資が揺れに耐えかねてガコガコと音を立てながら飛び回っている。


 このことは予想していたし家具や雑貨が飛んできて怪我をするほど弱くはないはずだが、飛び回る雑貨を目の当たりにすると地味に怖い。


「ワタル、グレートワームの位置は?」


「今のところその場で暴れているだけ、あっ、下に潜り始めました」


 マリーナさんの質問に答えている途中で、グレートワームが動き出す。僕達が望まない方向に……。


 下を向く船体、上から物が降ってくるが、それはイネス達が防いでくれるから問題はない。


「仕方がないわね。みんな、軽く攻撃するわよ。大きなダメージを与えないように注意して! ワタルはグレートワームが上を向いたら教えて!」


「了解です」


 マリーナさんの指示に了解と返事をする。


 素直に地上に向かってくれたら簡単だったが、失敗したので次の作戦に移行する。


 グレートワームが僕達に不利な方向に移動したら体内を攻撃して痛みを与え、地上に向かうなら攻撃を止める。


 作戦名『痛みでグレートワームを制御しよう大作戦!』だ。


 成功するか失敗するかは分からない。そもそも、グレートワームの痛覚がどうなっているのかも分からない。


 分からないことだらけの作戦だけど、他に何も思いつかなかったのだからしょうがない。


 僕がグレートワームをテイムすれば、なんて恐ろしい提案もされたが、グレートワームがテイムできるかも分からないし、そもそもグレートワームをテイムしたくないので却下した。


 緊急事態で作戦をより好みしてどうすると思わなくもないが、僕と同じくテイムスキルを持っているマリーナさんも首を横に振ったので同罪だ。


 痛みで操るのとテイム、どちらがグレートワームにとって幸せなのかは……考えないことにしよう。僕達を呑み込んだグレートワームが悪い。


「上に向かいました!」


「攻撃中止!」


「あっ、こんどは右です!」


「攻撃!」


「下に!」


「攻撃! ちょっと強め!」


 延々とこれを繰り返すのかな? 陸上のはずだけど、船酔いが心配になってきた。




 ***




「動かなくなりましたね」


 グレートワームは体感で一時間ほど大暴れした後、動かなくなった。内壁は蠢いているから死んではいないはずなのだが、どうしたんだろう?


「そうね、疲れちゃったのかしら?」


 僕の質問にマリーナさんが疲れた表情で返事をしてくれる。


 なるほど僕達もヘトヘトだから、グレートワームが疲れて動かなくなるのも納得できる。


 ただ、地上まであと少しなんだよね。


 痛みでのコントロール大作戦、最初は大暴れしまくっていたグレートワームだが、痛むタイミングを少しは理解したらしく、上方向に向かうことが多くなった。


 そのまま地上に出てくれれば簡単だったのだが、しょせんはミミズの脳ミソ、突然下に向かったり左右に向かったりと僕達の思い通りに行動してくれない。


 最後には地上まで残り数メートルといったところで停止してしまった。勘弁してほしい。


「ここからなら自力でもなんとかなりそうですが、どうします?」


「……そうね、自力でなんとかできそうなら、殺すつもりで思いっきり攻撃してみましょうか」


 マリーナさんもかなり疲れているのか、危ない目をしている。たぶん慣れないリーダーポジションが負担になっているんだろう。


 今更だけど、パル一号メンバーって、リーダーシップを取れる人材が……うん、組み分けに失敗しているね。


「では思いっきり攻撃しましょう」


 悲しい現実は気がつかなかったことにして、僕も長い時間揺さぶられてストレスをぶつけるために、普段は避ける強引な作戦に賛同する。


「じゃあ一斉攻撃するわよ。各自、全力で攻撃するために準備して。的は前方下部の、一番損壊が酷いところを狙って」


「「「了解」」」


「……準備は良いわね。じゃあ一斉攻撃開始!」


 マリーナさんの合図で今までとは比べ物にならない威力の攻撃が開始される。この攻撃に驚いたのか、グレートワームが地上まで飛び出す。


「地上に飛び出しました!」


「殺すのよ!」


 マリーナさんの悲鳴のような指示が飛ぶ。そうだよね、ようやく出た地上、もう地下には戻りたくないよね!

読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 殺すのよ!の強すぎる一文 そりゃ肉壁の中に居たらはやく出たいわな…
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