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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十四章
348/602

31話 マウロの誤算

 カリャリに停泊しているキャッスル号に到着し、ここに就職するベラさん達を連れて乗船した。後はベラさん達をカミーユさん達に紹介して終了だ。なんか商人達が押し寄せてきていて、マウロさんがイキイキしているとか知らない。聞かなかったことにする。




「なるほど、メンタルケア施設の建設、教会がそんなに協力的なんですか」


「ええ、ワタルさんの資金で教会の慈悲を示せますから、大喜びで主導してくださっています。まあ、教会内部では主導権争いもあるようですが、こちらには影響はないので構わないでしょう」


 ふむ、孤児院も順調のようだし、メンタルケア施設の建設も問題ない。うん、順調だな。


 孤児院には顔を出したかったけど、落ち着くまでは遠慮しておいた方が無難だろう。


 教会内部での主導権争いは聞かなかったことにする。宗教関連の主導権争いとか、闇が深そうだから無視だ。


 でもまあ、この世界は神様の存在が露骨なまでに認識されているから、そう酷いことにはならないだろう。


 ん?


 ドナテッラさんの話を聞いていると、部屋のドアがノックされた。ドナテッラさんが声を掛けるとカミーユさんの声が聞こえた。どうやら商人達の群れを凌ぎきったらしい。


「ワタルさん、お久しぶりです」


「ワタル、久しぶりじゃな」


 入室許可を出すと、カミーユさんとマウロさんが疲れも見せずに挨拶してくる。こういうところが凄いよな。あの商人達を相手にしていたら、僕なら絶対に疲労困憊になっている。


「カミーユさん、マウロさん、お久しぶりです。ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」


「いえいえ、あれくらいなんてことないですよ。商人達のガス抜きとしてもちょうどいいタイミングでした」


「ガス抜きどころかケツの毛まで一本残さず抜いてやりたいところじゃが、まあ、この船の方針とは合わんから勘弁してやったわい」


 カミーユさんの美しい顔だけに集中する。


 老人なのに元気いっぱいで邪悪な顔をしているマウロさんなんていない、いないんだ。 


「そ、そうですか、よかったです。あっ、こちらが前にお話ししたキャッスル号で働きたい方達で、ベラさん、カルロさん、ダリオ君、フローラさんです。イネスの家族と親友で、信頼がおける人達ですので、よろしくお願いします」


「あら、人手はいくらあっても足りない状況ですから、本当に助かります」


 僕の声に合わせて挨拶するベラさん達に向けて、本当にうれしそうに微笑むカミーユさん。


 キャッスル号は特殊な船だから、なかなか人を雇うのが大変なんだよね。サポラビや奴隷、元奴隷が居るにしても、技能を持つ人材は大歓迎なのだろう。


 働くのはほぼ決定しているが、適性確認も含めた面談が始まった。


「ワタル。ちょっと相談があるんじゃが」


 カミーユさん、ドナテッラさんとベラさん達の、少し緊張感がある面談を見守っていると、マウロさんが話しかけてきた。マウロさんの相談とか、怖い。


 イネスはベラさん達の面談に付き合っているし、アレシアさん達はスタッフルームの内線で注文したキャッスル号の料理を久しぶりに楽しんでいる。むろん、リムもあちらに遠征中だ。


 しまった。船内は安全だし、ドナテッラさんと世間話をするだけなので、楽しんでいてくださいと勧めたのは油断でしかなかった。味方がフェリシアしかいない。


 フェリシアはとても頼りになるんだけど、真面目だから百戦錬磨のマウロさんとは相性が悪いんだよね。


「……えーっと、なんでしょうか?」


 まあ、同じ部屋に居るんだから、最悪お楽しみを中断させて呼び寄せればいいと覚悟を決める。


 ふー……マウロさんが相手だと、なぜかとても緊張してしまうから困る。


「うむ。話は聞いておると思うが、商人達に注文が集まっておる」


「ええ、聞きました。大人気のようですね」


 大人気で嬉しいというよりか、大人気なのが怖い心境だけどね!


「うむ。大陸全体とはいかんが、この国はもちろん、近くの友好国の商人は大体取り込んだ。そ奴等に自国の高位貴族を篭絡させておるから、キャッスル号の力は下手をすれば国と並ぶ」


「へ? いや、さすがに大袈裟でしょう」


 まあ、籠城戦になれば寿命で死ぬまで負けないだろうが、国と並ぶは言い過ぎだ。


「それがそうでもないんじゃ。今なら船を移動させると言えば、どこの国でも最高位の爵位で出迎えるじゃろうし、この国、ブレシア王国からも、カミーユに貴族にならないかと誘いがきておる。爵位は伯爵じゃ」


「伯爵なら別に国と並ばないのでは?」 


 伯爵なら偉いは偉いけど上に王族とか公爵とか侯爵とか辺境伯とか、沢山存在している。


「女で雇われのカミーユですら、伯爵の地位を出すほどの影響力があるということじゃ」


 あぁなるほど、よく考えたら凄いことだな。


 カミーユさんで伯爵なら、魔導師様だとどうなる? ということだ。


 高位貴族が王家に並ぶ力を持つ小説を何度か読んだことがあるし、影響力を考えれば国に並ぶというのもまんざら大げさではないのかもしれない。


「その爵位についての相談ですか?」


 船の移動はどうなるか確約ができないから、受けたら移動する時にカミーユさんが困ったことになるかもしれない。それはちょっと嫌だな。


「いや、爵位の話はキャッスル号の立場を分かりやすく説明するために出しただけで、受けるつもりはないから問題ない」


「問題ないのなら、そんな怖い例題を出さないでほしいです」


 他にもう少し心臓に優しい例題があったはずだ。


「この上なく立場を理解できる例題であったじゃろ?」


 そうではあるが、素直に受け入れにくいから駄目だと思う。


「それで、相談とは?」


 文句を言いたいところだが、どうせ反撃にあって言葉でボコボコにされるので話を先に進めよう。


「うむ……まあ、先程言ったように、順調すぎるくらいに順調ではあるのだが……一つ、誤算があった」


 自信に満ち溢れていたマウロさんの表情に悔しさが浮かぶ。なんだか少しだけ『ざまぁ』という感情が湧き上がってしまったが、それは仕方のないことだと思う。


「もしかして、商品の販売制限緩和ですか? それならマウロさんにお任せします」


 お酒も化粧品も食べ物も貴金属も大人気らしいから、制限を掛け続けるのも大変だよね。


「いや、それは今のところ緩和するつもりはない。これだけ人気があり立場が上ならば、希少価値で売り出した方が得じゃからの」


 マウロさんから悪どさがにじみ出ている。商人というよりも経済ヤクザと言った方が正しいような気がするのは、気のせいだろうか?


「うーん、商品以外には問題が思いつきませんね。なにが問題なんですか?」


「エステじゃ」


「エステ?」


「うむ、エステじゃ」


「エステがどうかしましたか?」


 マウロさんから出てくるエステという言葉の違和感は置いておいて、エステに問題が起こる余地なんてあっただろうか?


「前に王家からの使者に、念入りにエステを体験させたことが有ったじゃろ?」


 そんなこともあったな。ある意味実験台になった人だけど、清潔感と透明感がかなり増して良い感じになっていた。


「あれが広まって、男もエステを希望する者も多いんじゃが、女性と同じ空間で施術する訳にもいかんじゃろ。それで時間効率が落ちて女どもから不満が出ておる」


 なるほど、たしかに同じ空間での施術は難しい。でも、マウロさんが困るほどのことか?


「立場はこちらの方が上なんですよね? 文句があるのであれば断われば良いのでは?」


「それはそうなんじゃが……さすがに哀れでな……」


「哀れ?」


 どういうこと?


「施術が受けられなかった奥方や予約が取れなかったお嬢様方から、男達、旦那や息子、商人達が突き上げられておる。身も世もなく儂に泣き付いてくるほどに……な。化粧品等で誤魔化してはおるが、限界も近いんじゃ」


 要するに、女性陣に酷くプレッシャーを掛けられて辛いということだな。その気持ち、僕にもよく分かる。


 こういった時の対策は……さすがに船偽装でも施設や設備は増やせない。


 エステから設備を運び出して無限増殖させる手もあるが……これは神の怒りを買いそうな気がする。


 細かい物や便利な物を増やしたりはしているけど、大型設備はやり過ぎになるだろう。怒りを買って今まで大丈夫だった物まで禁止されたら辛いから却下だ。


 日本での女性優遇の方法は……文字通りレディスデイがあったな。女性が文句を言っているのなら、女性優先のイベントを定期的に打てばいいんだ。


「期間はお任せしますが、月に一度くらいの割合で女性限定の乗船日を設けたらどうですか? それならエステもフル稼働できます。高貴な方達でも船内は安全なので、お供は護衛と侍女の二人までで良いでしょう」


 身分の低い人は深夜に施術を受けたりしているようだし、フル稼働で女性オンリーなら回せるだろう。


 サポラビなら沢山召喚できるから、エステ員も問題ない。


「女性限定?」


 マウロさんが首を傾げている。女性陣が強いと言っても、それは家庭内のこと。この世界の社会ではやっぱり男性が優位だから、マウロさんでも理解し辛いのだろう。


 レディスデイの仕組みを詳しく説明するとマウロさんの表情にも納得と、これ、儲けるチャンスじゃね? という感情が浮かび上がってきた。


 ついでに船内のジムのことを質問し、利用客が男性限定のようなので、エアロビ、美容体操、ホットヨガについても説明する。


 ジムのトレーナーにスタッフ任命した時、諸々の知識が流れ込んできたから、専門要員を付ければなんとでもなるだろう。


 エアロビはかなりの運動量だが、まあ、レベルのこともあるし、匙加減はトレーナーがなんとかするはずだ。


「なるほど、これならなんとかなりそうじゃな。カミーユとドナテッラと相談してみるわい」


「それなら良かったです。頑張ってください」


 たぶんレディスデイをもっと増やせと突き上げが来ることになるだろうけど、その対策は思いつかないから黙っておこう。


 カミーユさん達も面接は終わってのんびり談笑しているし、あちらも問題ないようだ。


 僕もあちらに混ぜてもらって、少しカミーユさん達と話してからシャトー号に戻ろう。


 肩の荷が一つ下りたし、後はダークエルフ達を島に運んで、妖精を押し付ければ自由だ。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 「エステから設備を運び出して無限増殖させる手もある」とありますが 第1章の1話で手漕ぎボートのオールはボートの送還と同時に送還されています オールだけが特別なのでしょうか? 手漕ぎボー…
[一言] エステのみ24時間営業で夜間はサポラビと監督者のみにすればだいぶん捌けそう
[一言] そして最終的には 女性専用豪華客船 を用意しろと言う突き上げになるんですね、わかります
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