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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十五章
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17話 冒険者としての心構え



 乙女の尊い犠牲によってダンジョンが言うところの試練であるコーヒーカップ一万回転をクリアした。ゴムボートの結界が功を奏してただ耐えるだけでクリアできる試練だったが、正直強いモンスターと戦うことの方が気持ち的には楽な気がする。




「よくぞ試練を乗り越えた!」


 道化のドラゴンが偉そうに話し始める。


 僕しか言葉が分からないので聞き逃す訳にはいかないのだが、マリーナさんが気になって集中できない。


 とはいえ、僕がマリーナさんのところに向かっても逆効果なので身動きが取れない。


 どうしたものかと思っているとクラレッタさんがスッと動き、マリーナさんが入り込んだ物陰から少し離れた場所に待機した。


 クラレッタさんがマリーナさんのフォローと護衛をするのなら僕の出る幕はないだろう。


 なら僕の役目は通訳だ。しっかり話を聞いてこういう小さなところで好感度を上げていこう。


「試練を乗り越えた証として、この通行手形の欠片を授ける。見事残りの欠片を集め、王に勇敢なる者であることを証明してみせよ」


 このドラゴンの像、道化の格好をしているくせに偉そうだよね。あと、別に誰も勇敢な者だと証明したいなんて思ってないぞ。


 このダンジョンがそういう設定で運営されているからしょうがないのだろうが、試練がテーマパークのアトラクションなのでドラゴンの言葉が薄っぺらなものにしか感じられない。


 ただ、そんな感想を抱いているのは僕だけのようで、通訳を聞いたアレシアさん達やイネスとフェリシアの反応は違い、なんだか凄くワクワクしているようだ。


 現実とは違うにしてもゲームで何度も似たようなパターンを見たことがある僕と違い、こういうゲーム的な展開が珍しいのかもしれない。


 おっ、ドラゴンの像が付いている掲示板の下から台座がせり上がってきた。


 上に置かれているのが城への通行手形ということだろう。


「通行手形だと思うのですが、取らないんですか?」


 なぜか誰も台座に近づかない。


「罠があるかもしれないから、マリーナが復活するまで待つわ」


 あっ、そっか。宝箱にも罠が付いているパターンがあるのだから、台座に罠があっても全然おかしくないな。


 心配なのは台座の出現に時間制限がある場合だ。台座が元に戻ってもう一度コーヒーカップに挑むことになったら最悪だぞ。


 アレシアさん達もその可能性を理解しているのか、マリーナさんが居るであろう場所をチラチラと確認している。



「待たせてごめんなさい」


 ジリジリしながら待っていると、マリーナさんが物陰から出てきた。待たせたといったが三分程度しか経っていない。


 顔色もまだすこぶる悪いので、最低限動けるようになっただけで戻ってきたのだろう。


 クラレッタさんが回復魔術を掛けてはいるが、それでも回復しないということは、乗り物酔いと回復魔術の相性が悪いのかもしれない。


 アレシアさん達の間で、大丈夫? ええ、大丈夫よ、といった簡単な会話が交わされる。深く踏み込まないのは、マリーナさんに気を使っているからだろう。


 簡単な会話が終わるとマリーナさんが台座を調べに向かう。そして気分が悪いのとは違う不機嫌な顔をして戻ってきた。


「罠が仕掛けられているわ。しかも解除にかなり神経を使う繊細なタイプの罠よ、今の私では無事に解除できる可能性は低いわね」


 本当に罠があったようだ。繊細な作業が求められるということは、今回の試練は解除技術がある人間以外でコーヒーカップをクリアして、解除技術を持つ人間を万全な体勢にしておかなければならなかったのかもしれない。


 このダンジョンって理不尽な上に性格まで悪い。


「ならしょうがないわね。マリーナが回復するまで待ちましょう」


 あっさりとアレシアさんが決断する。これがリーダーの資質なのか? 僕だったらコーヒーカップ再チャレンジの可能性が怖くて、いつまでもどうするか悩んでいる自信がある。


「いえ、欠片を取った後の重さの変動に反応して台座が爆発する仕組みだから、罠の発動には数秒のラグがあるわ。ワタルの結界を利用すれば、安全に入手可能よ」


 重量センサーを兼ね備えた爆発タイプの罠ってことか。このダンジョンって使われている技術がいちいち高度だな。


 でも、そんな高度な罠も、船召喚のチートの前では無意味ということらしい。


 刑事ドラマなんかのハラハラドキドキな爆弾解体シーンにファンタジーを持ち込むような座りの悪さを感じるが、ここはファンタジーな世界なので間違っているのはダンジョンの方だ。


「ワタル。悪いけど協力をお願い」


「もちろん構いませんよ。ゴムボートを召喚します。ん?」


 アレシアさんの言葉を快諾しゴムボートを召喚しようとすると、台座が再び動き出した。


「ワタル! 急いで召喚して! 私が手形を取るから、それ以外は退避!」


「は、はい」


 慌ててゴムボートを台座の前に召喚する。


「ご主人様、ごめんね」


「ぐぇ!」


 イネスの声が聞こえると同時に服の襟が引っ張られて体が浮き上がる。僕が自ら退避するのでは遅いと判断して、イネスが引っ張って運んでくれているのだろう。


 首が締まって少し苦しいが、体は丈夫になっているから問題ない。それよりも問題はアレシアさんだ。


 状況を理解してアレシアさんを確認しようとした瞬間、コーヒーカップのアトラクション全体を包み込むような強烈な閃光が走り、猛烈な音と共に熱風と衝撃が体に伝わってきた。


 高レベルのイネスが全力で走る速度は異常で、実際に今の時点でも巨大なコーヒーカップのアトラクションが少し小さく見える程度に距離が離れている。


 そんな速度で離れていても伝わってくる熱と衝撃。どれだけの威力の爆発だったんだ?


 でも、爆発したってことは、アレシアさんが通行手形の欠片を手に取ったということだ。


 いくら強烈な爆発だったとしても、神様の力を防ぐ船召喚の結界なら問題はない。気になるのはアレシアさんが手を引っ込めるのが間に合ったのかだ。


 さすがのアレシアさんでも、あの爆発をもろに手に受ければ酷いことになってしまうだろう。


 爆発が終わり、ようやく体が地面に降ろされる。


「イネス、ありがとう」


「ふふ、私はご主人様の護衛なんだから当然よ」


 たいしたことないといった様子のイネスがとても頼もしい。


『……わたる……?』


 頭上のリムからなにがおこったの? といった感じの思念が飛んでくる。そういえばリムが頭の上で待機していたんだったな。


 短時間でいろんなことが起こり過ぎて、すっかり意識から抜け落ちてしまっていた。


「大丈夫、ちょっと罠が発動しただけ。船召喚の結界があればなんの問題もないよ。うん、問題ないんだ」


 頭上のリムを手に載せ、安心させるように撫でながら言い聞かせるが、一番の目的は自分の不安をどうにか押し込めるためだ。


 もし手を引っ込めるのが間に合っていなければ、アレシアさんの手は酷いことになっているだろう。


 一流の冒険者であるアレシアさんがそんなミスを犯すとは思えないが、あの爆発を体験するとどうしても最悪の事態が脳裏によぎってしまう。  




 徐々に爆炎が晴れていき、遠目にゴムボートの存在が確認できるようになる。


 そして、その中に城の通行手形の欠片を見せるように掲げながら、こちらに向かって手を振るアレシアさんが居た。


 どうやら怪我一つないようだ。僕だけではなくジラソーレのメンバーやイネスとフェリシアも心配していたらしく、周囲にホッとした空気が流れる。




「大丈夫だと信じてはいたけど、爆発した時はさすがに怖かったわ」


 全員でアレシアさんのところに向かうと、若干引き攣った笑顔でアレシアさんが笑っていた。


 そりゃあそうだろう。離れた場所からでも恐怖を覚える光景だったんだ。間近で体験して怖くない訳がない。


 でも、近くで見ても怪我一つないようだな。さすが創造神様が凄い結界だという船召喚の結界だ。


 この結界があるのにゴブリンから逃げていたら、文句が言いたくなるのも当然だな。


「アレシア。今回のあなたの判断はリーダーとして正しかったと思いますか?」


 ひとしきりアレシアさんの無事を喜びあったあと、ドロテアさんが怒りの表情でアレシアさんを問い詰め始めた。




 ……なんでドロテアさんが怒るのか意味が分からなかったが、その内容を聞けば納得できた。


 まとめると、たとえ気分が悪くなろうとも命の危険はないのだから、間近で爆発を受けるようなリスクは取るべきではなく、一緒に避難をして万全の態勢で二度目に挑むべきだったということだ。


 二回目の挑戦ができないというリスクもあるが、この雰囲気だと銀貨を投入すれば問題なく二度目に挑めそうだよね。


 だって大爆発したはずなのに、コーヒーカップのアトラクションには傷一つ付いていないもん。


 とっさの判断でそこまでを求めるのは無理があるだろうと思うが、一流の冒険者にはその判断力が求められるらしい。


 できなければ死ぬだけなので、当然なんだそうだ。元々向いていないとは思っていたが、やっぱり僕には冒険者は無理だな。


 そんなとっさの判断、一生できる気がしない。


「ドロテア、ここはダンジョンの中なのよ。お説教は帰ってからにしなさい」


 懇々とアレシアさんを諭すドロテアさんをイルマさんが止めた。


 ……そういえば、ここってダンジョンの中なんだよな。爆発の衝撃とアトラクション以外で魔物が出てこないからすっかり気が抜けていた。


「もうしっかり理解したから、帰ってからまでのお説教は勘弁してよ」


 アレシアさんが心底嫌だと言った顔でイルマさんに文句を言う。


「駄目よ。ドロテアの言うように間違えれば命の危険があるのが冒険者。しかもあなたはリーダーなんだから、もう一度しっかり反省する時間が必要よ。あと、私達を心配させたのだから、その分しっかり叱られなさい」


 アレシアさんの要望をバッサリと却下するイルマさん。絶望した表情で他の仲間達に助けを求めるが、誰も救いの手を差し伸べる様子はない。


 みんな、爆炎が晴れてアレシアさんの無事を確認するまでかなり心配していたから、アレシアさんがお説教を受けるのは賛成なのだろう。


 いや、アレシアさん。この状況で僕にフォローを要求する視線を向けられても無理ですよ。


 でも、アレシアさんの好感度は稼ぎたいから、話を逸らすくらいは挑戦してみよう。


アトラクションを一つ一つ書いていくとかなり長くなってしまいそうなので、あと一つか二つアトラクション関係を書いて、残りはダイジェストにする予定です。



読んでくださってありがとうございます。

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[一言] すげー鬼畜ダンジョンだ
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