26話 報酬
すみません、少し更新が遅れました。
海流の結界の復活を祝い、人魚の国をあげて盛大なお祭りが行われた。明かりに照らされた国の中を自由に泳ぎ回る人魚、海中に漂う屋台の群れ、海の中にある人魚の国ならではの不思議な料理、ファンタジーの醍醐味ともいえる一日だった。
そのファンタジーなお祭りを体験した翌日、僕は女王陛下と向かい合って座っている。どうやら報酬のお話のようだ。なんか部屋の隅に財宝と食材が山積みされている。
「ワタル様、改めてお礼を……あなた達のお陰で人魚の国に安全と光が戻りました。本当にありがとうございます」
「ほとんどが海神様の思し召しなのですが、お役に立てたのであれば幸いです」
女王陛下にお礼を言われたら恐縮するべきなんだろうけど、もう何回もお礼を言われて疲れてきた。左右に座っているアレシアさん達も若干苦笑い気味だ。
まあ、しょうがないか。昨日のお祭りから帰った後も、女王陛下を筆頭としたお城の偉い人魚さん達からお礼を言われまくったもんね。
お礼が終わったら乾杯までがデフォルトで、乾杯をするためにお礼を言われているんじゃないかと疑ったくらいだ。
「それで報酬なのですが、あちらに財宝を用意しました。それとアンネマリーから人魚の国の食材をご希望と聞きましたので、そちらもできるだけ用意いたしました。日持ちがしない物でも問題ないとのことですが、お間違いありませんか?」
「はい、間違いありません。人魚の国の食材は興味深い物が多く、アンネマリー王女にワガママを言ってしまいました」
お祭りを回っている最中にアンネマリー王女から報酬を聞かれたんだけど、僕とクラレッタさんで食材の要望を沢山出してしまった。
アンネマリー王女、少しだけ引いていた気がする。
財宝に関しては人魚の国に沢山あるそうなので、変に遠慮しないで素直に受け取ることにした。アンネマリー王女曰く、財宝は沈没船で沢山回収しているそうだ。
地球でも沈没船が沢山あるけど、この世界だと海の魔物も加わるから沈没船の数も増えるんだろうな。人魚が沈没船で宝探し……超効率的だね。
財宝は公爵城で手に入れた財宝と合わせてキャッスル号で捌いてもらおう。
「人魚の国の食材に興味を持っていただけて嬉しいです。足りなくなればいつでもご用意しますのでいくらでもお申し付けください」
「……あはは、必要になったらお願いします」
お願いしたら本当に用意してくれるんだろうな。創造神様や海神様との関係や海流の結界修復も相まって、感謝の度合いが凄まじい。
「お任せください。それでワタル様、他にご要望はございませんか? ワタル様にお仕えしたいという者達も居るのですが、人魚の兵や侍女は必要ありませんか?」
人魚の侍女……人魚のメイドさんってことだよね? それって凄く必要な気がする。政治的な意図も多分に含められているっぽいけど、そんなこと関係ないくらい魅力的な提案だ。
兵は必要ないな。まてよ、人魚の女性兵士なら話は別な気もする。なんとも悩ましい。さすがに兵士は女性ですかって聞くのは、いろんな意味で駄目だよね?
とてつもない難問に苦しんでいると、右わき腹を突かれた。アレシアさんが顔を寄せてくるので、何か話があるようだ。
もしかして嫉妬? 人魚のメイドさんなんて駄目よ。私達が居るじゃない的な嫉妬ですか? そうだったらとても嬉しい。
(ワタルさん。ちょうどいいじゃない。あのことをお願いしてみたら?)
全然違った。まあ、そんなことだとは思ってはいたけど、少し悲しい。
でもまあ、アレシアさんが言っていることも間違いではないし、この際だからお願いしてみるか。
少しデリケートな問題だからお願いするのを躊躇っていたけど、この様子なら聞いてみるぶんには問題ないだろう。
「女王陛下、一つお願いがあるのですが、このお願いは無理な場合は恩とか報酬とか関係なく断ってくださって構いません。僕達としてももし叶えばといった要望ですので、断られてもまったく気にしません」
お願いするにしても先に前置きはしておかないといけないよね。今の状況だと洒落にならないことを言っても身を削って叶えてくれそうで怖い。
「そこまで言われてしまうと少し怖いですね。ですが、国が危機に陥るような願いでもない限り、女王として誠心誠意お応えしたいと思います」
覚悟を決めた顔をしないでほしい。少しくらいHなお願いもなんとかなりそうだと心の中の悪魔がささやくが、これだけ覚悟を決められると申し訳なさが先に立って無理だ。
「本当に少しでも無理だと思ったら断わってくださいね」
なんだか怖いので、もう一度念を押しておこう。
「ご安心ください。アダリーシアを嫁にというのであれば、喜んでお受けします」
そんなことは一言も口に出してないよ? 女王陛下もテンパっているのか?
だいたい、第一王女を嫁に出したら駄目でしょ。女子高生くらいの年頃の人魚のお嫁さんなんて……お嫁さんなんて……凄く惹かれるけど……。
「……いえ、そういう話ではないのでご安心ください」
「……そうですか」
女王陛下がとても残念そうな顔をしている。海神様との関係もあるし、冗談でもお願いしていたら言質を取られて強制的に結婚だった気がする。
人魚の国というファンタジー満載の国なのに、政治的要素が満載でせつない。
「えー、お願いなのですが、この神器の指輪を提供、もしくはレンタルして頂けないかと思っています。どうですか?」
このままだと変な方向に話が進みそうなので、お願いをぶっちゃける。さて、どんな反応になる?
海神の神器を奪われた国でもあるし、海神様を深く信仰している国でもある。
そんな人魚の国の女王陛下に、海神様から授かった神器をくださいって言うのは下手をしたら喧嘩を売っていると取られかねない内容だ。
でも、どう考えても僕達にとってとても便利な神器なんだよね。海中で潜水艦に乗り換えるのも簡単になるし、沈まないとはいえ船での生活がほとんどの僕達としては手に入れておきたい一品だ。海中の公爵城での探索時に、この神器があればずいぶん楽だっただろう。
人魚に変化せずに普通に人として海中で過ごせる方の神器もできれば欲しいけど、さすがにそれは贅沢過ぎるだろう。
見た感じ数も豊富っぽかったからなんとかならないかな? レンタルでもいいので、できればお願いします。
「そういうことでしたか。それらの神器は海神様からの授かりもの。国の宝になります」
国宝ってことだよね。やっぱり無理か……。
「ただ、人間と結婚する場合は必要になるだろうと、沢山下賜されている神器でもあります。実際、神器を携え地上に出ていった人魚も居るのです」
あれ? 無理じゃないのか? でも可能なら女王陛下はそんなに悩ましい顔をしないよな? あと、悩んでいる女王陛下がとても色っぽいです。
「問題は結婚するために必要だろうと授かった神器を、恩人とはいえ報酬としてお渡ししてよいのか……判断がつきかねます」
なるほど、物品の不正流用みたいな形になることを心配しているのか。女王陛下の判断でどうにでもなるものとは違って、海神様から授かった神器だもんね。
あれ? じゃあなんとかなる?
「あの、女王陛下。それなら僕が海神様から許可を頂ければ問題はありませんか?」
幸い、海神様には会うことができる。
神様相手に報酬の交渉とか恐れ多いことな気もするが、この神器はできれば手に入れたい。それに、光の神様達に相手に膝枕で耳かきまでお願いしているんだ。今更だよね。
「そうでしたね。ワタル様は海神様とお会いできるんでしたね。そういうことでしたら問題なくお渡しできると思います」
女王陛下がホッとした顔で確約してくれた。ならあとは海神様から許可をもらうだけだな。
「あっ、許可をもらったとしても、それを証明するのが難しいですね。どうしましょう?」
神様から書付とかもらえるんだろうか? それはそれで、書付がお宝になったりして面倒が起こりそうな気もする。
「そのような嘘をつかれる方に、創造神様のお使いが務まるとは思えません。ワタル様が許可を頂いたと言われるのであれば、それで十分な保証になります」
「……そうですか、ありがとうございます?」
使いじゃなくて玩具っぽい扱いなので、保証にはならない気がします。言わないけどね。
まあ、しっかり海神様から許可をもらえば問題ないんだ。大丈夫だろう。
クリス号に戻って許可を得て、また人魚の国に戻ってこないといけないのが少し面倒だけど、この神器の為ならなんてことが無い苦労だな。
「では、話し合いが終わったら許可を取りに海上に行ってきますね」
マップで位置は分かるし、まっすぐ海上を目指して進んで、まっすぐ戻ってくれば問題ないだろう。
「ワタル様。アンネマリーに神器を持たせておきますので、わざわざ許可を取りに往復されなくても大丈夫ですよ?」
「へ? なんでアンネマリー王女に神器を持たせるんですか?」
「? アンネマリーを同行させて頂けるんですよね?」
……そういえば、アンネマリー王女がダークエルフの島まで派遣されるような話があった気がする。
まだ子供なアンネマリー王女を連れて行くのは微妙ってことで、女王陛下と話し合いをするつもりだったな。
女王陛下の中ではアンネマリー王女の同行は確定なのか?
予想以上に神器の交渉が上手くいってご機嫌だったけど、こちらの交渉がもっと大変な気がしてきた……。
でも、さすがに子供な王女を連れて行くのは、不味いよね?
読んでくださってありがとうございます。




