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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十四章
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17話 丸投げとは?

 開拓計画を冒険者ギルドのマスターに押し付けたことで、急速に話が進みだした。アクアマリン王国の主要ギルドのマスターと顔合わせをし、正気を疑われたり場所の変更を打診されたりしながらも、僕は面倒事の大半をそのマスター達に押し付けることに成功した。


 そう、成功したはずだったんだ。


 最初の頃は、街を設計する建築家と引き合わされたり、資金をどのギルドにどれだけ預けるかなどの細々した仕事もしたりしたが、苦労を覚悟していたので、それほど面倒でもなかったなと楽観していた。


 細かい用事がある時は王都にでて、他はルト号でリムやペントと戯れながらのんびりと過ごす。


 時間が空けば外海にくりだし、アレシアさん達の戦闘訓練を見学したり、魔物退治をしたりして経験値を稼ぐ。


 夜には新しく購入したシャトー号の施設を確認し、レーシングゲームをしたりボウリングをしたり、サポラビ達の舞台を見て楽しんだり、まだいけていない店に行って美食を楽しんだり……そんな優雅で充実した毎日を味わっていた。


 そんな充実した毎日も、建築家が現地を確認して戻ってきたことで終わってしまった。


 そこから始まる会議に次ぐ会議。


 各種ギルドの実務代表と建築家の会議の席に呼ばれ、ねほりはほり意見を吸い出される。


 おおまかにしか考えていないので、そちらで良きようにお願いしますと言っても、大金を投じる施工主の意見は重要だと取り合ってもらえない。


 ここはどうする? あそこは? どの資材を? 資材の質は? 工期は? 街のコンセプトは? 通路の幅は? 水堀の深さは? 水堀の活用方法は? 水路は? 商業区を作るのか? 工業区は? 商店街は? 僕の館は? 教会は?


 数々の指摘をされ、考えていなければその場で考え、判断できなければ資料を渡され宿題にされる。


 毎日毎日宿題を抱え、毎日毎日建築家達と答え合わせをする。そんな毎日が続く。


 一つの街を作ろうというのだから、大変なのは分かっていた。


 でも、お金と口を出すくらいで、こんなに意見を求められるとは思っていなかった。


 施工主が好きにやってと言ったのだから、好きにやってくれればいいのに……。


 街の設計以外にも質問は続く。


 獣人を何人集めるのか? 獣人達が住む場所は? その時の食料は? 資材の置き場は? 料理する場所の確保と準備は? 輸送手段は? 生活雑貨は提供、販売? 奴隷の場合の解放条件は? 警備は?


 決めなければいけないことが多すぎて、僕はすぐにパンクした。


 イネスとフェリシアに頼り、アレシアさん達にも泣きつき、フローラさんやベラさん達にも協力を要請し、なんとか宿題を熟した。


 増える羊皮紙に頭を抱え、少しでも手間を減らすために豪華客船で購入したノートやボールペンを配布すると、そこに各ギルドが食いつき騒ぎになる。


 騒ぎになるのは分かってはいたが、それでも文明の利器を使用しないと過労死しそうな毎日。


 僕の心はとっくに折れたのに、許してもらえない。


 街づくりが始まらないと、今他国で集められている獣人達が路頭に迷うとか、街づくりに利益を見出した商人が首をくくることになるとか、あの手この手で僕の罪悪感を刺激して働かされる。


 こんなはずじゃなかった。丸投げって言葉の意味を調べて出直してこい。働きたくないでござる。慈善事業費ってなんだ、白金貨をバラ撒けばいいじゃん。資材の質? 知らないよ、全部最高級品で揃えたらいいじゃん。


 そんな愚痴を吐いた毎日も、今日で終わる!


 終わるのだけど……その前に面倒な事が一つ残ってしまっている。


 国の偉い人を交えての会議だ。


 各種ギルドのマスター達が、その人脈を使って国の役人と色々と折衝をしてくれて、おおむねの理解は得られたらしい。


 だけど、規模が大きすぎる話で、国の政策にも影響が出るとのことで、面通しも兼ねて施工主である僕が、国の偉い人達の前でプレゼンをすることになった。


 国に話を通すのは全部任せたはずなのに、最後の最後でこの裏切り。許せないと思う。


「ふぅ……嫌だなー。あっ、なんだかお腹が痛くなってきた。もう今日は欠席するしかないよね」


「ご主人様、まだ諦めてないの?」


 イネスの呆れた眼差しが痛い。


 でも、しょうがないじゃないか。僕はしょせん創造神様から面白半分でチートを貰っただけの、ただの大学生でしかないんだ。


「偉い人に会うのは緊張するんだよ。だから行かなくてもいいんじゃないかな?」


「偉い人って……神様にも会ったことがあるご主人様が、たかだか人間のお偉いさんに会うくらいで、なんで緊張する必要があるの? 戦争の時は王子様だって馬鹿にしていたじゃない」


「それとこれとは話が違うの。だいたい、王子様をバカにしていたのはイネスとイルマさんであって、僕じゃないからね。勝手に僕に責任を押し付けないで!」


 だいたい、神様と会うのはそんなに緊張しないよ。初対面から度肝を抜かれたし、女神様方が美し過ぎて会うのはご褒美でしかない。


 それに比べて人間の偉い人は、何かと利用しようとするイメージだし、無礼を働いたら面倒にしかならないような気がする。


 普段なら、そんな国とは距離を置けばいいだけだが、今回は偉い人の機嫌を損ねたら一ヶ月以上の苦労の毎日が無駄になってしまう。


 それはさすがに受け入れられない。


「ワタル、駄目」


 カーラさんが駄目って言う時は……。


「あぁ、さっき敬称を付けちゃいましたか?」


「うん。イルマさんって言った」


 なぜカーラさんは敬称についてこんなに厳しいのだろう?


「えーっと、気を付けますね」


「うん。じゃあいく」


「えっ?」


 なぜかカーラさんが僕の頭の上でプルプルしているリムをソファーに移動させ、ギュッと僕の手を握る。


 凄くドキドキしている間にカーラさんから問答無用でルト号から連れ出され、抵抗する間もなく港に待機していた馬車に放り込まれてしまった。


 僕が行きたくないと駄々をこねていたから、敬称を付けたのを幸いに手を握って気を逸らして連れ出したのか?


 いや、無いな。純真なカーラさんに限ってそんな男心を利用する策謀を考える訳もない。馬車の窓からカーラさんを見ると、背後でイルマさんが笑っていた。


 うん、イルマさんは策謀の匂いしかしないから、とても納得できる。


「ワタル。いい加減にあきらめなさい。ワタルが行かないと私が一人になっちゃうのよ?」


 馬車が走りだしても未練がましくルト号を見ていると、付き添いのアレシアさんに怒られてしまった。


「では、一緒に具合が悪くなるのはどうでしょう?」


 素晴らしいアイデアじゃなかろうか?


「一緒に具合が悪くなったとしても、会議が延期になるだけよ。偉い人のスケジュールを変えさせるわけだから、向こうの機嫌を損ねるだけだわ」


 ちぇ、アレシアさんは会議に参加するつもりがないから気楽でいいよな。


 服装も僕はスーツだけど、アレシアさんは冒険者の正装はこれなのと言って、着慣れた装備を簡略化して身に着け、リラックスしている。羨ましい。


 まあ、一人で王宮に行くのが嫌で、泣きついて一緒に来てもらっているのだから、文句は言えないけど……。


 あぁ、王宮がドンドン近づいてくる。


 ……本気で胃が痛くなってきた。


 僕の胃が痛もうと痛むまいと馬車は進み、検査を受けて城門の中に入っていく。


 馬車が停止すると、出迎えの役人がすでに待機していて、ボディチェックを受けて城内に招き入れられる。


 王宮での注意事項を聞きながら案内され、会議室に通された。


 中には各ギルドのマスターもすでに来ていたようで、視線が僕に集まる。


 行くのが嫌で駄々をこねたせいで、僕が一番来るのが遅かったようだ。


「こっちにいらっしゃい」


 商業ギルドのマスターに呼ばれ、お誕生日席に一番近い場所に座らされる。


 お誕生日席にもちゃんと椅子があるし、あそこに偉い人が座るんだろう。できれば一番遠くに座りたかったが、僕が施工主で説明責任者ということになるから、この場所なんだろう。帰りたい。


「ワタル殿は随分とうちの奴らを手こずらせてくれたようだな」


「そうね、うちの子達も困っていたわよ。予算の配分とかまったく考えていなかったらしいじゃない」


「うちもそうだ。資材は全部最高級でいいよと投げやりに言われて困ったらしい。民家を建てるのに最高級の資材を使ったら、資材が足りるはずがないだろう。希少で質が良いからこそ最高級なんだぞ」


 椅子に座ると冒険者、商業、材木ギルドのマスターから文句を言われた。


 だからこそ丸投げなんだと言いたかったが、こんな大規模な工事を丸投げなんてありえないと怒られるだけだから、僕は言わない。


「それで、ワタルさん、ちゃんと資料を覚えてきましたか? 説明に失敗して許可が降りなければ、大変なことになりますよ?」


 建築家のウィリアムさんが心配そうに尋ねてくる。


 この人、今は優しそうで少し気が良さそうなやせ型のおじさんに見えるけど、設計になると鬼みたいに性格が豹変して、めちゃくちゃ厳しくなるから僕は苦手だ。


 だいたい、開拓許可は先に貰っているからあの場所に街を作ることにしたのに、今更許可が必要なことに納得がいかない。


 まあ、そういってゴネたら、ありえない大金を投じていきなり街を作ることは開拓と言わんのだ! と怒られたから言わないけどね。


 街を作ることになって、ありえないくらいに何度も怒られたから、僕も少しは利口になったのかもしれない。


 まあ、いくら利口になろうとも、楽しみと私情を優先させるつもりだからたいして生き方は変わらないだろうけど……。


「はい。資料はちゃんと読み込んできましたから、説明は問題ないと思います。細かい部分で詰まったら、フォローはお願いします」


 最初から全部をウィリアムさんに説明してほしいのだが、立場として僕から説明しないといけないらしく、僕にとってもウィリアムさんにとっても辛いところなんだよな。


「分かりました。フォローが必要な時には目線で合図をください」


 ウィリアムさんとの合図を決めていると、会議室のドアが開きゾロゾロと人が入ってきた。


 席についていた全員が立ち上がり、入ってきた人達に対して深々と一礼するので、俺も慌てて真似をする。


 いよいよ会議が始まりそうだが、即行で雰囲気にのまれてしまった。ヤバい胃の痛みに加えて動悸まで感じてきた。


 街を造る計画……頓挫するかも……。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] この主人公にはいつになったら魅力的に見えるんだろうか… やっぱり物語ってのは主人公がどっかこっか魅力的に見えないと駄目なのね〜 でも、今更成長するってきっとないよね。 この作品で一番の魅力は…
[一言] 各ギルドってちょっと無能すぎへん?コンサルまともにできんのか? 最初はともかく途中で本当の素人でノープランってのに気づいたら 並の会社員なら素人でもわかりやすいようにおすすめの選択肢なりプラ…
[一言] 賢者に扮して丸投げした方が早かった気がw
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