21話 三女神様とのお食事会
光の神様、美食神様、森の女神様の三女神と、仕事とはいえ楽しい時間を過ごした。まあ、美食神様はすぐに厨房に籠っちゃったけど……。でも、これからが本番。プライベートな時間と言いつつも、若干仕事を絡めて三女神とお酒を飲む時間を確保した。もはや頑張るしかないだろう。
おぉ、素晴らしい。僕だと豪華客船の最高級のお部屋では浮いてしまう感が否めないんだけど、女神様方がゆったりとリビングでくつろぐと、この部屋ですら格が足りていないように思える。
イネスやフェリシア、アレシアさん達ですら格としては負けていない雰囲気の部屋なんだけど、神様オーラが部屋を上回ったのかもしれない。
もはや眼福としか言えない。
「航さん。どうかしましたか?」
おっと、三女神に見とれていたら光の神様に不審に思われてしまったようだ。ガン見していたからしょうがないけど、素直に言うのは恥ずかしいな。
「いえ、どういう手順で料理とお酒を出すべきか考えていました。コース料理のように順番に料理を出した方が食べやすいですかね?」
僕としては堅苦しいんだけど、光の神様達の雰囲気にはコース料理がピッタリかな?
「そうですね、私でしたら順番に出てくる方が食べやすいですが、創造神様のことを考えるといっぺんに料理を並べた方が良いと思います。創造神様は派手な方がお好きですから、料理が沢山並んでいる方がお喜びになります」
完璧に創造神様のことを忘れて、光の神様達をどう喜ばせるかを考えていたけど、光の神様はお仕事を忘れていなかったようだ。
光の神様達が喜ぶスタイルで食べたかったけど、建て前は大切だから創造神様が喜ぶスタイルでおもてなしするか。
美食神様が作ってくれた料理をゴムボートから取り出しテーブルに並べる。結構大きなテーブルなんだけど、三分の一も並べ終えていないのにテーブルがいっぱいになってしまった。
分かっていたことだけど、美食神様、料理を作りまくったな。でも、どれもとても美味しそうだ。今後の食生活が豊かになることを考えると、今回の創造神様の招待は恩恵がありまくりだな。
「お酒は……この船では飲めないお酒も色々と準備はしているのですが、どうされますか?」
光の神様が好きな金色缶のビールもちゃんと準備してあることをアピールするために、お酒を詰め込んだゴムボートを召喚して見せる。
「美食神、森の女神、どうするのが良いと思いますか?」
光の神様が美食神様と森の女神様に質問する。でも、チラッと金色缶のビールに目線が行ったのを僕は見逃さなかったぞ。好感度アップは確実だな。
「食べる前に質問してくれれば合いそうなお酒をお勧めできるけど、今回の目的はどのお酒が合うのかを調べることでもあるんだから、意見を交換しながら自由に楽しんでいいんじゃないかしら?」
「私も自由で良いと思うわ。プライベートな時間でもあるのだから、お食事とお酒を楽しみましょう」
「では、各々でお酒を選んで、美味しい物は教えあいましょう。航さんもそれで構いませんか?」
「はい。それで構いません。料理が冷めたらもったいないですし、そろそろ食事を始めましょうか」
光の神様達の意見もまとまったので、食事の開始を促す。良い匂いがするから、お腹が減ってしょうがない。
「そうですね。では航さん、乾杯をお願いします。あっ、私はあの金色の缶のビールが良いです」
それぞれに好きなお酒を準備しながら思う。なんで僕が乾杯? ……一応僕がホストだから乾杯をするのが正しいのかな?
でも、普通の乾杯の音頭でも難しいのに、神様相手の乾杯とかどうしたらいいのかすら分からない。
……無理にカッコつけてもしょうがないし、シンプルに感謝することにしよう。
「では、僭越ながら……光の神様、美食神様、森の女神様、この度はお力をお貸しいただき本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
掛け声とともに僕もビールをゴクゴクと流し込む。ホストとして酔っ払う訳にはいかないけど、一杯目くらいは勢いよく飲んでも問題ないだろう。
光の女神様もビールで、美食神様と森の女神様はスパークリングワインを美味しそうに飲んでいる。
さて、お酒でのどを潤したら、次は美食神様の手料理の時間だ。
最初にご飯物を選択するのもどうかと思うが、テーブルに並べている間から僕の目をひきつけてやまない料理がある。そうカニチャーハンだ。
もちろん普通のカニチャーハンじゃない。魔物であるビッグクラブを使ったカニチャーハン。あの濃厚な味を思えば美味しくないはずがない。
そういう訳で、デンと置かれたお皿からチャーハンを取り分ける。しかしあれだな、ゴムボートから取り出した料理をただ置いただけだったけど、次からはせめてジャンルごとに料理を並べるべきだな。チャーハンの横にビーフシチューは間違いなくミスマッチだ。
いや、意外と合わせたら美味しい……やっぱり無いな。
くだらないことを考えながらレンゲでカニチャーハンを掬い取る。具材は卵とネギとカニだけのシンプルなチャーハン。でも、見ただけで分かる。これは美味しいチャーハンだ。
パクリとチャーハンを頬張ると、口の中で米粒がパラパラと解れる。自分で作るとパラパラにならないんだけど、さすが料理の神様。完璧なチャーハンだ。
噛みしめると濃厚なカニの味が口の中に広がり、偶にシャキッとしたネギと卵の味が濃いカニの味を優しく包み込んでくれる。
塩ゆでしたビッグクラブも美味しかったけど、濃厚なカニの身はカニチャーハンにもピッタリだったようだ。
ガツガツとカニチャーハンを掻きこみ、偶にビールを喉に流し込む。これを繰り返すだけで天国気分だ。
多めに取り分けたカニチャーハンがすぐに空になる。……お代わりしたいんだけど、他にも料理は沢山あるし、ここは我慢するべきか? でも、もう少し食べたい。
「ふふ、そんなに楽しそうに食べてくれると嬉しいわね」
お代わりするか悩んでいると、美食神様の声が聞こえた。顔を上げると美食神様が優しい顔で僕を見ている。
そうだった。カニチャーハンとビールの共演に脳がやられていたけど、女神様達との食事の席だった。ちょっと恥ずかしい。
「下品ですみません。美食神様の料理がとても美味しかったものですから」
「別に下品じゃなかったわよ。戦神達よりもよっぽど上品な食べ方だったわ」
結構なわんぱく食いだったはずなんだけど、戦神様達の食べ方ってそんなに下品なのか?
……お酒で騒いでいる光景しか思い出せないな。まあ、神様達が降臨した時は基本的に女神様達しか見ていなかったからしょうがないか。
「そうですね。元気いっぱいで可愛らしかったですよ」
「ええ、笑顔で料理をとても楽しんでいるのが分かりました。それはカニチャーハンですね、私も食べてみましょう」
光の神様と森の女神様にまでフォローされてしまった。でも、それって子供が沢山ご飯を食べた時の褒め方だよね?
「あっ、グラスが空いていますね。皆様、次は何を飲まれますか?」
このままでは駄目だ。話の流れを変えよう。ホスト役をしっかり熟してできる男だって思われるんだ。
***
……雲行きが変わった。
三人の女神様との美酒美食。酒の池に肉の林で紂王様気分とまでは言わないが、楽しく料理やお酒の味を伝えあいながらの、かなり幸せな時間を過ごしていたはずだったんだけど……。
まずは森の女神様が酔っ払った。
頬を赤く染めて、笑顔で上品に笑い続ける素晴らしい酔い方だ。あらあらうふふと言いながら僕の頭を優しくなでる森の女神様はまさしく女神様で、時よ止まれと心の底から願った。
戦神様達が酔っ払って張っちゃけたのを見たことが有るので、神様が酔うことも知っていたが、森の女神様の酔い方は素晴らしい。
問題は光の神様だ。
先程までは真面目な光の神様らしく、料理とお酒についてしっかりと考察していた。それでも、美味しい料理とお酒は光の神様の心の防壁を突破したのか、僕が初めて見る可愛らしい光の神様が見られた。
あらあらうふふの母性豊かな森の女神様と、可愛らしさを垣間見せる光の神様。あとは美食神様が乱れてくれたら最高だなんて思っていた。
ここまでは……。
酒量の限界を超えてしまったのか、光の神様が激変してしまった。
別に怒りだしたり泣きだしたりといった激しい酒癖でもないし、僕や美食神様、森の女神様に絡んだりといった質の悪い酒癖でもない。
ただただ、手酌でお酒を飲みながら、暗い目をして創造神様に対する愚痴を吐いている。愚痴が呪いとなって実体化しそうな雰囲気だ。
聞いているだけで光の神様のストレスが凄まじいことが理解できる。創造神様には猛省を促したいところだけど、相手は創造神様なんだよな。
……この世界で一番の権力者が気まぐれでワガママとか質が悪すぎる。
食事の席が暗くなるくらいでそこまで大きな被害はないんだけど、これってどうしたらいいんだろう? ホスト役だとしても、この状況は手に余る。
「美食神様。どうしたらいいんでしょう?」
唯一まともな美食神様に助けを求める。
「このままでいいんじゃない? 光の神がここまで酔う姿なんて初めて見たけど、真面目な光の神が愚痴を吐けるなんて貴重な機会だから、優しく見守ってあげてちょうだい」
酔って愚痴を吐く機会すら貴重だなんて、光の神様、苦労されているんだな。
「光の神様ってお酒に強いんですか?」
「強いと言うよりも、創造神様の面倒を見ていたし真面目だから、酔うまで飲めなかったのが正解かしら? ふふ、創造神様から離れて光の神も浮かれているのね」
なるほど、創造神様の面倒を見なくていいという解放感で、酒量を見誤ったってことか。
僕では想像もできないほど長い時間を生きてきた光の神様が初めて見せるレアな光景……どうせならもっと艶っぽい姿を見たかったけど、レアな光景であるのならしっかりと見せてもらおう。
「……美食神様。この光景を録画してもいいと思います?」
「碌なことにならないだろうから止めておいた方が良いわね」
さすがに駄目か。まあ、当然だよね。
「分かりました。そういえば、美食神様は酔っていませんね。強いのですか?」
「私も少しは酔っているわ。でも、飲みなれているから強いといってもいいかもしれないわね」
なるほど、料理にお酒はつきものだし、飲む機会が多いのだろう。
光の神様はそっとしてストレス発散してもらうとして、美食神様の乱れた姿は是非とも見てみたい。
よし、この後はもっと森の女神様に撫でてもらうのと、美食神様を乱れさせるのを目標にしよう。
読んでくださってありがとうございます。




