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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十三章 ダークエルフの島の発展
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7話 僕の天使

更新が一日遅れました。申し訳ありません。

 ダークエルフの島で人魚達が住むのにピッタリな場所が見つかった。エンシェントタートルの元住処でお墓でもあったその場所は、その亡骸もろともに再利用されて人魚達の新たな第一歩に貢献することになった。……よく考えたら墓泥棒と同じようなことをしてしまった気がする。


「ひぎっ!」


 目が覚めて体を起こそうとしたら、全身に激痛が走った。


 ……何事かと思ったが、落ち着いて考えたらすぐに分かった。間違いなく筋肉痛だ。


 レベルが上がって体も頑丈になったし、豪華客船での優雅な生活にも慣れたから、最近は筋肉痛なんかにならなかったけど、さすがに昨日の激しい運動には体が悲鳴をあげたらしい。


 ……懐かしい痛みではあるけど、全然嬉しくないな。


 状況を理解したので、落ち着いて体の様子を確かめる。


 両腕・怠いうえに動かそうとすると引きつるような痛みを感じる。


 両足・両腕と同じ。


 腹筋・力を籠めるだけで泣きそうに痛い。


 胸筋・腹筋と同じ。


 背筋・胸筋と同じ。


 首筋・首を左右に曲げようとするだけで攣りそうになる。


 ほぼ全滅だな。どこもかしこも筋肉が悲鳴をあげている。レベルが上がって筋肉が丈夫になっても、全力で運動すれば筋肉痛からは逃れられないようだ。


 普段使わない筋肉を使ったのも酷い筋肉痛の原因だろう。水泳は全身運動って聞くけど、こんな形で実感したくなかった。昨晩、お風呂でしっかりマッサージしたのは、無駄な抵抗だったらしい。


 今日、お休みにしておいてよかった。


 男性人魚達全員を二日酔いにしてうやむやにするつもりだったから、宴会前に休みを宣言しておいたんだけど、僕にとっても結果オーライだ。


 あとは、筋肉痛が治るまでのんびりベッドで寝っ転がっていればいい……が、一つ問題がある。


「トイレに行きたい……」


 目が覚めたらトイレに行ってスッキリするのが習慣なのに、動ける気がしない。


 膀胱にはまだ余裕があるようで、耐えきれなくなるまでまだ時間はあるが、動けなければいつかは限界がくる。


 レベルアップで膀胱まで丈夫になっていれば、筋肉痛が治るまで耐えられるかもしれないが、耐えられなかった時が悲惨なのでなんとかしなければならない。


 ……ここは素直に人に頼ろう。僕には心強い味方がいる。


「イネス、イネス、悪いけどちょっと起きて」


 隣で眠っているイネスの反応が無い。深い眠りについているようだ。大声を出せば起きてくれるとは思うけど、大声を出すと全身に響く。それは避けたい。


「イネス、イネス、起きて、お願い。イネス」


 首の痛みをこらえてイネスの方を向き、痛みが出ない限界ギリギリの声量でイネスに呼びかける。


「う、うぅー」


 おっ、イネスが反応した。もう少しだ。


「イネス、起きて。イネス」


「うぅ……ご主人様……どう、痛ッ……駄目ね。完全に二日酔いだわ。……ご主人様、悪いけどもう少し寝かせて……」


 体調が悪そうなイネスが、再び眠りにおちようとしている。だけど、このまま二度寝は困る。寝る前に僕をトイレまで運んで。


「い、いや、イネス、寝ないで、お願い」


「……無理……頭が痛いから静かにして……」


 僕の懇願を一顧だにせず眠りにつくイネス。再び呼び掛けても反応すらしない。奴隷って言葉の意味が激しく疑問だ。


 ……イネスにはもう期待できそうにない。フェリシアが居ればなんの問題もなく看病してくれるはずだけど、残念ながら里帰り中だ。


 痛恨のミスだ。男性人魚達を酔い潰すために、高いお酒を大盤振る舞いしたんだけど、魔が差して、ちょっと機嫌が悪いイネスも一緒に潰しちゃおうなんて考えなければよかった……。


 強い後悔が湧き上がってくるが、後悔とは先に立たないものだ。今は現実を見て、自分の尊厳を守るために戦おう。


 こうなれば、痛みをこらえて気合でトイレに行くしかない。




 ……無理でした。なにこれ? 筋肉痛って酷くなるとこんなに動けないの?


 力を入れると痛いし、それを我慢して力を入れようとすると攣りそうになる。今の状況で体の一部が攣ってしまうと取り返しがつかないから無理もできない。どうすればいいんだ? 


 絶望が脳裏を駆け抜ける。この年齢でおもらしはさすがに恥ずかしい。なんとかしないと……。




 脳裏で様々なアイデアを思考し、そのすべてが没になる。いまのところゴムボートを召喚して、そこに転がり込んでの証拠隠滅が一番有力だが、これはこれで恥ずかしいのでできれば回避したい。


 なんとなくだけど、神様達に見られていて、今後のネタにされそうで嫌だ。


 そんなどうしようもない状況の中、僕の目の前に天使が現れた。


『……わたる……ごはん……』


 僕の大天使、リム登場だ。朝食の時間になっても動き出さない僕を心配して、様子を見に来てくれたんだろう。可愛すぎる。


 そうだ! リムにお使いを頼めばいいんだ。クラレッタさんなら回復魔術が使えるし、二日酔いになるまで飲んでいないだろうから、助けてもらえる。


 ナイスなアイデアを思いつくと、次のナイスアイデアが浮かんでくる。リムに頼まなくても、サポラビを召喚してトイレの補助をしてもらうかクラレッタさんを連れてきてもらえばよかったんだ。


 でも、いまだにサポラビには苦手意識があるし、助けてもらうのならリムに助けてもらいたいよね。


「リム、あのね、体が痛くて動けないんだ。クラレッタさんを呼んできてくれないかな?」


 クラレッタさんの回復魔術なら、動けるようにしてくれるはずだ。筋肉痛に回復魔術はありなのか? とも思わないでもないが、痛みから逃れられるのであればどうでもいい。


『……いたい……りむがなおす……』


「へ?」


 自信に満ちたリムからの思念が飛んできた。ポヨンポヨンしているが、なんとなく胸を張っている気がする。どういうことだ?


 ……あー……そういえばリムって回復魔法のスキルを持っていたな。誰も怪我をしないので使っているところをほとんど見たことがないけど……。


 ちょっと不安な気がするけど、リムの成長の為ならこの身を張ることに異存はない。僕の尊厳が掛かってはいるが、リムの為なら投げ捨てることもいとわないよ。


 まあ、ギリギリまであがきはするけど……。


「じゃあリム。治療をお願いできるかな?」


『……うん……』


 ドキドキしながらベッドに転がっていると、横で光がさして天使形態のリムが目の前に飛んできた。天使形態で治療するつもりのようだ。文字通り天使なリムが、とっても可愛い。


 僕の目の前でパタパタプルプルと浮かぶリム。プルプルの回数が早くなったのは力んでいるのかな?


 リムの体の前方に魔法陣が現れ、その魔法陣から僕を包み込むように柔らかい光が降り注いだ。これが回復魔法なのか……こころなしか光が温かいような気がする。


『……なおった……』


 光が収まると、リムから自信ありげな思念が飛んできた。治ったらしい。


「ありがとうリム」


『……うん……』


 試しに右手を動かそうとしたら、引きつるような痛みが走る。


 ……完治とは言えないけど先程よりかは痛みが弱まったから、効果が無い訳でもないようだ。体感としては三分の二殺しくらいだったのが、半殺しまで回復したって感じだ。


 できればもう一度治療をお願いしたいが、頑張ったと満足気にプルプルしているリムにそんなことは言えない。


 体が少し楽になって力が入るようになったんだから、後は気合だ。


 うめき声が出そうになるのを無理矢理飲み込み、気合で体を起こす。全身にビリビリと痛みが走るが、なんとか動けそうだ。回復魔法って凄いな。


「よよ、よし、トイレのあとにご飯を食べに行こう。ちょっと待ってね」


『……ごはん……』


 本当ならルームサービスですべてを完結させたいところだけど、動けるのなら外に出よう。ご飯でリムの気を逸らして、こっそりクラレッタさんに治療してもらう。それで、完全回復だ!


 トイレを済ませて尊厳の危機から脱出した僕は、リムを頭の上に乗せてメインダイニングに向かう。


 時間的には少し遅い朝食だけど、朝からしっかりご飯を食べるカーラさんに付き合って、クラレッタさんもメインダイニングに残っている可能性は高い。他の場所で朝食を食べていたら……サポラビに連れてきてもらおう。


 今気がついたんだけど、船内がとても静かだ。アンネマリー王女達が一緒になってからは、朝でも結構にぎやかなのに、たまにすれ違うのは女性の人魚だけ。


 僕の狙いも半分以上は成功したっぽい。男性人魚の大部分が二日酔いで撃沈したからこの静けさなんだろう。これで僕のミスはうやむやになるはずだ。


 計画成功に気分が上昇する。


 良い流れが僕にきているのか、メインダイニングに到着すると、目的のクラレッタさんが食後のお茶を飲んでいる姿を発見した。


『……ごはん……』


 僕の頭の上からポヨンとダイブしたリムが、カーラさんに向かってもっちもっちと進んでいく。天使形態で飛んで行った方が数段早いと思うんだけど、リムにも何か拘りがあるんだろうか?


「おはようワタル」


「おはようございます……ワタル」


「おはよう……カーラ、クラレッタ」


 リムの登場で僕に気がついたカーラさんとクラレッタさんと、朝の挨拶を交わす。


 ちなみに、クラレッタさんも呼び捨て騒動の被害者だ。自分を棚に上げてなんだけど、男性を呼び捨てになんて……といった様子で戸惑うクラレッタさんの姿は、ご飯三杯はいけちゃうくらいに素晴らしい。大好物だ。


 朝から良い物を見られたのでさらに気分が上昇するが、今の体の状況で椅子に座るのは辛い。


 下手をしたら立ち上がれなくなる可能性があるので、立ったまま朝食を注文する。いつもは雰囲気を重視してサポラビに運んでもらうことが多いが、今回は直接注文だ。


 シュパッとテーブルに現れた料理にリムが夢中になり、僕から注意が完全に逸れた。


 少しだけテーブルから離れて、内緒だと合図をしながらクラレッタさんを手招きする。


 不思議そうな様子だけど、静かに席を立ってこちらに来てくれるクラレッタさん。よし、あとは物陰で治療してもらえばミッションコンプリートだ!


 ……あれ? なんかすべてをやり終えた満足感が漂ったけど、単に僕が筋肉痛から逃れただけ?


 ……今日は休日だから問題ない。明日から頑張ろう。


更新が遅れたうえに、なんの進展もなく筋肉痛で1話を使ってしまいました。

ちょっと筋肉痛になったって描写を入れたかっただけなのですが、気がついたらそれだけでした。


次回からは話を進める予定ですので、よろしくお願いいたします。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 筋肉痛は侮れません!。(経験者談)
[一言] リムたん可愛いぉ! …じゃなくてだな えー、折角だからもう一回!とかお願いしたらリムもう一回回復してくれたりしたんじゃ?w
[良い点] ほっこりする。 [一言] ほのぼのとした作品ですし、日常回も楽しいですよ
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