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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十五章
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13話 考えようによってはチャンス

 ロマーノさんがタイミング悪く発見したダンジョンのせいで、バカンスの予定がダンジョン探索に切り替わってしまった。僕が子供だったらグレる案件だが、僕は大人なのでロマーノさんを一生恨むくらいで許そうと思う。



 ダンジョン発見の知らせを聞いて二日目。


 僕達はまだダンジョンに入っていない。というか、イルマさんとその補助をしているマリーナさん以外は軽く警戒しているだけのリラックス状態だ。


 イルマさんが言うには、電飾らしき物は魔力で稼働しているそうなのだが、現在使われている魔導技術と根本的に違うらしく、謎を解き明かせば世界が驚く発見になるかもしれないらしい。


 でも、簡単にそんな技術が解き明かせる訳ないから、アレシアさんが調べる期限を決めてくれた。


 今日一日で新たな発見がなければ、明日からは探索に切り替えることになる。期限を設けなければいつまでも研究していそうなのでナイス判断だ。


 しかし、これだけのんびりできるのなら、バカンスが終わってからでも良かった気がする。




「ふー。サッパリ分からないわ。まえにワタルに聞いた電気とも違うようだし、どういう仕組みなのかしら?」


 日が暮れるまで調査して、結局何も分からなかったようだ。でも、疲れた顔をしているものの、イルマさんの表情はとても輝いている。分からないことが楽しいのだろう。


「でも、明日からはダンジョンに入るわよ。いいわね?」


「ええ、残念だけど約束だからしょうがないわね」


 イルマさんがアレシアさんの注意に肩をすくめながら頷く。どうやら明日は問題なくダンジョン探索を開始できそうだ。


 ……もしかしてこれはチャンスなのでは?


 これからもダークエルフの島には何度も滞在するだろうし、その時に僕がイルマさんをここまで連れてきてあげればギャルゲー的には好感度アップ間違いなしだ。


 まあ、到着したら研究に没頭するイルマさんを眺めているだけになりそうだが、それでも美女の好感度が稼げるなら構わない。


 暇つぶしグッズ満載で送り届ける覚悟だ。




 ***




「イルマ。眠そうですけど、もしかして徹夜で調べていたんですか?」


「ふふ、さすがにダンジョン探索前に徹夜はしないわよ。少し寝たわ」


 少しって本当に少しなんだろうな。まあ、イルマさんもプロの冒険者だし、探索に支障が出ることはないだろう。


 いよいよダンジョン探索か。ゲームくらいでしか知らないがどんな感じなんだろう? 


 ……かなり緊張してきた。


 念のために探索の手順を確認しておこう。


 えーっと、僕はイネスとフェリシアに守られながらついていくだけで、フェリシアに結界を掛けてもらうから、その結界に攻撃が当たったりアレシアさん達が苦戦したりした場合はすぐ船召喚。


 基本的にはこれだけで良いはずだ。


 ……戦っても足手まといだからしょうがないが、僕の役割って本当に簡単だな。下手をしなくても僕の頭上でプルプルしているリムの方が戦力になるだろう。


「じゃあ入るわよ」


 いよいよダンジョン突入か。


 イルマさんが防衛設備もなくて意味が分からないと言っていた城門に、マリーナさんが慎重に進んでいく。


 時折立ち止まりなにかしらの作業をしているから、たぶん罠なんかを確認しているのだろう。


 一拍置いて、マリーナさんが手招きをすると僕達も進む。慎重すぎる気もするが、命が掛かっているのだから当然の行動だ。


 いまのところ罠も何もなく順調に進んでいく。


 ここまでは事前の説明と変わらない。ダンジョンは人を中に誘い込むために入り口付近に危険な罠がある可能性は低いらしい。


 それでも例外はあるので、未知のダンジョンでは慎重な行動が求められる。




 このダンジョンは悪辣なタイプではなかったらしく、無事に城門を通り抜けられた。


「……えーっと、イルマさん、ダンジョンってその時代の周囲の状況に影響を受けたりするんでしたっけ?」


「ええ、確定ではないけど、その可能性が高いと言われているわね」


「そうですか……」


 どうしよう、初めてのダンジョンの内部が、どう考えてもテーマパークなんだけど夢なのかな?


 え? 昔、この島にテーマパークがあったってこと? そしてそのテーマパークに影響されてこのダンジョンが発生した。


 ……考えてみるとおかしなことではないのか?


 この島は海が綺麗で温泉がある。この島までの行き来が簡単にできるのであればリゾート島としての条件は整っている。


 何度も文明が滅んだって創造神様達が言っていたし、どれくらい昔かは分からないがこの島にリゾートを築いた文明があったのかもしれない。


 というか、文明が滅びすぎだろ。そのうちの何割かの滅亡原因が創造神様にありそうで普通に怖い。


 ……あぁなるほど、入口のお城の雰囲気になんだかデジャブを感じたんだけど、あの賑やかな感じはテーマパークの入場ゲートだったのか。


 でも、普通リゾートにダンジョンが発生したら、危険だから潰すよね? それが生き残っている時点で嫌な予感しかしない。


「ワタル、深刻な顔をしているけど、どうしたの?」


 これは説明しておいた方が良さそうだな。休眠明けは危険が少ないといっても、元々が凶悪なダンジョンだとしたら危険度が想定を上回るかもしれない。


 なによりテーマパークがダンジョンってホラー一直線じゃん。ダンジョンにホラーのつもりがなくても勝手にホラーになっちゃうよ。


 人が居ない豪華客船の雰囲気に慣れるのにも時間が掛かったのに、人が居ないテーマパーク(ダンジョン)になんて慣れられる気がしない。




「へー。遊ぶための場所なのね。それだと利用価値が高い資源は難しいかしら?」


「いや、アレシアさん、そういう話ではなくてですね、かなり危険かもしれないということなんですよ。場合によっては撤退も考えた方が良いかもしれません」


 自分の船に籠れば安全だけど、精神にトラウマを負わされそうなところが特に嫌だ。


「ワタル、駄目」


「え? ……あぁ、敬称ですか。気をつけますね」


 カーラさんが僕に注意する時って敬称をつけた時しかないからな。それにしても、なんでカーラさんは敬称のあるなしだけにこんなに厳しいんだろう?


「ん」


 でも、満足気に頷くカーラさんが可愛いから、これはこれで有りだ。


 って違う、今はダンジョンの危険度の話で、和んでいる場合じゃないんだ。


「ワタル、落ち着きなさい」


「いや、落ち着いている場合じゃないと思うんですけど……」


 届け、この思い。


「ワタルがこのダンジョンを危険視する理由は理解したわ。でも、この島の現状を考えると、島を捨てる決断でもしない限り探索は必要よ。なら、休眠明けのこのチャンスは逃せないわ。魔物が少なくて弱いうちに探索して対策を考えなきゃ駄目でしょ?」


 そういえばそうだった。ホラーなテーマパークが嫌で撤退したかったけど、さすがに逃げてダークエルフ達や人魚達を危険に晒すのは嫌だ。


 最悪、島を捨てることになったとしても、ちゃんと説明できるだけの情報は必要だ。


 身の安全はほぼ確保できているんだし、ホラーっぽいから嫌だなんて言っている状況じゃないな。


「分かりました。頑張りましょう。止めてしまってすみませんでした」


 本当は嫌だけど、この島にダークエルフ達を連れてきたのは僕なんだし、最低限の責任は果たさなくてはいけない。


 いざとなったら別の島を探して、全力で逃げ出そう。


「いいのよ。ワタルの意見も参考になったし、さらに慎重に行動するわ。ね、マリーナ」


「ええ。でも、出発の前にテーマパークがどんなものなのかもっと情報が欲しいわ。教えてちょうだい」


 テーマパークの情報? 地球のテーマパークと同じと考えていいのだろうか? まあ、参考くらいにはなるか。




「ご主人様、テーマパークってとても楽しそうね」


 面白いことが大好きなイネスが目をキラキラ……というか、僕以外の全員が目を輝かせて喜んでいる。


 まあ、楽しい場所での楽しい思い出を語ったのだから、楽しんでもらえるのは嬉しいのだが趣旨がだいぶズレてしまった気がする。


「ねえねえご主人様、テーマパークが入った豪華客船はないの?」


 イネスからとても期待した視線が飛んできた。


「無茶を言わないでよ。えーっと、たしか観覧車付きの豪華客船ならあった気がするけど、さすがにテーマパークが入った豪華客船はないよ」


 あれ? ないよな? なんか豪華客船ならあってもおかしくない気がする。購入する時にしっかりと確認したはずだけど、あとでもう一度確認しておこう。


「えー」


 いや、そんなに不満顔されても無理な物は無理だよ。


「そんなことよりかダンジョンについてですよ。世界が違うので同じアトラクションがあるとは限りませんが、似たようなアトラクションがあってもおかしくありません。なにか不思議な物を発見したら念のために僕に聞いてください」


 考えようによっては、このダンジョンの知識を一番持っているのは僕だ。つまり、みんなから頼りにされる男になれるということ。


 ホラーっぽくて嫌だとか帰りたいとか思っていたが、急にやる気が出てきた。


 イルマさんの好感度を稼ぐチャンスもあるし、ここでもできる男を演出して僕の株を急上昇させるぞ!


「ご主人様、急にこぶしを固めてどうしたのですか?」


 ……いかん、気持ちが高ぶって、無意識にガッツポーズまでしてしまった。できる男は冷静沈着なのが定番だ。


 いざとなったら頼りになる男、そう思われるためにも落ち着こう。


「いや、なんでもないよフェリシア。では、そろそろ出発しましょうか。テーマパークを模しているのであれば、おそらく最初はアトラクションに分岐する広場になっている可能性が高いです。視界は良いと思いますが、注意してください」


 僕の言葉にマリーナさんがコクリと頷き、再びダンジョンを進み始める。


 人がおらず、おそらく魔物が襲ってくるであろう不気味なテーマパークが、なんだか希望に満ち溢れた場所に見えてきた。


 お化け屋敷みたいな場所があったら、怖がらなくても大丈夫だよ、僕が傍に居るからね、なーんて言っちゃったりなんかしちゃったりして!


 あっ、駄目だ。ダンジョンのお化け屋敷だと、普通に本物が現れて殺されそうだ。できる男を演出する場面は慎重に選ぶことにしよう。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公がやっぱり気持ちが悪い
[一言] 目元に黒線入れたネズミの魔物が出てきて「イマジネーション!ハハッ!(裏声)」とか言わんだろうな?
[一言] 実は害のないダンジョンの可能性? そしてエレクトリカルパレードがやってきて、それをモンスタースタンピードと判断して全滅させる未来が見える。
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