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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十五章
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11話 発見

 海で楽しくキャッハウフフをしながらラッキースケベを味わい、リア充の青春を体験するべく僕はバカンスを決意した。絶対に美女達に挟まれたポジションでバナナボートに乗る。絶対にだ!


 海神の神器があれば海でのお掃除なんて簡単です! とか思っていたこともありました。


 ウミヘビはグロいし、この世界のクラゲも厄介だった。なんだよ電撃を飛ばすって。


 電気ナマズが居るんだから電気を蓄えるのはまだ分かる。でも、海中で電撃っておかしくないか?


 高レベルな体のおかげで静電気がパチッとするくらいだったが、駆除するたびにその感覚を味わうのは地味に辛かった。


 途中で海神の神器を使ってすべてを押し流したい気持ちになったが、自然を愛するダークエルフや海を愛する人魚の手前、渋々我慢する。


 ある程度危険を取り除いたところで、今度は細かい海流の操作。


 海流を自由自在に扱える海神の神器と言えど、遊泳スペースに小型で厄介な魔物が入ってこないように、そして泳いでも流されたり危険な場所に子供達が入り込まないように設定したりするのも大変だった。


 まあ、一番大変だったのは生理的に無理なウミヘビの駆除だけど……解体・焼却の班じゃなくて良かった。


「では、海開きです!」


 そんな艱難辛苦を乗り越えての海開きだ。眼前は水着美女の集団だし、多少テンションが高くても許されるだろう。


 海開きの前に掃除で海の中を泳ぎ回ったので今更だとか、水着姿なんて豪華客船で見飽きているだろうとはこの際関係ない。


 海で水着ということが重要なんだ。


 今日は最後の安全確認という名の元に、ダークエルフ達と人魚達にお願いして遊泳スペースを貸し切りにした。


 砂浜には豪華客船から持ってきたビーチチェアとビーチパラソルをセットし、飲み物も各種ジュースから軽めのお酒を取りそろえてゴムボートに送還してある。


 フェリーから焼きそば用の食材も貰ってきているし、本命のバナナボートはすでにガレット号に繋いで砂浜で待機中。


 邪魔してきそうな子供達と妖精達の対策として、臨時雑貨屋でお手伝いキャンペーンもやってもらっている。


 普段なら半日お手伝いして一個か二個程度しか手に入らないお菓子が、今日はセールということで簡単なお手伝いスタンプ一つでお菓子が手に入るようになっている。


 今頃、村のちびっ子達は目を血走らせて、仕事を探しているだろう。


 神様関連は聖域に近づかなければ大丈夫。


 海の魔物は海神の神器の力で入り込めない。


 ちびっ子達もお手伝いスタンプまで自作して対策した。


 綿密な計画を練り完璧に実行した僕に隙は無い。あとは、全力でバカンスを楽しむだけだ。


「ワタル様ー! 大変です! 大発見です、大発見をしました!」


 楽しむだけなはずだったんだけど、僕の綿密なはずの計画から漏れていた人物が大慌てで走ってくる。


 失礼な話だが、すっかりその存在を忘れていた。地図作りで島を巡っているはずのロマーノさんだ。


 なんでこのタイミングで戻ってくる。


 たしかに主人公的な人が何かを始めると邪魔が入るのが物語のテンプレではあるものの、僕は違うだろ。


 そりゃあ異世界転移にユニークスキルと異世界系主人公的な部分もないこともない。ただ、それ以外はすべてが主人公という存在から外れているはずだ。


 なのになんでこのタイミングで、主人公に起きそうなテンプレが発生する。創造神様か? 創造神様の仕業なのか?


 聖域に近づかなければ大丈夫とか考えていたから、嫌がらせか?


「何かあったのかしら?」


 アレシアさんが興味を持ってしまった。


 でもまあ、なにかがないとここには来ないだろう。ここに来る前に村長さんに報告に行っているはずだし、村長さんが止めなかったということはそれなりの発見があったはずだ。


 今の僕にはバナナボート以上に大切なことなんて思いつかないが、それは僕だけの意見だもんね。


 でも、せめて一回くらいバナナボートを楽しんでから来てほしかった。とてもタイミングが悪い人だ。


「ワタル様、大発見をしました! はぁはぁ、大発見です」


 ロマーノさんの顔が喜びにあふれている。悪い報告ではないのだろう。


「ロマーノさん、落ち着いてください。何を発見したんですか?」


 水を手渡しながらロマーノさんを落ち着かせる。イケメンダークエルフの息を荒げた姿とか、僕にとっては敵だ。


「はぁはぁ、ありがとうございますワタル様」


「それで何を発見したんですか?」


 ゴクゴクと水を飲み干したロマーノさんが一息ついたところで、改めて声を掛ける。


「ダンジョンです。ダンジョンを発見しました!」


「ダンジョン?」


 ダンジョンってあれだよね、ファンタジーの王道。危険を乗り越え財宝を手に入れる的な……。


 僕もラノベを嗜みにしてきた男だ。少しワクワクしないでもない。


 安定した生活を手に入れて堕落しているが、この世界に来た当初は迷宮都市という名前だけでワクワクしたものだ。


 でも……バナナボートの魅力には敵わない。今にもダンジョンから魔物が溢れそうになっているのであれば、緊急事態として納得できるが喜んでいる様子なのでそれも違うだろう。


 ダンジョンと聞いてイネスとアレシアさん達も喜びの声を上げている。


「えーっと、なんで喜んでいるんですか? ダンジョンって危険なんですよね?」


 イネスもダンジョンの怪我が原因で奴隷落ちしたはずだ。正確にはギャンブルで大負けした後にダンジョンで大怪我をして治療費が払えなかったからだけど、危険なことには違いがない。


「ワタル。後で説明するから少し待って。ロマーノ、そのダンジョンは新規、休眠、どっち?」


「私はダンジョンについて詳しくないのですが、村長が言うには休眠の可能性が高いそうです」


 またもやイネスとアレシアさん達が喜びの声を上げる。僕とフェリシアは事情が呑み込めず、おいてきぼりだ。


 新規、休眠、言葉からなんとなく内容は想像できるが、やはり喜ぶ理由が分からない。


「フェリシア。村長はダンジョンについて知っているみたいだけど、フェリシアは分からないの?」


「分かりません。私も父がダンジョンについて知っていることに驚いたくらいです」


 まあ、人に歴史ありって言うもんな。ましてやフェリシアのお父さんは長生きのダークエルフかつ村長だ。娘の知らない知識も沢山持っているだろう。


「そうなんだ。じゃあ、あっちが落ち着くまで待とうか」


 とりあえず、待機だ。この状況から、あそこに置いてあるバナナボートに乗る展開までもっていけるのだろうか?




「ワタル。ごめんね、大発見に少し興奮しちゃったわ」


 少し? 質問攻めにあっていたロマーノさんは疲労こんぱいみたいだよ? タイミングの悪さも、しょうがないから許してあげたい気分になりそうなくらいだ。許さないけど。


「それで、新規とか休眠とかは聞こえていましたが、どういう状況なんですか? ダンジョンについては詳しくないので、説明をお願いします」


「そうね、詳しくないと言ってもある程度ダンジョンがどういった物かくらいは知っているんでしょ?」


「ダンジョンに入って魔物を倒して、お宝や素材を手に入れるくらいは知っています」 


 ほぼラノベとゲームの印象だけど。


「だいたい合っているわ」


 合っているんだ。


「今回肝心なのは、新規と休眠という言葉ね」


「アレシア達やイネスは休眠と聞いて大喜びしていましたね」


「ええ、新規というのは言うまでもないわね。新しくできたまだ若いダンジョン。可能性は秘めているけど、役に立つのかも未知な存在よ」


 まあ、そうだろうな。全部が毒塗れとかだったら、使い道がかなり限定されるダンジョンになる。


「そして、休眠というのは文字通り眠っていたダンジョンということね。この島から人が居なくなり、眠りについたダンジョンのこと」


 そこが分からないんだ。


「ダンジョンが眠る? 魔物とかお宝はどうなるんです?」


「ダンジョンが眠ると、財宝はダンジョンに吸収され中の魔物は自由になると言われているわ。この島の様子を見るに、おそらく長い年月で繁殖力が強い魔物以外は死に絶えたのでしょうね。で、その眠ったダンジョンがダークエルフ達が移住してきたのを感じて目覚めたといったところかしら」


「なるほど、そこは理解できました。でも、大喜びする原因が見えてこないんですけど?」


 目覚めたばかりで魔物が少なくて、残っていたお宝を取り放題とかなら理解できるが、ダンジョンが吸収してしまうのであればそれもない。


 喜ぶメリットが見えてこないぞ。


「ワタル。ここは絶海の孤島。そこに休眠するダンジョンがあったということは、この島で人が生活できる力がある頃から存在していたダンジョンってことになるわ」


 ワクワクした様子のイルマさんが話を引き継いだ。どう考えても研究者魂が暴走寸前の色っぽい表情だ。


 色っぽいというか、水着と相まってもはや蠱惑的だな。ご馳走様です。


「はぁ、そうですね。魔導船とかが作られていた時代ですかね?」


「いえ、それならたとえ滅ぼされたにしても、もう少し人が生活していた形跡が残っているはずよ。その時代よりも前の可能性があるわ」


 そういえば、何度も文明が滅んだって創造神様が言っていたな。その滅ぶ原因の何割くらいが創造神様の責任なんだろう? 考えるだけで怖くなってくる。


「つまり、そんな昔のダンジョンだから凄いってことですか?」


「ええ、ダンジョンで生み出される宝や魔物の種類は増えこそすれ減ることがないわ。そうなると、文献でしか存在が確認できない、いえ、文献にすら残っていない魔物や未知の物質が手に入るかもしれないの。ましてや、ここは存在すら知られていなかった島。とてつもなく古いダンジョンの可能性があるわ」


 なるほど、ダンジョン版ガラパゴスのような感じか。それなら喜ぶ理由も分かる。


「でも、危険ですよね?」


 特にこの島は僕が連れてきた人達しか居ないから、死なれでもしたら寝覚めが悪い。


「そりゃあ、ダンジョンだもの命の危険は当然あるわよ。でも、今はあまり心配しなくてもいいわ」


 頭脳派のイルマさんも冒険者らしく、命をリスクと天秤にかけられるんだな。


「なぜですか?」


「休眠明けのダンジョンは力とモンスターを失っているのよ。まずは自分の安全の為に周りに護衛となる魔物を生み出すの。島に影響が出るとしても当分先でしょうね」


 急激な変化はないってことか。先送りが可能なら対策も可能になるよね。


「それにメリットもあるのよ?」


「メリットですか?」


「そう、この閉じられた島では手に入らない素材や物が手に入るようになるわ」


 なるほど、それはかなり大きなメリットだ。僕の寿命が長くなっているとはいえ、なにがあるか分からない。僕以外の補給手段があるのは良い事だろう。


「ワタル。探索に行くわよ!」


 イルマさんと話している間に、アレシアさんはすっかり探索に行く気になってしまったようだ。


「……あの、バナナボートは?」


「それはまた次の機会よ。でないとダンジョンが気になって楽しめないわ!」


 ですよねー。


 アレシアさん達の大喜びする姿を見て、そんな気はしていた。


 ロマーノさん、せめてあと一日遅く帰ってきてくれたら良かったのに……。


 まあ、延期ということみたいだし、今回は素直にあきらめよう。僕もちょっと古代のダンジョンとやらが気になる。


 でも、絶対にバナナボートはやるからね!


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] エロいのはいいこと。召喚も面白い。 [気になる点]  主人公は本当に二十歳超えなのか疑問な思考力しか持ってない点。思春期の中学生レベル。  ハーレムは全然構わない。けど、結婚するにしても…
[一言] 多分ツッコマれるだろうけど、全体のワタルの文章おかしくないか?
[良い点] ロマーノさん タイミングの悪い男や [気になる点] ワタルさんはもうあほの子だなぁ あとエロいこだな 好き
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