15話 ギルドでの相談と買い物
南方都市に到着し、アレシアさん達に商業ギルドまで送ってもらう。毎度お世話になっております。
「カミーユさん、依頼表の終了確認と護衛の呼び出しをお願いします。あとまた色々相談したい事があるんですが、お時間頂けますか?」
「分かりました。報酬の手続きが終わったら、別室にご案内しますね。まずは、依頼報酬の15金貨です。どうされますか?」
ニコリと笑顔で請け負ってくれるカミーユさん。嫌な顔一つせずに相談に乗ってくれるのって助かるよな。
「報酬は口座にお願いします」
「分かりました。では、別室にご案内します」
サクッと手続きを済ませて、カミーユさんの案内で別室に移動する。……この別室に来るのにも慣れたな。色々と巻き込まれたししょうがないか。
「それでワタルさんのご相談はなんでしょう?」
「はい、まずはこの子なんですが」
籠の中からリムを外に出す。少し怖がっているみたいなので撫でて落ち着かせる。
「この子はホーリースライムのリムと言うんですが、今回従魔契約したので連れてきました。なにか手続きが必要ですか?」
「まあ、ホーリースライムですか、珍しいスライムですね。えーっと、従魔ならカウンターでギルドカードに従魔登録をすれば問題ありません。話が終わったら登録してしまいましょう」
「ありがとうございます。それで、次の相談なんですが、小型の魔導船が買えるようになったんです。白金貨っていきなり引き出しても大丈夫ですか?」
いきなり大金を引き出すとか迷惑かもしれないからな。必要ないかもしれないが、お世話になってるんだしできるだけ迷惑がかからないようにしよう。
「まあ、おめでとうございます。そうですね、あまりにも大金だと時間を頂く事になりますが、10白金貨以内でしたら即日でご用意できます」
十億が即日なのか。商業ギルドってだけあって、資金は豊富なんだろうな。
「分かりました。今度船を買う前にお願いしますね。それでなんですが、船を買ったら胡椒貿易に挑戦しようかと思っているんです。そうしたらその間は島に行けなくなるので、そのご相談をしておきたいんですが、大丈夫ですか?」
胡椒貿易と聞いて、カミーユさんの顔が曇る。
「胡椒貿易は利益が大きいですが、あまりお勧めできません。ワタルさんは島に行ける貴重な人材ですので、商業ギルドとしては危険な胡椒貿易は避けて頂きたいのですが、どうでしょう?」
やっぱりそうなるよな。でも、豪華客船を買うためには大きく儲けないと厳しいんだよな。その縛りがなければ島と南方都市の往復して、偶にどこかに遊びに行く感じで十分なんだけど……そんな性格だから創造神様に発破をかけられたんだろうな。
「僕も胡椒貿易が危険な事は調べて分かっています。ですが、今度手に入れる予定の船は、島に行く小舟を買ったところと同じ所で買うんです。その船はかなりの高性能で、胡椒貿易も成功すると考えています」
「ふぅ、ワタルさんはもう決めてらっしゃるんですね。できれば安全で確定した儲けを選択して頂きたいんですが、商業ギルドにはそれを強制する権限はありません。ですが本当に危険ですから気を付けてくださいね。ギルドマスターには私から話しておきます。それで、その高性能な船を売ってくださる方を、商業ギルドにもご紹介いただけませんか?」
……いや、カミーユさんが心配してくれてるのは十分に伝わったんだけど、最後に利益に釣られたよね。少し悲しい。
「申し訳ないですが、あまり知らない人に会いたがらない方なので、紹介する事ができないんです」
だいたい船って誰から買ってるんだ? スキルを与えてくれた創造神様なのか? 紹介もなにもどう紹介したらいいのかすら分からないよな。
「そうですか、残念です。もしその方が別に船を売りに出したいと言われた時、商業ギルドに連絡頂けたら助かります。……それで他にご用件はございますか?」
「分かりました。どうなるか分かりませんが、伝えるだけは伝えておきますね。それで最後のお願いなんですが、ディーノさんとエンリコさんに胡椒貿易に付き合ってもらうわけにもいかないですよね。なので護衛をしてくれる奴隷を買おうと思っています。奴隷商の紹介をお願いできますか?」
「奴隷ですか……私でも紹介するだけなら可能ですが、ギルドマスターに紹介してもらった方が、高ランクの奴隷を出してもらえる可能性が高くなります。ギルドマスターにお願いしてみましょうか?」
おおー、高ランクの奴隷。よく分からないけど、高ランクなら命の危機からも守ってもらえそうだし、頼むべきだよね。
「お願いできますか?」
「分かりました。話を通してきますので少々お待ちください」
「はい、よろしくお願いします」
部屋から出ていくカミーユさんを見送り、時間ができたのでリムと戯れる。胸に飛びつき頭のてっぺんまで這い上がるのが、今のリムのお気に入りだ。登っては降りて飛びついてくる……可愛すぎる。
のんびりリムと戯れていると、カミーユさんがギルドマスターを連れて戻ってきた。
「ワタル、胡椒貿易をするなぞ、このままのんびり大金稼いでればいいのに物好きな奴だな」
「あはははは、まあ物好きで別の大陸に行ってみたいというのもあるんで、反論はできないですね」
「それでその頭の上のホーリースライムが従魔か? まだ子供だな」
「ええ、リムと言います。まだ生まれたばかりみたいですね」
「また珍しいスライムを従魔にしたな。狙われる理由を増やしてどうするんだ?」
「狙われますか?」
「まあ、ワタルの魔導船の事を知らなくても、ホーリースライムは一目で価値が分かるからな。ゴロツキが寄ってきそうだな」
「そんな心配もあるんですね。でも今更リムが居なくなる事なんて考えられませんので、何とか撃退したいです。ギルドマスターの紹介に掛かっていますので、よろしくお願いします」
「ふむ、奴隷商じゃったな、護衛ならば男が多いがそれで良いか?」
「できれば、腕の立つ女性をお願いします」
「腕の立つ女の奴隷となれば高いぞ?」
「値段にもよりますが、長い航海を狭い船で一緒に過ごす事になりますから。それにどうせ買うのなら男として女性の奴隷を望みます」
「分かった、南方都市で一番の奴隷商を紹介してやろう。これを持って行け」
「ありがとうございます、あと聞き忘れていたんですが、向こうの大陸でこの大陸のギルドカードでお金って下ろせますか? あと向こうに持って行けば高く売れる物も知りたいです」
「ふむ、向こうの大陸にも商業ギルドはあるが、ほとんど交流が無いのでな。現金で持って行く方が間違いは無いな。あとはスパイダーシルクの反物が、高値で売れるはずだぞ。行く時に商業ギルドから買っていけ」
「分かりました、色々お手数をお掛けしました。ありがとうございます」
「うむ、行くなら必ず成功させるのだぞ。胡椒が持ち込まれれば商業ギルドも潤うからな」
「はは、頑張ります。カミーユさん従魔登録をお願いしてもいいですか」
「はい、カウンターで手続き致しますね」
カウンターでリムの従魔登録を済ませ、来てくれたディーノさんとエンリコさんと海猫の宿屋に向かう。部屋を取る時にリムを見せたら部屋を汚さなければタダで良いと言ってくれた。
食堂で夕食を頼みディーノさん、エンリコさんと今後の予定を話す事にする。
「ディーノさん、エンリコさん、今度、胡椒貿易に挑戦します。その為に明日護衛の奴隷を買いに行こうと思ってるんです」
「そうなんですか、危険な道を選ばれましたね。そうなると私達は明日でお役御免ですか?」
「いえ、その事で相談があるんです。明日腕の立つ女性の奴隷を2人買おうと思ってるんですが、あと2回は島に行くと思うので、その間に護衛の仕方を奴隷に教えて貰う事は可能ですか?」
「ふむ、教師役ですか。私はともかくエンリコは人に物を教えられるか不安ですな」
「酷い事を言わないでください。私も護衛の基本位教える事はできますよ」
「あの、エンリコさん護衛の基本は骨を折る事だ、とか教えないでくださいね」
「骨を折れば逃げられないですし、次にまたチョッカイを出してくるにしても時間が掛かるので、いい手段なんですよ」
「いえ、骨を折るのが基本は、無しの方向でお願いできますか?」
「分かりました。12日間と言った所ですか、基本位なら教えられるでしょうしお引き受けします。ディーノも良いですよね?」
「ああ」
「では、お願いします」
部屋に戻り、リムと戯れながら明日からの予定をたてる。船を買うのは出発前で良いよね、目立つとまた襲われそうだし。食料は2ヶ月分は用意しておきたいけど、護衛がいると船が出せないんだよね。
小さめのゴムボートを幾つか買って部屋の中で召喚すれば良いか、奴隷には能力を明かすつもりだから、そのゴムボートを食糧庫にして肉、野菜、小麦、パン、屋台の料理、を沢山集めよう。
あとは船にシャワーは付いているけどお風呂が無いんだよな。船の後の外の部分、アフトデッキって言うの? そのアフトデッキに置けるお風呂をドニーノさんに作ってもらおう。
小さめのゴムボートの上に載せるから、小さいお風呂になるけど海の上のお風呂は試したい。
とりあえず、余分な突起が無いゴムボートを4艘買っておくか。1艘はお風呂船にして3艘は食糧庫船にしよう。この1艘1銀貨50銅貨のでいいな。全部で6銀貨だな、画面を確認しておこう。
船召喚 レベル 2
購入した船を召喚することができる。+1
購入した船に限り最善の状態に保ち、自由に操船することができる。
購入画面から新しく船を購入することができる。
地図作成
自分が行った事の有る場所がオートマッピングされる。
船偽装
性能を変えずに船の姿を質感も再現して思った通りに変更できる。
初期 手漕ぎボート(木製) 人数制限2
特性 不沈・不壊 乗船拒否
購入 ゴムボート(青) 人数制限2 (お風呂船)
特性 不沈・不壊 乗船拒否
購入 ゴムボート(緑) 人数制限2 (食糧庫船)
特性 不沈・不壊 乗船拒否
購入 ゴムボート(赤) 人数制限2 (食糧庫船)
特性 不沈・不壊 乗船拒否
購入 ゴムボート(黒) 人数制限2 (食糧庫船)
特性 不沈・不壊 乗船拒否
購入 ビッグ フィッシング ゴム ボート(深緑) 人数制限4~5 (小屋船)
特性 不沈・不壊 乗船拒否
購入 ビッグ フィッシング ゴム ボート(青) 人数制限4~5 (倉庫船)
特性 不沈・不壊 乗船拒否
購入 和船 人数制限12
特性 不沈・不壊 乗船拒否
増えてるな、でも船召喚のレベルは上がってない。レベルアップ条件は何艘買ったかじゃなくて、買った船の金額かな?
「リム、もう寝るよ」
『……ねる……』
リムがポヨンと今日1日入っていた籠に飛び込んだ。自分の部屋だと思ってるのかな? 明日はタオルが敷けるもう少し良い鞄を買おう。
「お休みリム」
朝か、今日はやる事がいっぱいだ。身支度を整え、護衛の2人と、寝ているリムを籠ごと抱えて食堂に行く。匂いに釣られたのか? リムがポヨンと籠から出て来た。スライムって匂いが分かるのかな?
「おはようリム」
『……おはよう……』
『……ごはん……?』
「そうだよ、ごはんだよ」
よく考えたらリムの言葉は僕にしか伝わってないから、1人で話してる人になってるのかな? 護衛の2人も苦笑いしている、まあいいか、リムに話しかけないなんてありえないからね。
リムの為の朝食を追加で頼み朝食を食べる。リムは色々な味が有るのが嬉しいのか、食器の間をもっちもっちと移動しては消化している。可愛い。
食事を済ませて、リムを籠に入れて買い物に行く。まずは鞄屋さんだ、色々な鞄があるがリムが気にいったのは、4銀貨のしっかりした革の肩掛け鞄で、中にタオルを敷いてあげると気に入ったのか出て来なくなった。
次はドニーノさんにお風呂を頼もう。
「ドニーノさん、おはようございます」
「おう、ワタルか、久しぶりだな、なんか作るか?」
「ええ、この前作ってもらったお風呂の少し小さい奴をお願いします。大きさは150×70の高さは80でお願いします」
「おうわかった、ワタルのおかげでグイド達からもだいぶ注文貰ったからな。大特価で60銀貨で作ってやるぜ」
「いいんですか?」
「おう、だいぶ儲けさしてもらったからな」
「ではお願いしますね、60銀貨です」
「おう、明日の夜にはできてるぞ、係留所まで運ぶか?」
「いえ、海猫の宿屋まで運んでもらえますか?」
「分かった」
さていよいよ奴隷商館か、この世界では問題無い場所なのに、奴隷って考えるだけで罪悪感が湧き上がるのは日本の教育の成果なんだろうな。でも奴隷って考えてドキドキするのは投稿小説サイトの影響なんだろう。
残高 3金貨 11銀貨 60銅貨 ギルド口座 4白金貨 83金貨 80銀貨
誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。
読んで頂いてありがとうございます。