19話 傭兵ギルド
予約投稿したつもりがしていませんでした。一日遅れの更新、申し訳ありません。
言葉のお勉強のために買った絵本が実話で、国が滅んでいたり大陸の一部が沈んだりしていてショックを受けはしたが、一ヶ月程度でなんとか情報収集と最低限の言語学習を終えた。あとは行動に移すのみ。まずは女性陣の身分証をゲットだ!
「……もう一度言ってくれるか? ちょっと他に集中していて聞き逃してしまった。何を待たせているって?」
門番が、あはは、まさか、そんなわけないよな、といった様子で再質問する。
ドロテアさん達クラスの美女はこの世界でも稀だから集中しちゃうのも無理はないというか、気持ちはとても理解できるのだが、だからといって肝心な部分での聞き逃しは勘弁してほしい。
結構勇気がいる言葉だったんだぞ。
「シーサーペントの赤ちゃん……いえ、成長したのでシーサーペントの子供? だと思います」
「……あー、冗談か?」
「本気です」
「シーサーペントじゃなくてその辺のウミヘビだったり?」
なるほど、変な質問をする門番だと思ったが、シーサーペントなんて普通ありえないもんね。疑うのも分かる。
視線が妙に優しくなったし、トカゲを捕まえてドラゴンだと騒ぐ子供と同一視しているのだろう。
君が捕まえたのはシーサーペントなんかじゃなくてウミヘビなんだよ、と教えてあげているつもりなのかもしれない。
凄まじい侮辱だ。
「いえ、間違いなくシーサーペントです。呼んでもいいですか?」
「……はぁ、まあ分かった。じゃあ呼んでいいよ。だが、後がつかえているから端に寄ってくれ」
凄く投げやりな答えが返ってきた。たぶん面倒になったから、現物を見て現実を突きつけてやろうとでも思っているのだろう。
だが、現実を見るのは門番の方だ。
端によけながらアレシアさん達が待機している方に向けて手を振る。これで少し待てばやってくるだろう。
***
門から端に寄ってしばらく経つと、アレシアさん達がペントを連れて合流した。同時に門から兵士達が沢山出てきて僕達を取り囲んだ。
「おいおい嘘だろ、本当にシーサーペントの子供なのかよ!」
門番が慌てた様子で聞いてくる。兵士に囲まれるのは予想外だったが、この大慌ては予想通りで少し楽しい。
「シーサーペントだとちゃんと言いましたよ?」
こちらは事前に申告しているし、連れてくる許可も貰っているんだから恥じ入ることは何もない。
「いや、だからってシーサーペントなんてテイムできるもんじゃないだろう。大人になると三級クラスの魔物だぞ、どうやってテイムしたんだよ!」
そういえばこちらでは魔物もランクではなくて級で表すんだったな。三級ってことは上から三番目。
Sランクが一級と考えたら三級はBランクってことになるのか? 中央大陸だとAランク扱いなんだけど、微妙に基準が違うようだ。
「傷ついたこの子を見つけたので、治療してご飯をあげたら懐きました」
本当は卵から孵って威嚇してきたのを、リムがボコボコにして舎弟にした感じだけど、さすがにそんなことは言えない。
「いや、小動物を見つけた子供じゃあるまいし、相手は魔物だぞ?」
異常者を見る目で僕を見ないでほしい。舎弟にしたのはリムだ。
「懐いちゃったんだから仕方がないじゃないですか。それで、中に入ってもいいですか?」
あんまり問い詰められるとボロがでそうだから、早く許可をだしてほしい。ペントだって陸上生活は可能だけど、海の生物なんだよ?
……あとで海に行くか海水の入ったゴムボートで水浴びさせてあげないとね。
「いや……あれ? どうなんだ、通していいのか? ……ちょっと待ってろ。下手な動きをするなよ。お前らもしっかり見張っておけ!」
そういって門番が門の中に入っていった。おそらく指示を仰ぎに行ったのだろう。
兵士達に囲まれ、微妙に気まずい沈黙に耐えていると門番が立派な装備をした男性を連れてきた。この門の責任者かな?
「まさか本当にシーサーペントが……」
ペントを見た門の責任者らしき男が言葉を失っている。
「あの、入ってもいいですか?」
言葉を失っている責任者に話しかける。危険人物のように取り囲まれ、兵士達や門に並ぶ人達に注目され続けているので、そろそろこの場に居るのが辛い。
トイエンからはすぐに旅立つ予定だから目立つのも覚悟で全員で来た。でも、だからといって注目を一身に浴びながら平然とできる精神力は僕にはないんです。
「……いや……安全が確認できるまで中に入れることはできない」
まあそれはそうだよね。高ランクの魔物をテイムしている人も居るとは思うけど、そういった人は大体が有名人で、それだけである程度安全は保障される。
でも、僕の場合は……微妙だよね。見た目強そうに見えないらしいし、一般的な服を着ているのに美女の集団とスライムとシーサーペントを引き連れている。端的に言って意味が分からない。
「この子が僕の指示に従うことを示せばいいですか?」
「……あぁ、曖昧ではなく、ハッキリテイムされていると分かるようにしてくれれば許可を出そう」
ハッキリとって言うくらいだから、頭を撫でて噛みませんよって内容では駄目だろうな。
偶に遊んでいる指示だしを見せれば納得してくれるかな? とりあえずやってみよう。
「ペント、右回転!」
しゅるしゅると右回転をするペント。あっ、リム、今は大人しくしていて。ペントと一緒に遊んだら駄目だからね。
ここでリムが変身してパタパタ飛んだら問題が凄まじく大きくなるので、頭上でポヨンポヨンしだしたリムを撫でるように抑える。
「ペント、逆回転!」
「ペント、僕をグルグル包んで!」
「……どうですか?」
ペントをグルグルと体に巻き付けながら責任者に確認する。簡単な動きだけど、これでペントがテイムされていないとは思わないだろう。
「うむ。これなら大丈夫だろう。……海軍に入らないか?」
なんかスカウトされた。
ペント目的なのは丸分かりだけど、必要としてくれるのは悪くない気分だ。でもまあ、軍は無理だ。普通に怖い。
「いえ、僕は商人ですので、海軍はちょっと……」
「そうか、だが気が向いたら尋ねてみてくれ。大歓迎されるだろう」
「あはは……ありがとうございます?」
「おい、彼らと同行し騒ぎが起こらぬように対処しろ」
兵士を一人同行させてくれるらしい。確実に見張りだけど、僕の方でも兵士が居れば余計なちょっかいをかけられなさそうだから助かる。
***
アレシアさん達全員の手続きを無事に終え、注目を浴びまくりながら傭兵ギルドに到着した。
兵士が一緒だから誰にも絡まれることもなく、ペントの存在で騒ぎになることもなかったが、初めての町に興奮しながらも、迂闊に声を出せなかったアレシアさん達には申し訳なかったと思う。
中に入ると一斉に注目が集まる。
うん、ガラが悪い。
美女達の集団とペントの姿を見てギルド内が騒めく。少しは僕に向いていた視線も完全になくなったから、視線は美女達とペントに集中しているのだろう。
ガタ
音がした方を見ると、酒場で男がこちらを見ながら立ち上がった。うわっ、絶対こっちに来る。
せめて絡むのなら身分証をゲットした後にしてほしいのに、というよりも冒険者ギルドもそうだけど、ギルド内に酒場を作らないでほしい。
善良な僕が絡まれちゃうから!
ん? おお、一緒に飲んでいる仲間が立ち上がった男をひきとめてくれた。ガラのわるい見た目によらず良い人の……兵士がなんちゃらかんちゃらって聞こえるし、兵士が居るから止めたっぽいな。
兵士さん、ありがとう。
それにしても、向こうの冒険者ギルドと比べてもガラが悪い気がする。トレジャーハンターも含んではいるが、傭兵という戦争も対象とする組織だから雰囲気が殺伐としているのかな?
情報収集中にドロテアさん達の身分証を先に手に入れた方がいいかも、と思って傭兵ギルドに行くことを提案したんだけど、僕達だけだったら確実に絡まれていた。
目立たないためにひっそり一人ずつ登録とかも計画したが、この雰囲気なら確実に逆効果だったな。
マリーナさんが近づかない方が良いと言っていたのは、個人行動中にここのガラの悪さも把握していたのだろう。斥候職のありがたみが凄い。
さて、イレギュラーが起こらないうちにさっさと契約してしまおう。
注目を集めつつ、お守り代わりの兵士さんに感謝しながらカウンターに向かう。
今回はトイエンから逃げだすのも覚悟しているから目立つ前提で来たけど、兵士さんが付き添ってくれたのが本当にラッキーだった。
うん、カウンターのお姉さんは当然のごとく全員美女だ。海を隔てても男の性は変わらないよね。
まあ、美女でも美女でなくても今の僕には関係ない。この状況で鼻の下を伸ばしてお姉さんと楽しくお話しするテクも度胸もないもん。
「すみません。このスライムとシーサーペントの子供の従魔登録をお願いします」
リムとペントの従魔登録をお願いする。
「……シ、シーサーペント? ……か、か、かしこまりました」
受付のお姉さん、めちゃくちゃ顔が引きつっている。もしかしたら蛇系が苦手なのかもしれない。
いや、ニシキヘビよりも大きいんだし、蛇系が苦手じゃなくても普通に怖いか。
「ギルドカードの提示と、こちらをご記入ください。あ、文字を書けますか?」
そういえば僕、商業ギルドのカードしか持っていない。あれ? 僕も傭兵ギルドに入らないといけないのだろうか?
「商業ギルドのカードしかないのですが、これで大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫ですが……その……」
受付のお姉さんが酷く言い辛そうにしている。何か問題があるの?
「どうかしましたか?」
「えぇ、あの、従魔の罪は主人の罪になります。そちらのスライムは問題ありませんが、そちらのシーサーペントを抑えきれなかった場合、大変なことになります。失礼ですが、商人の貴方様では、かなりの危険を伴うと思われます」
あっ、従魔が出す被害を心配してくれたのか。
「ご親切にありがとうございます。今回は従魔登録の為に傭兵ギルドに連れてきましたが、普段は海で生活させていますから、被害を出す心配はありません。安心してください」
「そ、そう……ですか? 従魔の場合、契約されているならこちらから強くは言えませんが、本当に注意してくださいね。特に船とかを襲うことがないようにしてください。あと、手に負えないと分かったら、解き放ったりせずに、辛くとも傭兵ギルドに連絡してください」
とても不安そうな顔をしているが、自己責任の範囲内なのか不安に思っていても登録はしてくれるようだ。凄く不安そうだけどね。
それにしても、アレシアさん達が隣で順調に傭兵ギルド登録できているのに、なんで僕の方が手間取っているんだろう?
登録時にフォローして株をあげるつもりだったのに、予定と違い過ぎて辛い。
読んでくださってありがとうございます。




