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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十五章
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12話 ダンジョン

 美女達とのバナナボートを目標に、グロい魚の魔物や電撃を放つクラゲなんかの処理を頑張り、ようやく海開きにこぎつけた。余計な邪魔が入らないように対策も万全、後は楽しむだけのはずだったのに……すっかり存在を忘却していたロマーノさんから、完璧に計画を阻止されてしまった。なんでこのタイミングで帰ってくるのかな?




 あぁ、目の前の光景が悲しい。


 ほんのさっきまで、水着姿の沢山の美女に囲まれていたのに、今はガチガチに武装した美女の集団に変わってしまった。


 これはこれで美しい光景なのかもしれないが、僕が望んでいた光景とは違う。


 だが、気持ちを切り替えないといけない。でないと、空気が読めない男になってしまう。


 ダンジョンに興味があるのは事実なのだから、バナナボートは後日の楽しみにして今はダンジョンに集中しよう。


「それでロマーノさん、ダンジョンは島のどこにあるんですか?」


「はい、ダンジョンはこの場所の反対側の海岸沿いで発見しました。ワタル様であれば船で移動されたほうが早いと思います」


 海岸沿いか。結構目立ちそうな場所にあるんだな。


 この島を発見した時にぐるりと海から見て回った時には発見できなかったから、見逃したのでなければダークエルフが移住してきた影響で生まれた、もしくは復活したで間違いなさそうだ。


 大掃除のお手伝いをしてもらっていたとはいえ人魚達もダンジョンに気が付いていないようだし、最近、もしかしたらロマーノさんがその場所に差し掛かった時くらいに姿を現したのかもしれない。


 本当にタイミングが悪い。


「じゃあルト号で移動しましょうか。ロマーノさん、案内をお願いします」


 前まではダークエルフを乗せる時は船偽装をしていたけど、豪華客船に招待したしありのままのルト号で構わないだろう。


「はい、全力で案内させていただきます!」


 道案内にそれほど張り切る必要はないのだけど、ロマーノさんの気合は十分なようだ。


 バカンスの邪魔をされたことに文句を言いたかったが、道案内だけでこれほど真剣になられてしまうと、文句を言ったら命で償うとか言いだしそうで文句が言えないな。




 ***




「……あれは……小さいけれど、お城? でも、なんか全力で自分の存在を主張していませんか?」


 ロマーノさんの案内に従いルト号を島の反対側に走らせた結果、凄まじく自己主張している建物が見えてきた。


 僕はここにいるよ! と訴えかけてきているようだ。


 というか、あれって電飾? なんでこんなところに電飾が? 昼間なのに電飾の光が目立つって、相当強烈に光らせないと無理なはずだぞ?


「ええそうね。なんであんなにキラキラしているのかしら?」

 

 アレシアさんの言うとおり、かなり無意味に輝いている。日本の某テーマパークですらここまでやってはいないはずだ。


「イルマ。どの年代のダンジョンか特定できる?」


 僕達が言葉を失っている間に、ドロテアさんがイルマさんに質問する。Aランクパーティーのサブリーダーだけあって、かなり冷静なようだ。


「分からないわ! 現在確認されているダンジョンに、あんなに光り輝いているダンジョンは無いはずよ。近くに行けば使われている技術や建物の構造で年代を特定できるかもしれないけど、ちょっと難しそうね。ワタル、早く行きましょう!」


 冷静なドロテアさんに対してイルマさんはすでに研究者魂が爆発しているようで、目を爛爛とさせながら僕にダンジョンに近づくように指示をしてくる。


「……ドロテア。このまま近づいて大丈夫ですか?」


 現状、一番冷静そうなドロテアさんに指示を仰ぐ。未知のダンジョンなのにイルマさんが暴走していたらかなり危険だよね?


「……大丈夫です。イルマはダンジョンの建物自体に興味を示していますから、外側を調べている間に落ち着くでしょう。ですが、中に入るまではかなり時間が掛かりますね」


 あぁなるほど、外観も研究対象なんですね。


「外側に危険はないんですよね?」


「えぇ、スタンピートや休眠以外でダンジョンの魔物が外に出る事例はなかったはずです。島に居る魔物に襲われる可能性はありますが、この島なら安全でしょう」


 それなら大丈夫か。ドロテアさんの言葉に安心しつつ、それでも慎重にルト号を岸に近づける。


「さあ、ワタル、アレシア、早く行くわよ!」


 イルマさんが急ぐように要求してくるが、一人で調べに向かうような暴走はしていないようだ。たしかにこれなら大丈夫そうだな。


 岸に接岸後、イルマさんはさっそくダンジョンの外観の調査を始める。


 つまり、知識がない僕達は暇になり、魔物の警戒をしながらお茶を飲んでいる。


 しかし見れば見る程不思議な建物だ。お城を模しているのだろうが、電飾が光り輝いているから荘厳な雰囲気はない。


 それでいて、昔のラブホテルのように下品な感じでもない。妙に明るくワクワクするような雰囲気だ。


「ねえイネス。イネスが活動していたダンジョンとは違う感じなんだよね? どう違うの?」


「迷宮都市のダンジョンは深く巨大だけど、一般的な階層型のダンジョンよ。ダンジョン自体の外観も人の手が入っていない部分は門があって階段があるだけだから、違うと言えば全部が違うわね」


 迷宮都市のダンジョンの外観はかなり地味なようだ。


「なに! この魔導技術! ただ光らせているだけのはずなのに、術式も技術もまったく読み取れないわ! 建物の建築様式も独特だし、私達の知らない文明のダンジョンの可能性が高いわ! 調べなきゃ!」


 イルマさんのテンションが天元突破している。まだまだ時間が掛かりそうだ。


「そういえばロマーノさんは僕達がダンジョンを調べている間はどうするんですか? ルト号で待っていても構いませんが、一緒に中に入ります?」


 なんか恐れ多いですとか言いだして、離れた場所で紅茶を飲んでいるロマーノさんに話しかける。


 近くで待機してほしいとは微塵も思わないが、恐れ多いとか意味の分からない理由で離れられるのも微妙に嫌だ。


「……この身に代えてワタル様をお守りしたいのはやまやまですが、私では単なる足手まといになるだけでしょう。ワタル様達がダンジョンに入られたら、私は地図作成の旅に戻ります」


「そうですか。大変だとは思いますが頑張ってください」


「はい、これですべての罪が贖われるとは思いませんが、精いっぱい努力いたします」


 酷い考えだが、ダンジョン探索中もずっと気を使われていると辛いから、離れてくれることに少しホッとしてしまった。


 それにしても、この世界は神様の存在が認知されているだけあって、神様の効果が凄まじい。


 僕としてはただ無茶振りされているだけな気がするんだけど、あれだけ敵対的だったロマーノさんがこうも変わるとは……。




 ***




「つまりまったく分からなかった訳ですね」


 イルマさんの知識欲は止まることを知らず、日が暮れてもダンジョンの外観を調べることを止めなかった。


 夕飯ということで無理矢理引っ張ってはきたが、たぶん食べ終わったらすぐに調査に戻るだろう。


「まったく分からないということはないわよ。存在が確認されているダンジョンのどれとも様式が異なるということは分かっているわ。ただ、未知の部分が多すぎて理解できないだけ。お城の構造もお城なのに防衛に一切気を使っていないし、どうなっているのかしら?」


 僕的にはそれを何も分かっていないのだと思うのだが、イルマさん的には違うらしい。


 ん? アレシアさんとドロテアさんが難しい顔をして話し合っている。


「アレシア、ドロテア、なにか問題でもありましたか?」


「別に問題というほどのことじゃないわ。このダンジョンを探索しても換金は難しそうねって話していただけよ」


「あぁ、特殊なダンジョンみたいですから、換金となると宝や素材の出所が問題になりそうですね」


 ダンジョンで手に入る物が一般的な物なら換金もしやすいが、外観からして他のダンジョンとは明らかに違うらしいし、手に入る物にも違いが出るだろう。


 ダークエルフの島の存在は明かせないから、換金するなら何か言い訳を考えなければいけない。


「僕が船で遠くのダンジョンから調達してきた、では駄目なんですか?」


 僕のチートというか魔導師様のチート具合はある程度認知されている。南の大陸のダンジョンから持ってきたと言えば誤魔化せるだろう。


 なぜかアレシアさんとドロテアさんが溜息を吐いた。


 なにかおかしなことを言っただろうか?


「普通ならワタルの話で誤魔化せるのだけど、ダンジョンとなるとそうもいかなくなるのよ」


「どういうことですか?」


 ちょっと意味が分からない。


「未知のダンジョンとなると、変人達が動き出す可能性が高いのよ」


「変人?」


 イルマさんみたいな研究者のことだろうか?


「パリスみたいなSランクの冒険者よ。Sランクには理屈が通用しない人間が多いから、魔導師様の後ろ盾があったとしてもかまわず絡んでくる可能性が高いわ。断ってもあの手この手で未知のダンジョンのことを探り出そうとするでしょうね」


「慎重に考えましょう」


 パリスみたいなのに絡まれるなんて冗談じゃない。アレシアさん達もイネスもフェリシアもかなりレベルは上がったはずだが、それでも雰囲気的にパリスには及ばない気がする。


 まあ、若干パリスの存在がトラウマ気味だから大袈裟に警戒しているだけかもしれないが、それでもあのクラスの人間に絡まれるのは全力で遠慮したい。 


「あっ、ダンジョンなのが駄目なら、普通に輸入してきたことにすればいいんじゃ?」


「ダンジョンの物は鑑定でダンジョンの物だと鑑定できるから、誤魔化すのは難しいわね」


 鑑定ってそんなところまで分かるのか。じゃあ、もう誤魔化せないんじゃ?


「ダンジョンの探索を止めませんか?」


「ダンジョンを放置するのは危険だから、調査は必須よね」


 それもそうか。ダンジョンが暴走して島が壊滅なんてことになったら洒落にならないもんね。


「まあ、今悩んでもどうしようもないわ。後は探索してから考えましょう」


「それもそうですね」


 どんなものが手に入るかによって換金するかも変わる。今悩んでもしょうがないだろう。


 今心配するべきは、半日かけて何も分からなかったイルマさんの調査が、明日で終わるかどうかだ。


 ダンジョンに入れるのはいつになるのだろう?


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ワタルの脳内を具現化したもの? 創造神様の悪意?善意を感じる?
[良い点] あいかわらずたむたむ先生の展開は先が読めなくて好きです [一言] ラブホとも夢の国とも違うけど過去の文明か
[気になる点] お金に困ってないんだから死蔵すれば良いだけでは?
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