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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十一章 海の中の公爵城
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20話 意外と簡単?

 人魚の女王陛下、アーデルハイト様と護衛の4人をルト号の船内に迎え入れ、海神様の言付けを伝えた。女王陛下も護衛の4人も感涙していたが、落ち着いた後にどうやって海神様から言付けを得たのか聞かれてしまった。どこまで答えるのかが難しいな。


「無理なら構わないのです。不躾なことをお聞きして申し訳ありません」


 悩んでいると、女王陛下から謝られてしまった。気を遣わせてしまったようだ。女王陛下も護衛の人達も心底海神様を慕っているようだし、僕に対しても礼儀正しすぎるくらいに礼儀正しい。


 海神様効果とはいえ、ちゃんと向き合ってくれる人には、できる限り誠実に対応するのが礼儀だよね。


「いえ、何を話していいのかを悩んでいただけです。どこまで話していいのかが僕もあやふやなので、そこはご容赦ください。あと、ソファーに座っていただけると話しやすいです」


 女王陛下が床に膝をついたままで話を続けるほど、僕の根性は据わっていないので元通りに座ってもらう。


「失礼しました。お話していただけるだけで十分です。よろしくお願いします」


 再び席に着いた女王陛下が、話の続きを促してくる。さて、どう話せはいいものか……。


「えーっと、まず僕はとある神域に関係がありまして、たまに創造神様と言葉を交わすことができるようになりました。それでたまたま海神の神器を手に入れたのですが、使い方が分からなかったので、創造神様に使い方を聞いたんです。そうしたら色々あって、海神様とお話しすることになって、海神の神器を使う許可と、人魚の方達に対する言付けを託されたんです」


 ザックリと説明し過ぎた気もするが、話し過ぎた気もする。でも、嘘はついていないよね?


「で、では……ワタル様は創造神様の使者様なのですか?」


 顔を蒼ざめさせた女王陛下が、恐る恐るといった様子で質問してくる。うーん、様付けに戻ってしまったな。あと、僕は創造神様の使者というよりも、接待係の方がしっくりくる。


「いえ、そんなにたいそうな立場ではなく、なんと言ったらいいんでしょう……よく言って使いっ走りですか?」


「ですかと聞かれましても、創造神様の使いっ走りというのは、相当凄いことなのですが……」


 うん。なんとなくそれは分かる。パレルモの大聖堂も神域なのに、創造神様はほとんど関わっていない様子だった。僕が異世界人だから、娯楽目的で声を掛けてもらえるだけなんだよね。


 隣で話を聞いているアレシアさんが、話し過ぎなんじゃないって顔で僕を見ている。たしかにこのまま続けると変なことまで話してしまいそうだし、僕のバックには創造神様がついているんだぜっていう、虎の威を借る狐の創造神様バージョンが発動してしまいそうだ。


 いや、すでに発動しているな。これ以上へりくだられるのもなんだし、創造神様の話はこれまでにして海神様の話をしよう。まだ色々と話すべきことは残っている。


「まあ、実際には創造神様との関係で世間に影響力がある訳でもないので、特に凄いという訳でもないんです。話を戻しますが、言付けを授かった時に海神様に人魚の方達が困っているから力になってやってくれと頼まれたんです。困りごとがなんなのかは分かりませんが、お力になれることであれば協力します」


「まぁ」


 蒼ざめていた女王陛下の顔色が、海神様の心遣いに感動したのか正常……いや、感激したのか、うるんだような熱っぽい表情に変わった。大人の色気がムンムンだね。


 女王陛下にとって創造神様は恐れを感じる対象で、海神様は親しみを感じる対象なのかな? 実際に会うと威厳は確実に海神様の方があるんだけど、会ったことがないなら創造神って名前だけで恐れを抱くのも分かる。


「それで、どうしますか?」


 魂をどこかに飛ばしてしまったような女王陛下に声をかけると、ハッとした表情で僕の方に視線を戻して謝ってきた。たぶん僕って人魚の女王陛下に頭を下げさせた人間、NO.1な気がする。あんまり嬉しくないけど、ある意味偉業なのかもしれない。



「ご迷惑をお掛けすることになりますが、聞いていただけますか?」


 少し考え込んだあと、女王陛下が意を決した様子で話しかけてきた。正直、迷惑を掛けられるのは嫌なんだけど、だからといって聞かないとは言えない。アレシアさんに目線を向けると黙って頷いたし海神様の言葉もあるから、逃げられないな。


「はい。聞かせてください。僕でお力になれるのであれば、できるだけ頑張ります」


 できるだけ頑張るって保険を掛けたけど、勇者とか英雄とかそんな感じの凄そうな人なら、任せてくださいって断言するんだろうな。こういう部分が、今一つハーレムを築けない要因なんだろうか? カッコつけるのも難しいな。


 ***


「……という訳なのです」


 なるほど、海神の神器をパクった異世界人が元凶ってことだな。


 海神の神器をパクった後に普通に逃げればいいのに、手に入れた海神の神器を試したかったのか追っ手が面倒だったのか、人魚の国の周囲の海流をめちゃくちゃにしてしまったそうだ。


 海流がめちゃくちゃになる前は、特定の経路以外は複雑で激しい海流が人魚の国を取り囲み、シーサーペントすら近づけない平和な国だったようだが、海流がめちゃくちゃになったことで人魚の国の内部にすら激しい海流が通り、海流の隙間から魔物が侵入してくる状況らしい。


 国の中に危険地帯が作られた上に魔物まで侵入しだしたら、それは確かに困るよね。でも、そこらへんは対応しているようなので、困ってはいるけど切羽詰まっているって状況でもないようだ。


 しかし、創造神様はそんな迷惑な異世界人に、なんでチートをあげちゃうかな。もう少し考えてくれないと、同じ異世界人として肩身が狭いよ。


 ……あれ? でもこれって意外と簡単な話? 迷惑って言うから、凄く強い魔物と戦ったり、希少な秘薬的なものを手に入れたりと、難題を押し付けられる覚悟をしていたから、若干拍子抜けなんですけど? それとも、僕の理解力が足りなくて難題なのかな?


「えーっと、お聞きした内容ですと、海神の神器でなんとかなるような気がするのですが……間違っていますか?」


「いえ、海神の神器のお力をお貸しいただけるのであれば、なんとかなる可能性が高いと思います。少なくとも状況は改善するはずです。ただ、海神の神器を失ってから長い時を重ねた我々では、それがどれほど大変なことなのかが判断できないのです」


「なるほど、そういうことでしたか」


 海神の神器をフル活用できる僕なら楽勝な気がする。しまったな。楽勝なら、カッコよく引き受けて解決すればよかった。


 ……難しいふりをして苦労に苦労を重ねてようやく達成しました! 的な演技をするのはどうだろう? そうしたら美女な人魚さん達からめちゃくちゃ感謝されてモテモテになるんじゃないか?


 あー、駄目か。最低でも海神様は天界から様子を見ているよね。自分が大切にしている人魚に対して、自分の神器を利用して大げさに恩を売る異世界人……印象は最悪だろうな。下手したら海神の神器の使用許可すら取り消されそうだ。


 あと、創造神様とか娯楽神様に見られていたら、次に会った時にいじくられること間違いなしだ。


 神様と会えることでメリットは大きいけど、神様に対する印象まで考えないといけないのは面倒だ。おてんとうさまは見ているっていうけど、本当に見られているのはプレッシャーだよね。


「ワタルさん。大丈夫なの?」


 アレシアさんも判断がつかないのか、少し不安そうに聞いてくる。


「海神の神器を使う練習は必要だと思いますが、おそらく問題ないと思います」


「本当ですか!」


 おうふ。喜んだ女王陛下に両手を握られてしまった。とっても嬉しいんだけど、女王陛下は人妻……いや人魚妻なんだよね。


 人妻ってなんとなくHな響きを感じなくもないけど、人魚妻って響きだと感情が落ち着いてしまったな。目の前の女王陛下が美女なのは変わらないのに、不思議な気分だ。


「はい。海神様の許可があるので、海神の神器を使ってもそこまで大変ではないと思います。ただ、どのように海流を張り巡らせるかが僕には分かりませんので、そこらへんの指示が必要になります」


「あっ、申し訳ありません。えーっと、ああ、海流の流れにつきましては、国も昔とはずいぶん変わっていますので、変更したい部分なども出てくるかと思います。対応していただけますか?」


 なるほど、海流がめちゃくちゃになって長い時間が経っているんだから、昔と同じような形にしただけだと不便な部分も出てくるか。


 ん? そういえば海流の流れが複雑に絡み合っているのなら、元の形に戻すにしても新しい要望を聞いて操作するにしても、パズルみたいで難しそうだ。


「指示を出してもらえればそれに合わせて海流を動かすだけですので、変更するのは問題ありません。ただ、あまりにも複雑になるのであれば、海流を全部止めてまっさらな状態から組みなおしたほう簡単な気がします」


「なるほど……どうするべきか国で話し合いたいのですが、時間を頂くことは可能ですか?」


 国を守る城壁を改修するか立て直すかみたいな内容だし、この場で決定するのは女王陛下でも難しいか。


「外せない用事もありますけど、10日前後はアクアマリン王国に滞在する予定ですね。滞在期間をある程度伸ばすことも可能だとは思いますが、あまりにも時間が掛かる場合は一度別の国に行くことになるかもしれません」


 休暇みたいなものだから時間の余裕はあるけど、イネスのストレスや王様への献上品なんかでアクアマリン王国に居るのが面倒になるかもしれないから、長期滞在は確約できない。


「安全対策で海流の動きや穴は調べてありますので、それほど時間を掛けずに方針を決められると思います」


 なら問題ないか。創造神様のおもてなしと、イネスの家族のおもてなしが終わってからの方が時間がとりやすいし、だいたい10日後を目途に人魚の宿屋に連絡を入れてもらおう。


 ん? 状況がよくなったら僕達も人魚の国に遊びに行けたりできるんだろうか? 潜水艇で長期滞在は辛いから、人魚の国に空気がある場所とかあったら嬉しいな。


 いや、いっそのこと、そんな場所も作ってもらうのもいいかも。海神の神器を上手に使えば、空気を取り込むのも可能っぽいよね。女王陛下にリクエストしてみよう。ああ、海神の神器の所有権も話し合わないといけないんだった。


読んでくださってありがとうございます。

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