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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十六章
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18話 実話

 追加資金を確保した後にトイエンの港町を散策し、この地域の文化を少しだけ見学した。その後、文字と言葉の勉強をするために絵本を二冊購入する。本来であれば歴史書も欲しかったのだが……高かった……。




 かわいそうなコボルト


 昔々あるところにとても平和なコボルトの村がありました。


 コボルトたちは畑仕事をしたり狩りをしたり、偶にお山に帰ってくる龍のお世話をしたり、毎日楽しく暮らしていました。


 そんな平和な村を突然悪夢が襲います。


 悪い奴等が襲ってきたのです。


 ………………………………


 ……………………


 …………


 ……




 龍の怒り


 昔々あるところに地を司る偉大なる龍がいました。


 龍は世界中の陸地を見て回るのがお仕事でした。


 そんな真面目な龍には、お気に入りの住処がありました。


 仕事を終えた龍は住処に帰ります。


 甲斐甲斐しくお世話をしてくれるコボルトたちとの触れ合いを楽しみにして……。


 ………………………………


 ……………………


 …………


 ……




 絵本を購入して一月。


 慣れない場所での生活で小さなハプニングはあったものの、美女達に囲まれて地上で生活しているにしては平穏な日常を謳歌できている。


 毎日字を追いながら絵本の読み聞かせをおこない、それが終われば町に出て日常会話を翻訳しながら勉強する。


 偶に町を出てシャトー号に戻り、書き写した絵本をわたしてイネス、フェリシア、アレシアさん達に言葉の指導をする。


 そんな穏やかな毎日。


 勉強の成果も順調に出ている。


 美女達に絵本を読み聞かせするという、微妙に背徳的な勉強も楽しかったし、ドロテアさん、マリーナさんも僅か一ヶ月で日常会話の聞き取り、簡単な会話をかたことながらもマスターするという驚きの成果。


 言語学習に自信満々だったイルマさんにいたっては、日常会話をほぼマスターし、会話も流調にこなせるまでに成長した。


 日本産の僕としては未知の言語を一ヶ月でなんとかするとか異常でしかないのだが、僕が知らないだけで日本にもそんな天才が居たのかもしれない。


 そしてマリーナさんの指示に従って色んなところで盗み聞ぎ、もとい言語学習をした結果、ある程度の情報収集にも成功した。


 現在滞在している陸地は、公爵城の資料に書かれていた大陸で間違いないこと。


 この大陸には小国を含め幾つかの国があること。


 この大陸の北と南にも、この大陸から分割された陸地があること。


 古代の遺跡が中央大陸よりも沢山残っていること。


 魔物の強さは中央大陸とあまり違いがなく場所によること。特に遺跡には強い魔物が住み着いていることが多いらしいこと。


 遺跡は国やギルドが管理しているが、ダンジョンではないので発掘が終われば魔物が住み着かないように管理する以外は放置され気味なこと。


 そして、人が気軽に立ち入れる場所の遺跡はほとんど探索済みなこと。


 色々なことが分かった。


 その色々なことの中で極めつけの情報が一つ。


 ……絵本が作り話じゃなかった。


 もちろんすべてが真実という訳ではなく、子供向けにある程度の脚色もされているのだが、歴史のお勉強も兼ねてなのか真実の割合が多いらしい。


 しかもまさかの連作。


『可哀想なコボルト』をへて『龍の怒り』に繋がるファンタジー超大作。


 内容は、龍の素材や財宝を求めて人間(国)が龍の住居に泥棒に入る。


 沢山の素材や財宝をゲット。


 帰り際にコボルトの村を発見。


 ついでだとばかりに襲い掛かり、乱獲&強奪。


 龍帰宅。


 当然ブチ切れる。


 お気に入りのコボルトたちを救出しながら、コボルトを攫った国をすりつぶすように蹂躙。


 それでも怒りが収まらなかった龍は最後に大陸を引き裂き、バカなことをした国があった大陸の東部分を徹底的に攻撃。最後には大陸の東部を沈めてしまう。


 そこまでしてようやく落ち着いた龍は、救出したコボルトたちと自分が住んでいた場所に戻り、そこも大陸から切り離して結界を張って閉じこもってしまう。


 めでたしめでたし。


 ……まったくめでたくないよね。


 どうやら『可哀想なコボルト』と『龍の怒り』は、子供を楽しませるための絵本ではなく、幼いうちから龍の恐ろしさを刷り込むための絵本だったらしい。


 まあ理解できなくもない。


 たぶん沈められた大陸東部にも、事件とまったく関係ない人達も沢山居たはずだ。でも龍はそんなの関係ないとばかりに殲滅。


 そんな危険な存在に余計なちょっかいをかけないようにしたかったのだろう。


 だって大陸が五分割されて、そのうち一つは沈んじゃっているもんね。怒らせたら洒落にならない。


 この絵本の内容がおおむね事実だと知った時、僕達は頭を抱えた。


 トイエンに到着するまでに見た海中の巨大なクレーターは地の龍の仕業で、結界に阻まれて上陸できずに一夜を過ごした島は、地の龍の住処。


 知らない間にとんでもない地雷の傍で一夜を明かしていたことになる。


 怖すぎるだろう。


 沈んだ陸地は転生者とか魔王の仕業だと思っていたのに、実は龍の仕業で、しかもその龍が未だに存在しているっぽいとか、お家に帰りたくなってくる。


「ワタル。シャトー号が見えてきたわよ」


 ルト号のリビングでトイエンに来てからのことを思い出していると、ドロテアさんがシャトー号が見えたことを教えに来てくれた。


 約一週間ぶりのシャトー号か。みんな元気にしているだろうか?




 ***




「では、今後の方針を決める会議を開催します」


 シャトー号に帰還し、思う存分リムとペントと戯れ、夜に全力でイネスとフェリシアとイチャイチャしまくった翌日、ドロテアさん主導で会議が始まった。


 ある程度言葉にも慣れたし、そろそろ本格的に行動しようということだ。


 まあ会議と言っても僕の部屋に集まっただけだし、飲み物とおやつも大量に用意されているから、会議と言うかお茶会といった雰囲気だけどね。


「やっぱり冒険者なんだから、荒らされていない遺跡を探すのが一番じゃないかしら?」


 アレシアさんはトレジャーハントがご希望なようだ。


 僕達なら普通では足を踏み入れられない場所でも活動できるし、悪くない提案ではある。


 ただ、財宝は唸るほど余っているから、これ以上手に入れても仕方がない気がしないでもない。


 この国で使える資金が増えるなら大歓迎だけど、遺跡だとなぁ……また換金し辛い物が手に入って、もてあましそうな気がする。


「荒らされていない遺跡を発見できたとして、また騒ぎになりませんか?」


 ふむ、クラレッタさんの言うことももっともだな。遺跡を発見したことがバレたら、国やギルドも黙っていないんじゃないだろうか?


「私達以外たどり着けないような場所で探せばいいのよ。黙っていれば絶対に分からないわ」


 アレシアさんは財宝や名誉が目的じゃなくて、純粋に冒険がしたいだけみたいだな。イネスも同じ意見のようで、二人してキャイキャイとはしゃいでいる。眼福だ。


「他の国や北と南の大陸にも行ってみたいわね」


 これはイルマさんの意見。無論、遺跡にも興味津々なのは間違いないだろうが、異国の文化も気になるのだろう。


 その後も様々な意見が出てくるが、誰も龍の島の話題には触れようとしない。


 みんな聞かなかったことにするようだ。


 さすが一流の冒険者。自分達で手に負えない危険には近寄らない分別を持っているらしい。正しい判断だ。


 まあ、大陸を引き裂くようなバケモノに、誰も近寄りたくなんかないよね。




「じゃあ当面は小さな商売を繰り返しながらこの大陸を旅して、遺跡がありそうな場所を見つけたら探索。北と南の大陸は後でまた考えましょう」


 会議の結果、ドロテアさんがまとめた方針で行動することになった。


 遺跡の発見も兼ねているから、久しぶりに海ではなく陸を旅することになる。


 船召喚が使いづらくなるのは不安だけど、これはこれで楽しそうだ。


「方針も決まったし、旅の準備をしましょう。荷物をまとめたら出発よ。まずはトイエンで傭兵ギルドに登録ね!」


 ようやく大陸に足を踏み入れることができると、アレシアさんがとても張り切っている。


 カーラさん、クラレッタさん、イネス、フェリシアも嬉しそうだし、みんなトイエンに行ってみたかったんだな。


 傭兵ギルドに登録か。


 ……みんな最低限の言葉は覚えたし、旅をするんだから身分証があった方が便利なのは間違いない。


 でも、絶対に騒ぎになるだろうな。


 今回はシャトー号を送還するから、フルメンバーでの行動だ。


 八人の美女だけでも絡まれるのが確定なのに、更にリム達とペントまで加わる。騒ぎにならない訳がない。


 というか、ペントを同行する時点で騒ぎ確定なのが泣ける。


 まあ、ペントを海で放置なんてできないし、身分証を手に入れたら旅に出るのだから多少の騒ぎは構わないが……指名手配にならないようにだけは気をつけなければいけない。


 神様に祈りたい気分だけど、祈った方が騒ぎに拍車がかかりそうな気がするから祈るのは止めておこう。




 ***




「あのー、すみません」


 トイエンの港町に到着し、門番に声をかける。


「なんだ?」


「従魔が居るのですが、町に入っても問題はありませんか?」


「ん? その頭の上に乗っているスライムか? 普通のスライムではないようだが、スライムならまあ構わんだろう。だが、従魔登録はちゃんとするんだぞ」 


 リムなら問題ないらしい。リムもそこらへんの傭兵なんて相手にならないくらいに強いのだが、見た目はとっても可愛らしいから警戒されないようだ。


「いえ、この子だけじゃなくて、スライムがもう二匹と……」


「あぁ、スライムなら構わん」


 僕が言い終わるまえに、ドロテアさんとマリーナさんの肩に乗っているスライムを発見し許可を出してくれる門番。


 ふうちゃん達をスルーしてドロテアさん達に注目しているのが丸分かりで、ある意味共感を覚える。


「いえ、騒ぎにならないように、離れた場所で待ってもらっているのですが、シーサーペントです。まだ幼いですが、それなりに大きいです」


 ペントをトイエンに入れないことも考えたけど、従魔登録と従魔の証は是非ともゲットしておきたいから、連れてくることにした。


 まずは、何言ってんだこいつ、といった目で見てくる門番を上手に納得させなければいけない。


 ……僕は無事に旅立てるのだろうか?


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] すごいウロコの時に話があったあれか 読んだの昔すぎて最初は気づかなかった・・・
[良い点] さすがファンタジー世界。絵本の内容が概ね真実!!・・の展開 良い視点で書かれています。 [気になる点]  図書館を探し、利用する展開も期待します。 [一言]  旅の恥は搔き捨て。どうせ美女…
[一言] 龍は長生きしてるだろうし創造神に迷惑かけられた事ありそうだよな
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