19話 文明の香りとシーサーペント
よしイ〇ザルト45を召喚しよう。
「リム、いまから新しい船を召喚するよ、みる?」
鞄の中に居るリムに声をかけると、出てきて肩まで登って来た。
『……ふね……?』
「そう、おっきな船を召喚するんだ、みる?」
『……みる……』
リムはそういって頭の上に陣取った、可愛いなー。
「船召喚」
大きな光る魔法陣の中から、真っ白な船体と黒く反射する窓の船が出て来た、カッコいいなー和船でぐるっと一周してみる。
2階が運転席かな? 1階の窓の部分が黒いな、あれがプライバシーガラス? 何処から乗り込めばいいんだろう? 船の後ろ側が一段低くなってる、ここから乗れるな。
後ろのスペースは結構広い、ここはアフトデッキと言うんだまあ、後方デッキで良いよね? 後方デッキは結構広いしもう少し大きなお風呂でも良かったかも?
船内は後のお楽しみにして、バウデッキ、これも前方デッキで良いか、に回ってみる、前方デッキも結構広いなこっちにお風呂を置くのも気持ちよさそうだね。
いよいよ船内に入ってみる。おー、豪華だなーここがサロンか、L字のソファーに高そうなテーブル、2つのスツール。
2段の階段を上がると青透明なテーブルと両サイドにソファー、ここがスカイラウンジ、窓から外の景色が良く見えるな。エアコンが操作できるのか、文明の香りがするね。
リムも興奮したのか頭の上でポンポン跳ねてる。
「リム、凄いね、豪華だね」
『……ごうか……』
その横が、ギャレー、キッチンか。電気コンロに電子レンジ、冷凍庫と冷蔵庫もある。食器類も、キッチン用品もある、おー生活が快適になる。
奥に行くとここがゲストルーム、ベッドが2つあるな、なんで段差があるんだ? 寝っ転がってみると天窓がある、こってるな、隣にトイレがある。
次は、ここがオーナーズルームか、収納と大きめのベッドがある。3人で眠れるね。奥にはトイレにシャワールームがある。なんだか見ているだけでワクワクする。
一度外に出て今度はフライングブリッジにハシゴで上がる。ここが操縦席だね、高いね景色が良く見える。
あっ、そうだ、そろそろ船偽装をしておかないと。内装は変えるのもったいないし、イネスさんとフェリシアさん以外、とうぶん誰も中に入れる気はないのでそのままにしておこう。
外装は変えておかないと、木造に偽装して、ちょっと変わった魔導船に見えるかな? たぶん大丈夫だよね、よし偽装完了。
明日の朝まではまだまだ時間があるな、せっかくだからこの船を楽しむか。キッチンで紅茶をいれ果物をだしてリムとスカイラウンジでお茶会をしてみた。
うん、ゴージャス。リムが嬉しそうに果物を消化するのを見ながらまったりする。今度はお風呂に入ろう。キッチンでお湯を大量に沸かして湯船に溜めていく。シャワーも有るけど海の上でのお風呂は試したいよね。
今回は眺めが良さそうな前方デッキにお風呂船を召喚する。服を脱いでお風呂に浸かる。天気は快晴で周りはすべて青い海、これはサイコーに気持ちが良いな。
前方デッキをポヨンポヨンしながら探検していたリムが、お風呂の上まで登って来た。
「リムもお風呂に入ってみる?」
『……はいる……』
「そっか、ゆっくり浸かってみるんだよ。あとお風呂のお湯を吸収したら駄目だからね」
『……うん……』
リムがおそるおそるお湯に体をつけて、ゆっくりとお湯に入っていく。プカリとお湯に浮かんだリムはお湯に浮かんだまま漂っている。スライムって浮かぶんだね。
「リム、大丈夫? 何かおかしい所は無い? 違和感があったらすぐにお湯から出るんだよ」
『……すき……』
うん、気に入ったって事でいいのかな? まあ喜んでるならいいか。ゆっくりお風呂を堪能して上がる、リムはまだお風呂に浮かんでいるそうだ。
暗くなって来たので電気の明かりの中で夕食の準備をする。
「リム、ご飯だよ」
『……ごはん……』
ご飯には素早く反応するリムに萌えながら一緒に夕食を食べる。
「そろそろ寝るか」
オーナーズルームのベッドに横たわり目を瞑る。日本の自分のベッドよりも良い寝心地に、少し違和感を覚える。高級なベッドってこんな寝心地なんだ、凄いな。お休みなさい。
目が覚めると質の良い睡眠が取れたせいかスッキリしている。リムと朝食を取り身支度を整える、南方都市に出発する為にフライングブリッジに上る。
まだ暗い中、南方都市に向かって出発する。夜の海だから景色が見れないのが残念だな。
そろそろ南方都市か、夜明けの薄っすらと海が色付く中を進む。ゆったりと椅子に座って、最高の景色の中、高い視点から操船するのは気持ちが良い。
係留所に着くとまだ誰も来ておらず、紅茶をいれながら皆が来るのを待つ。暫くするとイネスとフェリシアがそれぞれ荷車を引きながらやって来た。
「イネス、フェリシア、おはよう。食料も沢山手に入ったみたいだね」
「「おはようございますご主人様」」
「食料は十分に揃ったと思うわ、さっそく積み込んじゃう?」
「ええ、後方デッキに取り合えず積み込んで、出航してから船送還でしまおうか」
「「はい」」
後方デッキに食料を積み込んでいると、カミーユさんがスパイダーシルクを届けてくれた。ディーノさんとエンリコさんも一緒に見送りに来てくれたみたいだ。
「カミーユさん、ディーノさん、エンリコさん、おはようございます、朝早くからすみません」
「いえ、ワタルさんには頑張ってもらいたいですから、この位なんでもありませんよ。沢山の胡椒を手に入れて帰って来てくださいね」
「あはは、頑張ります」
荷物を船に積み込み、カミーユさん達と雑談をする。変わった魔導船ですね、何処で発掘された物か分かりますか? と聞かれて誤魔化すのが大変だった。偽装してもやっぱり変わっているらしい。気を付けないと。
「では、カミーユさん、ディーノさん、エンリコさん行ってきます」
航海の無事と成功を願う言葉を聞きながら南方都市を出発した。
目的地は南の大陸、魔導船で1ヶ月は掛かる、長い船旅の始まりだ。
感慨に耽っていると、イネスとフェリシアがキャイキャイしながらフライングブリッジに上がって来た。
「ご主人様、この船凄いわ。よく分からない物もあるけど、素敵な物も沢山あるわ」
「ご主人様、ベッドが柔らかくて大きかったです。椅子も座り心地が素晴らしかったです」
「2人とも船が気に入ったんだ、後方デッキの荷物を整理したら、使い方を教えるから少し待っててね」
「はい」
ゴムボートを3艘追加で購入して荷物を積み込んでもらう。船の画面が量が多くなって見づらいな、まとめられないかな? おっ、できた、これで大分見やすくなったね。
船召喚 レベル 3
購入した船を召喚することができる。+2
購入した船に限り最善の状態に保ち、自由に操船することができる。
購入画面から新しく船を購入することができる。
自動操縦
地図作成と連動していて、地図が出来ている場所なら、水上限定だが目的地を設定すれば自動で到達できる。
地図作成
自分が行った事の有る場所がオートマッピングされる。
船偽装
性能を変えずに船の姿を質感も再現して思った通りに変更できる。
初期 手漕ぎボート(木製) 人数制限2
特性 不沈・不壊 乗船拒否
購入 ゴムボート 人数制限2
(お風呂船)×1 (食糧庫船)×6 (貿易品倉庫船)×2
特性 不沈・不壊 乗船拒否
購入 ビッグ フィッシング ゴム ボート 人数制限4~5
(小屋船)×1 (倉庫船)×1
特性 不沈・不壊 乗船拒否
購入 和船 人数制限12
特性 不沈・不壊 乗船拒否
購入 イ〇ザルト45 人数制限15
特性 不沈・不壊 乗船拒否
積み荷の整理が終わったので、2人に船内の施設の使用方法を教える。
エアコンに驚き冷凍冷蔵庫にも驚き、電子レンジの説明に首を傾げ、電磁プレートと蛇口から出て来る水で理解を放棄したみたいだ。まあ使い方が分かれば問題無いよね。
シャワーとトイレを説明した時は大喜びしていた。さっそく使用したいと言うので、狭いシャワー室に3人で入り、体を流しあった。至福な時間でした、狭いのもいい事あるね。
「うふふ、気持ちよかったわ、この魔導船は凄いのね。他の魔導船にも護衛で乗った事が有るけど全然違うわ、ねえご主人様、豪華客船はこの魔導船より凄いの?」
この船は魔導船じゃないんだけど、いや、念じれば綺麗になる時点で魔導船なのかな? 水も燃料も念じれば元通りだし、魔導船でいいか。
「そうだと思うよ、豪華客船は例えて言うなら、最高の物を集めた小さな町みたいな物かな? 最高級の部屋、一流の様々なお店、見た事も無いような娯楽施設があるよ、たぶん……」
豪華客船なんて乗った事ないしね、想像しか出来ないな。
「そうなの、想像も出来ないわ、でも楽しみね」
「フェリシアは何か分からない事はない?」
「分からない事は沢山ありますが、使用方法は分かったので何とかなると思います」
「分からなくなったらまた聞いてね、じゃあそろそろ再出発するよ。2人は自由に過ごして良いからね」
再出発してしばらくすると2人が紅茶をもって上がって来た。
「紅茶はいかがですか?」
「ありがとう、少し休憩するよ」
2人と話しながらふと思う、これって勝ち組の生活なんじゃないの? 豪華な船に美人が2人、これって勝ち組の生活だよね?
あーでも美味しい食べ物と美味しいお酒、娯楽がたりないか。豪華客船が召喚できるようになれば間違いなく勝ち組生活が出来るけど、今はまだ勝ちかけ位かな? もっと頑張らないと。
進んで、晩御飯を食べて、オーナーズルームでイチャイチャして眠りにつく。そんな幸せな生活が続いた5日目の朝、はじめて海の魔物に襲われた。
「ご主人様、ご主人様、少しよろしいですか?」
「ん? 朝?」
どうしたんだろう、いつもなら目が覚めるまで待っててくれるのに。キスもないし、目が覚めてくると目の前に困惑顔のフェリシアがいる。
「何かあった?」
「はい、何と言って良いのか、外に出て頂ければ分かるのですが、シーサーペントがこの船に体当たりしています」
「? とりあえず、様子をみに行くね」
ベッドから出て後方デッキに向かうと、イネスがシーサーペントの体当たりを面白そうに見学している。余裕があるんだね、しかしシーサーペントに体当たりをされてもまったく振動すら伝わらない、凄いよね。
「あら、おはようございますご主人様」
近づいてきて朝のキスをしてくれる。忘れていたフェリシアも慌ててキスをしてくれた。2人とも結構余裕があるよね。
「あっリム、近づいたら危ないよ」
なぜかリムが興味津々な感じで、もっちもっちとシーサーペントに近づいて行くので慌てて抱き上げる。
『……? ……』
何でそこで不思議そうな思念を送って来るのかな?
「それでどうしましょうか、ご主人様」
「うーん、この結界が破られる事は無いから、このままでも平気と言えば平気なんだけど。鬱陶しいよね? イネスとフェリシアで倒せる?」
「うーんどうかしら? ダメージは与えられるけど、倒し切るまでに逃げられるかもしれないわ」
「逃げるなら逃がしてあげても良いんじゃないですか? どうでしょうご主人様」
「うん、無理して倒す必要も無いよ」
「分かったわ、じゃあ本格的に攻撃する前に、ご主人様もシーサーペントに一撃入れて欲しいの。そうしたら倒せた時にご主人様もレベルが上がると思うわ」
「そうなの? ならリムにも攻撃してもらおう。リムはレベル1だから、凄くレベルアップしそうだよね」
弓を取り出し、シーサーペントに数本放つ。刺さりもしないで弾かれてるけど経験値はもらえるのかな? その後はリムに石を弾かせてシーサーペントに当てる。まったく効いてないがリムは楽しそうだ。
『……♪……』
「まったく効いてないんだけど、これでいいの?」
「ええ、これでシーサーペントが倒せれば皆でレベルアップよ。フェリシアは雷属性の魔法で1番強力なのを準備して、私は炎属性の魔法で1番強いのを放つわね、同時に行くわよ」
「はい」
おお、よく考えたら攻撃魔法を見るのはじめてだな。2人とも小杖で大きくて複雑な魔法陣を描いていく。
「じゃあ行くわよ」
「はい」
2人が同時に魔法陣に魔力を込めると魔法陣が光り輝き炎と雷に変わり、シーサーペントに直撃した。あれ? 魔法の名前とか叫ばないのかな? 後で聞いてみるか。
轟音と共に視界に広がる水蒸気が収まると、ズタボロになりながらも生きているシーサーペントがいる。あれで倒れないのか、魔物は凄いな。
「怒り狂ってるわね、逃げそうにないしもう一撃いくわよ」
「はい」
怒り狂って体当たりしてくるシーサーペントにもう1度魔法が放たれる、水蒸気が収まると見えたのは沈んでいくシーサーペントだった。
「逃げたの?」
「いえ、倒せたと思います、ピクリともせずに沈んでいってますし」
「ねえのんびりしてないでシーサーペントを回収しないと、もったいないわよ」
「え? ああ、そうだった……用意もないので今回は間に合わないね。次の機会があればロープを出しておこうか」
沈んでしまったシーサーペントをみながら言うと、イネスは残念そうにしていた。
「シーサーペントは高価なの?」
「ええ、海竜なんかと比べたら安いけど、基本的に海の魔物は強いし倒すのも大変だから価値が高いのよ。シーサーペントクラスならほとんど倒されないから白金貨の価値はあるわね」
「凄いね、今のうちにロープを用意しておくよ。次はしっかり回収しないとね」
「次に期待って、普通ならシーサーペントの一撃で大抵の魔導船でも沈むのよ。まあこの船なら何の問題もないけれど、普通に出会ったら死を覚悟しないといけない魔物だって事は忘れないでね」
「分かった、まあレベルの確認をしながら朝食を食べよう」
「はあ、そうねお腹もすいたしそうしましょうか」
「では、私達が準備しておきますので身支度をお願いします」
「うん」
忘れてたな、パンツいっちょで出て来てたのか。それはシーサーペントも怒るよね、身支度を整え朝食を食べながらレベルの確認をする。
名前 豊海 航 とようみ わたる
年齢 20
職業 船長
レベル 45
体力 980
魔力 96
力 100
知力 110
器用 106
運 15
スキル 言語理解 (ユニーク)
船召喚レベル3 (ユニーク)
槍術レベル1
弓術レベル1
生活魔法レベル1
テイムレベル1
名前 リム
種族 ホーリースライム
年齢 0
職業 ワタルの従魔
レベル 33
体力 650
魔力 114
力 67
知力 79
器用 71
運 30
スキル 聖属性魔法レベル1
回復魔法レベル1
消化・吸収
物理耐性
名前 イネス
種族 炎虎族
年齢 19
職業 ワタルの奴隷
レベル 85
体力 1700
魔力 594
力 394
知力 82
器用 126
運 25
スキル 炎属性魔法レベル3
剣術レベル3
体術レベル2
気配察知レベル3
身体強化レベル4
名前 フェリシア
種族 ダークエルフ
年齢 62
職業 ワタルの奴隷
レベル 97
体力 1020
魔力 1850
力 102
知力 278
器用 188
運 18
スキル 雷属性魔法レベル3
結界術レベル3
弓術レベル3
短剣術レベル2
気配察知レベル2
身体強化レベル2
「凄いな、イネスは7、フェリシアは5もレベルアップしてる。僕とリムは25レベルアップと32レベルアップしてるよ」
「うふふ、そうね、レベルは高いほど上がり難くなるんだけど。さすがにSランクに近いAランクの魔物を倒せばそれ位は上がるわよね」
「そうですね、私達ではこの船が無かったら、戦う事すら出来ない相手でしたからね」
シーサーペントってそんなに凄かったんだ。強そうだなって思ったけど、船に体当たりしても衝撃すら来なかったから其処までとは思ってなかったよ。
「リムも沢山レベルアップしたね、嬉しい?」
『……りむ、うれしい……』
「おお、リムが二言もしゃべった、凄いねリム、偉いねリム、知力が上がったからかな? レベルアップは大切だね」
『……りむ、すごい……?』
「凄いよ、リムはとっても凄いよ」
『……りむ、うれしい……』
リムに向かって話しかけている僕を2人は苦笑いしながら見守っていた。
残高 2白金貨 2金貨 15銀貨 10銅貨
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。