9話 船名決定
元々から主人公はアレなのですが、今回の話は特にアレだと思います。ご容赦頂けましたら幸いです。
グ〇ンディオーサ見学ツアー二日目、僕の爽やか演出が不評でハーレム計画が暗礁に乗り上げたり、ボウリングで女性陣のパワフルさに恐怖したりしてしまったが、今のところなんとか及第点でツアーは進んでいる。
「はー、楽しかったわ」
「ええ、ピンが弾け飛ぶと、なんだかスカッとするわ」
ボウリング三ゲームを終えた後、ドロテアさんとイルマさんが楽しそうに語り合っている。
この二人が特にボウリングを気に入ったようだけど、微妙に楽しみ方が違うように思えるのは気のせいなんだろうか?
ドロテアさんはストレス発散、イルマさんはS的な楽しみを見出しているような気がするんだけど……Sはボウリングのピンにも反応するのか?
でもまあ、気に入ってくれたのなら良いよね。二ゲーム目からはリム達も参加して、器用にボウリングを楽しんでいたし、この船を買って正解だったと思う。
玉を射出するスライムと、ボウリングの玉を咥えこむシーサーペントの姿は一見の価値ありだった。
「ワタル! 次はどこを見に行くの? 私、軽く体を動かしたから、次は本格的に体を動かしたい気分になっちゃったわ」
アレシアさんが次を求めてきた。しかも、本格的な運動をお求めのようだ。
元々の予定ではボウリングで体を動かした後は、F1の車体を使った本格的なレースゲーム、お昼、舞台と繋げていく予定だったんだけど……予定変更が必要なようだ。
そうだよね、この世界の高レベル者なら、ボウリングの三ゲームくらい準備運動にもならないよね。
とはいえ、運動か……ジムはアレシアさんが求める運動とはちょっと違うだろう。アレシアさん達ってあんまり筋トレはしないんだよね。必要ないから。
となると……アクティビティ、バスケットコートがあるからバスケ?
「ワタル。私はあのウネウネが気になる」
どうしたものかと悩んでいると、珍しくマリーナさんからリクエストが出された。でも、ウネウネ?
「ウネウネってなんですか?」
「外にあるあの大きなの。筒みたいなのが蛇みたいにウネウネしているやつ」
……あぁ、ウオータースライダーの事か。
たしかにプールなら全身運動だからアレシアさんの要望にも応えられるし、普通であれば僕が望んでプールに誘導するくらいなんだけど、できれば今日は止めておきたかった。
プール=水着=僕の顔面が崩壊
という公式が成り立つ。
アレシアさん達からの印象を変えようと思っている僕としては、ポーカーフェイスが体に馴染むまでは控えておきたいイベントだった。
でも、マリーナさんの言葉を受けて、私もあれは気になっていたのよねといった会話が女性陣の中で繰り広げられている。
こうなってしまうと、プールに案内しないという空気が読めない行動は僕には無理だ。表情筋を限界まで酷使してイベントを乗り切るしかないだろう。
「分かりました。ではプールに……あっ、水着に着替える必要があるんですけど、どうしましょう? この船には持ってきていませんよね?」
水着はクリス号でしか使っていなかったから、たぶん持ってきていないはずだ。
「そういえばそうだったわね。うーん、取りに戻るのも時間が掛かるわね。……せっかくの新しい豪華客船だし、水着も新調しちゃいましょうか? ワタル、この船でも水着は売っているわよね?」
一瞬、プールイベントが遠のいたかと思ったが、新たな試練を連れて戻ってきてしまった。
「……ええ、売っていると思います。買いに行きますか?」
笑顔で頷く女性陣。イネスなんて、お小遣いをゲットしたばかりなのに、凄い水着を選ぶからと僕に水着代を出させようとしている。
イネスは、自分でした朝のアドバイスを忘れてしまったのだろうか?
……ただでさえ水着姿の女性陣に興奮してしまうのに、新しい水着ですと? 僕の表情筋に洒落にならない試練が襲い掛かっている気がする。
***
ダイエットは明日から。真面目な僕も明日から。
今日、僕の中で名言が生まれた。
だってしょうがないじゃないか。
水着を買ってそのまま着替えて出てきたアレシアさん達を見たら、表情筋が僕の制御から離れて暴走しちゃったんだもの。
アレシアさんとイルマさんとイネスの白い肌に映えるビキニ!
ドロテアさんとフェリシアの褐色の肌に映えるビキニ!
マリーナさんとカーラさんの凹凸のある体を強調する競泳タイプの水着。
これだけでも顔面崩壊なのに、極めつけはクラレッタさん。
あぁ、クラレッタさん、なぜあなたはその水着を選んだのですか?
その白と黒のコントラスト……ホルスタインですよ?
豪華客船にそんな水着が売っているのですか? どこぞの創造神様が紛れ込ませたのでしょうか? 素晴らしい仕事です。
しかもクラレッタさんには珍しいことに、ビキニタイプなんです。
母性の象徴が豊かなこの船の女性陣。
その中でまぎれもなくトップの母性の象徴をお持ちのクラレッタさんが、ホルスタイン柄のビキニ? 犯罪ですか? 犯罪を誘発しているんですか?
「やっぱり、似合う」
「そうですか? 選んでもらって言うのもなんですけど、露出が多くて恥ずかしいです」
「大丈夫。ワタルも喜んでる」
カーラさん。あなたがあの水着をクラレッタさんに選んだんですね。いいでしょう、今後あなたには最大限のご馳走を用意することを誓います。美食神様の特別料理も食べ放題です。
「わ、ワタルさん。そんなに見られると、恥ずかしいです」
「クラレッタ。さんはつけちゃ駄目」
「カーラ、今はそういうことを言っている場合じゃ……」
モジモジしながら豊満な体を両手で隠そうとするクラレッタさん。色んなところが飛び出していて、全然隠れていませんよ。
むしろ、そのモジモジ感が余計に色っぽいです。神に感謝です。
突然体を引っ張られて、隅っこに連れて行かれた。クラレッタさんから引き離すという暴挙をなしたのは……イネスか。
「ちょっと、ご主人「言いたいことは分かっている。でも、新たな自分の演出は明日からにすることにしたから」様……そう……はぁ……」
イネスが文句を言う前に僕の気持ちを正直に伝えると、痛ましい者を見る目で見られた上で溜息を吐かれた。
でも、僕は気にしない。
今は目の前のパラダイスを網膜に焼き付ける時間。後悔するのは明日からで十分だ。さて、外のプールに行くぞ!
ウオータースライダーに向かって移動する途中、ロープ渡りみたいなアクティビティがあったが、残念なことにアレシアさん達は興味を示してくれなかった。
キャッスル号のジップラインは楽しんでくれたんだけど、不安定な足場を渡る程度の遊戯だと、冒険者には温すぎるらしい。
水着姿で運動をする美女達の姿が見られなくてとても残念だけど、まだ僕にはウオータースライダーから飛び出してくる美女を観察するという幸せが残っている。悲しみに負けている場合ではないだろう。
階段を上り、お手本として一番にウオータースライダーを滑った。楽しくはあったが、僕の目的はそこではない。水に飛び込んでくる美女達を全力で見守るのだ!
……素晴らしい。
キャーっと楽しげな悲鳴をあげながら滑ってくる美女。
ドボンとプールに飛び込み、ザパッと水面から勢いよく顔を出す美女。
同時にプルン……いや、ブルンと跳ねる母性の象徴。
素晴らしく最高だ。
だが、僕にも予想外なこともあった。
なんと、レベルが上がって強化された動体視力が全力で仕事をし、飛び込んでくる美女達の姿を鮮明に捉えてくれたのだ。
そして、その目は、普段では見ることが敵わない、母性の裏側をハッキリと認識する。ご馳走様です。
あと、プールから上がって、食い込んだ水着を直す仕草、ご馳走様です。
耳に水が入って、飛び跳ねる姿、ご馳走様です。
階段を、濡れた水着で上る後ろ姿、ご馳走様です。
お昼の時間までに、何度ご馳走様と思ったか……僕が冷静だった時間なんて、リム達スライムトリオが滑ってきたのか転がってきたのか分からない可愛らしさに癒されていた瞬間か、ペントのさすが蛇といった滑り具合を見た時だけだと思う。
ただ、残念だったのは、マリーナさんとカーラさんだ。
競泳水着では神秘の裏側にはたどり着けなかった。
あと、ポロリがなかったのが痛い。
ビキニでウオータースライダーはポロリ確定というのは都市伝説なのだろうか?
プールサイドのレストランで昼食が終わっても素晴らしい時間が続く。今日は一日プールで遊ぶことになったからだ。
呆れるほどウオータースライダーを堪能した後は、船内のプールに移動。
プールで泳いだり、傍にあるジェットバスで休憩しながらカクテルを頂いたりと、エロス(僕目線だけ)と優雅さが共存する時間。
「そういえばワタル。船の名前は決まったの?」
ジェットバスの泡に翻弄されているアレシアさんの母性を眺めていると、すっかり忘れていた船の命名についてアレシアさんから尋ねられた。
えーっと、キャッスル号はお城みたいな大きさだったからキャッスル号にしたんだよね。
同じくらい大きい豪華客船だし、お城を他の国の言葉に変えれば…………フランス語でお城がシャトーだったかな?
フランス語以外でお城の単語が微塵も浮かばない。
なら、シャトー号? なんか語呂が悪い気がする。
「あー……せっかくなので、くじの当たりを引いたドロテアさんに名前を付けてもらおうかと思っているのですが、どうでしょう?」
思いつかないので命名権をドロテアさんに譲ってみた。
「私ですか?」
まさか話題を振られるとは思っていなかったのか、ドロテアさんがべにちゃんを胸に乗せたまま驚いている。正直、べにちゃんが羨ましい。
「……べにちゃん号はどうでしょう?」
僕が思っていた以上に、ドロテアさんの脳はスライムに侵食されていたようだ。スライムを船の名前にするなら、リムが先に決まっているんだから駄目に決まっているよね。
「えーっと、そうですね、今回は全員で名前を考えることにしましょうか」
何かを言いたげなドロテアさんから目を逸らし、全員で名前を考えるように変更する。
女性陣にとっても楽しいイベントなのか、結構真剣に議論してくれている。
僕が議論しながらはしゃいでいる女性陣を網膜に焼き付けている間に、この豪華客船の名前が決定した。
豪華客船ジラソーレ号。
なんか豪華客船を乗っ取られそうな気がするので却下して、結局僕がシャトー号と強制的に命名した。
ぶーぶーと文句を言われたが、さすがにジラソーレ号はないと思う。
読んでくださってありがとうございます。




