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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十一章 海の中の公爵城
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17話 神器の本領

 海神の神器の使い方を聞きに天界に行き、光の神様に海神様を連れてきてもらい、なんとか海神の神器を使えるようになった。光の神様との打ち合わせも無事に済み、10日後から3日間の特別神様接待が決定した。その前にイネスの家族とフローラさんをクリス号に招待しておくか。


「ワタルさん、どうだった?」


 教会から外に出ると、アレシアさんが速攻で声を掛けてきた。他にもペント以外の全員が勢揃いしているな。神様との交渉結果が気になっているようだ。


「海神様とお会いすることができまして、海神の神器を使えるようになりました」


 僕が言うと、アレシアさん達やイネスとフェリシアから感嘆の声が上がる。特に僕が凄いって訳じゃなくて全部神様次第な話なんだけど、こういうリアクションは気持ちがいいな。ふふ、クラレッタさんの尊敬の目で火傷してしまいそうだ。


「じゃあ、もう海神の神器が使えるようになったのよね。さっそく試してみましょう」


 アレシアさんが期待に満ちた目で僕を見ている。期待に応えたいところだけど先に言っておくことがある。


「ちょっと待ってください。まだ、お知らせがあります」




「なるほど……海神の神器には人魚が関係しているのね。それはそれで面白いことになりそうね」


「人魚にも興味がありますが、まずはクリス号を綺麗にしなければいけませんね。神様方がいらっしゃるんですから」


「本当に私の家族を招待してくれるのね。嬉しいけど、後のことが大変そうだわ」


 アレシアさんは人魚について興味を持ったみたいだ。クラレッタさんは神様降臨イベントに気合が入っているけど、船召喚の船は念じたら綺麗になるんだよね。まあ、クラレッタさんは分かっているうえで掃除をするつもりなんだろうけど。


 イネスは……多分、クリス号見学が終わってからの、ベラさん達の相手が面倒だと思っているんだろう。


 ……王様への献上品の話なんかもしたんだけど、全員でスルーしている。興味がないだけなのか、面倒だから考えたくないだけなのか、どっちなんだろう?


 王様への献上品はアクアマリン王国でやることを全部終わらせてからだから、考えるのはその時でいいか。


「もろもろの事情を理解していただいたところで、どういう順番で行動しますか? 王様への献上は最後の予定です」


「神様方が降臨される日時は決まっているんだから、それに合わせた行動よね。イネスの家族の予定も確認しないといけないから、まずは場所を移動して海神の神器を試すべきかしら?」


「そうね。うちの家族もフローラも仕事があるから、事前にある程度の説明はしてあるけど、急に今日明日では動けないわね」


「ですが、海神の神器を使えば十中八九人魚が出てくるんですよね? ワタルさんの話では困っているらしいので、人魚の問題に時間を取られることになりませんか?」


 アレシアさんとイネスは海神の神器から試す意見だな。ドロテアさんは人魚の問題を懸念しているようだ。


「ご主人様。人魚が困っているとのことですが、緊急事態なんですか?」


「いや、そこまで詳しくは聞いてないよ」


 僕も詳しく聞きたかったけど、創造神様が決めたルールが邪魔しちゃうんだよね。


「でしたら人魚に会うことを1番に考えた方がいいと思います。間に合わなかったなんてことになるとどうしようもありませんし、時間の余裕があるのであれば、待ってもらえばいいだけです」


 いつも控えめなフェリシアがここまで意見を言うのは珍しいな。……あぁ、自分の一族と重ね合わせているのか。ダークエルフの一族も苦労しているから、他人事とは思えないんだろう。


「たしかに緊急事態だと困るね。えーっと、まずは人魚第一で動きます。構いませんか?」


 反対意見も無いようだし、海神の神器が使いやすい場所に移動するか。クリス号では目立ちすぎるから、ルト号に乗り換えだな。


 ***


「ここらへんで良さそうですね」


 陸地から見えないこともないが、近くに人は住んでいないらしいから人目は少ない。陸地の反対側で神器を操作すれば見えないだろう。


 内海だから人魚が魔物に襲われることも少ないし、漁師が心配ではあるが、もう夕方のこの時間。わざわざ漁には来ないはずだ。やはりここがベストポジションだな。


「待っていたわ。海流を動かすってどうなのかしら?」


「神器なんだもの、きっと凄く派手なことになるわよ!」


 アレシアさんとイネスが物凄く期待しているな。でも、派手にできるからといって、派手にするつもりはないよ。目立たない場所に移動した意味がなくなってしまう。


 地味でガッカリされそうだけど、さっさと使って人魚に会おう。僕はそちらの方が楽しみだ。あれ? 許可は得たけど使い方を聞いてないな。今更使い方が分からないとか……とても言えないな。ぶっつけ本番で試してみるしかないか。


 海神の神器を載せたゴムボートを召喚しておそるおそる近づくと、もともと色鮮やかだった海神の神器が、光の粒子をキラキラと吐き出し始めた。


 サンゴの産卵にも見えるけど、さっき神器に触った時はこんな反応は無かった。これが許可を得た影響なのか。よく分からないが使えそうな雰囲気だ。


 覚悟を決めて海神の神器に手を触れると、神器の使い方が脳内に流れ込んでくる。船召喚でスタッフ任命したような感覚だな。


 しかし……これはヤバい。創造神様がちょっと困った感じになる訳だ。海流が操れるってだけでも十分なチートなのに、それが本来の力じゃなかった。


 海神様が無理矢理だと十分な力を発揮できないって言っていたけど、逆に言えば、発揮できない状態でも海流が操れるチートだったってことだ。


 そして、目の前にある海神の神器は海神様に許可を得ているから、フルで性能を発揮できる。海流どころか、海のことはたいていがこの神器でなんとでもなるようだ。


 ……確実に僕には過ぎた力だ。持っているだけでも怖いんだけど、どう管理すればいいんだ? 人魚に返して無茶されたら国が亡んじゃうよ? 


「ワタルさん。どうなの? 海流を操れそう?」


 怖くなっていると、アレシアさんが声を掛けてきた。僕が恐怖で止まっていたから心配してくれているようだ。うーん、まあ、人魚には会いたいし、話し合って危険そうなら僕のゴムボートに封印って流れでいいか。


 とりあえず、小さな渦でも作ってみよう。海流を動かしたり、新たな海流を生み出したりするよりは安全なはずだ。津波なんかは絶対に起こさないようにしないとね。


「まずはあそこに渦を作ってみますので、見ていてください」


 みんなが見ている前で、合図した場所に渦を作るように神器にお願いすると、海面が波立ち始め、みるみるうちに2メートルほどの渦が完成した。


「……小さいわね。ワタルさん、これが限界なの?」


 アレシアさんがそんな訳ないわよねと、期待した表情で僕を見てくる。


「渦の大きさは、どこまでも大きくできそうです。あんまり大きくすると危ないですが、どのくらいの大きさにしますか?」


「どこまでもって、どういうこと?」


「この神器、公爵家では本来の性能が発揮できなかったらしくて、海流を動かすのが精いっぱいだったみたいです。でも、海神様の許可を得たので、アクアマリン王国を飲み込むような大渦を作り出すことも可能なようですね」


「……それは、洒落にならないんじゃない? 海流を動かせるだけじゃなかったの?」


「はい。この神器、本来の性能は洒落にならないくらいに危険です。海でできないことを探す方が難しいレベルですね」


 アレシアさんが、新しいおもちゃを手に入れた子供のように見えたので、危険性を理解してもらうために、海神の神器の性能を伝えておく。 


「そうなの。えーっと、あんまり使わない方がいいのかしら?」


「僕もそう思うんですが、ダークエルフの島で使う予定があるので、ある程度使いこなせないと、それはそれで怖いんですよね」


 ぶっつけ本番でダークエルフの島に何かがあったら大変だ。フェリシア。ちゃんと練習するから、そんなに心配そうな顔で見ないで。


「あぁ、島に何かあったら困るわね」


「はい。でも、元々は海流を操って島に船が近づけないようにするつもりでしたが、予想よりも凄い神器でしたので、守りが完璧になりますね」


 どこまでやるのかが問題だけど、空でも飛べないかぎり侵入不可能な伝説の島が作りだせそうだ。最低でも南東の島よりも入りづらい島にはしたいよね。そのあとはできれば封印したい。


「そういう訳ですので、危険じゃなければリクエストを受け付けますので、やってほしいことがあれば言ってください」


「そんなに気軽に言われても、あんなことを言われた後だと頼みづらいわ」


 それが狙いだったんだけど、脅しすぎちゃったかもしれない。


「では私が。ご主人様、一部分だけ波を激しくして、その状態を保つことができますか?」


 フェリシアも島の守りを考えているようだ。波が激しいだけで島には近づき辛いから、いい考えだよね。


「分かった。やってみるね」


 少し離れた場所に5畳ほどの大きさで波を激しくするようにお願いしてみる。


「これは凄いですね。ご主人様、この状態をどのくらい保つことができるんですか?」


 たしかに凄い。5畳ほどの範囲内だけは嵐のように波が激しくうねっているのに、その範囲以外にはみじんも影響がでていない。完璧にコントロールされている状態だ。


「海神の神器にお願いすれば、時間も決められるようだから、次に海神の神器にお願いするまで延々とこの状態を保つことも可能みたいだね」


 海神の神器……どう凄いか言葉で言い表すのも難しいレベルだ。しいて言えば……神器ハンパねぇって感じだな。


「ダークエルフの島を、全部あの波で囲むことも可能ですか?」


「うん。割と簡単にできると思う」


 もっと凄い波で広範囲を囲むだけで侵入不可能になりそうだよね。でも、そうなるとダークエルフ達が島から出られなくなるから、方法は考えないと駄目だろう。


「あら、ワタルさん。囲まれているわよ」


 イルマさんの声で周囲を見渡すと、船を取り囲むように海面から人の顔が出ている。ちょっとしたホラーな光景だ。


 海神の神器を使えばやってくるって海神様が言っていたけど、思った以上に早く人魚が現れたようだ。


 人魚が現れるのは予定通りだから構わないんだけど、でも……なんで男ばっかりなんだよ。人魚って言ったら美女が基本だよね! 美男子な人魚とか男の夢が……海神の神器で押し流したりしたら駄目かな?


読んでくださってありがとうございます。

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