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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第二章 モーターボートで荒稼ぎ!!
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13話 あれから6ヶ月とホーリースライム

 くだらない裁判が終わってから6ヶ月が過ぎた。南方都市での生活は面倒事が度々起こり、代わりに島での生活は穏やかな毎日を送っている。


 仕事で島に行くというよりも島で穏やかに生活して、南方都市に嫌な仕事をしに行くような気分で生活している。


 裁判のあと、少しはゆっくりできるかと期待していたけど無理だった。


 島から丸ごと魔物を持ち出せるというのはかなり有益な事らしい。更に今までは選りすぐって、価値の高い物のみ持ち帰っていたのが、少し価値が落ちるが希少な物や、今までは諦めていた魔物の部位も持ち帰れる事で、商業ギルドも冒険者ギルドもウハウハらしい。なので勧誘、買収、恐喝、襲撃が度々起こる。


 襲撃はディーノさんとエンリコさんがきっちり撃退してくれる。最近では、エンリコさんがニコニコ顔のまま、襲撃者達の骨を折っている光景の方が怖い。


 守ってもらっているのに、間違った感想だと分かっていても、襲撃者に同情を覚えるのは日本での生活の影響なのかもしれない。日本、とても平和。


 さまざまな干渉の中で一番危険なのはハニートラップだ。分かっていてもついフラフラと付いていってしまう。何度か危ないところでディーノさんとエンリコさんに助けられた。


 エンリコさんにニコニコ顔のままなのに、殺気を感じる笑顔で怒られてからは、なんとか自制している。


 魔物は冒険者カードの期限切れ寸前にゴブリンを狩るぐらいなので、レベルは全然上がってない。最近知ったのだが、レベルが上がると肉体が強化されるので寿命が伸びるらしい。


 レベル700を超えた英雄が1000年生きた伝説もあるらしい。少しは寿命を伸ばしたいので討伐も頑張ろうと思っている。


 島にいる方が心が休まるので、ほぼ仕事を受けている。ジラソーレだけじゃなく他のAランクパーティーや、Bランクパーティーも依頼を受けて仲良くなった。


 みんなお風呂や唐揚げをかなり気にいってくれて、依頼で島にくる時にエールを樽で持参するパーティーもいる。


 グイドさんも、もう1枚筏を増やし、お風呂を作っている。それにグイドさんは自宅にもお風呂を作ったそうだ。島にこれる魔導船を所持しているバルナバさんのパーティーも、1枚筏を作っているので湾内には7枚の筏が浮かんでいる。


 冒険者達も今までは森に入りっぱなしだったのに、テント筏に休憩に戻り。お風呂に入るのが最高だと、よくテントまで戻ってくるようになった。


 その中でも強者は1日休みにして昼間から天幕を開け放ち、風呂に浸かりながらエールを飲む人もいる。バカンス気分だね。1泊3金貨くらいかかるんだけど、高ランクの冒険者にははした金らしい。


 テント筏を冒険者達に占拠される日が増えたので、グイドさん達ともう1枚筏を買って住居用のテント筏を作ろうかと話している。


 まあそんな感じでほぼ仕事を受けている状態なので、お金もだいぶ貯まった。残高3金貨81銀貨90銅貨 ギルドカード入金額4白金貨68金貨80銀貨。日本円にすると4億7千万位、大金持ちだ。


 しかし、豪華客船を買うには最低500白金貨、日本円で500億円だ。冷静に考えると頭が可笑しくなりそうな値段だ。現在の稼ぎは月収7千5百万だから、1年で9億円、豪華客船を買うまで56年くらいかかる。


 56年で豪華客船が買えるのもすごいとは思うが、待たせすぎると創造神様に怒られる気がする。しょうがないからクルーザーを買って、胡椒を持ち帰るだけで20倍になる胡椒の錬金術に挑戦しよう。


 今狙っているのはヤ○ハ イ○ザルト45と言うプレミアムボートだ。船の事はよく分からないし、メガヨットとか高すぎる。


 なんとなく日本メーカーなら安心な気がするし、それに内装がカッコいいのでこの船に決定した。他の船は40金貨から80金貨で買えるが、このヤ○ハ イ○ザルト45は1白金貨37金貨と高額だ。


 だけど往復2ヶ月かかる船旅を繰り返す予定なので、高くても買えるなら買おうと決めた。今は護衛の2人もいるし機会をみて1人で行動できる時間を作って購入して確かめよう。


 明日はアレシアさん達と島だな。今回の仕事が終わったら、ギルドマスターに話を通して胡椒貿易に行く準備をしよう。


 ***


「みなさん、おはようございます」


「ワタルさん、おはよう。今日もよろしくね」


 いつもの通り、係留所でアレシアさん達と合流して挨拶を交わし、出航準備をする。


「では、出発しますよ」


 荷物を積み込み全員が乗ったのを確認してから出発する。


「ワタルさん、今回もお風呂お願いしますね」


「はは、分かりました。準備はしっかりしておきますから、戻ってくる日時をあとで教えてください。しかしアレシアさんもすっかりお風呂好きになりましたね」


 お風呂を作った僕としても鼻が高い。いい仕事したよね。


「ええ、大好きです。私達も拠点にお風呂作りたいと思っているんですが、宿屋暮らしですから難しいですね」


「ジラソーレさんクラスなら、拠点くらい買えるんじゃないですか?」


 ビックリするくらい稼いでるよね?


「買うお金はあるんですが、冒険者としてはまだまだ旅もしたいと思ってるんですよ。そうなると拠点を買うのがもったいないんです」


 冒険者だからか、確かに実力がある冒険者なら、色々な場所に行ってみたいと思うのは当然なのかもな。


「旅をするのなら拠点を買うのはもったいないですね。僕も今度胡椒貿易に挑戦するつもりなんです。色んな場所に行くのは少しワクワクしますよね」


 まあ、僕の場合は神様のプレッシャーが一番の原因だけどね。できれば拠点でのんびりして、偶に旅行に行くくらいの生活の方がいい。


「胡椒貿易ですか? 危険ですよ。30艘に1艘が往復できればいいほど厳しい航路って聞いた事があります。まさかこの魔導船で行く訳じゃないですよね?」


 この和船もいい船だけど、さすがに1ヶ月もこの船に乗りっぱなしは辛いよね。


「もちろんこの船じゃありませんよ。この魔導船のおかげでお金が貯まったので、小型の魔導船を買います。この小舟の魔導船を手に入れたところで、いい魔導船を見つけたのでなんとかなると思うんですよ」


「でも、いくら性能がいい魔導船でも、外海に出て海の大型の魔物に襲われると逃げられずに沈められるんですよ」


 アレシアさんが心配そうに教えてくれる。確かに僕が買う予定の船の能力を知らなかったら、心配になるよね。でも、心配してもらえて少し嬉しい。


「アレシアさんは外海にお詳しいんですね。でも、この小舟にも今度買う小型の魔導船にも秘密があるんです。だから僕は胡椒貿易に成功すると思っています」


「私達も冒険者ですから、他の大陸に行ってみたいと思って調べた事があるんです。でも秘密ですか? 気になりますね、教えてくれませんか?」


「はは、秘密ですからお教えできません」


「駄目ですか。私達もいずれ別の大陸に行ってみたいので、その時はお願いできますか?」


「ええ、歓迎しますよ。その時までに腕を磨いておきますから期待していてください」


 本当に一緒に行く事になったら……すごく幸せな船旅になりそうだ。


「頑張ってくださいね。でも、お1人で行かれるつもりなんですか?」


「そのつもりです。今の護衛の2人を胡椒貿易に付き合わせるわけにもいきません。奴隷を買おうかと思いましたが、狭い船内で2ヶ月も男と一緒は嫌ですし、女性でも強くないと困るので中々難しいんですよね」


「でも頑張って守ってくれる人を探した方がいいですよ。南の大陸はだいぶ治安が悪いらしいですし、あちらに行ってすぐにいい護衛が見つかるか分かりません。どうせならこちらで探していくのがいいと思います。奴隷なら裏切りの心配もないですから」


 大金を扱う船旅だから、裏切りは確かに怖いな。


「僕が弱いのは間違いないですし、ギルドマスターに相談してみます」


 やっぱり護衛は必要だよな。でも男の奴隷を買うなんて耐えられないし、強くて巨乳で美人な奴隷を頑張って探そう。


 しかし漫画やラノベなら運命の出会いとかあるはずなんだけど、なんで僕にはないんだろう。異世界にきても世知辛いな。


「そうしてください。せっかく南の大陸にたどり着いたのに、強盗に殺されたとか悲しいですよ」


「確かに、南方都市で襲われた時も、僕1人だとどうにもならなかったですから真剣にさがします。ありがとうございます」


「いえいえ、私達を確実に南の大陸に連れて行ってもらわないと困りますから、頑張ってください」


「そうでしたね。頑張ります」


 アレシアさん達との船旅……本当に実現させたいな。


 くだらない事を考えたり、雑談をしながら島に到着する。いつも通りテント筏に船を止めて紅茶を出す。


「ワタルさん今回も2日後に1度戻る予定です。お願いしますね」


「分かりました。食事とお風呂を準備しておきますね」


「ありがとうございます。では、そろそろ出発します」


 アレシアさん達を島に送り届け、スライムを捕まえてからグイドさん達に挨拶する。


「こんにちは……ってグイドさん、またお酒を飲んでますね。駄目ですよ緊急事態もあるんですから」


「分かってるよ、1杯だけだ。テント筏ができて物が増えたから誘惑が多いんだ」


「本当に1杯だけですよ。まあ確かに冒険者のみなさんの持ち込みも結構増えましたよね。でも、そのお酒はグイドさんが持ち込んだんですよね?」


「あはは、まあ、もう1枚筏を増やしてもいいかもな。前は魔導船のみだったから物なんて持てなかったが、テント筏があれば持ってくる分には余裕がある。島での生活が豊かになったよ」


 露骨に話を変えるグイドさん。でも、この島での生活って結構快適なんだよな。もう1枚筏を増やせばもっと快適になるよな。


「もし筏を増やすなら早めにお願いします。何時かは決まってないんですが、もうすぐ胡椒貿易に挑戦するつもりなので、その前にですね」


「胡椒貿易に手を出すのか、危険だぞ、そんなに金に困っているのか?」


「稼がせてもらっているので、お金に困ってる訳じゃありません。いい魔導船が手に入りそうですし別の大陸にも挑戦したいので、どうせなら胡椒貿易をしようと思ったんです」


 実際に借金はないけど、ほしい船が有り得ないほど高い。こう言う場合もお金に困ってるって言うのかな?


「そうか、しかしきちんと下調べをして無理だと思ったら諦めろよ。無理だけはするな」


「はい、分かっています。ではテント筏に戻ります。ありがとうございました」


 グイドさんと別れ、訓練をしてからスライムと遊び、お風呂に入って眠る。いつもの落ち着く生活が始まったな。


 ***


 今日はジラソーレの人達が戻ってくる予定だったな。お風呂とご飯の準備をするか。お風呂を綺麗に洗い水を半分溜める。焼き石とお湯を沸かすために炭火を熾してお風呂の準備は完了だ。


 次は野菜スープを作るか。メインメニューは、アレシアさん達が持ち帰ってくるお肉で賄う。いまのところ唐揚げが一番人気で、アレシアさん達の場合は高確率で鳥を狩ってきてくれる。ちゃんと美味しい鳥を選んでくれるので、ご相伴に与る僕としても結構楽しみなイベントだ。


 準備を終えてスライムと遊んでいるとジラソーレが戻ってきた。


「おかえりなさい。お怪我はありませんか?」


「ただいま。全員怪我一つないわ。今回のお土産はこれよ。唐揚げをお願いね」


 予想通り鶏肉のお土産だった。異世界で唐揚げ専門店をだしたら大成功できるかもしれないな。


「鳥ですね分かりました。まずはテント筏に戻りましょう」


「ええ、あとでもう一つお土産があるわよ。お風呂とご飯が遅くなったら嫌だから、そのあとに渡すわね」


「なんでしょう? 気になりますが、楽しみにしてます」


 もう一つのお土産……この島のお土産って想像がつかないな。テント筏に戻り。おしぼりと紅茶を出して、お風呂筏に向かう。沸騰したお湯を水の入ったお風呂に入れて湯加減を確かめる。少しぬるかったので焼き石を投入してちょうどよくなった。さて、テント筏に戻るか。


「お風呂の準備ができました。最初の人は誰ですか?」


「私です」


「では乗ってください。それにしてもクラレッタさん、最近よく一番になってませんか?」


「うふふ、私くじ運がいいんですよ」


 少し自慢げに笑うクラレッタさん。本気で羨ましいな。


「いいですね。僕はくじ運悪いんで羨ましいです。おっと着きました。温度を確認して入ってくださいね」


「はーい」


 クラレッタさん、ごきげんだな。テント筏に戻りご飯の用意をする。鳥肉にニンニクとショウガを揉みこみ、ジャガイモをスティック状にして水にさらす。あとはみんながお風呂に入り終わってから仕上げればいいな。


「ワタルさん、あがりました」


「分かりました。次の人は誰ですか?」


「私よ」


 イルマさんを乗せてクラレッタさんを迎えにいく。湯上りの巨乳美人、何回見ても飽きない。平和な島でのドキドキできる貴重な時間だ。何度もテント筏とお風呂筏を往復して、お風呂の順番が最後だったカーラさんを迎えに行って晩御飯の仕上げをする。


「ご飯できましたよ」


「はーい」


 完成の呼びかけにアレシアさん達が嬉しそうにテント筏から出てくる。やっぱり唐揚げが人気あるな。トンカツ(豚っぽい肉)も人気だけど、唐揚げが一番集まりが早い気がする。


「御馳走様でした」


 用意した唐揚げが完全になくなり夕食が終了する。さて、食器の後片付けをして今日はおしまいかな?


「ワタルさん忘れたの? お土産がまだあるって言ったでしょ」


 食器をまとめ移動しようとすると、アレシアさんが声をかけてきた。完璧に忘れてたな。


「そうでしたね。とても楽しみにしてたんですよ、アレシアさん」


「もう、完全に忘れてたわよね。調子がいいんだから。ドロテアお願い」


 ドロテアさんがテントの中から持ってきたのは、20センチに満たないぐらいの小さなスライムだった。


「か、か、可愛い、何ですかこの子? ちっちゃいですよ? うっすらと光ってますよ? 白色? 違いますね。少し煌めいてます。プラチナみたいな煌めきかな? ぷるぷるしてますね。可愛いですね。可愛いですね」


「ワタルさん落ち着いて、この子は生まれたばかりのホーリースライムよ。めずらしい子なんだけどスライムだから、この島の中では高価な部類ではないんだけど、ドロテアとマリーナがワタルさんが喜ぶから連れて行こうって言ってね。嬉しい?」


「はい、嬉しいです。ドロテアさん、マリーナさんありがとうございます。とても、とても嬉しいです」


 ホーリースライムを撫でて、撫でて、撫でて、干し肉を与える。可愛いな。ブルースライムもグリーンスライムも可愛いけれど、この子はまだちっちゃくて、干し肉を一所懸命に消化しようとしてるように見える。可愛い、可愛いな。


「ワタルさん、ワタルさん、聞こえてる? ……駄目ね、声が届いてないわ。まあ、朝になったらさすがに正気に戻ってるでしょう、ブルースライムとグリーンスライムは籠に入れておいて、寝ましょうか」


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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