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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十三章 ダークエルフの島の発展
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28話 そういえばこんな顔だった

更新が一日遅れました。申し訳ありません。

 創造神様の特別ご招待も終わったので、ダークエルフの村の人達をクリス号に招待したら初手から予想外なことになった。船が豪華すぎて村の人達が畏縮するのは考えていなかったな。あまりにも縮こまっているので、イネスのアイデアでメインイベントの予定だった森の女神様からの手紙を見せることになった。


「「「うぉぉぉぉ!」」」


 森の女神様の手紙を確認したダークエルフ達が、魂が震えるような歓声を上げる。


 人から狙われ、身を守るために人目につかない危険な森の奥に隠れたダークエルフ。そんな厳しい環境に置かれても守り続けた信仰を、その神様から認められたんだからそれは嬉しいだろう。


 イネスの計画通り、豪華客船の驚きを信仰の驚きで塗り替える計画は成功だな。誰もがガクブル状態から脱して、心の底から喜んでいるようだ。


 今は狂喜乱舞状態だから、もう少し落ち着いたら素早く乾杯のお酒を配ろう。タイミングを失敗すると元の木阿弥になりかねないから、冷静にその時を見極めないとな。




「はいはい、お酒を配りますよー。乾杯するのでまだ飲まないでくださいねー。子供達はジュースですよー」


 タイミングを見計らっていると、狂喜乱舞状態からしんみりと自分達の苦労は報われた状態に移行しだしたので、アレシアさん達と人魚達にも協力してもらいながら慌ててお酒を配る。


 精神の振れ幅が大きすぎるよ。これから宴会なんだから、娘が嫁に行った夜、一人でグラスを傾ける父親的な顔になられても困る。


「グラスはいきわたりましたね。では、乾杯します。乾杯!」


 長くならない程度に乾杯の挨拶を考えていたけど全部省く。時間を与えるとダークエルフの精神状態がどんなふうに推移するのか読めないからしょうがないよね。


「「「乾杯!」」」


 多少慌ただしかったものの、乾杯の合図に合わせてお酒を喉に流し込むダークエルフ達。歓声を上げたり、感涙したりと感情を爆発させていたから喉も乾いていたのだろう。ほとんどのダークエルフがグラスを空にしている。


 もう一度、アレシアさん達と人魚達に協力してもらってグラスを配る。とりあえず二杯程度でもお酒を入れれば気は楽になるだろう。


「えー、今日は特別な日です。ご馳走も沢山用意してありますので、思う存分楽しんでください」


 ダークエルフ達にそう声を掛けた後、アレシアさん達と人魚達にもう一度協力を要請して料理の案内をしてもらう。


 グラスを配るのも料理の案内もサポラビがやる予定だったんだけど、サポラビに対する反応が読めないからもう少しみんなの力を借りよう。


 僕も案内に参加しようとしたんだけど、集まってきてものすごく感謝されてしまうので、とりあえず大人しくしておく。


『……わたる、ごはん……』


「あっ、そうだね。沢山食べようね」


 ご馳走を待ちかねていたリムが、食事が開始されたことを素早く認識して思念を飛ばしてくる。長めのおあずけをくらっていたせいか、普段よりも思念がはっきり聞こえた気がする。


 バイキング形式なので、リムの意見を聞きながら並んでいる料理を取り分けていると、ふうちゃんとべにちゃんがもっちもっちと近づいてきた。


 アレシアさん達には料理の案内をしてもらっているから、手が空いている僕のところにやってきたんだろう。ご飯を手に入れるには的確な判断だ。


 そういえばペントは? ……アンネマリー王女に料理を取ってもらっている。あの子、人魚達に懐いているよね。でも、王女に料理を取ってもらうのはどうなんだ?


 ペントの状況に疑問を覚えていると、頭上のリムと両肩に這い上がってきたふうちゃんとべにちゃんがプルプルと体を震わせながら擦りつけてくる。


 ……とりあえず、落ち着くまで僕はリム達に奉仕していよう。なにげに幸せだ。




「あっ、ワタル様。ペントちゃんをお借りしています。ありがとうございます」


 ロブスターをペントにまるごとアーンしているアンネマリー王女に近づくと、笑顔でお礼を言われた。


 お礼を言うのはこっちなんだけどね。


「いえいえこちらこそ。ペントの面倒を見てもらっちゃって、ありがとうございます。それと、ダークエルフの皆さんのおもてなしにも協力して頂けて、とても助かっています」


「私達もダークエルフの方達に温かく島に迎え入れてもらえました。協力するのは当然のことです」


 幼女と言っても王女の責任感か、受け答えが僕よりも立派なのでちょっと切なくなる。普段はもう少し子供っぽいんだけど、このパーティーを公式の場ととらえて気を張っているのかもしれない。


 背後にそっと控えているレーアさんも、すまし顔だな。


 身内の集まりみたいなものだからもっと気楽でいいんだけど、立場があるというのも難しいんだろう。ダークエルフの村で子供達と走り回っているから、今更な気もするけど……。


 そういえば、元気いっぱいなダークエルフの子供達はどうしているんだろう? さすがに親の腕からは解放されていると思うけど、妙に静かだ。


 ……なるほど静かな訳だ。広いメインホールを見渡すと、テーブルの一つを占拠した子供達が、山盛りのご馳走をモクモクとたいらげている。


 子供なら食べながらも騒ぐことも多いはずなんだけど、初めて体験する料理の数々に騒ぐことを忘れているようだ。


 まあ、あの様子なら十分に楽しめているだろう。胃が心配だけど、若いから問題ないよね。


「ワタル殿!」


 子供達の様子に安心した後、リム達やペントの食事を見守りながらアンネマリー王女と雑談をしていると、村長さんが声を掛けてきた。


 最初に挨拶した時は小鹿みたいに足が震えていたけど、お酒が入って緊張がほぐれたのか普段の村長さんに見える。これならパーティーを楽しんでもらえるだろう。


「村長さん、楽しんで頂けていますか?」


「ワタル殿!」


 席を立って村長さんに声を掛けると、ガシッと両手を捕まえられた。あれ?


「村長さん?」


「娘を……娘を、娘を売りにだした時には、世を恨み人を恨み、何もかもすべて壊してしまいたくもなりましたが、まさかこんな日が迎えられることになろうとは……ありがとうございます。ありがとうございます」


 僕の両手を掴み、涙を流しながら何度も頭を下げる村長さん。落ち着いたように見えたのは表面だけだったらしい。


 そして、魔王誕生一歩手前のような内心を吐露するのは止めてください。……その娘さんを買ったのは僕なんです。


 感謝してくれているみたいだけど、内心では僕のことをどう思っているのかがとても怖い。


 いや、娘を買った人間だし、好感度マックスがありえないのは理解しているけど、ある程度は認められているよね? 僕、結構頑張ったもん。


 安全な島を発見して移住のお手伝い。村の建築資材も提供して更にバラバラに隠れていた他のダークエルフも探し出して合流させた。だから、たぶん、大丈夫なはずだ。


 でも、理屈じゃない気もするから、精神が不安定な状態の村長さんと長く話すのは怖いな。


 助けを求めて周囲を見回す。さすがに幼女なアンネマリー王女に助けは求められない。


 おっ、フェリシア発見……だけど、お母さんと笑顔で何やら談笑しているようだ。邪魔をし辛い。


 もう一人の僕の奴隷であるイネスは……居た! ……けど、珍しく真面目に仕事をしているようだ。オボンでお酒を運びながらダークエルフ達にドンドンお酒を配っている。


 こう言ってはなんだけど、僕が困っている時に限って真面目に仕事をしているのがイネスらしいよね。


「ワタル様!」


 おっ、この状態で話しかけてきてくれるなんて救世主ですか?


 喜んで振り向くと、なぜか床に頭を擦りつけて土下座をしているダークエルフが一人。意味が分からない。


「ロマーノか……」


 ロマーノ? 誰? とりあえず村長さん、キリッとした表情はいいので手を放してください。


「ワタル様の御前に顔を出す資格が無い身の上なのは理解しております。ですが、謝罪だけでも、なにとぞ、なにとぞ、お願いいたします!」


 えっなに? どういうこと?


「ワタル殿。本来であればこのような願いは図々しい事この上ないのですが、こやつも心を入れ替えて真面目に働いております。話だけでも聞いていただけませんか?」


 話くらい聞くけど、その前に土下座を止めさせて手を放して。


「ワタル殿は慈悲深くもダークエルフ全員を招待するように手配してくださった。本来であれば船に乗ることすら許されぬ身であることを自覚し、誠心誠意お詫びするのだぞ」


「はっ、ワタル様のお慈悲、心の底より感謝しております。ワタル様!」


「は、はい?」


 そういえばフェリシアに本当に全員を招待するのかって聞かれて、全員を招待していいよって許可を出した覚えがあるな。


 まあ、それはどうでもいいから、お詫びよりも何よりも、この時代劇のような状況をなんとかしてほしい。アンネマリー王女とか、展開についてこられなくて固まっているぞ。 


「身の程知らずにもワタル様のことを疑い、数々の無礼を働きましたこと、お詫びのしようもございません。この命、すべてワタル様に捧げますので、どのようにでもお使いください!」


 男の命なんていらない。


 あぁ、でも頭を下げている男の正体は分かった。


 この男はあれだ、フェリシアに惚れていた男で、フェリシアを解放しろとかなんとか言って騒ぎを起こした男だよね。


 存在は覚えていたけど名前は憶えていなかった。顔が見えたらすぐに分かったんだけど、そうか、ロマーノって名前だったんだな。


 騒ぎをおこした後、両親の下について温泉の村近くで馬車馬のごとく働いているって聞いていたけど、なんでこうなった? 教育を通り越して洗脳してない?


「えーっと……頭を上げて土下座を止めてください」


 頭をピクッと動かしたが、頭を上げずに更に床に擦りつけるロマーノさん。


 もう一度改めて頭を上げて土下座を解除するように促すと、おそるおそる頭を上げてこちらを見るロマーノさん。うん、たしかにこんな顔をしていた。


 顔が確認できたのはいいんだけど、なぜ土下座を解除してくれないのだろう? 知り合いしかいないとはいえ、世間体が気になるのですが?


 そして、本気で命を捧げます的な、信念のこもった目も止めて。こんかい、ダークエルフの皆に楽しんでもらうために招待したんだけど……なんか思っていたおもてなしと違うよ!


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 娘の奴隷堕ちは許しても女神の膝枕がばれたら許されない気がする
[一言] るんるん。 王女はまだ幼女っと。 「ダークエルフの村で子供達と走り回っているから」 こことても大事。 こういったことを子供の時にしておく事が大事です。 それと人魚たちやダークエルフたちから緊…
[良い点] まさかのロマーノ お前がここまでになるとは この小説(というより作者的に)ないと思ったのに… [一言] ワタルさんの勘違い芸は一品や
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