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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十一章 海の中の公爵城
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18話 偉い人魚?

 制限がない海神の神器は僕が思っていた以上に強力で、恐ろしい力を持っていた。下手な使い方はできないと、ダークエルフの島を守るために練習をしていると、いつの間にか美男子な人魚に囲まれていた。


「話しかけた方がいいんでしょうか? いきなり襲ってくることはありませんよね?」


 僕が思っていた人魚とのファーストコンタクトと違うから、どうしたらいいのかが分からない。


 美人な人魚さん達が、あら、あなた凄いの持っているわね。お茶しない? 的な軽いノリではないにしても、人魚にとって失われた秘宝を持っているんだから、もう少し友好的に接触してくると思っていたよ。いきなり包囲するのはやめてほしい。


「人魚は人間と取引があるし、話が通じるわ。多分大丈夫じゃないかしら? それに、ワタルさんの船に乗っているんだもの。襲われても大丈夫よ」


 ……アレシアさんの言うとおりだな。チートな船召喚に守られているから大丈夫なのをスッポリと忘れていたよ。とりあえず、安全な場所から話しかけよう。


「あのー。海神の神器に気がついてここに来たんですよね。海神様に頼まれていることもありますので、できれば人魚の代表者と話し合いたいのですが、可能ですか?」


 細かく注文を付けるなら、美女な人魚さんだとなお嬉しいです。言えないけど……。


「海神様だと!」


 海神様の名前を出したことで、人魚達がざわめいている。まあ、信仰の対象の名前がでたら、驚かない訳がないか。


 僕もそれが分かっていて海神様の名前を利用させてもらったし、これがいわゆる虎の威を借る狐ってやつだな。


 でも、言付けを頼まれているから、どちらにせよ海神様の存在は明かすんだ。なら、両者の友好のために名前を利用しても怒られはしないだろう。


「その言葉、間違いないか?」


 騒めいていた人魚達の中の、1人のイケメン人魚が話しかけてきた。この場ではあの人魚が1番偉いんだろうな。


「はい。証拠はありませんが……いえ、海神様から許可を得て海神の神器が使えるようになっていますので、それが証拠になりませんか?」


 いまだにキラキラと粒子らしきものを振りまいている、海神の神器を見せる。この神器の粒子が完全に神器を使いこなしている証らしいので、説得力はあるはずだ。


「……見回りの私達には手の余る話のようだ。すまないが対応できる者を連れてくるので、しばらく時間をもらえないだろうか?」


 この人魚達は見回り部隊だったのか。それなら男しかいないのも納得できるな。うーん……どうせ話すのなら、最初から偉い人魚と話したほうが効率的だよね。


「アレシアさん。どう思います?」


「とりあえず、私達には人魚の事情はサッパリ分からないんだし、会ってみるしかないんじゃない? あぁ、でも、今から今日中にってことなら、時間を聞いておかないと夜中に話し合いになるかもしれないわね」


「夜中はちょっと勘弁してほしいですね」


 たしかにもうすぐ日が暮れるし、夜中に戻ってこられても眠くなってしまう。


「えーっと、偉い人が来るまでにどのくらい時間が掛かりますか?」


「……ここまでの往復で4時間ほどだが、上の準備にも時間が掛かるかもしれん。いや、問題が問題だ。すでに動き出している可能性も高い。確約はできないが5時間ほどで戻ってこられると思う」


 片道2時間って、意外と近いところに人魚の住処があるんだな。そういえば人魚の宿屋にも昔は頻繁に人魚が来ていたみたいだし、そこまで遠いこともないか。んー……5時間後から話し合いを始めるのは大変だよね。


 でも、この人魚達からは、逃がさないって意思をビンビンに感じる。海神の神器が再び行方不明になることが怖いんだろうな。


「僕達はここで待機しますから、お互いちゃんと準備をしてから明日の朝に会うことにしませんか?」


 ここで待機することを伝えておけば、間違いなく監視はつくだろうけど、神器の移動がないんだから納得してくれるだろう。


 もともと、海神の神器を僕達が持っているんだから、神器の力を知っている人魚なら、強引に包囲を突破できることは人魚達も理解しているはずだもんね。


「……分かった。だが、悪いが見張りを付けさせてもらいたい。海神の神器は人魚にとって特別な意味を持つ神器だ。そこのところを理解してほしい」


 素直に見張りを付けることを言われてしまった。こっそりと監視されるよりもマシだからいいけど、ペントのことはどうしようかな? ずっとルト号の船内だと息が詰まるよね。


「えーっと、見張りは構わないのですが、こちらのお願いも聞いてもらえますか?」


「我々にできることであれば、対応しよう」


 即答だな。この人魚の隊長。言葉遣いは堅苦しいけど、かなりこちらに気を遣ってくれているようだ。


「助かります。実は、シーサーペントの赤ちゃんを従魔にしたので、海で泳がせてあげたいんです。ただ、そちらの方達に攻撃されるのも困るので、手を出さないでもらえますか?」


 ペントを人質……いや、従魔質に取られる可能性もあるけど、話し合いをする前にけんかになるようなことはしないだろう。


「シーサーペントの赤子を従魔だと! どうやったらそんなことになるんだ!」


 人魚達がとても驚いている。まあ、公爵城の飼育部屋をみたら、卵や赤ちゃんはかなり大切に扱われているようだし、シーサーペントの赤ちゃん自体がかなり珍しいんだろうな。


「海神の神器を手に入れる時に色々あったんですよ。それで、手を出さないでもらえますか?」


「こちらに襲い掛かってくるようなことは?」


「ご飯はたっぷり食べさせますし、人魚に襲い掛からないようにしっかりと言い聞かせますから大丈夫です」


 ペントってリムに産まれた瞬間に心を折られたからか、基本的におとなしいから言わなくても大丈夫な気もする。まあ、一応、しっかり言い聞かせるけどね。


「ならばこちらは問題ない。では、明日の朝、また声を掛ける」


「分かりました」


 お互いに話が済んだところで、人魚の隊長が部下を呼び寄せて報告に行かせた。2人しか行かずに、残りは僕達の監視か。絶対に逃がしたくないんだな。


 さて、僕達もそろそろ船内に戻るか。僕達の食事の前に、ペントにご飯を食べさせて人魚達に紹介しておこう。


 ***


「ご主人様。そろそろ時間です」


「あっ、もうそんな時間か。じゃあ外で待ってようか」


 朝、船内から出ると人魚の隊長が、およそ2時間後に偉い人魚が直接ここに来ると伝えられた。


 あれからゆっくり朝食をとってのんびりしたから、たしかにフェリシアの言う通り、2時間くらい経つな。リムを頭の上にのせて、全員で船内から出る。


「む。すまない。まだ到着していない」


 外に出ると人魚の隊長が、偉い人魚がまだ到着していないことを謝ってきた。


「いえ、出迎えようと出てきただけですので、構いませんよ。それよりも、ペントがご迷惑では?」


 2時間前は普通だったのに、今はなぜかペントが人魚達に遊んでもらっている。あれは貝かな? 拳大の貝を人魚が投げると、嬉しそうにペントが追いかけていく。フリスビーを追いかける犬のようだ。


「いや、迷惑は掛かっていない。ペントが我々と共にいれば、君達もここを離れられないからな。立派な任務だ」


 ……とってつけたような言い訳が聞こえる。何がどうしてこんな状況になったんだ? ペントを紹介した時はお互いに警戒していたよね?


『……なんで……』


 頭の上のリムから、ショックを受けたような意思が届く。リムも一生懸命に仲良くしようとしているのに失敗して、人魚が簡単にペントと仲良くなっているのがショックなんだろう。


 リムを抱っこして、なぐさめるようにモニュモニュする。大丈夫。もう少し大きくなったらきっと仲良くなれるさ。


 おっ、突然人魚の見回り部隊の動きが変わり、ルト号から離れて広がりだした。偉い人魚が来たのかな?


 広がった人魚の見回り部隊の中心から、新たな人魚の集団が現れた。やっぱり偉い人魚が到着したらしい。しかも、僕が望んでいた女性の人魚が複数居る。


「陛下! なぜ陛下がこのような場所に!」


 出てきた人魚の集団を見て、見回り部隊の隊長が驚きの声を上げる。……陛下ってことは、あの中心の美人さんが陛下ってこと? 女王陛下? 偉い人が来るとは聞いていたけど、女王陛下は聞いてないよ。あぁ、隊長も驚いていたし、予定外の行動なのか。


「うむ。海神の神器の現所有者であり、海神様の関係者にお会いするのだ。私が出向くのが礼儀であろう」


 女王陛下が隊長の質問におうように答えた。なるほど、僕が海神様の威を借りたことで、女王陛下が出てきちゃったか。……最初から偉い人魚と話したかったんだし別に問題ない。女王陛下を呼びつけちゃったよなんて全然思っていない。


 えーっと、僕は上から見下ろす感じで女王陛下を見ていていいのか? でも、僕が海に入る訳にもいかない。あと、女王陛下と周囲の女性人魚の胸の谷間がセクシーだ。


 ただ、女性人魚にはトップレスを期待していたんだけど、さすがに魔物の素材らしきブラのようなものを付けている。まあ、人と取引をしているんだから、トップレスの可能性は低いと思っていたけど、男の人魚はトップレスだったからちょっと期待してしまった。


 でも、綺麗な人……人魚だよね。紺に近い深い海を思わせる髪。肌の色は海で泳いでいるはずなのに日焼けを1ミリも感じさせない白い肌。豊満な母性の象徴と、透明感を感じる青い瞳。


 想像していた人魚の美女はもっと純粋そうなイメージだったけど、どちらかというと威厳を感じる大人の美しさだ。


「しかし、不用心ではありませぬか。もし陛下の身に何かがあれば、我々はどうすればいいのですか」


「そうなれば、娘を新たな王に据えればよい」


 女王陛下には娘さんが居るのか。見た目は20代前半にしか見えない美女なんだけど、意外と歳がいっているのか? 大人の美しさと感じたのは間違ってなかったようだ。あっ、女王陛下と目が合っちゃった。


「これは海神様の使者様を前に、お見苦しいものをお見せいたしました」


 海から上半身を出しているだけなのに、優雅に頭を下げる女王陛下。僕、海神様の使者ってことで、女王陛下の上に位置付けられているらしいよ。……なんかヤバい気がする。


「いえ、僕はそんなたいそうな者ではありませんので、頭をお上げください。海神様から言付けを頼まれただけなんです」


 うーん。この僕が上から見下ろすような位置がいけない。どうすれば……あっ、ゴムボートを召喚すれば、海面に近い位置に……いや、関係がどうなるかも分からないのに船召喚を見せるのは怖い。


「海神様から我々にお言葉が……」


 なんだか女王陛下と人魚達が感動している。どうやら、言葉の選択を間違ってしまったらしい。何をどうすればいいのかよく分からなくなってきたよ。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白いのでコミックスでは主人公の馬鹿さ加減と クズさ加減を、もうちょうどうにかしてほしいです。
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